アナグラムは逆ピラミッド型の組織

**西井:**広告は本来楽しいじゃないですか。モノが売れたら楽しいし。

そのなかで、一番核となる部分を作れるというのが楽しいところですよね。その中でやはり課題になるのが人や組織では?

**阿部:**楽しいです。そして人を育てるのは今だに課題ですよね。

人によってペースも違うじゃないですか。急に伸びる子もいますし。

組織の話では、うちの組織形態でいうと逆ピラミッドなんですよね。ピラミッドじゃなくて。それがやっぱり肝かなと思っていて。

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引用:アウトの取り方は1つじゃない。アナグラムは次のフェーズへ

**阿部:**今までの従来型の組織はピラミッド型ですよね。ヒエラルキーがあってトップがいて。

別にこれが悪いわけではなくて、20世紀の組織だなと思っています。
今のうちの組織は、逆ピラミッド型なんですよ。

現場の人間が一番上です。中間にいわゆるミドルのリーダーと呼ばれる人たちがいて、一番下に僕とか取締役がいて。

何が違うかというと、現場の人間の一番近くにクライアントがいるんですよね。
クライアントは、直接現場の子たちがやりとりをするんです。そこに関しては、トップは一切文句を言いません。

彼らには「倫理と論理が間違ってなければすべてGOだ」と常に言っています。
ビジョンを共有した上で、倫理と論理が自分で正しいと思うのであればGOだから、そこで判断しろということを言っています。

なんでこういうふうにしたかというと、従来のピラミッド型では遅いんですよ。
権限がないし、常に上司に聞かなきゃいけない。軍隊はもともとピラミッド型じゃないですか。
でも今の軍隊は逆ピラミッドに近くなっていて。

僕、軍事とかすごく好きで趣味で調べてたりするんですけど、今のイラク戦争とかが好転してきた理由のひとつに、従来のピラミッド型の組織を逆ピラミッドの組織形態に変えてきたからというのがあるんですよ。

相手はゲリラなので民兵じゃないですか。民兵なので、統率がないんですよね。
統率がないとどこで現れてテロが起きるかわからない。そうなると、上からの判断を仰いでいたら死んじゃうんですよ。
なので、この現場に権限を与えて、自分が正しいと思うことをやれというジャッジをしたんです。

これは、リーダーシップ論の大家であるケン・ブランチャードという人も言っています。
いろいろ試行錯誤していくうちに、今のうちにはこの組織形態が一番フィットしていると思います。

**西井:**会社の経営として、トップダウンが必要なときはどうするんですか?

**阿部:**それでいうと、組織全体の戦略は完全なるトップダウンです。
この事業でいくよ、うちがFacebook広告をはじめとするソーシャル関連の広告をやるよっ!と決めたのは、完全にトップダウンですね。

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**西井:**現場から情報が落ちてきて意思決定も上を仰がなくていいというのはいいですね。
僕、オイシックスで、お前は底辺だって言われたんですよ。底辺のCMOだって言われて(笑)。

多分似てると思うんですよ。オイシックスは、トップダウンで意思決定しなければいけないところはあるけれど、現場が一番接しているのはお客さんだから。
でも現場と内部に情報の乖離があって、西井さんはそこなんですよって。

要はトップは決定しなければいけないことはすごくあるんだけど、かといって日々変わっていく現場で、トップが常に情報には追いつけない。
だから、意思決定しなければいけないところに対して、僕が下から意思決定をすると。

**阿部:**いい会社ですよね、ほんとに。

それでいうと、うちの取締役と同じような感じですね。彼はこのピラミッドに正確には属してないんですよ。
独立遊軍になっていて、彼が全体をパトロールするんです。

ここがうまくいってないよってなったら、そこにパトロールに行ってこうしたほうがいいんじゃないってアドバイスをしていく。
決して押し付けるわけではなく、より良くなる提案をする。

**西井:**マーケティングの組織を作っていく中で、たとえば広告ひとつとっても、運用型広告に変わってますとなったときに、意思決定を早くしなければいけない。

現場を見ているのは自分たちだから、下に対する意思決定っていう話ですよね。なんか似たようなこと言ってますね。