こんにちは、株式会社ヘノブファクトリーの谷脇しのぶです。

当社は、Webサイトの弱点を探り当て、少しずつ改善するサイクルを繰り返し、サイトの効果をアップしていく「サイト育成」を大切にしています。

具体的なWebサイトの育成方法として、これまで、「物販型サイト」「資料請求型サイト」についての取り組むべきポイントや事例を紹介してきました。

シリーズ4回目となる今回は、話題に上がることが多くなった、定期的にお客様にサービスを利用してもらう「サブスクリプション(定額)型サイト(以後:サブスク型サイト)」にフォーカスして、サブスク型サイトにありがちな失敗談、取り組むべきポイント、サイト育成の事例を紹介していきます。

▼前回の記事▼
資料請求を増やすだけじゃない!問い合わせアップに繋がる資料請求型サイトの育成方法

サブスク型サイトの課題はズバリ、スタート時のハードルと、継続ニーズ

サブスク型サイトでありがちな失敗は、以下の2点です。

・お試し期間がなく、登録するハードルが高い
・期間やサービス内容、選択肢が一辺倒で継続したい気持ちが続かない

それぞれのケースを確認していきましょう。

登録するハードルが高い

Web技術が進化し、サービスサイトを安価で立ち上げられるようになりました。自社でサービスを開発し、月額課金などの「サブスクリプション型」のサイトが増えてきています。
具体的には、「YouTube music」「Hulu」などがサブスク型の一例です。

関連記事:大手企業も導入するビジネスモデル「サブスクリプション」とは?

「サブスク型はストック型で毎月お金を支払ってもらえる!」という気持ちでサービスを開始する企業が増えています。しかし、実際にサブスク型のサービスをはじめた企業は、「思ったより登録してくれるユーザーが少なく、定期的な収益につながらない」という悩みを抱えていることが多いです。

ユーザーは多くのサービスに触れ、比較検討を繰り返しながら、本当に必要なサービスを吟味しています。真新しいだけのサービスでは登録しないのです。また、ユーザーにとってサブスク型は定額の出費となるため「毎月支払うだけのメリットがあるか」という厳しい選別の対象となり、1回限りの申し込みに比べ、コンバージョンを出すまでに、圧倒的に検討の時間がかかります。

そんなユーザーの心理に合わせて、多くの企業が取っている対策は「お試し期間」です。
つまり、「実際に使ってもらい良さを実感して契約につなげる」という、企業にとっては投資ともいえる余力がないと、利用者を伸ばしていくことは難しい状況です。

こんな風にお話すると、とりあえず「1ヶ月無料」などのキャンペーンを実施しようと考えるかもしれませんが、提供するサービスはどのぐらい利用されれば活用され、価値を認識されるサービスなのか、期間を検討しましょう。キャンペーン中にそのサービスの利用が日常化するまで無料期間を設定できると良いです。

さらに、ソーシャルログインなどを活用して簡単に登録できる仕掛けをすることも大切です。
つまり、会員が集まらないという問題をクリアし、有料でも使いたいサービスなのか、ユーザーが見極められる期間を設ける。
サブスク型の成功は、まず小さなコンバージョンを設定するなどの緻密な計画が必要です。

関連記事:新規会員登録率向上! ソーシャルログインのメリットと導入方法

加えて、「利用してみたい」とユーザーにサービスを理解させることができるサービス紹介ページのつくり込みも重要です。ページを用意する際は、一方的にサービスの説明をするのではなく、ユーザーのメリットが理解しやすいコンテンツを用意しましょう。

「ずっと使い続けたい」。そう思われるには、一辺倒なサービスでは不可能

サービスが訴求でき、会員数が順調に伸びても安心はできません。
サブスク型の本当の勝負は、「定期的に利用されるか」にあるからです。ユーザーが毎月活用するメリットはあるか、使用しない時期ができないか、使わない時期に費用を払うのがもったいないと思わないかなど、注意すべき「離脱ポイント」は数多くあります。

実際にサブスク型を成功させているケースには、以下のようなものがあります。

・毎月選ぶ商品やサービスを変えられる(都度購入型の側面をもつサブスク)
・一定期間以上利用するとメリットが得られる(携帯電話の割引サービス)
・インフラとして毎月使うことで、コストメリットがある(音楽配信サービス)

このように、継続して利用されるポイントは「頻度」「コスパ」「費用の代替」そして「付加価値」の4つです。

サブスク型サイトが取り組むべきサイト育成とは?

サブスク型サイトが、取り組むべきサイト育成について説明していきます。

サブスク型サイトが注目すべき指標とは?

サブスク型サイトでまず注目すべき指標は、利用するメリットを書いているページPV数、滞在時間、平均閲覧PVです。

先ほどご説明したように、定額課金サービスを利用するユーザーは、登録するメリットを書いているページを長時間閲覧する傾向にあります。

しかし、残念なことに、サブスク型サイトの中には、サービス概要や仕組みを説明するページは多くあるにも関わらず、ユーザーのメリットをしっかり説明するページがないサイトは意外に多いです。

利用メリットのページに記載すべき情報は、以下の通りです。

・一発でサービスを理解できる威力のあるキャッチコピー
・他社との違い、サービスの特徴
・登録することで得られるユーザーメリット
・お試し訴求(圧倒的にメリットが出ていないと厳しい)
・登録方法、登録後の流れ(登録自体は瞬時にできる仕様に)

こうした情報が明確に記載されていれば、検討しているユーザーは「求めているサービスかどうか」を判断できますし、とりあえずお試ししてみようという気持ちで登録まで進むことができます。

効果アップを実現したサブスク型サイトの育成事例

具体的に、当社が手がけたサブスク型サイトのママワークス様(以後:ママワークス)の事例をご紹介します。

ママワークスは、いわゆる「求人サイト」で、主婦の方に、在宅ワーク・在宅勤務・内職の求人・アルバイト・お仕事情報を紹介しています。

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▲在宅に特化した求人情報を取り扱う「ママワークス」では10万人が登録中。

立ち上げたのは2015年、在宅ワーカーと求人情報のマッチングサービスとしてスタートしました。
サービスそのものの「利用価値」は人材であったため、最初は在宅ワーカーとして登録してもらえるユーザー(主婦の方)を集めることからスタート。
企業から求人広告掲載料を支払っていただくサブスクモデルとして成長させる前に、求人媒体として会員を増やさなければならず、成果が出るまでに2倍の期間がかかりました。(想定では1年半でしたが、サブスクモデルを確立できたのは3年)

在宅ワーカーに特化した求人サイトというニッチなサービスが功を奏し、会員登録数は認知度とともに伸び、2019年現在では10万人を突破。昨今の働き方改革による在宅ワーカー活用の波に乗って、利用企業も自然と伸びていきました。

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▲毎月データを解析し、登録者数、成約率などを解析し、サブスクリプションモデルを成立させています。

サイトデザインで気をつけた点をターゲット別に確認してみましょう。

<主婦の方々(サービスの要となる人材側への訴求)>

・ママさん向けのサービスである
・在宅という新しい働き方を提案している
・エリア別に仕事が検索できる
・すでに多くの在宅ワーカーが活用している事例を多数掲載

<企業の方々(求人サイトを利用する側)>

・優秀な人材を通常の求人媒体よりも安く確実に採用できる
・在宅という新しい働き方を企業に導入する支援も提供
・長く利用いただくことで企業価値が高まる(ダイバーシティ効果)
・すでに多くの企業が在宅ワーカーを活用している事例を多数掲載

会員数が1万人に満たない時期は、求人掲載単価を半額に下げるなどして、キャンペーンを行った時期もあります。そして、スカウトメールや企業ごとの機能拡張も積極的に行い「オンリーワンの求人サイト」としての付加価値を高めていきました。

ページデザインでは、企業側の訴求とユーザーである主婦の方々向けの訴求を分け、より明確な利用価値を伝えたことが効果を高められた重要なポイントです。また利用企業には、オフラインのアドバイザーをつけることで、サービス利用のハードルを下げ、安定した求人広告掲載の利用と効果アップの流れを確立しました。

今では、より活用しやすい管理画面を設計したり、利用企業アンケートを積極的に取ったりしてサブスク型として定額利用いただける価値を常に提供しています。

その結果、ママワークスは「在宅ワーク」というキーワードの検索結果で1位〜3位を獲得できる在宅ワークの専門求人のパイオニア的なサイトに成長。そのブランド力により、安定的に利用企業数を伸ばしています。

重要なのは「ユーザーが一番喜ぶサブスクモデルであるか」という視点

サブスク型サイトの場合、サービスをスタートさせる際の基盤とも言えるルール作りがとても大切なことが分かっていただけたと思います。ウェブサイトの育成で行うべきは、デザイン改善だけではなく、ビジネスモデルそのものの価値を高める改善です。

そして、Webサイトで打ち出すべき情報は、サービスの特徴だけでなく、継続的に利用するメリットを最大限打ち出さなければ成功できません。常に*「ユーザーが一番喜ぶサブスクモデルであるか」という視点を大事にして*、Webサイトを育てていきましょう。