プロジェクト全体のディレクションを行うWebディレクターの仕事は、進捗管理、人選、スケジュール調整、品質管理と多岐に渡ります。また、それどころか場合によっては取材・撮影までかかわることも少なくありません。

そうなると必然的に求められるのがコミュニケーション能力です。Webディレクターはホームページ制作の依頼主である企業担当者やデザイナー、エンジニアをはじめ、様々な職種の人たちと円滑に仕事を進めるスキルも求められます。

仕事内容が幅広く、1人ひとり業務の管理・進行方法も異なるので、周囲の人たちと上手くいかない場面に遭遇することも珍しくありません。

そこで今回は、一緒に働くケースの多いデザイナー職の方に、ともに働くWebディレクターに持ち合わせていてほしい「10個」の知識とスキルをご紹介します。

頑張っているのに、なぜかデザイナーやエンジニアの方々と上手くいかない……という方は、これを機に日々の業務を見直してみてはいかがでしょうか。
  

Webディレクターが身につけておきたい10個の知識とスキル

1. マネジメントスキル

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限られたコスト・人員・時間の中で効率よく業務を遂行するためには、Webディレクターのマネジメントスキルが必要となります。実行可能なスケジュールを考えるだけではなく、的確なスタッフ選定も重要です。デザイナーはもちろん、Web ディレクター自身もいくつかの案件に携わっていることがありますので、それらを把握した上で的確に管理できる能力が必要となります。

また、途中でトラブルや遅延、修正が発生した時の処置についても事前に考えておく必要があります。Webディレクターはもちろん、デザイナーやほかの職種の方も日々スケジュールを考えて作業しています。

そんな中、あれこれ「今日中に対応してほしい」と作業を追加したり、あらかじめしっかりとスケジュールを考えず急に変更したり、思い付きで発言するとWebデザイナーや制作者は困惑してしまいますので注意が必要です。
  

2. ヒアリングスキル

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Web制作でよく問題になるのがヒアリング不足です。ヒアリングを行う際はクライアントの話をただ聞くのではなく、相手の話の本質を引き出すことが重要です。それがまさにヒアリングスキルになります。

依頼主によっては指示が曖昧だったり、課題を抱えていてもそれが抽象的で漠然としたものの場合が多々あります。そのため、具体的な形まで落とし込めていない場合はそれを引き出す、つまり深掘りするスキルも求められます。

しっかりヒアリングができていないと、クライアントから何度も戻りが発生して、同じような修正対応を繰り返す、ということになりかねません。Webディレクターはデザイナーやエンジニアに的確な指示を出せるようにしておきましょう。

「ヒアリング=本質的な課題を引き出すこと」と理解し、クライアントの考えを形にできるようにヒアリングを行いましょう。もちろん、曖昧な依頼をそのままデザイナーやエンジニアに丸投げするのはもってのほかです。スムーズにヒアリングを行う方法としては、オープンクエスチョン・クローズクエスチョンといった手法を使うほか、ヒアリングシートを使うという手もあります。
  

3. 提案スキル

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クライアントからの要望(理想)に応えるのは当然ですが、あくまでも依頼主はプロではないため、何でも言われたことを右から左に対応すると結果的に上手くいかない、ということも決して少なくありません。つまり、その状況に直面したということは、制作自体も見直す必要性が出てきたり、場合によっては振り出しに戻ることも起こりうることで、デザイナーやエンジニアにムダな工数を発生させたり、負担を与えることにつながりかねません。

そこで、受け身姿勢でただ相手の言うことを聞くのではなく、こちらから提案するスキルを身につけましょう。
当然ですが、WebのプロはクライアントではなくWebディレクター側です。要望を聞きながらもこちらから率先して提案をしていき、不可能なことはできないとはっきり伝えます。そして、解決策を模索していきましょう。
  

4. コミュニケーションスキル

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クライアントへのヒアリング、立案、企画、 デザイナーやプログラマーへの依頼……と Webディレクターの仕事の大部分はコミュニケーションが占めています。そのため、どんなに制作知識を持っていてもコミュニケーション力がなければ、Webディレクターとしてのスキルは不足していると言えるのではないでしょうか。

ただ単に、進捗管理する、指示を出す、ということではなく、チームとコミュニケーションをとりながらプロジェクトを進めていくという感覚が大事です。
  

5. 説明スキル

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デザイナーに要望を伝えた時、上手く伝わっていない、伝わり方がズレていると感じたことはないでしょうか。

しっかり伝わっていないと感じたり、相手から分かりづらいと言われるケースが多い方は説明スキルが不足している可能性があります。 説明を行う際は単に「伝える」のではなく、相手に確実に「伝わる」ようにしなければなりません。特に、プロジェクトを進行するWebディレクターが説明をしっかりと行えていなければ、後々作業の進行や完成品の仕上がりに問題が出てくるでしょう。

説明スキルは、伝えるための知識や語彙、話す内容の組み立て方……と様々な部分が改善することで向上できます。説明が苦手、という方は一度ご自身の説明スキルを見直してみてはいかがでしょうか。
  

6. デザインの知識

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Webデザイナーは、曖昧な発注を嫌います。
例えば「いい感じにオシャレに」「なんとなくカッコいい感じで」「最新のトレンドのデザインに」 といった指示では、お互いが持っているイメージに差が出てきます。そのため、直接デザイン作業を行わないWebディレクターも基本的なデザインの知識を持ち、デザイナーが意図を持って色やレイアウトを決めていることを理解する必要があります。

具体的には以下のような知識、スキルがあればいいでしょう。

Webディレクターが求められるデザインの知識・スキル

・ファイル特性に関する知識(JPEG、PNG、GIFなど)
・色彩をはじめとするデザインの基本的な知識
・修正、発注の内容を論理的に説明するスキル

デザインの基本的な知識・ スキルがあれば、クライアントやデザイナー、エンジニアとのやり取りがスムーズになります。
  

7. ソフトウェアの知識、操作スキル

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デザインの基本知識だけではなく、ソフトウェアの操作スキルがあれば、ちょっとした修正を自ら行うことで作業時間を削減したり、メンバーの負担を減らすことも可能です。

ソフトウェアの操作スキルは、ゼロから完璧に作れるレベルでなくても構いません。Illustrator、Photoshop、Dreamweaverといった主要ソフトウェアの操作方法が一通り分かる、デザインに関する話が分かるといったレベルでいいでしょう。
  

8. 最新技術、トレンドの知識

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デザイナーはもちろん、Webディレクターにとっても最新技術、トレンドやデバイスに関する知識は必要です。特にここ最近、スマートフォンなどの普及によりインターネットの使い方も大きく変わってきました。

従来のPCに加え、スマートフォン・タブレットが主流になっている今、最新の技術やデバイスへの関心は常に持っておくべきでしょう。使う場所、ユーザーの属性、画面サイズなどはデバイスごとに異なるため、こうした知識を知った上でUI/UXを考える必要があります。

具体的に必要な知識として以下のようなものが挙げられます。

押さえておきたい最新技術とデバイスに関する情報

・デバイスごとの特性を十分に理解している
・デバイスごとの通信速度、処理速度を知っている
・デバイスの画面サイズに合わせて発注、設計ができる

  

9. プログラミング言語の知識

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デザインの知識に加えてデザイナーが持っておきたいのが、言語に関する知識です。

フロントエンド言語
フロントエンド言語は、ざっくりいえば"デザインの見た目に関する言語"で、主要なものとしてHTMLCSS、JavaScriptがあります。当然コードが書けることに越したことはないのですが、必ず必要というわけではないので急いで身に付ける必要はありません。

しかし、コーディングができなくても各言語が「どのようなものなのか」「どの程度のことができるのか」については押さえておきたい情報です。この知識は実際に発注する際、役に立ちます。

まず初めに、HTMLの仕様を理解することから始め、その次にCSS、JavaScriptについて基本を知ることをオススメします。それ加えて、近年はWordPress、Movable TypeといったCMSを利用する企業も増えています。今後CMSに関しては、使用する機会が出てくるかもしれません。主要なCMSの仕組み、基本知識も知っておくと重宝するはずです。

バックエンド言語
Web ディレクターの場合、バックエンド言語を書くことはまずないとは思われますが、主な言語の名称・用途だけは知っておくべきでしょう。
  

10. 仕事を任せるスキル

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自分でデザインとコーディングができるようになると、他人に依頼するわずらわしさというのがないため、つい自分で全てを処理してしまいがちです。Webディレクターであっても、デザイン作業、コーディングができれば「いざ」という時に役立ちますが、任せるデザイナーがいるのに全てをディレクターが行うのは最適だとは言えません。

ディレクターが何でも器用に自分で作業してしまい、デザイナーやエンジニアというほかのメンバーがただのオペレーターのようになってしまうケースもあります。仮にそのような状況にデザイナーの方が出くわしたとすると仕事を任せてもらえなくなってしまいます。やはり、あくまでもWebデザイナーの仕事領域についてはデザイナーに任せ、デザイン作業ができる環境を整えることだけに力を注ぎましょう。