インフルエンサーの定義は「フォロワー数」に依存しない

福間 氏:
そういった「工夫を凝らす」みたいな文脈で言うと、小東さんは靴磨きに特化したプライベートなTwitterアカウントを持っていますよね。フォロワー数が特に多いわけではないですけれども、「自身が紹介した物が売れた」という経験で紹介していただけますでしょうか。

小東 氏:
自分のバックグラウンドとして、学生時代の4年間ほど革靴の販売員をやっていたんですね。

その経験があるので、「自分がどういう風に革製品を手入れしているか?」というノウハウを、Twittterやブログプラットフォームのnote(ノート)で、どんどん発信していたんですね。

そうしたら「革靴クラスタ」と呼ばれる革靴が好きな人たちに広まって、次第にオフ会とかに呼ばれるようになったんです。革製品が好きなブロガーの人たちに見つけていただき、「今度一緒に商品化しない?」みたいなことも言われるようになりました。

プライベートなTwitterアカウントを「こひ先生」という名前でやっているのですが、そうした注目が高まり始めた時に「こひ先生の初めての靴磨きセット」みたいな商品を発売したら、2週間で30個売り切れたんですよね。

私が革靴を若い人に履いてほしいみたいなメッセージをずーっと配信していて、「身の回りにどういったファンがいるのか?」という気づきから、革靴の選び方をスライドでまとめたり、記事やPinterestで紹介してきたことが実を結んだと思っています。

参考:

商品を販売し始めた時の自分のTwitterフォロワーは600人ぐらいですが、必ずしも数が全てではないという典型例ではあるかなと。

そうなると、「インフルエンサーの定義」って何だろうと考えるようになるんですよね。

たとえば、私が今履いている物と同じ靴を、自分が知っているだけで4人ぐらいが影響を受けて買っているんです。

金濱 氏:
確かに、「インフルエンサーの定義」の変遷で考えると、これまでのインフルエンサーは「フォロワー数」という影響力の一軸でキャスティングしてきました。

そこに軸が追加される形で、「カテゴリへの詳しさ」「商品理解度の深さ」「ブランドのロイヤリティ」みたいな指標が入ってくるのかなと思っています。

特に、これまで*「インフルエンサーの影響力をべ-スとしたプロモーションで売れていた」と思われている商品も、日本の場合は本当の意味でのインフルエンサーマーケティングが成功したのではなく、単純に「SNS上でのリーチコストが良かっただけ」の可能性*もあると個人的に捉えています。

そのため、2018年の今同じやり方をしても、正直なところあまり売れない。ステマ問題があったことで見る方も気づきやすくなっているので、同じ方法では取り組めないと思っています。

福間 氏:
「インフルエンサーマーケティング」という定義において、日本で「インフルエンサー」と呼ばれている多くの人たちが、実は*ディフューザー(拡散者)*かなと思っているんですよね。

インフルエンス(Influence)は「影響を与える」という訳ですし、言葉の意味だけで考えてみれば、フォロワーの数は関係ないですよね。

フォロワー数が300人しかいないけど、フォロワーに対してしっかりと行動を喚起させる人はインフルエンサーと言っても申し分ありませんし、フォロワーが1万人いるけれども、認知領域の獲得に寄ってしまっている人はディフューザーなのかなと。

そこが、「インフルエンサーか否か?」を区別する基準だと思っています。

*【SNSマーケティング特集(後編)】「SNS起点でバズが生まれるワケではない」マーケターがSNSプロモーションに取り組む際の仕掛け作りとは?*はこちら