2種類のDelight

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機能的で、信頼がおけて、使いやすい状態になってはじめて、User Delightを追求することができます。
そして、UIを操作するときに、ユーザーが体験するUser Delightには2つの段階があると言われています。

1. Surface Delight

まず、最初の段階が*「Surface Delight」(表面的な感動体験)*と呼ばれるものです。
これは主にそれぞれ個々のUIの機能に着目したUser Delightです。
例えば、次のようなものがSurface Delightと呼ばれるものです。

  • アニメーション
  • ジェスチャーコマンド
  • マイクロコピー
  • 美しいハイレゾ画質の写真や動画
  • 通知音

これらのUI要素はデザイナー側の*「仕掛け」であることが多く、プロダクトが完璧なものでなくともユーザーのエンゲージメントを高める上で十分な効果があります。
これらの特徴はDelightを生み出しますが、結果的に
表面的な感動*を与えるだけになってしまいます。

2. Deep delight

次の段階が*「Deep Delight」(深層的な感動体験)と呼ばれるものです。
UI要素にとどまらず、プロダクト全体を通してDelightを提供するもので、
「機能性」「信頼性」「利便性」「快適性」のすべてのユーザーニーズを満たしたときに起こります。
ユーザーがWebサイト上で素晴らしいユーザー体験を享受できなかったとしても、たまたま「Surface Delight」を感じることもあります。
ただし、「Deep Delight」はユーザーがプロダクトに没頭して
「フロー」(完全にのめり込んでいて没頭している精神体験)の状態に到達するとき、つまりメインタスク以外に一切気がそれることのない場合*にのみ起こります。

しなしながら、ここまでの状態になるのはなかなか難しいのが現状です。
プロダクトをSNSなどで友人に紹介したりレコメンドを書いたりするほどに深いエンゲージメントが築いていれば、ユーザーは「Deep Delight」を感じるでしょう。

User Delightを意識した例

「Deep Delight」をユーザーに感じてもらうのを、ゴールとして設定するのは大切ですが、実際問題として達成し続けるのは難しいでしょう。
しかし、ここにご紹介するいくつかの例を見てみれば、どのようにすれば「Deep Delight」を達成することができるのか、ヒントになるかもしれません。

1. Inbox by Google

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Googleが開発した新しいメールアプリ*「Inbox」は、UDを考える上で非常に参考になります。
本来なら便利であるはずの受信トレイは、メールが溜まっていくと整理するのが大変になります。
Inboxでは、フリックすることでメールをアーカイブ化し、受信トレイを整理して、必要な情報を後から簡単に見つけることができます。
フリックしてメールをアーカイブ化するときのジェスチャーやアニメーション、マテリアルデザインの便利なUIなど、「Surface Delight」にあたる機能的なUXはもちろん、「受信トレイを空にする」という最終ゴールに向けてのプロセスがまるで
「フロー体験」*のようです。

2. インスタグラム

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新しいインスタグラムアプリには、画像投稿とタイムライン閲覧に没頭できるシンプルさがあります。
タイムラインを閲覧する際には、ハートマークを押すだけでなく、画像をダブルタップしても「いいね」を付けられるので、流すようにタイムラインを閲覧することができます。
シンプルな*「機能性」、想定内の動きをすることで得られる「信頼性」、誰でも簡単に操作できる「利便性」が揃い、その結果として「快適性」*が生まれている分かりやすい例でしょう。

3. AWA

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音楽配信アプリAWAは、独特な世界観を持つUIを採用していますが、User Delightを与えるための工夫が施されています。
ジャンル別に音楽を聴くことができたり、3000万曲以上を登録なしで楽しむことができたり、オフラインで再生したり歌詞を見ることも簡単にできます。
画面が独特であるにもかかわらず操作しやすいUIを兼ねそろえているので、ユーザーがプロダクトに没頭しやすくなっています。