2016年10月27日、運営元のTwitter社が、動画共有サービスVine(バイン)の提供を終了することを発表しました。

Medium上でのVineの声明(Important News about Vine – Medium
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<引用の翻訳>
2013年以降、数百万人の方がVineを使い始め、ループされるVine投稿を楽しんだり、繰り広げられるクリエイティビティに触れるようになりました。本日、我々は数ヶ月のうちにモバイルアプリを終了することを発表いたします。

しかし、今日Vineのアプリやウェブサイトにおいて、何か動きが生じることはありません。我々は皆さまと投稿されたVine投稿を大切にしており、正しい方法でサービス終了を進めてまいります。皆さまはVine投稿にアクセスし、ダウンロードすることが今後もできます。我々はこれからもウェブサイトを公開し続けます。なぜなら、我々はこれまで作られてきた全ての素晴らしいVine投稿を今まで通り大切なものであると考えているからです。我々がアプリやウェブサイトに変更を加える前に、皆さまへお知らせを行う予定です。
引用元:Important News about Vine – Medium

かつては企業プロモーションでも積極的に使われていたVineが数カ月以内に終了するという発表を受け、驚いた利用者は少なくないでしょう。

今回は、Vineのこれまでの経緯を振り返り、終了に至った理由を3つに分けて解説します。

そもそもVineとは?

VineのTOPページ
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Vineとは、6秒間のショートムービーを制作して共有できるソーシャルメディアです。
アップロードした6秒間の動画が無限ループされる本サービスは、ある時点では2億人のアクティブ・ユーザーを抱えていました。

以下の動画のように、同じ映像が繰り返し自動再生されます。

設立直後にTwitter社が買収、リリース後は1億人以上が利用するSNSに急成長

2012年6月にドム・ホフマンらがサービスを立ち上げ、正式リリース前の2012年10月にTwitterが買収しました。

2013年1月、iOSアプリのリリースを皮切りに、1億人以上が利用するソーシャルメディアへと急成長しました。Facebook など他のSNSとの連携投稿も可能であったため、手軽に情報を拡散できる手軽さがヒットに繋がりました。

以下の記事では企業のVine起用例が紹介されています。サンリオピューロランドやUNIQLOといった名立たる大手企業が、かつてはこぞってVineを使っていました。

アイディアが秀逸!Vineを使った国内企業プロモーション事例5選

アイディアが秀逸!Vineを使った国内企業プロモーション事例5選

今回は、Vineを使った国内企業プロモーション事例5選をご紹介します。 Vineを利用したプロモーションを考えている担当者の方はもちろん、Vine以外の動画配信サービスを利用してプロモーションを行っている担当者の方も、動画作成の参考にしてみることをオススメします。

Vineを利用して拡散する「Viner」

「Viner(バイナー)」とは、Vineを使って動画投稿する人を指します。
6秒という短い時間の中で様々な工夫を凝らした投稿をするユーザーが登場し、1億回以上のループ数を誇るVinerも現れました。

日本でも知名度を得ているのが、大関れいかさんのVineアカウントでしょう。
元々は一般の女子高生であったものの、彼女の投稿は次第に人気を得るようになりました。
これまでに累計9億回以上のループ数を誇っています。

大関さんを始め、Vinerと呼ばれる人は元々一般人だったケースも少なくありません。
知名度に関係なく誰でもインフルエンサーになれる仕組みはVineの成長を促す1つの要因になったと言えるでしょう。Vineの終了が発表された際には、彼女本人もショックであったことを吐露しています。

Vineが終了に至ったとされる3つの要因

ここまで順調に成長していたVineが、なぜ突然終了することになったのでしょうか。
大きな要因として考えられるのは以下の3つです。

1.Twitterの身売り交渉の相次ぐ失敗
2.Twitterアプリ内で動画投稿できるようになったこと
3.インフルエンサーの他媒体への流出

1.Twitterの身売り交渉の相次ぐ失敗

最も大きな理由が、相次ぐTwitter社の身売り交渉失敗とされています。2016年に入ってから、Googleの親会社であるアルファベット、顧客情報管理大手のセールスフォース・ドットコムなどへの売却が相次いで失敗し、Twitter社は経営のスリム化へと迫られていました。

そのため、Vineの終了を発表した日にはTwitter社員へ対する大規模なリストラ計画も発表しました。全社員の約9%が対象とされ、その数は300名近くに及ぶとも言われています。
この余波を受け、Vineのサービス改善へ注力できなくなったのではという憶測も流れています。

2.Twitterがアプリ内で動画投稿できるようになったこと

かつてTwitterで動画をアップロードする際には、YouTubeやVimeo(ヴィメオ)といった外部の動画共有サービスを利用する方法しかありませんでした。そのため、Twitter内で動画コンテンツをスムーズに共有する際には、自社で抱えていたVineへアップロードするのが最も効率が良く、多くのインフルエンサーに重宝されていた背景がありました。

しかし2015年1月からiOS版のTwitterアプリ内にて動画アップロードが可能となり、あえてVineへ投稿する必然性がなくなり始めました。その後Androidアプリやパソコンでの投稿にも対応し、この傾向には拍車がかかったとされています。

また、2016年にはTwitter内でGIF画像の投稿も可能になったことから、Vineアプリの特性であった「短時間のループ再生」に対するニーズとも重なりあってしまいました。Twitterとしては、自社内で似たようなサービスを複数抱えることによるデメリットがあったとも考えられます。

3.インフルエンサーの他媒体への流出

かつては「Viner」と呼ばれる人たちを生み出したものの、ここ数年は情報発信を他のSNSに乗り換える人が少なくありませんでした。事例として紹介した大関れいかさんも、現在はインスタグラムやLINEブログを活用することが増え、Twitterに搭載された動画アップロード機能も頻繁に用いるようになりました。

加えて動画再生回数によって広告収入が得られる「YouTuber」の認知向上や、相次ぐ動画共有サービスの登場により、かつてのVineを取り巻いていたコミュニティへの求心力が弱まるようになりました。

インスタグラムやYouTube、SnapcahtやMixChannelなどといった様々なサービスへの乗り換えが始まり、動画コンテンツの発信者が必ずしもVIneを選ばなくなりました。

Vineスターと運営側との金銭面での対立

2016年3月にBuzzFeed Newsが報じた記事によれば、海外で活躍するVInerを「Vine Stars(Vineスター)」と呼び、Vineの運営チームに対し、彼らから幾つかの提案を行っていたとのことです。

提案内容としては、Vine内にワードフィルター機能(不快なツイートをブロックする機能)を搭載し、Vineスター18人に対してはVineが1人120万ドルずつの支払いを促すものでした。

しかし、VIneスターからの提案は比較的強気なものでした。Vineが受け入れるのであれば週に3本程度の投稿を行うが、もし断るのであれば他の動画配信プラットフォーム(YouTubeやインスタグラム)に移行するという条件を突きつけていたのです。

Vineとしては当初は提案を受け入れる方向ではあったものの、BuzzFeed Newsの報道後に支払いを求めるVineスターが21人に増えたことなどから不信感を示し、支払いに応じることはなかったそうです。また、提案に含まれていたサービスの仕様改善もなかなか行われず、VineスターにとってはVineを使うモチベーションが下がっていきました。

Vineのその後は?

Vineは2016年10月に数ヶ月以内でサービス終了と発表後、2017年1月17日をもって正式にサービス終了となっています。またこれまでは公式サイトにて、過去に投稿された動画のアーカイブにいつでもアクセスできる状態になっていましたが、それも2019年に終了。以降はアカウントごとの固有URLにアクセスするか、Twitterで共有されていた場合のみ、ツイート上で動画を観られる状態になっています。

ユーザーがVineのアカウントページにログインすることもできなくなっているため、実質動画はほぼ観られない状態です。
参考:Vine FAQ|Help Center

身売りの可能性もあった?

Vineのサービス終了が発表されたのちに、運営元のTwitter社には「Vineをサービス単体で買い取りたい」というオファーが相次いでいるとの報道がありました。

Twitter still might save Vine by selling it | TechCrunch

LINEを含む数社が買収に前向きな姿勢を見せていたとのことで、何か動きがあるかもしれないとも予測されていました。しかし、場合によっては買収先でVineがTwitterの競合サービスに変化する可能性も秘めているため、Vineの身売りに関しては一筋縄とはいかないという憶測も流れており、その結果は真意は定かではないものの、サービスは引き継がれず終了に至っています。

Twitterが誰にもVineを助けさせない理由 | TechCrunch Japan

「Vine Camera」への移行に伴い、Vine内でのコミュニティ機能が消失

12月16日、Twitter公式アカウントにて、Vineについての今後の動きが発表されました。
内容としては、Vineのような6秒動画を作成できる「Vine Camera」と、それらの動画をダウンロードできる機能が1月にローンチされるというものでした。

また、今回の発表によってVineはコミュニティ機能を消失し、ソーシャルメディアとしての役割を終えることが、改めて確認できました。その代わり、インスタグラムにおける「Hyperlapse」・「Boomerang」・「Layout」といったサービスのような役割を「Vine Camera」が担い、「Twitterにおける動画作成ツールとしての役割を担い続けるのでは?」という憶測が広がっています。

しかし2020年9月現在、アプリ自体は残っているものの、機能は撮影と編集のみ。ユーザーからは「過去の投稿が観られないなら、Vineである必要はない」という評価に落ち着いています。
参考:Vine-Google Play

VineはVine Cameraに生まれ変わる、Vineコミュニティは消滅 | TechCrunch Japan

ユーザーにとっての利便性を常に追求しなければ生き残れない

かつて企業のプロモーション企画でも重宝されていたVineの存在ですが、隆盛から数年のうちにサービス終了へ至る運びとなりました。Vineを語る上で欠かせないのが、やはりVinerを生み出すコミュニティの存在だと考えられます。

様々な外的要因によってコミュニティが縮小してしまったことから、ユーザーにとって魅力的な場であり続けることができず、Twitterにとっては動画共有手段の1つに成り下がってしまったのかもしれません。

また、Vineはサービスリリース前に会社ごとTwitterへ売ってしまったことから、本発表を受けた創業者が「会社は売るな!」というツイートを投稿する事態にまで至りました。

確かにTwitterへの売却後、Twitterサービス内への積極的な統合が行われなかった面もあり、ただただサービス終了への道筋を辿るかのように時が過ぎてしまった印象もぬぐえません。

今回の事象から、どんなサービスであってもツールとして止まっているばかりではいけないことが読み取れます。
ユーザーにとって魅力的かつ積極的なコミュニケーションが行われる場であり続けることが、動画共有サービスとしても大切なのかもしれません。

目まぐるしく動き続ける動画共有サービス市場

Vineのサービス終了から読み取れるように、現在の動画共有サービス市場は混沌としています。ひっそりと終わるサービスもあれば、2015年にリリースされた「C Channel」のような新たなサービスもあり、こうした環境の変化に取り残されないよう、最新のトレンドを常に追い続ける必要があります。

ちょっとした仕様変更でも業界としては大きな変化が起こっている可能性もあります。
積極的に情報を収集し、次のトレンドを推測することを心がけましょう。

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