「コンテンツ」ではなく「広告枠」を売れ

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飯髙:
たしかに制作する価値と枠の価値を意識せずに販売しているケースがありますね。

高広 氏:
例えば、タイアップ記事を1本書くのに掛かる時間、それで貰えるお金があるわけじゃないですか。そのお金に対して、自分たちはどれくらい労力を売ってるのか。

同じ時間で通常の記事を書いたら、3本書けたとします。その3本でどれくらいの読者を集めたか、何インプレッション集めたかと考えた時、広告枠に換算するといくらになるのか。

簡単に言うと、タイアップ広告の制作にかける時間があれば、1本でも多く通常の記事を書いた方がいい。それで広告枠のインプレッションを創出できるので。

飯髙:
とはいえ、制作を行うことは、編集部としてお金を生みだしていると感じる指標にもなりますよね。

高広 氏:
そういう時は、編集側、セールス側が両者ともに確認できる共通指標として「RPM(Revenue Per Mille)」を持った方が良いと思います。

eCPMが広告枠単位の広告収益を表している指標だとすれば、RPMとは、ページ1,000回表示あたりの広告収益性です。ページ内の広告すべての売上を対象に、1000回表示でいくら稼げるか?という指標ですね。これが編集部が生み出しているコンテンツがどのくらいのお金になっているのかという指標にできます。

例えば、100,000PVコンテンツの価値を「広告収益に直すと平均してこれくらいです」と編集部が言えるようになる。単純にインプレッションの話ではありません。

広告枠として、100,000PVでCPM(Cost Per Mille)が800円の枠と200,000PVでCPMが400円の枠があった場合、売上としては一緒なんです。そういうことも含めて、自分たちのページの価値をどう換算するかを考えなければなりません。

同じようなことが、メディアの各コンテンツの中に起きていて、収益が発生させられるページとそうでないページが必ずあります。それを理解するためにRPMを指標にする。ページでなく、カテゴリで考えても良いでしょう。

メディアの価値は「コミュニティ形成力」

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飯髙:
コンテンツに対しての収益性を測ることができるんですね。

高広 氏:
だからビジネス的にちゃんとした価値の構造化をすることが大切です。実は、本質的なメディアの価値というのは、コンテンツ制作能力ではないと思っています。

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コンテンツを常に出し、それによって読者が集まってくる“コミュニティの形成力”というか、“読者とのつながり”こそがメディアの価値なので、その価値をどういう風に売るのかを考えなければいけません。

タイアップ広告や記事広告の場合、どうしても制作という価値も含めて販売することになってしまいます。

簡単に制作能力だけを切り出して考えると、外部のライターさんとか編集プロダクションに出してもコンテンツは出来上がるわけです。メディアには、そういったコンテンツを出すスペースがある。なので、制作は本質的な「メディアの価値」ではないのです。

それに、広告枠の在庫をすべてタイアップ広告への誘導だけで埋めることはできますか?

飯髙:
露出できる本数等を考えれば、余ってしまうことがほとんどですよね。

高広 氏:
だから、広告枠っていうのは色々なタイプの売り方をしなくちゃいけない。もともと広告枠って、「純広告の枠」「アドネットワークの枠」「◯◯社の買い切り広告枠」のように広告枠ごとに取引形態が決めてたケースを見てきましたが、それはもうナンセンスです。

現在では、1つの広告枠に対して、複数の取引形態を取り入れられるのが標準です。そのため、5万インプレッションまでは純広告で、10万インプレッションはプログラマティックに取引した広告、余った分はアドネットワークというように、1つの枠をいかに優良な広告で埋めるかというのがメディアのビジネス戦略上で重要です。