iPhoneやAndroidアプリ、ブラウザでのログインを通じて利用するようなWebサービスの場合は、一般的な有形の商品をホームページで販売するのとは違った切り口でメッセージを訴求していく必要があります。

とりわけ、アプリやWebサービスの多くは無料であることが多く、本来であれば*「使ってみる」ということに対しては商品を購入するときよりも敷居が低いはず*です。

もしスマートフォンアプリやWebサービスをホームページ上で宣伝しているにもかかわらず、離脱率が高かったりダウンロード率などのコンバージョンが低い場合は、何らかの手段を講じなければなりません。

今回は、シンプルなのに説得力のあるアプリ・Webサービスのプロダクトページをご紹介します。

アプリやWebサービスのプロダクトページは「エレベーター・ピッチ」と同じ

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これからご紹介する9つのプロダクトページには、*「エレベーター・ピッチ」*と呼ばれる手法が使われています。

「エレベーター・ピッチ」とは、20〜40秒程度で、相手に興味を持ってもらうよう、簡潔で覚えやすく、エレベーターに乗っている間に説明し切るくらいのボリュームに絞り込む説明手法のことを言います。

例えば、上司にある件を報告に言ったところ、上司は外出しなければならず、あなたが一緒にエレベーターに乗りあわせて、エレベーターの中で報告します。
ちょうどこの時間は30秒程度であり、その間に的確に上司に報告しなければなりません。

エレベーターの中でピッチ(説明や売り込み)を行うところから、これを「エレベーター・ピッチ」と呼ぶようになったようです。
20〜40秒程度のエレベーター・ピッチであれば、日本語の文字数に直すと200〜300文字程度になるでしょう。

従来型の商品LPとの違い

従来型のランディングページでは、いかに長いコピーを読ませて読み手を説得させるかという考え方をベースに作られているので、クロールを何度しても下までたどり着けないような冗長なホームページになりがちでした。

しかし、これからご紹介するプロダクトページは、「エレベーター・ピッチ」の考え方に基づいて作成されているため、コピーも非常に短くシンプルです。
というのも、無料のアプリやWebサービスに登録させるのに、非常に長い時間説得するのはかえって不自然であり、30秒もあれば使ってみたいか判断できるからです。

それでは、「シンプルなのに説得力のある」とはどのようなページなのか、ベストプラクティスを覗いてみることにしましょう。

シンプルなのに説得力のあるアプリ・Webサービスのプロダクトページ

1. Clips

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Clipsは、先日リリースされたAppleのショートクリップ作成・編集アプリです。
マイクロコピーと簡単な説明、そしてスマホ画面のスクリーンショットムービーの組み合わせが3段に連なっています。

重要なのは、「ビデオの楽しさを広めよう。」というトップのメッセージを筆頭に、3段のキャプチャーが情報的にヒエラルキー構造になっている点です。
大トピック→中トピック→詳細説明の順にポイントが箇条書きで書かれているので、短い時間でも的確にエレベーター・ピッチが実現しています。

最後に、あえて残念な点を一つだけ挙げるとすれば、それはダウンロードリンクがわかりにくいことです。
「Clipsを無料でダウンロード」というテキストリンクは、カーソルを合わせないとリンクを示すアンダーラインも見えないので、ユーザビリティ・アクセシビリティの低下に繋がります。

2. Prisma

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Prismaは、AIによって写真加工を行う大注目のアプリです。
ゴッホ風、ピカソ風、レヴィタン風、あるいは他の有名な画風パターンを読み込み、画像やビデオに反映することができます。

こちらのプロダクトページで注目したいのは、ほぼヘッドコピーとサブヘッダーのみで構成されており、余計な説明は大胆に省略しているというところです。

例えば、「AI Powered Art Styles ── For photo and video (AIの力で生み出す芸術スタイル ── 写真とビデオに)」や「Find Your Favorite Styles ── With continuously releasing styles on the Store (お気に入りのスタイルを見つけよう ── ストアで定期的に配信中)」といった、非常に短いマイクロコピーと、想像力をかき乱すスクリーンショットだけです。
クロールして眺めるのに、20秒もかからないかもしれません。

こちらも、改善点を挙げるとすれば、ダウンロードボタンがページ上部にだけ置かれていることです。
最初のコピーでダウンロードしなくても、下部にダウンロードボタンがもう一度置かれていれば、上にスクロールを戻さずにダウンロードを行うことができます。
ユーザーにスクロールバックさせてしまうという点は、惜しい部分かもしれません。

3. Plasso

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Plassoは、無料で簡単に決済システムを設置することができるペイメントプラットフォームです。
こちらも非常にシンプルな構成になっています。

まず、ヘッダー部分ですが、バックグラウンドも一切ない真っ白な背景に、コピーとボタンが並んでいます。
「Payments Made Simple (シンプルになった決済)」というヘッダーコピーと、「Sell and accept payments online. (モノを売ってオンラインで決済しよう)」「No coding or website building necessary. (コーディングもWebサイトの構築も一切不要)」というサブヘッダーでほとんどどんなサービスかが分かります。

また、「WATCH FILM (動画を見る)」「START MAKING MONEY (お金を稼ぎ始める)」という2つのボタンで、詳細を確認したり、コンバージョンにつなげる仕掛けになっています。

料金などのプランの詳細は、上部のメニューでも確認できますが、ヘッダーのすぐ下のカルーセルでも「LEARN MORE (もっと知る)」リンクで確認できます。

スクリーンショットを一切置いていないのに、クロージングまで行える大胆さも見習ってみたいですね。

4. linktree

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linktreeはInstagramのプロフィール欄に貼っておくだけで簡単に他のソーシャルアカウントへの誘導を行うことができるリンクを作成するWebサービスです。

Instagramではスパム投稿防止のため、投稿にURLを記載しても自動でリンクを貼らない仕組みになっており、唯一URLを貼ることができるのは、プロフィール欄のURLの部分だけです。

linktreeでは、そうした背景から、「You only get one chance to link in Instagram. Make it do more. (Instagramではたった1度しかリンクを貼れません。もっとすごいことをしましょう)」というキャッチコピーとCTAボタンをヘッダーに設置しています。

また、このページの優れているところは、CTAボタンが3箇所に設置されていますが、「SIGN UP WITH INSTAGRAM (Instagramでサインアップ)」「SIGN UP FREE (無料でサインアップ)」「IT’S EXACTLY WHAT I NEED! (これこそ私の欲しかったものです!)」とボタンのコピーも変えているところです。
各ピッチ部分に合ったコピーにすることで、全て同じコピーのときよりもコンバージョン率が上がることが予想されます。

5. STORES.jp

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STORES.jpは最短2分で驚くほど簡単にオンラインストアを作成できるWebサービスです。
日本では、この手のランディングページは冗長になりやすいのですが、「最短2分」というシンプルさはSTORES.jpのトップページにも活かされています。

サインアップを促進するボタンも至るところで登場し、ボタンの大きさやコピーも変えています。
コンバージョン率アップのための工夫がさまざまな場面で見られるホームページです。

6. Cactomain

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Cactomainは取得したドメインを別のドメインに転送することができるドメイントランスファーサービスです。

デザインでまず注目したいのは、ヘッダー部分です。
「Sign In」「Sign Up」はボタンの形状をしていますが、「Twitter」「Facebook」のソーシャルアカウントはボタンではなくリンクになっています。
ボタンの方が識別しやすいので、同じ位置にありながらもヒエラルキー上では「リンク<ボタン」という構造になっています。

ヘッダー部分には、プロダクトの写真はなく、ヘッダーとサブヘッダー、そしてビデオとサインアップボタンを表示しています。

そしてヘッダー下の4段の詳細説明部分も、「エレベーター・ピッチ」の考え方に基づいた、コンパクトな説明をしています。
タイトルコピーは5語以内、そして詳細説明も1文ないし2文で端的に表現されているので、どんなサービスなのかが30秒ほどで理解できます。

また、フッター部分にも「Twitter」「Facebook」のソーシャルアカウントへのリンク、「Sign In」「Sign Up」のリンクをしっかりと、そしてさりげなく示しているのも素晴らしい点です。
この場合、「Sign Up」がサービスの一番のコンバージョンになるので、「Sign Up」だけでも目立たせると、さらにコンバージョン率が高まる可能性はあります。

7. Wantedly People

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Wantedly Peopleは150万人が使うWantedlyがリリースした名刺管理アプリです。
AIが複数の名刺をリアルタイムで解析し、即時データ化できます。

日本語でコピーライティングを行うと、どうしても説明部分が冗長になってしまいますが、Wantedly Peopleのホームページでは、半角スペースや改行を常時に取り入れて、可読性を高めています。
動くスクリーンショット、人気の「Blurple」(ブルーとパープルのグラデーション)などを取り入れており、デザインもシンプルで秀逸なものに仕上がっています。