10月28~30日、幕張メッセにて、コンテンツマーケティングをテーマにしたイベント「コンテンツマーケティングEXPO」が開催されました。
本イベントではコンテンツマーケティングに関するサービスを提供されている企業のブースが多数出展された他、豪華講師陣による特別セミナーが行われました。

今回は、その一環で行われた「アクセス解析をビジネスにつなげるための手法」をテーマに、これまでサイバーエージェントやAmazon等で解析を歴任されてきた小川卓氏の講演の様子をお届けします。

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登壇者紹介

小川卓氏
ウェブアナリストとしてマイクロソフト・ウェブマネー・リクルート・サイバーエージェント・アマゾンジャパンで勤務。現在はフリー。解析ツールの導入・運用・教育、ゴールとKPI設計、施策の実施と評価、継続的なPDCA活動に従事。

個人として、ブログ「Real Analytics」を2008年より運営。全国各地で講演を年間40回以上実施。主な著書に「ウェブ分析論:増補改訂版」「ウェブ分析レポーティング講座」「漫画でわかるウェブ分析」「Webサイト分析・改善の教科書」など。アクセス解析イニシアチブ プログラム委員・Adobe Analyticsユーザー会「eVar7」代表・デジタルハリウッド大学大学院准教授・株式会社UNCOVER TRUTH CAO・Faber Company CAO・サイコス株式会社 エグゼクティブディレクター。
※CAO = Chief Analytics Officer

なぜ解析がビジネスに生かせないのか?

今は多くの企業がアクセス解析ツールを取り入れ、Webのデータを取れるようになりました。
ただ、そこを活かしてサイトを改善するところまでいけている企業はまだ少ないと感じています。

今回は、解析をビジネスに活かすための方法をお話しさせていただきます。

解析が活かされない理由は大きく5つにわけられます。

1.適切なKPI設計がされていない
2.分析手法を理解していない
3.分析を改善に繋げられない
4.改善を継続させられていない
5.アクションにつながらないレポートを作成

この5つについてお話しさせていただきます。

適切なKPI設計がされていない

KPIというのは重要業績評価指標のことですが、何のために設定するのでしょうか。
特にWebサイトの分析におけるKPIは、ゴールと改善活動を繋げるために設定するものです。

Webサイトのゴールは、問い合わせいただくとか、資料請求とか様々あります。
そこにいくための日々のアクションがあります。
コンテンツを作成するとか、ソーシャルメディアを運営するとか。
そこで難しいのが、例えばソーシャルメディアをやったところでそれが本当に売上につながるのかはわかりません。
それって意味あるの?となってしまいます。
そうならないためにKPIをしっかり設定する必要があります。

KPIはアクションをした結果、KPIに設定した数字が改善し、結果にポジティブな影響を与える指標です。

例えば、ソーシャルメディアページからどれくらいの流入があったかとか、そこからどれだけお問い合わせが増えたのかとか。
そこが増えれば最終的な売上につながる可能性が高まります。
KPIを設定して、日々の改善活動を評価することが重要です。
では、実際にどのようにKPIを設定すればいいのでしょう。

KPIの設定方法

KPIの設定方法はすごくシンプルです。
しかし多くの企業でできていません。

売上は、「訪問数×購入率×平均単価」の掛け算でできています。
簡単に言うと、

・より多くの方を集めるか
・訪問していいただいた方をより高い確率で購入させられるか
・購入時の平均単価

この3つのうちのいずれかを上げれば、売上はあがります。

例えば、100件お問い合わせがあり、1件購入につながり、100万円の売上になりました。
1件のお問い合わせの価値は1万円ですよね。
なので、5万円かけて10件のお問い合わせが来れば、10万円の価値を生み出せるので赤字にはならないよね、と判断できます。

それらはどういうものに影響されるかを見ていきたいと思います。
例えば、訪問であればPCかスマホかという分け方もできますし、新規かリピーターかでも分けられます。
購入率であれば、例えば商品がある場合は、商品の詳細ページに入り、カートに入り、購入するというようにいろんなチェックポイントがあります。
平均単価も同時購入点数が上がったり、1万円以上購入するユーザーを増やすとか、いろんな要素があります。

これらの要素全部に対して、できるなら全てKPIに設定してもいいんですが、KPIには選び方があります。
その選ぶ基準は5つあり、それを総称して「SMART」と呼んでいます。これに当てはめながら考えてみてください。

KPIの選定基準SMART

・Specific・・・表現は具体的か?
・Measurable・・・計測可能か?
・Actionable・・・実効性はあるか?
・Realistic・・・現実的な数値設定か?
・Time-bound・・・期限は決まっているか?

もう少しわかりやすく言うと、いろんな要素が売上に影響を与えるなかで、会社としては、半年とか1年はここを重視しようという箇所をを決めた方がいいということです。
今期は、スマホの流入を増やすとか、商品詳細ページヘの遷移率を高めようとか。
それを決めるために参考になるのが「SMART」です。

まず、施策の候補を会社の中で洗い出してみてください。
それを1つ1つSMARTに当てはめてみてください。

SMARTで一番重要なのは「実効性」です。
そもそも打ち手が考えられるかどうかをまず考えていただきたいです。
そのうえで、どれが実現できるかを基準に選んでください。

目標数値は高めに設定しておく

そこまでくると、今度は値の話になりますよね。
1,000万の売上を1,500万に挙げるとなった時、どの項目(訪問数・購入率・平均単価)をアップさせるか。
1,500万を達成させるためには様々なルートがあります。

例えば、

・スマホの流入を4万から6万流入に増やす
・詳細への遷移率を5%から28%に上げる
・同時購入点数を1.5点から1.7点に上げる

このような数値を設定する際、先ほどのSMARTでも出てきた「実現可能か」というところに当たるわけです。

一旦数字を入れると「これって本当に可能なのか?今からスマホ流入1.5倍っていけるのか?」と考えると、現実が見えてくるわけです。
過去に何をやってきたか、どのような実績があるのかも参考にして、現実的な数値を設定しましょう。

KPIの数値はできれば少し高めに設定しておくのが大事です。
例えば、計算上はスマホ流入6万でも、目標は7万に設定しておくということです。
こっちの数値が未達成でも他で頑張れるとか、いろんなリスクを考えて余裕を持たせておくことが重要です。

このようなKPIが設定できて初めてどこを分析すればいいかが見えてくるんです。

2.分析手法を理解していない

Googleアナリティクスなどのデータを見て、増えてる、減ってると感じるだけではダメです。
分析では、気付きを発見することが重要です。
気づきを発見する方法を、トレンドとセグメントの2つの軸で説明します。

トレンドを活用する

トレンドというのは、時系列でデータを見るということです。
時系列でデータを見て、規則性と特異点を発見することで改善のヒントがあります。

例えば、今月のデータだけを見ていても気づきはないです。
それを先月と比べてみると、改善したか下がったかという事実に気付くことができます。
また、前年同月とくらべてどうか、下がっているのか上がっているのか、変化があった場合は何が原因なのか。
このように時系列で見ると分析の取っ掛かりを見つけることができます。

セグメントを活用する

セグメントもトレンドと同様、データを分割して規則性と特異点をみつけることが重要です。
今度は、何かしらの軸で分けてみましょう。
例えば、PCとスマホで分けてみて、スマホの方が訪問数が多いのに売上が少ないので、まずはスマホから対策しましょう、ということが発見できます。

ちなみに、成果がそこそこ良いものと悪いものがあって、どちらを改善しようか迷った時は悪い方を選択すると良いでしょう。
悪いものを普通に治すのと、普通のものを良い物にするのだと前者のほうが圧倒的に簡単です。

ではどうやって直せばいいのでしょうか。
そこでまたセグメントします。

例えば、同じページに入ってきてるのに、流入元によって直帰率が大きく違っているとします。
なぜ違うのか。原因として考えられるのは、流入元に記載している内容とランディングページの内容が大きく違うということです。

例えば、どこかのメディアで自社サービスが紹介されました。
そのメディアでみかんが紹介されていたのに、リンクを踏んだらりんごが紹介されていた、それではほとんどのユーザーは直帰してしまいますよね。
そのようなことが起こっている場合は、流入元のメディアに記載を修正するよう掛け合うのも1つの手です。

3.分析を改善に繋げられていない

分析から得られる気づきは大きく3つに分けられます。

・1.サイトの悪いところを発見する どう減らすか
・2.サイトの良いところを発見する どう増やすか
・3.サイトの傾向やトレンドを発見する どう活かすか

分析を難しく考える必要はなくて、基本的にはこの3つです。
では気付きがあったとして、そこからの改善策はどう考えればいいのでしょうか。

考え方としては大きく3つです。

・1.施策のアイデアは自社・同業他社を参考にする
・2.データをとにかくよく「見る」(効果の良いものと悪いものは何が違うのかを見る)
・3.普段からスクリーンショットを撮る(自社、他社関わらず気付きがあった事例をストックしておく)

4.改善を継続させられない

Webサイトの改善プロセスはPDCAが基本です。
なぜPDCAが大事なのかというと、打率を上げ、打席に多く立てるようにできるからです。
PDCAを多く回せば成功確率が上がるし、施策の数も増えていきます。

だけど、回らないことが多いんですよね。

Plan→Do

施策を検討するが実施できないないケースです。
まずはできる対策から始めてみて、わからない場合は10%を目標にしてみましょう。
施策による改善予測は経験を積んでくるまでは難しいため、まずは目標を仮でも良いので設定することを意識しましょう。

Do→Check

施策を行うが評価が出来ていないケースです。
施策のゴール設定を事前に行っておけば、その目標に対して結果がどうなったか気になると思うので、Checkをする習慣が身につきます。

Check→Action

結果は見ているが、結果を原因特定出来ず評価をしていないケースです。
数値に変化が出ていない場合はセグメントしてみてそれでも違いが出ないかを確認してみましょう。
また近くの人にヒアリングをしてみるのもよいでしょう。
見落としていた気付きがあるかもしれません。

Action→Plan

原因特定などまで行っているのですが、次の施策に活かせていない場合です。
ここで大切なのは、取組や結果の報告会を行なうことです。
他の人に共有することで新しい施策のヒントが見つかるかもしれませんし、参加者が自分達でその施策を活かしてもらえる可能性もあります、

5.アクションにつながらないレポート

アクションにつながらないレポートとは具体的にどのようなものかというと、以下の3つに分けられます。

・目標とKPIが存在しない
・データから得られた事実のみ
・次回アクションがない

長大なレポートではなく、まずサマリーシートを作る

ぜひサマリーシートを作ってください。

先月の結果と今月の打ち手が一枚で見えるものです。
この1枚をみれば、大体がわかるというシートを作るんです。
これがあると大きく変わってきます。
 
分析やレポートは目的ではないんです。
 
施策を継続的に行うことが価値なんです。
気づきを得て、実施して、売上が上がって始めて分析は価値を持ちます。

ビジネス改善の為の分析であることを念頭におきましょう。

まとめ

様々な業種でWebのアクセス解析を行ってきた小川氏ならではの、どのようなホームページでも通用するアクセス解析の基礎が盛り込まれた講演でした。
小川氏が繰り返し仰っているように、アクセス解析はただ数字を見て終わりでは意味が無く、そこからホームページの改善点を見出し、次のアクションに繋げてそこから更に改善するために解析するというPDCAを回せて初めて意味を持ちます。

PDCAが回らない要因は企業によって様々ですが、大体は小川氏が挙げた点に当てはまるのではないでしょうか。
報告のためではなく、ビジネスを改善するためにアクセス解析を行っているということを意識し、改めて解析に向き合ってみましょう。