機械学習による広告運用の自動化によって、工数の削減や広告効果の向上が期待できます。しかし、機械学習を用いた広告運用のインハウス化を検討しているものの、知識がなく踏み切れないマーケティング担当の方は多いのではないでしょうか。

この記事では、広告における機械学習の概要やメリット・デメリット必要な期間押さえるべきポイントを解説します。

また、機械学習の活用によって工数削減やCVアップを実現した事例も紹介しますので、広告運用の自動化を検討している方や、広告運用を内製化したい方はぜひご覧ください。

目次

  1. 広告の機械学習とは
  2. Google広告の機械学習とは
  3. 広告運用に機械学習を用いるメリット
  4. 広告運用に機械学習を用いるデメリット
  5. 機械学習を用いた広告運用で押さえるべき3つのポイント
  6. 機械学習を用いた広告運用の成功事例2選
  7. 広告の機械学習でよくあるQ&A
  8. 機械学習を活用して広告運用の最適化を図ろう

広告の機械学習とは

広告の機械学習とは、広告運用における膨大なデータをAIが学習・分析することです。

ユーザーの属性や検索したキーワード、デバイスといった様々なデータを学習し、そのデータをもとに自動で入札調整・配信する広告の選定などを行ってくれるため、広告主は最低限の作業で高い効果の期待できる広告を配信できます。

近年では「工数を削減したい」「より成果を出したい」という考えから、機械学習を用いた広告運用を行っている企業が増加しています。

Google広告の機械学習とは

Google広告では、主にスマート自動入札スマート広告で機械学習が使われています。それぞれの概要について詳しく見ていきましょう。

スマート自動入札

スマート自動入札は、広告オークションごとCV数や入札単価などを最適化してくれる機能です。「コンバージョンを獲得したい」「費用対効果を最大化したい」などの目標に応じて自動で入札単価が設定され、広告配信の設定を調節してくれます。

入札単価はユーザーのシグナルを考慮した上で最適化されるため、手動で設定するよりも高い成果・費用対効果が期待できるでしょう。

シグナルとは個々のユーザーを特定できる属性のことであり、所在地や使用デバイス、ブラウザ、言語、サイトの行動履歴などが該当します。

スマート自動入札戦略.png

参考:スマート自動入札について|Google広告ヘルプ

スマート広告

スマート広告は、広告主が設定した予算などに基づきAIが自動的に広告を作成・配信してくれるものです。Googleの機械学習技術を活用し、個々のユーザーに適したクリエイティブが作成され、最適なタイミングで自動配信できます。

スマート広告は、フォーマット別に以下の3種類に分けられます。

  • レスポンシブディスプレイ広告
  • 動的検索広告
  • レスポンシブ検索広告

スマート広告の種類.png

参考:Google 広告のスマート自動入札とスマート広告ソリューションについて|Google広告ヘルプ

● レスポンシブディスプレイ広告

通常のバナー広告とレスポンシブディスプレイ広告の違い.png

レスポンシブディスプレイ広告では、アセットをアップロードすることで自動的にディスプレイ広告が作成・配信されます。アセットとは、広告の見出しや説明文、ロゴ、画像、動画などのことです。

Googleが過去の掲載結果から導き出した予測に基づき、最適なアセットの組み合わせが決定されます。例えば、画像と動画の両方をアップロードした場合、Googleが「動画の方が高い成果が出るだろう」と判断すると、画像の代わりに動画が表示されるようになります。

また、広告スペースに合わせて表示形式やフォーマットが自動調整されるため、広告作成・配信にかかる時間を削減することが可能です。

画像参照元:【完全ガイド】GDNレスポンシブディスプレイ広告とは-掲載例やコツなど徹底解説|WALTEX

● 動的検索広告

Google動的検索広告(DSA).gif

出典:Google 広告 ヘルプ 動的検索広告を作成する

動的検索広告とは、Googleが提供する検索連動型広告機能の1つです。広告主のWebページ関連性の高いキーワードで検索するユーザーに対し、Googleが自動で広告を生成してくれます。

1件の広告ごとにキーワードや広告文、入札単価などを設定する必要がないため、出稿する作業の工数を削減できる点がメリットです。

また、Webサイト内の情報に基づいて広告の配信対象が決定されるため、キーワードをベースにしたキャンペーンではリーチできなかったユーザーにも広告表示が可能です。

動的検索広告については、以下の記事でより詳しく解説しています。

関連記事:Google動的検索広告(DSA)とは?メリットや注意点、成功事例を紹介

● レスポンシブ検索広告

レスポンシブ検索広告リスティング広告の一種であり、あらかじめ設定した複数の広告見出し説明文自動で組み合わせ配信してくれるものです。

機械学習によって様々な組み合わせが自動でテストされるとともに、最も効果的な組み合わせが学習されます。そして検索ユーザーごとに最適化された組み合わせの広告が表示されるため、高い効果が期待できます。

動的検索広告の違いとレスポンシブ検索広告の違い.png

以下の記事では、リスティング広告で成果を出すためのポイントを解説していますので、ぜひご覧ください。

関連記事:【最新版】リスティング広告のABテスト。レスポンシブ広告時代に成果を出す7つのアイデア

広告運用に機械学習を用いるメリット

広告運用に機械学習を用いるメリットは、以下の3つです。

  • CV数アップにつながる
  • CPAを削減できる
  • 広告運用の工数を削減できる

CV数アップにつながる

広告運用に機械学習を用いることで、CV数アップにつながりやすくなります。

機械学習を用いれば、過去に蓄積された大量のデータをもとに「どんなクリエイティブが最適か」「どの層をターゲットにすべきか」などを自動で判断してくれます。

この結果をもとにクリエイティブや配信先を最適化できるため、手動で出稿するよりも効率的にCV数アップを実現できるのです。

CPAを削減できる

機械学習を用いることによって広告運用の効率が上がり、CPAを削減できる可能性が高まります。例えば、スマート自動入札を活用すれば入札価格を自動で最適な価格に調整してくれるため、広告費の無駄を無くすことが可能です。

また、機械学習によってCV数を最大化できれば、結果的にCPAの削減につながります。

広告運用の工数を削減できる

機械学習を用いることで、広告運用にかける工数を大幅に削減できます。例えばスマート広告を活用した場合、広告のクリエイティブ作成やターゲティング設定を自動化できるため、手動で設定する手間が削減可能です。

また、スマート自動入札では予算さえ決めれば入札単価を自動で調整できる上に、レポートも用意されているため分析にかかる工数も削減できるでしょう。

広告運用に機械学習を用いるデメリット

広告運用に機械学習を用いるデメリットは、以下の2つです。

  • データの分析に時間がかかる
  • データ不足により精度が低くなる

データの分析に時間がかかる

機械学習には大量のデータが必要であり、そのデータを収集するためには時間がかかります。一般的に、データを蓄積・分析するには2〜3週間かかるとされており、機械学習が完了し安定した配信ができるようになるには3ヶ月ほどかかると言われています。

学習データの内容によっては、さらに時間がかかるケースもあるでしょう。

データ不足により精度が低くなる

機械学習では大量のデータを学習することによって、より正確な予測・設定・広告配信が可能となります。そのため、学習に必要なデータが不足していると精度が低下する可能性があります。

Google広告の場合、精度の向上を図るには目安として過去30日間に30CV以上のデータが必要とされているので、注意しましょう。

機械学習を用いた広告運用で押さえるべき3つのポイント

機械学習を用いた広告運用では、以下3つのポイントを押さえておく必要があります。

  • 広告グループの数を最小にする
  • 1つの広告グループの広告数を3つ程度にする
  • 部分一致キーワードを追加する

広告グループの数を最小にする

機械学習を用いた広告運用では、広告グループの数を最小にしましょう。広告グループが多すぎるとデータが分散されてしまい、機械学習のアルゴリズムがデータを収集するのに時間がかかります

データの分散を防ぐためにも、キャンペーンは商品・サービスごとに作成し、広告グループは異なるターゲットごとに作成するのがおすすめです。

1つの広告グループの広告数を3つ程度にする

1つの広告グループにつき、広告を3パターンほど用意するのも大切なポイントです。

機械学習を用いたスマート広告では、ユーザーの検索キーワードや興味関心などに対して、より高い効果が期待できる広告を作成・配信します。

複数の広告を用意しておけば、それだけ選択肢の幅が広がるため、より効果的な訴求ができる広告が配信されやすくなるでしょう。

部分一致キーワードを追加する

機械学習を促進するには、マッチタイプが「部分一致」となっているキーワードも追加しましょう。

指定したキーワードと関連のある語句の検索に対しても広告が表示されるようになるため、機械学習に必要なデータをより早く収集できるようになります。

また、幅広いキーワードに対して広告を表示することで、CV数の向上も期待できます。

機械学習を用いた広告運用の成功事例2選

ここでは、機械学習を用いた広告運用の成功事例を2つ紹介します。

自動入札と部分一致の導入でCV数69%増

東晶貿易株式会社事例.png
出典:自動入札と部分一致の導入でCV数69%増|東晶貿易株式会社

東晶貿易株式会社は、金融・人材・教育など様々な業界におけるインターネットメディアを複数展開しています。メディアの1つ「キャリアガイド」では、これまで手動入札かつ完全一致で運用していましたが、CV数と費用対効果が伸び悩んでいました。

そこで、自動入札の導入と完全一致・部分一致の併用を行ったところ、費用対効果を維持しながらCV数を69%増加させることに成功しました。

機械学習を活用することでCV数24%増、CPA13%減を実現

ユニオンエタニティ株式会社事例.png
出典:機械学習を活用することでCV数24%増、CPA13%減を実現|ユニオンエタニティ株式会社

廃車買取サービスを提供しているユニオンエタニティ株式会社では、クリック単価を手動で設定しCV獲得に取り組んでいましたが、大規模運用を行う中、単価調整に課題を感じていました。

そこで、スマート自動入札の入札戦略である「コンバージョン値の最大化」へ切り替え、CV数24%増CPA13%減を実現しています。

機械学習を推し進めたことで、工数を削減しながらCVアップという成果につながった事例です。

広告の機械学習でよくあるQ&A

最後に、広告の機械学習でよくある疑問をまとめました。

リスティング広告の学習期間は?

機械学習によるリスティング広告の学習期間は通常2〜3週間かかるとされていますが、広告の掲載数やクリック数、競合状況などによって異なります。Googleでは、学習期間の長さに影響する要因として、以下のようなものを挙げています。

  • キャンペーン
  • 広告グループ
  • キーワード
  • CV数
  • コンバージョンサイクルの期間
  • 入札戦略

学習期間は、設定を変更すると学習に悪影響を及ぼす恐れがあるため、できる限り変更しないようにしましょう。

入札戦略の「学習中」とはどういう意味?

Google広告の入札戦略のステータスの1つである「学習中」とは、該当するキャンペーン入札単価の最適化に向けて調整中であることを表す状態です。

主に、入札戦略に変更を加えた場合に学習中となることが多く、Google公式のヘルプでは学習中になる理由として以下の4つが挙げられています。

  • 新しく作成された、もしくは再度有効になった入札戦略である
  • 入札戦略の設定を変更した
  • 入札戦略に関連するコンバージョンアクションを追加・削除・変更した
  • キャンペーン広告グループ、キーワードの追加・削除を行った

学習中となっている間は、掲載結果にわずかな変動が生じることがあるため注意しましょう。

参考:入札戦略のステータスについて|Google広告ヘルプ

Google広告の「学習中」はいつまで続く?

Google広告のステータスが学習中となっている場合、新しい目標に合わせて入札戦略が調整されるまで、最長2〜3週間程度かかることがあります。ただし、コンバージョンデータの量によっては短縮する場合があります。

機械学習を活用して広告運用の最適化を図ろう

機械学習を活用した広告運用を行うことで、CV数アップやCPA削減、運用工数削減などのメリットが期待できます。

機械学習による広告配信が最適化されるまでには2週間〜3ヶ月ほどの期間がかかるとされていますが、学習が完了すれば大きな効果が期待できるでしょう。

広告代理店に依頼しているがインハウス化を検討している」「運用を自動化して成果アップ・工数削減を実現したい」といった悩みを抱えている方は、本記事で解説したポイントなどを参考にしながら、機械学習を用いた広告運用を初めてみてはいかがでしょうか。