「旅するマーケター」西井敏恭が、マーケティング分野で注目の人物にインタビューをする連載企画。

第3回は、ライフスタイル提案メディア「Locari」を運営する株式会社ワンダーシェイクのCEO、鈴木仁士氏にお話をお伺いしました。

ワンダーシェイクは、鈴木氏が大学4年の2011年に設立。現在地の近くにいる人と共通の趣味や関心を通して出会うことができるサービス「ワンダーシェイク」をリリースし、注目を集めます。
現在は、ライフスタイル提案型のメディア&アプリ「Locari」を運営。サービスリリースから急成長を続けています。

前編では鈴木仁士氏のバックグラウンドや起業初期のお話をお伺いしました。
起業してすぐ脚光を浴びた人生のピークは21歳。就労ビザ通らず、事業立ち上げも諦めかけた創業期。ワンダーシェイク代表・鈴木仁士氏

後編では現在のサービスへの考えやどのように将来を見据えているかお話をお聞きしました。

EC要素を含んだメディアアプリ「Locari」をリリース

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西井:すごいなと思ったのは、みなさん鈴木さんと同じくらいの年齢なんでしょうけど、ある程度年をとるとあきらめが早くなるんですよね。

成績出せずに適当な理由をつけてやめるのってカッコ悪いと思うんですよ。
でも、意地でもやってやるとなって、やって、それが成績にちゃんと現れているのは、根性論かもしれないけど、すごい大事だなと。

そのメンバーがいるからこそ、今サービスができているんだろうなとは思うし。

鈴木:そこは、うちの会社の一番の資産になっていますね。

あきらめなかったらどこかで成功するじゃないですか。
そもそも受託でサービス作りまくっていたんで、アプリに関して自信があったんです。

西井:そこで、どうしても外したくないということで、4人で事業計画を立てることになると。

鈴木:ずっと議論して。
4人中3人が海外にずっといたメンバーだったので、海外を意識して、基本的に海外のサービスを見ていたんですよね。海外のほうが、2、3年早いじゃないですか。

当時日本では、STORES.JPさんとかBASEさんなどが登場して、フリルさんとか流行っていたので、絶対スマホ上のメディアとコマースで何か起きるなとは思っていたんです。
そこで、メディアとコマースどちらで行こうかと議論していたんですが、仮説としてメディアとコマースというのは、これから繋がっていくのではとも思っていました。

メディアの記事から商品の決済まで繋がったサービスが来るのではと、2013年ごろから思っていましたね。
そこから最初はモール型のECサービスでいこうと、手数料0%で商品をまず集めてきて、かつ、検索で出会えない商品と出会える場所を忙しい女性向けに作りたいと思ったんです。女性向けのディスカバリーコマースですね。

そもそも男性は目的志向が強いのもあってあまりウィンドウショッピングはしないじゃないですか。だから、女性向けにウィンドウショッピング的な体験をアプリ上で実現しようと。
店舗の中でも、型番ではなくて、なかなか日の目を見ないユニークな商品を集めたりとか、一品物の商品を集めたりとか。

そして始めたのが「Locari」です。現在はメディアとして運営していますが、EC的な要素を含んだ上で始めています。

ECを切り離しメディアとして再スタート

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鈴木:アプリでは、ユーザーの利用頻度が重要なので、商品がどんどん更新されていく。メディアっぽく、目的がなくてもアプリを開く。
当時からそういう形だと理解していたので、タイムセールとかフラッシュセールっぽい感じでユーザーには見せて、全店舗手数料0%で出品ができるというモデルにしました。

しかし、4人でやるのは難しいところがありました。商品がすべてじゃないですか。

商品のSKU(Stock Keeping Unit)数と商品力。そして集客力。
使える現金も限られていましたし。でも、個性がなかなか出せなくて、EC単体ではきついということなって、4人でまた話し合って。

当時Naverまとめがブームになっていて、うちも同じようなモデルを考えたんですけど。ウェブメディアは大きく変わってきてるし、購買を前提にした女性向けメディア作りは成長余地が非常にあるなと。入り方を間違えるとサービスは絶対に伸びないので、そこだけはマーケット選定をしっかりしようと決めていました。

そこで、1回ECはクローズして、完全にメディアとして振り切って、ゼロから作ろうと決めました。

そうなると記事の質が大事になるのでクラウドソーシングを使って良質な記事をローコストで作りつつ、検索もソーシャルも取るし、アプリという形態でユーザーとの結びつきを強くする方向性にシフトしました。

初期の頃から色々なサービスを作る過程でアプリは検索から流れてきたユーザーよりもロイヤリティ高くなるなと。だから、アプリが本丸であると認識した上で、ECに切り替える。そういう大戦略をもって当時資金調達をしていきました。

事業を短期間で立ち上げるためには5,000万円じゃ足りないというのは前回わかっていたので、1億円は欲しいなと考えていました。

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西井:1億でも足りるのかなっていう感じですよね。

鈴木:はい、ただ資金調達は非常に苦労しました。一番多かった意見はメディアからものを買うのか?と。

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そこで、外部の投資会社などを回りまして、1社話を聞いてくださるところがありました。
事業に関しても伸びしろがあるがこれまで辞めなかった創業メンバーに投資したいということで、決定をしていただきました。

そこで1億円決まって、もう1社さん加わりまして。そのタイミングで受託は全部やめて、持っていた事業も売却したりしました。

西井:それは何年ですか?

鈴木:2014年の7月ですね。
そこからLocariをメディアとしてスタートさせました。

最初は検索、SNSそのあとに早期にアプリに集客チャネルをシフトさせて、一気にサービスを伸ばしていきました。

いかに検索の手前を取りに行くかを常に考えている

西井:実際立ち上げてから、今後目指している目標はありますか?

鈴木:やはりメディア単体のユーザー数には限りがあると思っています。

そこで、どれだけユーザーをいろいろなサービスで回遊させることができるかという話だと思うんです。
足元で女性向けでスマホに強いメディアがあるので、そこを起点としたあらゆる女性の生活、消費領域にあるサービスは全て関心があります。

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あと検索から入っていくWebのパラダイムのサービスはある程度一巡した感はあります。
我々の会社としての注力テーマは、「検索の前」にいかにモバイルファーストで人の生活に入り込んでいくかですね。

西井:他社よりも後発でメディアを始めて、それでも成功した理由はなんでしょう?

鈴木:PVを重視せずに、別なKPIを設定したところでしょうか。
PVを重要視すると、ユーザーにとって必ずしもプラスな施策が出てこないですよね。PVを上げるのならソーシャルでいかにバズらせるか、いかにページングを増やしてみたいな話になってしまう。

流入してくるユーザーは、コンテンツを読みに来ている訳なんで、Facebookで見てたほうが楽だくらいのレベルになってきています。
だから、ユーザーが読みたいコンテンツを作っていく。すごく当たり前なんですけど、そこにコミットしてやってきました。

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鈴木:やはりあらゆるものとの可処分時間の奪い合いなんで、DAUが高いアプリが生き残るじゃないですか。
あとはウェブよりもアプリの方がユーザーさんがよりサービスにエンゲージしてくれる仮説があったのでそこを一番重要視しましたね。

メディアコマースへの考え方が変わった

西井:経験値はすごく大事ですよね。
国内のスタートアップでうまくいっていない会社を見てみると、戦略は素晴らしいし、投資家もそこにお金を集めたくなるけれどもやっぱりうまくいっていない。

ワンダーシェイクの場合は、受託でたくさんアプリを作ったりして、練習をしてから本番に臨んでいる。練習をして経験値を貯めておくということは大事だなと思いました。

ちなみに、ECの話をしたいんですが、メディアコマースはくると思いますか?

鈴木:くると思います。

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西井:僕は、十数年ECやっているので、スペックをものを見て買うっていう現代において、ECは勝者が決まっていて。
Amazonには勝てないんですよ、どう考えても。

価格競争になると、店舗側が儲からなくなって疲弊していく。一方Amazonは商品はすぐ届くし、サービスもかなり拡充されています。
すでにみんなアカウントを持っているから、結局Amazonの勝ちなんです。

じゃあ、そこに勝つものって何だろうというときに、検索じゃないところにちゃんとコンテンツがあったり、おもしろい商品があったりというのは、ずっと思っていたことなんです。
鈴木さんは、メディアとコマースを一緒にすることが、正しいかどうかはどうか考えていますか?

鈴木:可能性はありますが、取り組み方には何パターンかあるなと。

西井:なるほど。僕は記事にカートがあれば簡単にできちゃうかと思っちゃうんですけど。

鈴木:記事を読みにきてるユーザーさんがやはり過半数なので、そのユーザーさんの物を買いたいスイッチが入るか、あとはそのボリュームが出るかですよね。

西井:規模の問題ですね。

鈴木:そうですね。
どちらかというと商品情報をメディアで取り扱うのは流通額というよりは、コンテンツの幅を広げるという意味で価値があるなと感じています。

オウンドメディアはそんな簡単なものじゃない

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西井:EC事業者自体がメディアを作っていく方向をやっていかなくてはならないんですかね。やるとなると相当たいへんな仕事じゃないですか。
僕のクライアントさんからも「オウンドメディア作りたい」と相談されますが、そんな簡単なものじゃないよと。

それこそ、ちゃんと会社を作って、クラウドソーシングをちゃんと使って、管理画面もきちんと作って。そこまでやって始めてできるものなんですよね。

だったら、普通に広告出稿をちゃんとやったほうがいいんじゃないのかって(笑)。

一方で、今のECの流れではメディア化する方向性もあるので、ECの会社にとって次の一手はどうなのかなというのは、すごく悩ましい問題だと思っています。
そこでメディアが選択されているわけですよね。

本当のことを言えば僕はメディアをやるべきだと思ってるんです。ただ、中途半端にはできない。
こういうのは、御社に言ってメディアを作ってもらうということはできるんですかね?

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鈴木:そこはノーコメントですね笑。
ニーズがありそうなのは感じていますが、うちの注力領域ではないかなと。

西井:今後、そういう展開は考えてないのですか?

鈴木:優先順位的には当面は自分たちでメディアやコマースに近い領域で事業を作ることを優先してやりたいと思っています。

西井:化粧品などは、DAUで追いかけようがないから、そもそもアプリには合わないんです。毎回同じ化粧品のサイトは見ませんよね。

でも、メディアなら見に来てくれるわけです。今日のメイクはどうしようとか、スキンケアについて、ファッションについて。
そのメディアとしての特性のところと共存していくしかない。

かたやスペックで勝負しているところはAmazonに負けてしまう。やはり、簡単ではないけれどメディアを作っていくしかないのかなと思います。

御社はLocariで今まさにそれをやっているから、とてもおもしろいですよね。

自分達で考えて当事者としてやってきたことが一番大きい

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西井:鈴木さんは若いころから座学だけではなく、いろいろな経験をして失敗もして、それがあるからすごい知見を持っているなと思ったんですけど。
これからマーケティングをやっていきたいと思っている人たちが、鈴木さんみたいに考えられるようになるには、どんなことをすればいいんですかね。

鈴木:自分達で考えて当事者としてやってきたというのが一番大きいんじゃないでしょうか。

それと、マーケティングにかかわらず、世の中の大局的な流れを掴むこと。それが最近はどんどん変わってきていますが、本質は変わらないと思っています。

それを抽象化するスキルは大事だなど。これとこれは同じだよねっていう。

西井:それはお話を聞いていて思いました。世の中の流れをちゃんと見てるなと。

鈴木:メディアはどこかで衰退するというのがわかっているので。ユーザーがどこかで飽きるじゃないですか。そういう危機感というか緊張感はあります。

西井:今、欲しい人材ってどういう人ですか?人材確保というのは、業界的に問題になっているというか。

この話を理解できる人たちがもっと増えていかなければいけないと思っていますし、やりたい人がやっていかなきゃいけないと思っているんですけど。

鈴木:志とか目線が高い人がいいなと(笑)。
スキルはある程度どうにでもなると思っていて。若ささえあればキャッチアップできると思うので。

どれだけ貪欲に成長しようとしているかというところを、すごく見ています。

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西井:僕もまったく同じ意見です。

伸びる人材は、そもそも最初のスキルが高いというわけでもありませんし。少々年齢が高くても、魂さえあれば伸びられるし。

ベタですけど、魂ですよね。

鈴木:それこそ、成長はすべてを癒すという気がしますね。

西井:会社としての成長も売り上げが癒やしてくれますし、人としてのスキルも、成長すれば自分で楽しかったり。
そういう環境を作っていかなければいけないんでしょうね。

鈴木:会社のエグジット方法については色々と考えていたんですよ、去年。
いろんな理由があって独立した形でやっていこうと決めたのですが。やはりウチの創業メンバーが全員やめていないというのが奇跡的だなと思っていて。

このチームで、一番これから伸びる領域で勝負ができていて、メディアも一定の規模になっている。そこでいろんなビジネスができると考えると、その切符をもっていることはすごい貴重だなと思ったんですよ。
これで仮に会社を売却したとしても、売った後のことを考えるともったいないなと。

そう考えると、自分たちでいけるところまでやっていきたいと。そう決めた瞬間に見える景色が変わったんですよね。

まだ会社としては何も始まっていないと。
高みを目指すと採用強化しないといけないですし、事業も新規事業を考えないといけないですし。メディアだけでの将来はありえないと思ったので。

今、起業してから一番チャレンジングで楽しい時期ですね。

西井:ピークは1回あったけど(笑)。

鈴木:遅く来た第二波が(笑)。

フォトグラファー:三浦一紀

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前編はこちら:
起業してすぐ脚光を浴びた人生のピークは21歳。就労ビザ通らず、事業立ち上げも諦めかけた創業期。ワンダーシェイク代表・鈴木仁士氏

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