見逃すのはもったいないアナログの真価

本当にデジタルとアナログを組み合わせたほうがいいのか、という疑問に対する答えとして、調査結果をひとつご紹介しましょう。

market-4.jpg
資料:株式会社マルケト(スライドPage14 デジタルとアナログ 組み合わせが効くのはホントらしい)

この図の上段はデジタルとアナログを組み合わせている会社、下段がどちらか一方しかやっていない会社です。上下で比較すると、明らかに上段のほうが満足度が高い、つまり施策がうまくいっているということがわかります。

ただし、母数となる両方を組み合わせている会社は、全体の29.1%しかありません。この調査結果は2016年3月の調査結果であり、2018年2月時点では35.5%にまで増加していますので、両方を組み合わせる重要性に気付き始めたマーケターが、徐々に増えていることがわかります。

続けて、鈴木様が日本郵便に転職して驚かれたという、ダイレクトメール(以下、DM)にまつわる4つの数字が紹介されました。

market-5.jpg
資料:株式会社マルケト(スライドPage16 私も転職してはじめて知った驚異的な4つの数字)

「先ほどEメールの開封率は2割と言いましたが、DMはなんと8割。行動喚起率、つまりDMを受け取ってからSNSに投稿したり資料請求をしたりするなど何かしらの行動を起こした人が1/4もいるんですね。これは驚異的。

右下の保存率を見ると、半数以上の人がDMを保存していると言い、さらに一番驚いたのが右上の受取意向率です。自分が好きなブランドやサービスからのDMは積極的に欲しいという人が8割近くもいるんですよ。基本的に広告は邪魔者というのが常識の中で、これらの数字には本当にびっくりしました」(鈴木様)

これらの数字は全体の平均値なのですが、中でも突出して「開封率92%、行動喚起率52%、保存率52%、受取意向率77%」という高い数字を叩き出したのが、20代男性のクラスターなのだそうです。この原因について、「DMはメールに比べて母数が少ないことと、郵便にはお金がかかっているので丁寧さを感じます。デジタルティブで手紙の文化に慣れ親しんでいないからこそ、余計にその傾向が顕著に表れているのではないか」と鈴木様は分析されていました。

課題解決の実証実験

デジタルとアナログの最適解を探るべく、日本郵便様は博報堂プロダクツ様とMAベンダー各社と共同で「フルチャネルコミュニケーションプロジェクト」を立ち上げました。博報堂プロダクツ様が事務局となり、MAベンダー各社が実験に参加する導入企業を募り、日本郵便様は事例をPRしていきます。

market-6.jpg
資料:株式会社マルケト(スライドPage20 座組)

2年前からスタートしたこのプロジェクトには多くの広告主企業様が参加され、数々の事例が出てきた中から、鈴木様より3つの事例が紹介されました。

・富士フイルム株式会社様(BtoC)

はじめにDMの効果を知るために、「Eメールだけを送る層」「DMだけを送る層」「EメールとDMを組み合わせて送る層」の3つに分けて検証した結果、EメールだけよりもEメールとDMを組み合わせたほうがCTRが60倍になることが判明。次に組み合わせの順番はどちらが先にいいのか調べたところ、DMを先に送ってからEメールを送ったほうが注文率が5倍になるという結果が得られた。DMはEメールよりも先に送ることが鉄則。

・株式会社リクルートジョブズ様(BtoB)

全3回の実験を行った。第1弾では「Eメールだけを送る層」「EメールとDMを組み合わせて送る層」に分けて比較したところ、組み合わせたほうのサイト訪問が3.6倍になった。第2弾では「Eメールに反応している層」「Eメールには反応しない層」の2つに対しDMを送ったところ、「Eメールには反応しない層」の商談案件化が1.3倍になった。第3弾ではDMの紙を「上質紙」と「普通紙」で出し分けたところ、普通紙の商談案件化率が1.2倍となった。クリエイティブよりもタイミングが大事。

・オイシックスドット大地株式会社様(BtoC)

LINE・Eメール・DMの組み合わせ効果を検証すべく、8つのクラスターに分けて出し分けたところ、DMを組み合わせたほうが、LINEもしくはEメール単体よりも、購買率が2倍高くなることが判明。ただしLINEとEメールを組み合わせても、まったく意味がないことがわかった。

これら以外の実証実験を含めて得られた知見として、鈴木様は以下の5つのポイントをまとめておられました。

market-7.jpg
資料:株式会社マルケト(スライドPage22 5つの気づき)