「カスタマーサクセス」という言葉をご存知でしょうか。似た言葉である「カスタマーサポート」の方が馴染み深いかもしれません。

しかし、サブスクリプション型のサービスの増加などにより、顧客との継続的な関係が必要となってきたため、顧客の成果に積極的に携わる「カスタマーサクセス」が注目を集めています。

今回は、顧客の成功を支援し、LTVの向上を実現するカスタマーサクセスについて紹介します。

目次

  1. カスタマーサクセスとは
  2. カスタマーサポートとの違いとは
  3. カスタマーサクセスが注目される理由
  4. カスタマーサクセスを実践するための取り組み
  5. カスタマーサクセスで重要なKPI
  6. カスタマーサクセスに役立つツール
  7. BtoCのカスタマーサクセス事例
  8. BtoBのカスタマーサクセス事例
  9. カスタマーサクセスで顧客の成功を実現させよう!

カスタマーサクセスとは

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カスタマーサクセスとは、自社の商品やサービスを活用して顧客を成功に導く取り組みのことです。顧客が商品やサービスを利用する際に生じる疑問点や課題などを先回りして解決することが求められます。

カスタマーサクセスに取り組むことで、得られるメリットは以下の2つです。

商品・サービスの継続的な利用

能動的に顧客に関わるカスタマーサクセスは、顧客との関係構築に良い影響を与えます。顧客の成功を支援することを目的としたコミュニケーションにより、その動きに対応する顧客は商品やサービスを継続的に利用してくれる可能性が高まります。

アップセルが期待できる

カスタマーサクセスにより顧客の成功を支援することで勝ち取る信頼は大きいものです。自社に価値を感じてもらうことで、その顧客からさらなる収益の発生が期待できます。

いわゆるアップセルと言われるものであり、満足度の高い継続的な顧客関係の先についてくるものと言えるでしょう。

カスタマーサポートとの違いとは

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カスタマーサポートは、顧客からの問い合わせへの対応であるのに対して、カスタマーサクセスは、顧客の困り事に対し先回りのフォローを行うことで成功を支援します。

カスタマーサポートでは、顧客をサポートすることで顧客満足度向上による顧客との関係の継続を目指しますが、カスタマーサクセスでは、顧客と課題を共有し支援することで、ともに成長することを目指します。

そのため、カスタマーサクセスでは顧客の成功に寄り添い続けることが重要です。

カスタマーサクセスが注目される理由

カスタマーサクセスが注目される理由は、以下の4つです。

  • SaaSの発展
  • 商品・サービスの差別化困難
  • サブスクリプション型ビジネスの浸透
  • BtoBだけではなくBtoCにも求められている

ぞれぞれ詳しく見ていきましょう。

SaaSの発展

SaaSとは、ソフトウェアの提供形態の1つで、インターネット経由で利用できるソフトウェアのことです。顧客自身が必要とする機能やサービスを選択、抜粋して契約でき、顧客のタイミングで解約したりサービスを乗り換えたりすることが可能です。

このようにSaaSは顧客にとって契約や解約の自由度が高いため、顧客との長期的な関係性の構築がポイントになります。そこで、カスタマーサクセスによって継続を促すサービスの提供を行うのです。

商品・サービスの差別化困難

近年、市場がグローバル化したことによって、顧客は自社の商品やサービスとよく似たものを見つけやすくなり、競合他社との差別化が難しくなっています。

そのため、商品やサービスの良さだけを追求するのではなく、カスタマーサクセスによって安心と信頼を顧客に提供し、関係性を深めることが大切です。

サブスクリプション型ビジネスの浸透

これまでは売り切り型のビジネスが主流でした。しかし近年は、商品やサービス購入後の継続した顧客対応が必要なサブスクリプション型ビジネスが浸透しています。

そのため、契約前だけでなく契約後も長期にわたって顧客アプローチを行うカスタマーサクセスの重要度が高まっています。

BtoBだけではなくBtoC領域にも求められている

カスタマーサクセスは、顧客の成功を支援するという目的から、主にBtoB(企業向け)において語られていましたが、お客様の成功と置き換えることでBtoCについても必要不可欠な考え方となりました。

例えば、個人間取引のプラットフォーム「メルカリ」では、メルカリを使用するユーザーが集まり、意見を直接聞く座談会「メルカリサロン」やユーザーの声を様々な角度から見る合宿「VoC読み込み合宿」などの取り組みを行い、プロダクト改善のヒントに繋げています。

このようにBtoBBtoCの垣根を超えて、サービスを提供する事業会社にはカスタマーサクセスが求められます。

カスタマーサクセスを実践するための取り組み

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カスタマーサクセスを実践するにあたり、具体的な取り組みを紹介します。主な取り組みは各フェーズごとに「サービスの導入支援」「サービスの活用支援」「コミュニティの運営」「モニタリング」と大きく4つに分けられます。

【導入フェーズ】サービスの導入支援

契約前後では、顧客がスムーズにサービスを扱えるように導入支援を行います。契約後、すぐにサービスの価値を実感してもらうために、顧客のニーズに応じた適切なフォローを行いましょう。

例えば、メールやチャットで疑問に応えることはもちろん、サービスの使い方マニュアルチュートリアルの準備、必要に応じてミーティングをセッティングするのも効果的です。

より満足いただくためには、顧客ごとの目的や目標を明確にし、導入前後でフォロー体制を構築しておくことが重要です。

【活用フェーズ】サービスの活用支援

活用フェーズでは、顧客が商品やサービスを自力で活用できるようになり、効果を最大化してもらうことを目指します。

サービス導入後、上手く活用できないため解約に至るケースは少なくありません。それを回避するには、導入してから一定期間経過したら進捗を伺い、困っていることがあれば積極的にサポートしましょう。基本的な機能の使い方はもちろん、応用としての活用方法や担当顧客と同業種の事例の案内、個別ミーティングなど、成果最大化に向けて取り組むことが求められます。

【定着フェーズ】コミュニティの運営

導入・活用支援を行うことで顧客はよりサービスに魅力を感じ、継続して活用いただけるようになります。さらに満足度を高めるためには、より高度な機能の提案(アップセル・クロスセル)を行い、顧客のロイヤリティ向上を目指しましょう。

また、帰属意識を醸成する場として、顧客同士がコミュニケーションできるコミュニティの運営も効果的です。コミュニティは、様々な課題に応じた解決策の共有や疑問点を議論できる場に留まらず、顧客の思わぬ観点に気づかされることもあります。

自社にとってもコミュニティを運営をすることは、顧客サポートだけではなくマーケティング施策にも活かすことも可能です。

定期的な顧客モニタリングでデータ活用

定期的に顧客モニタリングを行いましょう。顧客の状況を可視化することで、次のアクションの課題発見に繋がります。

例えば、契約や活用状況、どの機能が一番よく使われるか、逆に使われない機能は何か、どこで一番つまずくか、その共通点は何かなど、データを元に顧客の状況を把握します。

顧客の不安や不満を洗い出し、その課題を解決することでプロダクトをアップデートしていくことが大切です。

カスタマーサクセスの取り組みを成功させるポイント

カスタマーサクセスを実現させるために、様々な取り組みを行いますが、どのような観点で実施すればよいのでしょうか。ここでは、カスタマーサクセスの取り組みを成功させるポイントを解説します。

自社(商品・サービス)が対象とする顧客を定義する

自社が提供する商品・サービスはどのような顧客に活用してもらいたいかをセールスやマーケティングなど各部門の共通認識として定義しましょう。

初期段階では「マーケティングの予算が30万円以上」「社員数が20名以上」と絞り込む対象が大きくなりがちですが、顧客データを蓄積し継続率満足度など活用状況を見ながら定義をアップデートしていきましょう。

逆に自社が対象としない企業がサービスを導入したとしても、すぐに解約に繋がったり、要望ばかりが増えてしまったりなど、カスタマーサクセスの取り組みが無駄に終わってしまう可能性があります。

顧客層に合わせて最適な対応をする

複数の顧客を担当するカスタマーサクセスのリソースは限られています。効率的に取り組むために顧客層を分けるタッチモデルの考え方を取り入れましょう。LTVの最大化を目指すためには、取引額やサービス単価が高い顧客を上位として以下3つに分けられます。

顧客層 特徴
ハイタッチ 取引の規模が大きく、単価も高い顧客。個別にカスタマイズして手厚いサポートを実施する。
ロータッチ 収益が見込める影響が大きい顧客。顧客との直接的な接点を持ちつつも、個別のカスタマイズ対応までは行わない。
テックタッチ 単価が低く、規模も小さい顧客。メールマガジンや顧客自身で課題解決を促すサポートをするなど自動的な対応を行う

上記のように、顧客層に応じた取り組みを行うことで、効率的リソース配分が可能になります。

顧客の声を聞き、常にアップデートする

顧客のニーズ時代に合わせて変化します。そのため、顧客の要望や課題などの声を集め、それに応じた
商品・サービスをアップデートし続けることが重要です。

顧客の要望全てに応えることは理想でもありますが、現実的には困難です。要望の多いものから順に対応していくことで、「期待に応えてくれた」「使いやすくなった」など信頼度も高まり、顧客ロイヤリティ向上に繋がります。

顧客の声を聞く手法としては、座談会やアンケート、個別ミーティングでのヒアリングなどがあります。

カスタマーサクセス=ブランディングと捉える

顧客と直接的な接点が多いカスタマーサクセスは、会社のイメージを作り上げるブランディングの一環として考えましょう。顧客への対応を疎かにして約束事を破ってしまうと、商品・サービスだけではなく、会社自体の印象も悪くなりネガティブな口コミが広がってしまう可能性もあります。

逆に、顧客の成功に真摯に取り組むことで、より長く継続してもらったり、新しい顧客を紹介してもらえるなどポジティブに働くケースもあります。

カスタマーサクセスの担当者は一人一人が会社の代表として意識することが大切です。

カスタマーサクセスで重要なKPI

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カスタマーサクセスで重要なKPIは、以下の3つです。

  • LTV(顧客生涯価値)
  • 解約率・継続率・離脱率
  • NPS(顧客推奨度)

1つずつ、見ていきましょう。

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LTV(顧客生涯価値)

LTVとは、取引期間中に顧客から得られる収益の総額を言います。カスタマーサクセスを行うことで、顧客が「成功」と言える状態になった場合に、自社の商品やサービスの契約が継続します。

長く契約が続くことでLTV(顧客生涯価値)の増加が見込めるため、解約率・継続率・離脱率を含むLTVKPI設定が重要な指標になると言えます。

解約率・継続率・離脱率

カスタマーサクセスの大きな目的は、顧客に自社の商品やサービスを長く愛用してもらうことです。そのため、解約率・継続率・離脱率などのデータを分析し、数値から考えられる潜在ニーズや課題などを把握する必要があります。

自社でまとめた顧客情報や、他社が取得した自社に関する顧客データを合わせて、より明確なペルソナを意識したカスタマーサクセスを目指すと良いでしょう。

NPS(顧客推奨度)

NPSは、顧客ロイヤルティを測る指標の1つです。顧客が自社のサービスに対して愛着を感じているかを測るためKPIに設定します。

顧客が自社の商品やサービスに対して信頼を持っていれば利用を継続してもらいやすくなるため、信頼を可視化して、NPSが低い場合は原因を追求し、さらに伸ばしていくための企業努力が重要と言えます。

さらに詳しくKPIの設定方法を知りたい方は、下記の記事を参考ください。

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顧客の満足度をあげるためには、数値で客観的に分析できるKPIを設定しカスタマーサクセスを達成することが必要です。ここでは、カスタマーサクセスの重要性とKPIの設定について解説します。

カスタマーサクセスに役立つツール

カスタマーサクセスにおいて顧客の管理や分析などを行うのに便利なツールはいくつかあります。主なツールの種別と特徴は以下のとおりです。

ツール種別 特徴
顧客管理 カスタマーサクセスのための顧客管理システム。顧客の契約や活用状況を分析することで、課題解決の提案を素早く行うことが可能。
活用支援 サービスの使い方を案内する際の便利ツール。ノーコードでチュートリアルやポップアップなどのユーザーガイドを作成でき、導入初期の使い方や活用支援に役立つ。
問い合わせ管理 顧客からの問い合わせ管理ツール。問い合わせの一元管理やAIロボットによる自動対応、問い合わせまでに至った経路の分析などが可能。
コミュニティ運営 コミュニティ構築ができるツール。コミュニティ機能を一から作り上げる必要がなく、自社と顧客、顧客同士を繋げるための場を素早く構築できる。

上記のように、目的に合わせて種類も変わるため自社にとって必要なツールを導入して成果の最大化、業務効率改善に役立てましょう。具体的なツールは下記の記事を参考ください。

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BtoCのカスタマーサクセス事例

ここではカスタマーサクセスのBtoCにおいての事例を紹介します。

Apple Music

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画像引用:Apple Music オフィシャルホームページ

音楽配信サービスの1つとして有名な「Apple Music」は、カスタマーサクセスと親和性の高いサブスクリプションモデルのサービスです。

好きな音楽のデータを購入するのではなく、一定の曲数を聴き放題にする権利を期間契約するため、ユーザーに利用を継続してもらうことが収益維持において重要です。

ユーザーが好きな曲を見つけるのを待つのではなく、「For You」といったリコメンド機能をつけるなど、継続的な利用を促す工夫をしているカスタマーサクセスを実践しています。

Amazon プライム

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画像引用:Amazonプライム オフィシャルホームページ

Amazonプライムは、ネット通販の大手アマゾンが提供するライフシーンに役立つサービスです。ネット通販のお急ぎ便が無料になるといったメリットに加え、ラインナップにある映画や音楽、書籍をいくらでも楽しめます。

リコメンド機能はもちろん、プライム会員限定のセールやポイント特典などアップセルに有利な要素をたくさん含んでいます。

BtoBのカスタマーサクセス事例

次にBtoBにおいての事例をご紹介します。

SmartHR

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画像引用:SmartHR オフィシャルホームページ

クラウド型の労務管理サービスであるSmartHRは、登録した従業員の人数分の費用を支払うサブスクリプションモデルです。

SmartHRはカスタマーサクセスに力を入れており、導入早期から企業を支える体制を持っています。導入時期に必要な利用環境の構築や、ユーザーのニーズにマッチした使い方の提供や困りごとを解決し、ユーザーの計画に対し、SmartHRをどのように活用できるのかをユーザーとともに検討します。

Sansan

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画像引用:Sansan オフィシャルホームページ

法人向けクラウド名刺管理サービスであるSansanは、サービス導入後に手元にある名刺を登録しなければいけないため、ユーザーによっては速やかに利用を開始できないことがありました。

しかし、顧客がサービスをきちんと利用できるまでをサポートする「オンボーディング」をスムーズに行うことがカスタマーサクセスにおいて重要なことであるため、SanSanでは導入後のオンボーディング支援を強化しています。

また、利用状況の資料化など、ユーザーとの共通認識を作り上げることで、ユーザーとの結びつきを強めているようです。

Slack

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画像引用:Slack

1日のアクティブユーザー数1200万人以上、世界150カ国以上で利用されているコミュニケーションツールSlackもカスタマーサクセスを重要視しています。

顧客の成功事例を集めるために、イベントを開催し顧客同士で事例を共有できる機会を作ったり、技術的なトレーニングを実施する環境を提供したりなど、顧客ロイヤリティーを高める取り組みを行っています。顧客満足度が高まることで機能の追加や契約更新に繋げています。

また、どのくらいSlackを活用しているのかを測るマチュリティスコア(成熟度)を導入しており、その結果をカスタマーサクセスの戦略に役立てていることも特徴的です。

カスタマーサクセスで顧客の成功を実現させよう!

カスタマーサクセスは、カスタマーサポートとは大きく異なる概念を持っています。顧客の成功を支援するという概念によって顧客からの信頼を得られるほか、アップセルやクロセスセルといった収益まで期待できます。

近年、サブスクリプションモデルによるビジネスが一般的になっており、カスタマーサクセスを導入する企業も増加傾向です。

カスタマーサクセスの導入は、従来のカスタマーサポート体制を構築している企業にとっても、営業部門以外の収益体制について検討している企業にとっても、刺激的なものになることでしょう。

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