インダストリー4.0の問題点

セキュリティ面

急速に普及していくインダストリー4.0の中で、1番の問題点はセキュリティ面にあると言えます。
あらゆる機器がネットワークにつながるということは、情報のやり取りがスムーズになる反面、何者かがネットワークに侵入するとネットワークにつながっているあらゆる機器が危険にさらされることを意味します。

2016年12月、IoTを利用した災害時などに水を供給するシステムに不備があり、全国の病院など170ヵ所で何者かによって機能を停止させられる事件が起こりました。やはり、インターネットを介して運転を監視しているためパスワードが破られてしまう可能性や、情報が流出してしまうリスクなどが存在します。サイバー攻撃などの標的になってしまうことを視野に入れたセキュリティの強化や体制を考えていく必要があります。

参考:IoT ネットで管理の水処理システムに不備 病院などで使用|NHK
  

人材教育面

インダストリー4.0を進めようとしても、そこに運用する人間の理解や技術力が付いていかないことには意味がありません。

これまでの、仕事のスキルにプラスして、データに基づく分析能力や対応力が必要となってきます。モノを作ること自体はITの技術に任せることは可能です。また、従来属人化されてきた「熟練の技」を如何に数値化するかも問題でしょう。熟練だけが気付く製品の不具合も数値化されなければデータとして機械に読み込ませることはできません。

こうした過去にデータ化されてこなかった部分をデータに変換する方法を考え出し、AIなどの機械に読み込ませれば、熟練でなくても商品に存在しているリスクを見付け出すことができます。そのため、単なる機器への投資だけではなく、それを扱う人の教育が求められてくるのです。

インダストリー4.0が一般化した後はその環境を活用できるかです。そして、そのキーポイントは人材です。いずれはネットワークエンジニアやインフラエンジニア、AIエンジニアへの投資、教育がポイントになってくるでしょう。

参考:製造業におけるビッグデータ活用の盲点と対策(1)|ダイヤモンド・オンライン
  

企業が把握しておくべきポイント

安倍政権では「IoTによる製造ビジネス変革WG」の中で、5つのポイントで取り組んでいくことを決めています。

企業にとっても参考になるので、しっかり確認しておきましょう。

参考:ロボット革命イニシアティブ協議会 IoTによる製造ビジネス変革WG中間とりまとめ|内閣府
  

1. 製造プロセスの標準化と企業内外の連携

インダストリー4.0においては、企業内外をまたいだ仕組みを構築することが重要になります。

例えば、工場の機械も1つだけがIoT化されているのでは、ネットに接続される意味はありません。機械同士が相互に連携し合えるように、機械を用いる事業者はもちろん、機械メーカー間での連携も求められるでしょう。また、企業間が連携することで今までになった革新的なサービスや製品が生まれる可能性もあります。
  

2. 標準化・セキュリティ

経済産業省では、インダストリー4.0を国際的に牽引していくために独自の委員会として「スマートマニュファクチャリング標準化推進委員会」を設置しています。

このような国際標準化の中で、データ通信の仕組みなどIoT関連の機器の規格が定まる可能性もあります。IoT機器のメーカーはもちろん、IoT機器を利用する企業にとっても注目しておきたい分野です。

経済産業省では、インダストリー4.0を国際的に牽引していくために独自の委員会として「スマートマニュファクチャリング標準化推進委員会」を設置しています。

このような国際標準化の動きの中で各国、各企業は主導権を握るためにしのぎを削っています。自動制御システムにおけるコントローラーとI/Oデバイス間のデータ通信ネットワークに関してはEtherCATの採用企業が増えています。トヨタ自動車はこの分野における企画としてEtherCATの全面的な採用を決めましたし、アルゴシステム、オムロン、山洋電気、日立産機システムなどもEtherCATを採用しています。

引用元:トヨタが全面採用を決めた「EtherCAT」とは何か

参考:経済産業省標準化関連事業の概要|経済産業省

3. 中小企業のための基礎インフラの整備

政府は、大企業と中小企業でIoTの格差が生じないように、必要なツールや環境等の調査を行い、整備を行っていく考えを明らかにしています。

比較的安価に取り入れやすいクラウド環境の整備なども含まれ、今後政府の支援によって中小企業でも利用しやすいIoT機器の開発が進むかもしれません。
  

4. 日本の製造業の強みを維持・強化

政府では、製造プロセスに対して細かく分析を行うことでIoT時代においても、日本の製造業の強みを活かそうとしています。

企業においても、IoT機器があるからといって自社内で蓄積してきたノウハウを捨ててしまうのではなく、データに落とし込むことでIoT機器への活用が進むでしょう。

5. 実証とモデルケースの共有

政府は上記の取り組みに対し、予算を取った上で実証実験を必要に応じて行う予定です。さらに、製造業における今後のIoT活用のモデルケースとなる取組を発掘し、それを産業全体に展開して行こうとしています。

こうしたモデルケースの共有は、企業がインダストリー4.0の波に乗り遅れないためにも重要です。ぜひ政府から発信されるものを含め、IoT機器による業務の効率化を実現している事例から積極的に学んでいきましょう。

日本商工会議所はホームページでIoT活用事例の紹介を始めています。どのようにIoTを活用したか、だけでなく、活用後の効果まで紹介しているので、導入後のメリットがイメージしやすいです。ぜひ政府や団体から発信されるものを含め、IoT機器による業務の効率化を実現している事例から積極的に学んでいきましょう。

引用元:日本商工会議所HP(https://www.jcci.or.jp/it/iot.html)