PVが伸びなくてもユーザーにとって価値があるものはコストをかけて作っていく

どのようなコンテンツであれ、作成にあたっては生産コストが発生しています。

質の良い、信頼性の高いコンテンツを作成するには、それなりの時間とコストをかける必要があります。しかし、コストをかければかけるほどユーザーに見られるコンテンツが生まれるとは限りません。

質とコストのバランスはWebメディア運営者にとって永遠の課題ですが、東洋経済オンラインの場合、どのようにバランスを取っているのでしょうか。

山田氏:
東洋経済オンラインは1日10〜15本ほどしか配信してないんですが、1本か2本でその日の8~9割のPVをとります。
今日だと貧困に関する記事が1日で200~300万PVいくんですよね。どこもそうだとは思うんですが、記事によってかなりPVに差がつきます。
それならあまり見られない記事を書いてもしょうがないのかなとなりがちなんですが、必要だと思うものはPVが少なかろうが作成しています。

コストがかかっている割にはPVが伸びない記事はやっぱりあるんですよね。でも、やっていきます。
それに公開した日に読まれなくても、その後、記事で取り上げた話題が何かのきっかけで注目されると再び読まれることもあるんです。

記事のバランスは難しいのですが、全体では利益が出る構造になっています。

コストと質のバランスについては、「編集部員一人ひとりがバランスを取るように心がけている」とのことで、数字を取ることだけに執着せず、自分たちが出すべき情報も大切にする姿勢が窺えます。

  

メディアの課金ポイントはどこにおくと良い?

山田氏(モデレーター):
紙媒体を持っている企業は特に、最終的にはユーザーの囲いこみというかブランディングの行き着く先として課金に持っていきたいはずです。
3,000万ユニークブラウザーという規模であれば、お金払ってくれる方も結構な数いらっしゃると思うんです。
マイクロペイメント的なものもできると思うんですが、課金そのものについてどう思われますか?

山田氏:
東洋経済オンラインは無料ですが、別で運営している週刊東洋経済プラスは有料です。
東洋経済オンラインのロイヤルカスタマーは、ぜひ週刊東洋経済も読んでいただきたいなと。

あとは、東洋経済オンライン上で弊社が出している出版物のプロモーションをやってるんですが、そこから書籍のヒットが出てきています。
東洋経済オンラインそのものでというより、別の場所で課金ポイントを作っていこうかなと。

SNS攻略の鍵は「ブランド化」

山田氏(モデレーター):
ハフィントンポストも、3年半ほどしか経ってないのに物凄く伸びていますよね。
伸びた要因について教えてください。

竹下氏:
SNSが強かったからですかね。SEOが強い状態から、SNS流入を強化する方向にシフトしました。
当初はメディア拡大に注力していましたが、SNSユーザーにも認知されるよう今はブランド強化も並行して行っています。
各プラットフォームに情報を発信してもハフィントンポストらしさを保つよう工夫したり、リアルイベントを強化したりしています。

ブランド強化に邁進するハフィントンポストは、広告においても一般的なWeb広告(バナー広告、記事広告等)とは異なるタイプのものを提供しています。

Diversity_for_Life_Powered_by_UNIQLO.png
http://www.huffingtonpost.jp/news/japan-diversityforlife/

広告主のユニクロと共同で「服について考える」ための専門カテゴリをハフィントンポスト内に設置し、ユニクロの紹介記事ではなく「服とは何か」を考えさせる記事コンテンツを更新しています。
あくまで「ユーザーにとって価値あるコンテンツ」の提供を優先しているこの広告コンテンツは、どのような経緯で作られたのでしょうか。

竹下氏:
まず、この広告を成立させるためにはクライアントの理解が必要でしたね。単にフリースやヒートテック紹介したいとかでは成り立たないので。
自分たちの会社がなぜ存在するのかをきちんと発信していかなければいけないような企業でないとダメでした。
なので相手は必然的にグローバル企業になります。

海外進出の際、海外ユーザーに向けて自社の存在理由や強みを理解してもらえなければ受け入れられることはないでしょう。
ユニクロの場合なら「ZARAと何が違うの?」という問いに対して明確な答えを持っていなければいけません。
「自分たちが何者で、何を実現しようとしているのかをどのように発信すればいいのか」という企業の課題に、ハフィントンポストは広告コンテンツをとおして1つの解を提供しました。

山田氏(モデレーター):
ユニクロさんは広告費が潤沢でテレビCMも多く発信していますし、Facebookのファン数も多い。一見、リーチには困ってなさそうですが、ハフポ(ハフィントンポスト)との取り組みには何を期待されていたのでしょうか。

竹下氏:
我々のネットワークの力というか、取材力が大きいですね。
例えば「服とは何か」を考える記事オーダーいただいた時、我々のネットワークを使って80歳のオシャレをしているおばあちゃんや、転職したことでドンドン服が変わっているような方のリストがあるので、そこに向けて取材できるんです。