「実はお客様のことを全く知らない状態で商売をしている」井阪氏が語る小売業の顧客情報活用における課題

司会:
株式会社セブン&アイ・ホールディングスは日本最大手の小売業として展開してきたと思います。そのような中、現在小売業におけるテクノロジーの中で最も影響力が大きいものは何ですか?

井阪氏:
ユーザーがモバイル端末を使って買い物をする時代で、リアルの店舗を運営する我々の業界にとっては常に努力していかなければと覚悟しております。その中で、我々にとっての課題としては2つあると思っています。
1つは店頭において、デジタルソリューションをいかに育てていくか。実際、我々はデジタルの端末を利用して、お客様に接客する実験にも2年前から着手しています。また、接触せずにタグを読み込みするシステム「RFID」を使って、店舗に商品が届いた段階で検品作業を完了させるというシステムも導入しようとしています。
もう1つは、お客様のお買い物データをどのように使っていくかです。
*現在、リアルの店舗を構えることでお客様と対面では接しているものの、実はお客様のことを全く知らない状態で商売をしております。*そのため、来春からお客様とつながるツールとして、アプリを提供します。
お客様から情報をいただき、その情報から役に立つ商品開発・店舗開発を行っていこうと思っています。

司会:
実際、どのように大量のデータを利用していくんですか?

井阪氏:
現在でもデータを利用はしているんですが、まだ十分ではありません。そこは現在会場にお越しの企業含め、他の企業と連携を取りながら取り組んでいきたいと思っています。

参考:
[RFIDとは?|DENSOWAVE] (https://www.denso-wave.com/ja/adcd/fundamental/rfid/)

eコマースとリアル店舗のアライアンスはアリ?ナシ?

司会:
Amazonがナチュラルフード専門「ホール・フーズ」を買収したというニュースがありました。このようなeコマースとリアルの店舗の連携についてどのように思われますか。また、セブン&アイ・ホールディングスで戦略として考えているものはありますか?

井阪氏:
戦略としては良いと思います。AmazonEffect(Amazonによる効果)という言葉が日本でも言われるようになりましたが、Amazonに対して同じレベルの商品・サービスを提供できないのが現状です。そのため、企業が連携して対応しようという動きが起こったのもAmazonEffectの1つだと思います。

私共もアスクルとの連携を組むことになりました。今日の晩御飯のメニュー提案を動画でみながら、ネットスーパーで購入するというサービスです。
ネットスーパーの課題の1つとしてネットの在庫と店舗の在庫を一元的に管理しているため、商品の振り分けが難しい点があります。これをアスクルの物流機能と統合させることで、ネットスーパー独自の在庫をもち、展開できるようになります。
また、セブンイレブンでは店舗の配送サービスにおいて西濃運輸さんとアライアンスをスタートさせています。

AIや認証システムを流通でどのように活用していくのかといった専門的な部分も、アライアンスを組むことで新しい顧客サービスを実現できると感じていますね。

石黒氏:
今のお話は「買うまでにどうするか」だけでなく、「買ったあとでどこで受け取りたいか」といった購入体験すべての設計に関わってくることですね。Amazonはネットから始まったのですが、セブン&アイ・ホールディングスではリアルの店舗から始まっているのが特徴かなと思います。

庄司氏:
アメリカは面積が広大なため、すべての地域に流通が行き届いていないという現状があります。Amazonの始まりも、書籍を行き届かせたいというサービスから始まっています。そこから、書籍の販売データを取得したうえで他の商品にも展開できると感じたのでより幅を広げました。その点では「不便だから欲しい」のと、流通が行き届いた日本での展開は違うのかなと感じますね。