デジタルシフトに伴い、世の中は飛躍的に便利になりました。しかし、一方的に発信される広告によって消費者は情報の信頼性を疑い、「広告はウザい」という印象を持っています。この現状に一石を投ずる手段の一つとして、私は株式会社Macbee Planet代表という立場の下、データとテクノロジーを活用したWeb接客という概念に注目しています。この記事では、Web広告の実態とともにWeb接客ツールの活用事例を紹介し、今後のWebマーケティングのあり方についての見解を述べます。

今リアルに感じるマーケティング業界の課題

私は大学生の頃からマーケティング業界に関わらせていただき15年が経ちました。この15年間で、業界は様々な変遷を遂げましたが、その中でも私にとって最も大きなパラダイム・シフトは、デジタル市場の台頭と拡大です。

人々が毎日スマートフォンを持ち歩き、SNSで情報発信をする便利な世の中になった一方で、私は現在のWebマーケティング業界に大きな課題があると認識しています。

以前は、マーケティングにおけるプロモーションといえば、タレントを起用しマス広告(テレビ・ラジオ・新聞・雑誌)に費用を投下することが一般的でした。連動した販促物を店頭におき、補完的にWeb広告に出稿しておけば、モノは売れました。当時は情報で消費者の心は確実に動いていたのです。それほど人にとって情報の価値は高かったといえます。

しかしデジタルシフトに伴い、消費者は検索プラットフォームやSNSを通じて自らほしい情報を簡単に収集できるようになりました。

一説によると人は一日に5,000以上の広告を目にすると言われていますが、その95%以上は記憶に残らず忘れ去られていくそうです。昨日見た広告を一つ思い出すのも一苦労という人は多いのではないでしょうか。

さらに、デジタルシフトは情報収集だけでなく、個人で簡単にお店を開くことも可能にしました。2019年現在、国内のECサイト・ネットショップ店舗の総稼動店舗数は約270万店舗とも言われています。

参考:【2019年最新版】国内のECサイト・ネットショップの総稼働店舗数

店舗側は、商品を販売すべく積極的にWeb広告を活用し情報を発信します。消費者の興味関心の有無に関わらず、一方的に商品の利点を押し付けるケースも見受けられます。
結果として、消費者は情報の信頼性を疑い、そして疲弊し*“広告はウザいものである”*という印象を持ちました。

『本来、消費者に喜ばれるはずの広告(情報)が、ネガティブに捉えられている。』
これは、現在のマーケティング業界が直面している課題であり、サステナビリティにも関係する深刻な問題と言えます。
広告は、セレンディピティ(素敵な偶然)を起こし世の中に驚きと幸せを届けるものでなければならないと考えています。

重要なことは、ユーザーが知りたい情報を提供すること

私が代表を務める株式会社Macbee Planetが独自に行った市場調査では、Web広告を嫌だと感じている人は全体の9割。しかしその内4割の人は、自分が求めている情報であればその広告をクリックし、購入や申込みを検討する場合があるという結果が得られています。

参考:CVRの向上を図るデジタルマーケティングツール「Robee(ロビー)」、ヒートマップ機能搭載で多角的な顧客分析を開始|株式会社Macbee Planet(マクビープラネット)

つまり、提供する情報の内容によって4割の消費者の概念は覆すことができるということが証明されています。

これは、Web接客でも同様のことが言えます。「データとテクノロジーを活用し、実店舗同様にWeb上でも最高の体験を提供すること」がWeb接客の本質ですが、正確にいえば、実店舗に負けないくらいではなく、*データとテクノロジーを活用すれば、実店舗以上に精度の高い最高の体験(消費者一人ひとりに則した情報)を提供できるということに他なりません。*もっと言えば、リアルもデジタルもシームレスに考え「消費者に最適な体験を提供する」ことが、現在のマーケティングにおける接客の在り方であり、すでにグローバルではOMO(Online Merges with Offline:オンラインとオフラインの融合)やニューリテールといった言葉がスタンダードになりつつあります。

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これまで、多くのWeb接客は、「1:n (1対多)」の最適化が中心で、Web上のお店である一つのLPに対し、多数の訪問者がいるという考え方でした。
訪問者をひとくくりで捉えてイシューを定義するため、LPのコンテンツA/Bテストしてみようとか、離脱しようとしたユーザーにクーポンを出すなど、あくまで表層的な手段に偏った施策実施が中心となっていました。

一方、*本質的なWeb接客は、1:1の最適化やモーメント単位での最適化に基づく必要があります。*訪問者のインサイトは一人ひとり異なるためです。例えば、双方的なコミュニケーションで納得感を得たい消費者もいれば、端的な説明を求める消費者もいます。大きな悩みを抱え、あらゆる製品を試した先にLPに辿り着いた方も居れば、衝動的にLPに訪問した方もいるでしょう。さらに、年齢・性別・地域などによっても求める情報は異なります。

デジタル上で得られるオーディエンスデータ・デモグラフィックデータ・購買データなどの連携は各企業取り組みはじめていますが、本当に消費者が知りたい情報を正確に届けられているでしょうか。デジタル上で消費者の本音をいかに吸い上げられるかがセレンディピティ(素敵な偶然)を実現するポイントです。