YouTubeやTikTokをはじめ、企業のWebサイトアプリまで、インターネットを利用していれば誰でも目にするようになった動画。今や動画を活用したマーケティングは、珍しいものではありません。しかし、多くのユーザーが動画を見ている今だからこそ、「なんとなく動画を作成し配信するだけ」のマーケティングはもう通用しなくなっています。

そこで新たに注目を集めているのが、見るだけではなく、触ることで視聴者ごとにパーソナライズ化した動画を作成できる「インタラクティブ動画」。今回、インタラクティブ動画と通常の動画の違いや、インタラクティブ動画だからこそできるマーケティング、さらにこれからの動画マーケティングについて、タッチスポットの水嶋 泰一氏とバルクオムの菊池 魁氏にお話を伺いました。

プロフィール

タッチスポット株式会社 代表取締役社長 水嶋 泰一氏 

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新卒で株式会社ミクシィに入社。
その後PMや事業統括を経てBAKE&Co.株式会社へ入社。2018年4月にタッチスポット株式会社に社名変更。週2のコンサル業務から2018年1月役員へ、同年9月に代表取締役社長に就任。正社員0人から現在は正社員業務委託含め15人の組織へ成長させ、インタラクティブ動画サービスを提供するタッチスポット株式会社を運営している。

株式会社バルクオム マーケティング担当 菊池 魁氏 

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インターンを経て、株式会社バルクオムに初の新卒として入社。
CRMや企画などの業務を経験し、現在は、Digital Marketing Divisionに所属。
動画広告の運用も含めたデジタルマーケティング全般を担当する。

インタラクティブ動画には“どんどん先を観たくなる”仕組みがある

ferret:
最初に「インタラクティブ動画」の特徴を教えてください。

タッチスポット水嶋氏:
「インタラクティブ動画」とは、動画による理解の促進と、Webにおける情報の取捨選択性を組み合わせたサービスです。動画上にボタンが置いてあり、そのボタンを視聴者に押してもらうと「Webページのように動画を遷移させる」など、Web上での全ての機能が動画上で表現することができます。

▲インタラクティブ動画の事例。動画にタッチしながら本記事の内容を確認できる

例えば動画の冒頭に「この人の話を聞く」「聞かない」といった選択ボタンが出てきます。ユーザーが積極的に押したいなぁ、その先の情報を知りたいなぁと思うボタンを設置することで、離脱を防げます。

ボタンを押していくと、どんどん先を見たくなる。結果的に最後の動画までたどり着くと、商品の良さを理解してしまっている。だから、買いたくなる、というロジックがインタラクティブ動画にはあります。

バルクオム菊池氏:
インフラ整備や動画プラットフォームの充実が進んでいく中で、消費者の方々は日に日に動画広告に接する機会が増えていると思います。その中で、新しい手法で見せながら消費者の方々にアプローチする必要があります。それを叶えられるのが、インタラクティブ動画なのかなとマーケティング担当者としては考えていますね。
 

従来の動画とインタラクティブ動画の違い、それは「双方向性」

ferret:
最近は「インタラクティブ動画」というワードを耳にする機会が増えたと感じています。徐々に注目度が高まっている印象です。

広告で用いる素材として考えたときに、従来の“動画”と“インタラクティブ動画”の大きな違いはどこにあるのでしょうか?

バルクオム菊池氏:
「インタラクティブ動画」と、従来の動画の最大の違いは「双方向性」にあると思います。言ってしまえば動画は、一方的に情報を伝えるもの。情報量は多いですが、一方通行のコンテンツです。

それと比較すると「インタラクティブ動画」は、ユーザーのアクションを促しながら一人ひとりに最適化したメッセージを伝えられます。情報を自分ごと化しやすい上に、適切な情報を伝えていけるという強みがあると捉えています。

自分で選んだからこそ、最後まで観てもらえる

タッチスポット水嶋氏:
例えばユーザーは、YouTubeで10分の動画をなかなか観てはくれません。「どこが自分の知りたいところかな?」とシークバーをスライドする人がほとんど。自分の知りたい情報だけを知ることのできる動画を求めているんですよね。

私自身のインタラクティブ動画の理解は、言うなれば「おみくじを引く心理」です。例えば今、「おみくじを引いてみませんか?」と言われたとして、別段、健康運などに関心がなかったとしても、いざ引いたら健康運も見ますよね?自分が選んだ、意思決定したものの結果に対して知りたい欲求が人間にはあるんです。これが、往来の動画にはなく、インタラクティブ動画である意味を生み出せるところです。

ブランディングイメージを訴求しながらユーザーのアクションを促せる

ferret:
菊池さんは今回バルクオムで初めてインタラクティブ動画を使ったマーケティング施策を運用したんですよね?なぜインタラクティブ動画を導入してみようと考えたのでしょうか?

バルクオム菊池氏:
バルクオムでは、メンズスキンケアブランド世界No.1シェアという目標のために、思いつく限りのマーケティング施策を実行しています。そのマーケティングスピリットとして、新しい手法が出たらすぐ試し、既に世に出ているものがあれば積極的に取り組む姿勢があるんです。今まで各SNSへの出稿・運用も、数え切れないほどトライしてきました。今回も新しいマーケティング手法の一つとしてぜひ取り組んでみたいと思い、インタラクティブ動画の導入に至っています。

ferret:
今まで社内で誰もチャレンジしたことのないマーケティング手法だと、進め方なども手探りになると思います。今回の場合はどのように進めていったのでしょうか?

バルクオム菊池氏:
新しい手法ということで、実現する手段が自社内にはありませんでした。そこでインタラクティブ動画の制作・運用がしっかりできる会社を探していたところ、タッチスポットさんがその分野を牽引しているということでご依頼をさせていただきました。実際に提案後1ヶ月ぐらいで納品していただけてスピード感も良かったですし、企画もバッチリ。レポートを提供していただけるのも良かったです。

ferret:
実際どのようなインタラクティブ動画を制作したのでしょうか?

バルクオム菊池氏:
今回は「インタラクティブ動画」に「肌診断コンテンツ」を盛り込みました。

▲バルクオム社のインタラクティブ動画広告

自分が乾燥肌か、脂性肌か、普段はあまり気にしていない人でも、広告から流入して弊社LPにランディングしたときに「インタラクティブ動画」が出てきて、「あなたの肌タイプはどのタイプ?」と診断できる選択肢が出てきます。そこで自分は脂性肌だったんだ、乾燥肌だったんだ、混合肌だったんだと分かるようになっています。

タッチスポット水嶋氏:
今回の動画は診断だけでなく、オープニングでブランディングイメージをアップするようなカットがバンバン入ってきて「何だろう?」と思ったら診断コンテンツが出てくる流れにしています。従来のLPだと、奥深くに診断コンテンツを設置してそこまで読み込まないと診断にトライしてもらえません。でもこの流れなら、すぐにアクションしてもらえます。

最後まで観てもらえることでCVRが向上

ferret:
インタラクティブ動画を導入してから、どのような成果がありましたか?

バルクオム菊池氏:
今回LPのトップに「インタラクティブ動画」を置いた結果、直帰率に大きな効果がありました。結果としてそれが商品の魅力を伝えられることとなり、CVRにも良い影響をもたらしていると思います。

他にもいろいろな新施策にチャレンジしたのですが、「インタラクティブ動画」の効果が一番良かったですね。

WebページのようにPDCAを回せる。動画を数値で評価できるように

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タッチスポット水嶋氏:
「インタラクティブ動画」は動画を見たかという指標にとどまらず、「どのボタンを押した」「押していない」「どの広告経由で入ってきた人はどのルートに行きやすい」「どのボタンを押した人はCVしやすい」など、Webページと同じようにすべてに分析指標を置いて計測できます。その辺りもインタラクティブ動画の強みですね。

バルクオム菊池氏:
従来の動画と違って、取れる情報が凄く多いですよね。PDCAもすごく回しやすいです。感覚的なところでなく数値ベースでしっかり対応できるところが凄く良いです。

タッチスポット水嶋氏:
「これぐらいの人は診断をやるんだな」「これぐらいの人たちは乾燥肌だったんだな」とか
「診断結果に対してこういう風に情報が出てきている人のほうが買いやすい」「流入経路によって結果がぜんぜん違う」などを見れているので、数字を見ながら次はどんな目標を立てよう、といったことができます。

バルクオム菊池氏:
今までの動画と違う最大の部分は、数字でコンテンツの良し悪しが振り返られる点ですね。流入媒体によって、例えばFacebookだったらこっちのコンテンツが選ばれるとか、こっちのコンテンツをLPに多めに入れようとか「次の一手」をプランニングできます。

タッチスポット水嶋氏:
ヒートマップではどうしても見きれない部分がありますが、「インタラクティブ動画」では*「興味」も数値化*されます。「インタラクティブ動画」の枠を超えたマーケティングにまで情報提供できるところも強みです。だからこそ僕らは、動画制作だけでなくマーケティングを一貫してサポートできます。

PDCAをインハウスで速く回したい企業向けには、インタラクティブ動画を編集するツールも提供しています。テキストや画像一枚入れ替えるぐらいであれば自社内でやってきたいという企業におすすめです。LPならインハウスでテキスト置き換えなどできるものですが、動画だけは今までインハウスでテキスト入れ替えなどできなかったことなので、そこは動画の進化だと言えます。

チャットボットと連携して、さらにシームレスな購買体験を実現できる

ferret:
ユーザーが選択肢を選んでそれに対して個人に最適化して進めていく…というインタラクティブ動画の仕組みは、チャットボットと似ているようにも感じます。ユーザーにアクションを促すだけならわざわざ動画でなくても良いのでは?とも思うのですが、その辺りの棲み分けはどう考えていますか?

タッチスポット水嶋氏:
チャットボットも購買を促すものがあったり、双方向性と言えば双方向性ですよね。お客様の状況に合わせた返答が返ってくる。「私自身のための情報を提供してくれている」という感覚をお客様に持っていただけるものです。

ただやっぱり、動画かテキストであるかは大きく違います。1分間の動画は、Webページ3,600ページ分の情報量があると言われています。ファーストビューだけだったとしても、それだけ理解できる情報量が増えます。それが、チャットボットとの大きな違いだと言えます。

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タッチスポット水嶋氏:
まず、クリエイティブがあってブランディングイメージがある。その上で「次はいかがなさいますか?」と1秒2秒で訴えてくる。このブランディングイメージの部分は、チャットボットだと難しいのではないでしょうか?

ただ、インタラクティブ動画とチャットボットは、必ずしも切り分けて考える必要もないと思っています。ブランドの「カッコいいな」というイメージがあって「買いたいな」と思わせることができたら、そのままチャットボットに案内して買い物ができる、来場予約が出来る、といった連携が取れますから。「インタラクティブ動画」からボタンを押すとチャットボットが立ち上がる、といった連携方法ですね。

チャットボットの良さは購買までのUXをシームレスにしていく点にあり、例えば新規のお客様など、問い合わせフォームでたくさん聞きたいことがある人たちに対しては効果を発揮するものです。購買に意欲を向かせた後の動線としてはチャットボットが向いていると思います。

インタラクティブ動画とチャットボットの連携で、より購買意欲も高まるし、購買のストレスもなくなっていくと思いますね。

バルクオム菊池氏:
「インタラクティブ動画」の役割は入口でしっかり離脱率を防ぐ部分だと思いますが、チャットボットはクロージング部分ですからね。

タッチスポット水嶋氏:
「インタラクティブ動画」で「今すぐ購入」を押したらチャットボットが開く、そこから購買申し込みになっていく、というのが良い流れだと思います。

過激な広告に頼らない。ブランドイメージを保てる広告を展開したい

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バルクオム菊池氏:
世の中に動画広告が増えていく中でどんどん表現が過激になって、目立てばいい、印象に残ればいい、となっているなと感じることはありませんか?。

ferret:
確かに、インパクト勝負で注目を集めるような広告も増えてますね。

バルクオム菊池氏:
そうですよね。動画クリエイティブで過激な表現が増えている中、ユーザーはそんな風潮を嫌がるようになってきます。これからは、セーフティーなブランドイメージを守った上での広告施策を展開していくことが企業に求められているのでは、と思います。

「インタラクティブ動画」なら、過激な表現を使うことなく自然な流れでユーザーアクションを促せる。本当にユーザー目線に立った広告を作れるのがインタラクティブ動画の強みだなと考えています。

タッチスポット水嶋氏:
本当は企業様だって「ものを買っていただきたい」とは思っていても、「押し売りをしたい」と思っているわけではないはずです。自然にユーザーアクションを促せる広告であれば、かっこいいと思わせながら買いたいと思ってもらえる。

僕たちは「インタラクティブ動画」の制作を手掛けるうえで、そういったところを重視しています。

「時間」に対するUXデザインを考えることが、これからの動画マーケティング成功への道

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ferret:
これからの動画広告、動画マーケティングについて、どのようになっていくと考えていますか?

タッチスポット水嶋氏:
今、動画マーケティングで言うと大きく2つに分かれると思っています。ブランディング動画という文脈と、見やすく速くたくさん生成してテンプレートに当てはめてどんどん出していく方向性。今後も両者、どちらも増えていくと思います。

その中で間違いなくこの2つは、よりリアルに近づいていくはずです。テキストより静止画、静止画より動画、動画よりインタラクティブ動画やAIやVR。少しずつリアルに近いコンテンツを求め出し、そのコンテンツが世に届けられるようなインフラ整備がなされていくと思っています。例えば4Gから5Gであったり、といったことです。

その中でどれだけ「時間」に対するUXデザインを考えられるかが、今後動画マーケティングに携わる人の鍵になっていくと思います。

バルクオム菊池氏:
コロナ禍での外出自粛期間もあり、動画を見る人は増えたと思いますが、1件の動画に対する可処分時間は削られてきています。どれだけ短い尺で情報が詰まったコンテンツを出せるかが問われていると思います。

タッチスポット水嶋氏:
動画とは今まで「撮って、見せるだけ」「飽きさせない動画を作り続ける」が主眼でしたよね。でも、近年ではYouTubeだとわずか5秒以内で見るか見ないか決めるなど、情報の取捨選択のスピード感が速くなってきています。

「インタラクティブ動画」には、いつボタンを出すかという「Z軸=秒数」の概念が存在します。今までのWebサイトは「二次元」ですが、「インタラクティブ動画」は「三次元」だと捉えています。つまり、どれぐらいの秒数でボタンを出すかということもユーザーにとって良い体験になるかどうかの鍵なんです。

LPにランディングしてもスクロールしない層が、ただ黙って「インタラクティブ動画」を見ているだけでも5秒以内に「診断コンテンツ」のボタンが出てくるなど、ユーザーがアクションすべきボタンに出会えるかどうかの「秒数」を凄く意識しているんですね。さらには、その後のテンポ感、ストレスは無いか、最後まで見たいと思うかどうかなど、「時間」の概念をとても意識しています。

今までになかった概念を取り入れていけばいけるほど、「インタラクティブ動画」を使うマーケティングは良くなってくると思います。「インタラクティブ動画」という選択肢が増えることによって企画の引き出しが増えていくことにもつながります。

ただ、「インタラクティブ動画」とは今までになかった全く新しいもので、皆さん自社内ではどうしていいのかわからない、クリエイティブに「時間」の概念を加味して取り組んでいる人はまだ少ないのではと思います。なので僕らはただ動画を制作するだけでなく、企画の段階からお力添えする。それを大切にしていきたいですね。

バルクオム菊池氏:
確かに、「インタラクティブ動画」の良いところは企画の引き出しが増えるところにもありますね。タッチスポットさんのような会社に企画から一緒にやっていただけるところはありがたいです。

タッチスポット水嶋氏:
タッチスポットでは、お取引先の会社様に合わせた「インタラクティブ動画」を制作するよう取り組んでいます。ものを売りたい思いを達成しなければ、マーケティング施策として意味がありません。ただ、動画を制作するというよりは、目標を達成するために何を一緒にすればいいかというところを考えながら協業させていただいています。

「インタラクティブ動画」の未来に関しては、効果を実感していただけるお客様も出てきているので地道に広げることで良さを分かってもらえるのではと思っています。さらにブラッシュアップして進化させ、面白いコンテンツだなと皆さんにおっしゃっていただけるように前進していきたいです。

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ブランドイメージを保ちつつ訴求できる「インタラクティブ動画」

セーフティーなブランドイメージを守りつつ、ユーザー視点に立って、双方向性により一人ひとりにパーソナライズ化された情報を伝えることが出来る「インタラクティブ動画」。
LPからの直帰率が改善し、売りにも繋がった、という事例をご紹介し、従来の動画よりもずっと細かくPDCAを回すことができるメリットもお伝えしました。

もし、従来の動画マーケティングにいまひとつ、手応えを感じていないのであれば、この「インタラクティブ動画」という新しい手法に注目してみてはいかがでしょうか。