現在のSNSのプラットフォームでは、機能追加、UI変更、アルゴリズムの変更など、日々のアップデートが激しいものです。そんな中、Instagramでユーザーに求められるコンテンツも年々変化していっています。

そこで今回は、SNSを中心としたマーケティング支援などを専門とするテテマーチ株式会社に「Instagramはこれからどうなっていくのか?」という切り口でお話を伺ってきました。
近年の変遷のポイントや、これから投下すべきコンテンツは?といった点をお伝えします。マーケターや企業のSNS担当者の方は、是非参考にしてみてください。

Instagramは「世界観」から「読み物」に変わった

ferret:
Instagramはもともと、写真投稿SNSでしたが、最近では商品を購入することもできるSNSにもなっています。そういった変遷について、まずは教えてください。

テテマーチ三島氏:
弊社は2015年に創業し、Instagramが日本で流行り始めた頃から活動しています。「インスタ映え」という言葉も流行りましたが、以前はとてもきれいな写真が並んでいましたよね。

きれいな写真を投稿していくことが中心で、フォトグラファーやモデルなど、素敵な写真を撮れる人などが多いプラットフォームでした。その後一般のユーザーも増加し、企業も参入してきてマーケティング的なコミュニケーション要素も増えていきました。

「インスタ映え」というよりは「何かを知りたい」というモチベーションでプラットフォームを利用するようになったので「見る人にとって役立つ」などのニーズに合ったコンテンツが求められるようになりました。最近では、文字入りのコンテンツや、マガジン風のコンテンツが流行っています。企業も個人も「ただ写真だけ」というよりはコンテンツとして見るようになり、メディアとしての在り方がかなり変わってきています。  
その中で短尺動画を用いたリール機能や投稿をまとめて残すことができるガイド機能などもアップデートされました。コロナ化ではInstagramライブ配信なども多くの企業が実施しています。

一言でまとめるのは難しいですが、私自身のTwitterで「Instagramは『世界観』から『読み物』に変わってきている」とツイートしたところ、反響がありました。皆さんもそう思っているのではないかと思います。

▲三島氏のツイート

テテマーチ福間氏:
こういったプラットフォームの使い方を決めるのはユーザーです。

例えばInstagramでは、最初はきれいな写真を投稿・加工して、フォトグラファーや写真好きクラスタが集まるプラットフォームでした。国内のユーザー数が800〜1000万以下の頃はそういった感じでしたね。そこから「Instagramってのが流行ってるらしい」とユーザーが流入し、今はユーザー数3300万を超えています。そうすると、新しい使い方を見出していく人がプラットフォームの中に増えます。そんな中でマガジン風のコンテンツ、つまり写真だけでなく「役立つ情報」を探す人がInstagramの中で増えはじめて、そういったコンテンツがウケるようになった訳です。

「#服好きな人と繋がりたい」とか「#おしゃれさんと繋がりたい」といったコミュニケーションは「写真」に紐づくのですが、それとは別に「#勉強垢さんと繋がりたい」など、受験生どうし、勉強してる人どうしで「勉強頑張ってるよ!」と互いに支え合うコミュニティもInstagram内で広がりを見せています。

つまり、人が増えるにつれてコンテンツが多様化し、写真だけのプラットフォームではなくなってきている、という印象です。

テテマーチ三島氏:
Instagramとはもともとシンプルで単純なプラットフォームだったのですが、コンテンツが多様化され、かなり複雑になりましたね。

ferret:
もともとは限られた(限定的な)利用者層をもつコミュニティとして存在していたものが、より広い層の人々が利用することによってプラットフォームとして拡大していったことが、多様化の文脈でしょうか?

テテマーチ福間氏:
まさしくそうです。利用する人が増えるにつれ多様化したということです。

テテマーチ三島氏:
誰かが使い方を教えたわけではないけれど、自然と使い方が変わっていって、気づかぬうちに自分自身も使い方がシフトしているような、そういった感覚です。

ferret:
インスタ消費も活発ですよね。

テテマーチ三島氏:
活発ですね。アクティブ率が他のSNSより高いんです。一年ぐらい前のデータではありますが、DAU(デイリーアクティブユーザー)でいうと日本で84%もあるんですね。ハッシュタグ検索なども日本は海外と比較すると20倍ぐらいあります。

テテマーチ福間氏:
確かにインスタ消費の活発さは言えますね。

Google検索よりも、Instagramで「タグる(ハッシュタグ検索をして知りたい情報を探す)」という行動への移行も活発であることを示しています。

コンテンツ至上主義化

ferret:
アルゴリズムによるコンテンツ至上主義化、というのはどういうことでしょうか?

テテマーチ三島氏:
Instagramのメディアとしてのポリシー、ユーザーに届ける全体的なメッセージとして「大切な人や大好きなことと、あなたと近づける」を掲げています。

つまりInstagramは、ユーザーひとりひとりに最適なコンテンツを届けられるようなアルゴリズムを組んでいて、特に「発見タブ」はパーソナライズ化が進んでいるんですね。「発見タブ」ではユーザーが探している情報をレコメンドして表示するようになっています。「この人はこういうコンテンツを普段から見ているから、もっとこういうコンテンツを届けてあげよう」という仕組みになっている訳です。

ストーリーズもフィードも、時間軸表示ではありません。その人がよくコミュニケーションする方、親密度が高い方の情報を優先度高く届けるようになっています。

つまりそれは、Instagramが届けたいメッセージを体現していると思っています。

以前のようにきれいな写真を上げていれば評価される時代は終わっていて、「いつ見ても反応したくなる」「いつも見ちゃう」「長く見ちゃう」など、情報量が詰まっているコンテンツが届けられるように変わっていっています。

だから弊社が支援している企業様に向けても、ただコンスタントに投稿していればいい、ではなくて「そのコンテンツでお客様にどう思ってもらいたいですか?」「どう反応してほしいですか?」といった点をきちんと言語化し、目的を明確にしてコンテンツの中身を重要視しています。

テテマーチ福間氏:
小手先のテクニックよりは、コンテンツ自体がフォロワーに「いいな」と思ってもらえるものを愚直に作ることが、結果的にリーチやエンゲージメントも伸びるようになってきています。

例えばケースにもよりますが、ハッシュタグは3年ぐらい前と比べるとそれほど重要視されなくなってきています。

ハッシュタグを上手く使ってリーチさせて、どうリーチを取りに行くか?というテクニックは数年前だと注目されていましたが、今はハッシュタグ関係なく「発見タブ」などのレコメンドから流入する人が多くなっています。

つまり、ハッシュタグを上手く付けることで流入に繋がるよりも「発見タブ」に載ったほうがインパクトがあるようになってきているんですね。ハッシュタグが効くケース、シーンというのも、そもそもコンテンツがしっかりしていなければダメです。よって、コンテンツそのものをひた向きに作り続けることが大事になっていると言えます。

TikTokはアルゴリズムによって、フォローしてない投稿もガンガン出てきて、ずっとメディアの中に滞在させる仕様になっています。

コンテンツが良ければ広がり、届きやすくなる、というのはInstagramだけに限らない傾向だと思っています。

時間を掛けてハッシュタグの研究をするよりは、対ユーザのコンテンツに向き合ったほうが本質的であり、運用において重要なポイントになってきていると言えます。

プラットフォームごとに使い分けをするべき

ferret:
例えば、TwitterとInstagramでプラットフォームの仕様の違いがありますよね。Twitterは「いいね!」数が分かる、リツイートの仕組みがあります。一方、Instagramは「いいね!」数が分からない、リポストの仕組みもありません。こういった仕様の違いがありますが、運用していてどのように考えていますか?

テテマーチ三島氏:
プランニングをする際には、「目的」によってプラットフォームを使い分けるべきだと考えています。ユーザー視点に立てば、Twitterを見ている時のモチベーションとInstagramを見ている時のモチベーションとは違いますよね。

例えば私自身、Twitterはビジネスよりの情報収集や新しい発見を意識して利用しています。一方でInstagramでは、何かに特化して情報を探していたり、商品やブランドに関する感想や役立つようなポジティブな口コミも多いのでそういったものを見たり、商品を見たりしています。

つまりTwitterは「知る」「認知を広げる」ツール。一方、Instagramは「ブランドの理解・好意度を深める」といったところでしょうか。プラットフォームの使い方がまったく違うと思うので、クライアント企業様にもそのような使い分けをおすすめしています。

よく、「Facebook、Twitter、Instagramどれも同じコンテンツで良いので運用してください」という依頼をいただきますが……利用層も、モチベーションも、プラットフォームの特徴もそれぞれ違いますから、同じコンテンツで良いとは言えません。まずはそこから理解していただきたいなと思っています。

テテマーチ福間氏:
Twitterはグローバルの中でも日本で広告売上比率も多く占めています。

Twitterがこれだけ日本で発展した背景については2つの理由が考えられます。
ひとつめは日本語で書く、すなわち漢字を用いて文章を作成するという事は、同じ140文字という制約の中でも他の言語よりも情報量を多く盛り込めること。ふたつめは昔から俳句や大喜利などの言葉遊びの文化に依って、日本人の言語感覚にマッチした側面があるのかもしれないと思っています。

「いいね!」数非表示でどう変わったか?

ferret:
2019年に、Instagramは「いいね!」数を非表示にしました。御社でSNS運用をしていて、「いいね!」数非表示になったことで変化はありましたか?

テテマーチ三島氏:
弊社としてはかなり変化があったと受け止めています。このUI変更の前後で言うと、エンゲージメントの良い・悪いがはっきりするようになりました。ユーザーの間での「いいね!疲れ」というのは確かにあったと思いますね。

弊社の分析ツール「SINIS(サイニス)」で解析を行ったところ、「いいね!」数非表示になってから、フォロワー数の多い(※1万人以上)アカウントは「いいね!」数の平均値が上がりました。
逆に、フォロワーの少ない(※1万人未満)アカウントは「いいね!」数の平均値が下がりました。

大きくフォロワーを抱えているアカウントは、UI変更によりグロースしたと言えます。

UI変更後の今は、本当に興味あるものには「いいね!」するし、そうでないものにはしない。企業アカウントでもそういった変化が垣間見れました。

ferret:
UI変更は、少なからずインパクトがあったということですね。

テテマーチ福間氏:
データを見る限りは、インパクトがあったように思えます。

テテマーチ三島氏:
一概に「いいね!」数非表示になったから、企業アカウントに影響があったと言い切るのは難しいのですが、前述したコンテンツのアルゴリズムの話と関連してInstagramでは「保存数」や「コンテンツへの滞在時間」を重要視するようになった傾向も感じられます。

これからのInstagramでは「ユーザーファースト」なコンテンツを突き詰めるべき

テテマーチ福間氏:
Instagramは、写真だけのメディアではなくなっていると言えます。「役立つコンテンツ」であったり、「知りたいコンテンツ」であったり、コンテンツの多様化が一層進んでいくと私は考えています。さらにニッチなコンテンツがどんどん出ていくにつれてユーザーがセグメント化され、属性・コミュニティが分断されていく。すると、これからは個々のコミュニティ同士が交わらない世界がInstagramの中でも大きく増えていくのではと考えています。

テテマーチ三島氏:
「ユーザーファースト」なコンテンツでなければ、もうリーチが難しくなりました。
より一層狭まったターゲットに向けたプラットフォームになっていき、ユーザー視点を第一に考えたコンテンツでないとInstagramユーザーに認められなくなり、届かなくなっていく。それを理解しておかないと、Instagram運用は難しくなっていくのではないでしょうか。

プラットフォーム変遷のポイントを理解しよう

Instagramはもはや「きれいな写真を投稿するプラットフォーム」だけではなくなってきています。「読み物化」「役立つコンテンツニーズ」「ユーザーの多様化・細分化」が年々、深まっているという点がポイントだと言えます。
マーケターや企業のSNS担当の方は、アルゴリズムとユーザーのインサイトをしっかり理解して、コンテンツを発信していくことが重要です。今後のSNS運用にぜひ役立ててみてください。