コンテンツマーケティングの一環として、オウンドメディアを立ち上げる企業が増えています。

しかし、メディア運営経験のないままいきなりオウンドメディアに取り組もうとしても、どのように構築すればいいのか、どのような目標を持って、どのように運用していけばいいのかがわからない企業は少なくないのではないでしょうか。

今回は、株式会社オールコネクトで「モバレコ」を運営する佐々木氏、freee株式会社で「経営ハッカー」を運営する椿氏、そしてferret編集長の飯髙が登壇した「オウンドメディアの立ち上げとグロース」をテーマにしたトークセッションの様子をお届けします。

それぞれ独自のやり方で立ち上げからグロースのフェーズを歩んできたメディアのキーマンによる話には、オウンドメディア立ち上げ、運用のヒントが多数含まれています。
オウンドメディアに携わる方はぜひチェックしてみてください。

登壇者紹介

株式会社オールコネクト 佐々木 敏明氏

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Webコンテンツ企画部 部長。
2014年8月にスマートフォンの情報サイトモバレコ立ち上げ。
月間UU110万、月間PV180万のメディアに成長。

株式会社freee 椿 龍之介氏

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マーケティングの法人向け担当。
経営ハッカーのグロースと起業ハッカーの立ち上げを担当。
経営ハッカーは月間370万PVを超える。

株式会社ベーシック ferret編集長 飯髙 悠太

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Webマーケティング事業部 部長。ferret 編集長 / マーケター。
5社を経て、2014年株式会社ベーシック入社。ferretメディア化にあたり参画。
これまでに複数のサービスやメディアを立ち上げる。
ferretは立ち上げ1年9カ月で月間220万PV

Ginzametrics Japan 小松 昇平氏

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Ginzametrics Japan(コンテンツマーケティング&SEOツール) のセールスに従事。
本イベントの運営元であるコンテンツマーケティング交流会を主宰。コンテンツマーケター向けにクローズドイベントを定期開催している。

立ち上げフェーズで行ったこと

飯髙:
ferretの立ち上げフェーズでは、当たり前のことをちゃんとやろうというのがコンセプトとしてありました。

立ち上げ時にいたライター陣は、Webマーケティングについての知識もそこまで深くはありませんでした。
でも、知らない人間が自分で勉強しながら記事を書くことができれば、それこそ読む人みんなにとってためになる記事になるかなと考えたので、編集レギュレーションはガチガチに固めましたね。

その結果、新卒で入った女の子が半年後には1日3本記事書けるようになりましたし、そういう基礎固めを徹底的にやったというのが最初の段階ですね。
当時、「ferretを読めば代理店の言ってることが最低限理解できる」ようになればいいなと思っていましたね。

小松氏:
経営ハッカーの立ち上げの時って、明確なゴールを決めていたりしましたか?椿さん。

椿氏:
ゴール自体はほとんど決まってないですね。会社の価値基準の中に「アウトプット→思考」というのがあります。出してから思考を回していこうというのがあるので、とりあえずやっちゃってもいいですか?というところから始まってます。

経営ハッカーはfreeeが立ち上がるタイミングで始めたんですが、もともと佐々木(freee株式会社CEO 佐々木氏)が会計関連についていろいろ調べた時、情報が出てこないことに気づきました。

お給料に関する情報って国のサイトしかなかったんですよね。なので、中小企業の人がなにもわからない状態でなにを見たらいいの?って時に正解を得られるようなサイトを目指しています。

そこがゴールかなと思っています。

小松氏:
佐々木さんに伺いたいのですが、オールコネクトさんはもともとの通信系商材の事業があると思うんですが、そこはモバレコの立ち上げに関わっていたりするんですか?

佐々木氏:
そうですね。まず弊社のバックグラウンドについて少しお話ししますと、モバレコ以外にマネタイズ(販売)するサイトはいくつかありまして、主に通信系の商材を扱っています。
これら通信系商材のサイトへは、ほぼ広告で集客しています。
この集客方法を10年やってきましたが、広告って止めた瞬間集客が止まって売り上げも止まるということが起きるんですよね。
これはうちの会社としても未来がないなというところで、コンテンツを作って集客し、最終的にはマネタイズができるサイトをつくろう話が出てきたので、それをやるためにモバレコを立ち上げました。

メディアで挙げた知名度をどう案件につなげているのか

椿氏:
検索でサイトを訪れた時に、例えば勘定科目や給与計算の基礎を知りたいと思ってくるので、そういった人にはe-bookを訴求して、そこでユーザーとつながるポイントを持ちます。

ユーザーが育っていくというのは、だんだんfreeeに近づけていくということなので、ユーザーの課題を解決するそのソリューションのひとつとして自社のサービスを提供してあげることが大事だと思います。

飯髙:
チャネルごとによってユーザーを分けています。
ソーシャルから来るユーザー、リファラルから来るユーザー、オーガニックから来るユーザーという風に、チャネルごとでユーザーを分けています。

例えば、「コンテンツマーケティング」について調べたいユーザーがオーガニック検索から流入してきたとします。
検索から入ってくるユーザーは何かしら課題感を持っていますので、そこに「コンテンツマーケティング」についての網羅性のある記事と、情報がまとまった資料を用意しています。
よくオウンドメディア運用している企業が、どんなコンテンツにも同じホワイトペーパーを設置していますが、コンテンツと関係ないケースが多々見受けられてます。あれって単純にユーザーをバカにしていますよね。

またソーシャルからferretに訪れる場合は、一見さんだったりするのでコンバージョンに至らないケースが多いです。
しかし触れる回数を増やしていけば、彼らはferretを知ることになりますよね。

ferretはマーケティングオートメーションツールを導入しているので、会員登録をしたユーザーの行動をトラッキングしナーチャリングをしています。
今後はそこをより細かくスコアリングして、メルマガホワイトペーパーなどでコミュニケーションを図ろうと考えています。

メディアを立ち上げた目的と達成具合をどのように測っているのか

佐々木氏:
メディアを立ち上げた目的は集客ですね。
100万人が集まるようなメディアを作ろう、というところから始まりました。

現在、「100万人」というところは達成できましたが、「モバレコ」を知っている人はまだまだ少ないように感じています。
達成具合については、記事の読了率や満足度など、UUやPV以外にも重視したいポイントがあるのでそこがこれからの課題です。

椿氏:
読者にとって本質的な価値があるのかを価値としては基準にしていますが、数値的な目標に関してはまだ模索中です。
数値的なゴールについても定まっておらず、模索しながらメディアの価値を示す本当の数値とな何なのかを追い求めています。

飯高:
メディアの立ち上げ目的は、まずはメディアを伸ばすというところとHomeup!(2016年8月1日ferret oneに名称変更)へのリード獲得です。
達成具合でいくと、コンテンツなら公開3日後、1カ月後でコンテンツの評価をしています。全体の数字は月ごとに目標を持ち運営しています。

ちょっと話ずれるかもですが、メディアでコアとなるKPIは、新規ユーザー数です。

メディアが伸びてくると、リピーターが増えていきます。そのことによって数字が伸びているように見える数字のマジックが起こります。
リピーターが増えるのは非常にありがたいことですし重要なことです。しかし、新規ユーザーが増えないとメディアの価値はあがりません。なのでコアとなるKPIは新規ユーザー数と定義しています。

その中でリピーターをどう育成するかを考えて運営しています。

コンテンツの「質」とは?

参加者:
そもそもコンテンツの「質」とはなんでしょうか?
バズるのが質なのか、SEOにひっかかるのが質なのか、読んでコンバージョンされるのが質なのか、みなさんのメディアによって変わると思うのですが。

佐々木氏:
うちの場合は訪問者数がKPIなので、質がそれに影響を与えるものとして考えると、「集客力」がコンテンツの質だと思っています。自然検索でいうと上位表示できる力があるか、SNSでいうとバズ、リファラーでいうと参照数。
これらがコンテンツの「質」だと考えています。

椿氏:
行動したくなることが質だと思います。
SEOだったらQ&Aに対してAを知ったから行動したくなるし、SNSだったらシェアをすることが行動ですし。
読んでなにかをしたくなるというのがすべてにつながってくるかなと考えております。

飯高:
まず僕みなさんに挙手いただきたいんですけど、3日前に読んだ記事で覚えている記事があるよという方は挙手いただいていいですか?

(参加者の1/3くらいが挙手)

通常この質問をすると手を挙げて頂けるのは1割程度なんですが、意外にいますね。

結局テキストコンテンツは水ものです。
いい記事というのはチャネルごとに分けて考える必要はありますが、どんなにいいコンテンツでも読まれないことには価値はないんですよ。

読まれてはじめて炎上するかもしれないし、炎上するということは、知られたということですよね。
僕はいいコンテンツを定義するなら、読まれること、ここだけですね。そのあとはだめだったらやり直せばいい。

参加者:
では、「質」を定量的に言うとしたら?

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飯高:
まずは先ほど話した、読まれることです。次は、読了でしょうね。
ユーザーは満足しなければ離脱します。

悪い記事なら最後まで読むことはないです。
なにかしらの解がそこにあると思って読んでるはずなので、読了が重要です。
かつ、記事からの遷移ですね。

そのWebサイトにいいコンテンツがあると分かったら他のコンテンツも読みたくなりますよね。
定量的に「記事の質」を言うならば、この2つですね。

総括

オウンドメディアを立ち上げるにあたり、重要なのはその「目的」と「運用指針」です。
なぜメディアを立ち上げる必要があるのか、どのようなレギュレーションでやっていくのかをあらかじめ定めておかなければ、記事内容だけではなくメディアの立ち位置そのものもぶれてしまいます。

立ち上げ後は、いかにターゲットユーザーに記事を届けられるかが重要となります。
オウンドメディアの役割は将来顧客になり得る新規ユーザーを獲得することです。
ターゲットユーザーにリーチし、エンゲージメントを高めていくために、認知獲得を目的とする記事、お問い合わせ導線につながる記事というように、記事単位で役割を明確に区別し、計画的にコンテンツ制作・配信を行う必要があります。

オウンドメディア運営においてよく「記事の質」について言及されますが、質の定義も記事の役割によって異なるでしょう。
そして、認知獲得が目的の場合はPVシェア数、リード獲得が目的の場合はコンバージョン数というように、役割が違えば見るべき指標も変わります。
しかし、どのような目的の記事にしろ、根本的にターゲットユーザーの目に触れられない記事は存在していないのと同義で、質以前の問題です。

ディスカッションの中でも言われていますが、まずオウンドメディアを立ち上げる時は誰がターゲットで何が目的なのかを決めましょう。
そしてターゲットにリーチするためにはどのようなチャネルを活用すればいいのかを見極めることが重要です。