ビジネスの現場ではロジカルシンキング(論理的思考)が求められます。論理立てて考える癖がつくと、相手に自分の考えていることが伝わりやすくなるため、プレゼンや商談などあらゆる場面で必要とされる力です。ロジカルシンキングの基本と言われる概念の1つに「MECE(ミーシー)」があります。

今回は、「MECE(ミーシー)」の基本を具体例を交えて解説します。

目次

  1. MECE(ミーシー)とは漏れなく、ダブりのなく全体を網羅すること
  2. ビジネスにおけるMECE(ミーシー)の活用例
  3. MECE(ミーシー)はロジカルシンキング の基本
  4. MECE(ミーシー)に考えるコツ
  5. MECE(ミーシー)で売上アップの案を考えてみる
  6. MECE(ミーシー)ができるようになるためには(訓練方法)
  7. MECE(ミーシー)は万能ではないことに注意する
  8. MECE(ミーシー)の注意点

MECE(ミーシー)とは"漏れなく、ダブりのなく"全体を網羅すること

MECE(ミーシー)のイメージ

MECE(ミーシー、またはミッシー)は「Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive」の略で、直訳すると「お互いに重複せず、全体に漏れがない」となります。「漏れなく、ダブりなく」と訳されることが多いです。

意味は以下の通りです。

  • Mutually(お互いに)
  • Exclusive(重複せず)
  • Collectively(全体に)
  • Exhaustive(漏れがない)

物事を整理する時、ある部分が重複していたり、逆に抜けてしまったりすることは往々にしてあります。抜け漏れをできる限りおさえるための基本がMECEです。MECEはフレームワークではなく考え方であると言えるでしょう。

ビジネスにおけるMECE(ミーシー)の活用例

例えば、ネットショップの売上を増やしたいと思った時、どの要素を見直せばいいでしょうか。

  • 商品の質
  • 商品店主
  • ターゲティング
  • 商品単価
  • コンバージョン率
  • 流入数

etc…

上記のように、売上に関係がありそうな要素を思いつくまま挙げるだけでは抜け漏れが起こり不十分です。「売上に影響するもの」という枠組みで考えた場合、コンバージョン率や商品単価などの売上に直接影響を与えるものだけでなく、天候など自分ではコントロールできない項目まで入ってきてしまいます。これでは、問題がぼやけてしまい、本来の目的である「売上増加」のためにできる施策を考えづらくなってしまいます。

売上の全体像をイメージしたうえで、売上増加のために改善の余地があるのはどのような要素なのか、と考えることが「MECE」であることの第一歩です。

売上の構成要素.jpeg
引用:売上アップの基本公式~売上の基本構成要素|ferret

MECE(ミーシー)はロジカルシンキングの基本

MECEは、ロジカルシンキング (論理的思考)の基本概念です。ロジカルシンキングとは、物事をピラミッドのように順序立てて考え、矛盾が起きないように組み立てていく思考のこと。ロジカルシンキングで一つひとつの要素を分解して組み立てていく際、MECEの「漏れなく、ダブりなく」の概念が重要となります。

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ロジカルシンキングは、論理的思考のことで何かを説明する際に有効な考え方です。大きく分けると3つほどあり、「演繹法」「帰納法」「弁証法」がよく使われます。ビジネスシーンでよく使われるのは帰納法や弁証法で、身に付けることで伝える相手に納得させるようなことが可能になります。自分の頭の中で考えるのと伝えるのを考えると、論理だけでなく情緒も考える必要があります。

MECE(ミーシー)に考えるコツ

既存のフレームワークを使う

MECEに慣れないうちは、自分やチームメンバーの考えに抜け漏れがあるのかどうかを見極めるのは難しいでしょう。

そんな時はフレームワークを使ってみます。一般的に知られているフレームワークは洗練されているものが多く、枠に当てはめていくだけでMECEを実現できます。

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ビジネスを行う上で「どうやったら集客できるの?」「どうやったら売れるの?」と考えるとキリがないですし、考えた結果、どうしていいのかわからない!ということも少なくありません。そういった考えるべきポイントをパターンとして落とし込み、誰でもできるようにしたものがフレームワークです。

要素分解する

3C分析

MECEについてフレームワークで考えるときに、必ずと言っていいほど引用されるのがこの3Cのフレームワークです。もともとは、現代マーケティングの父と言われるフィリップ・コトラー氏が提唱されたフレームワークです。企業活動を3つのCから分析することで、漏れもダブリもなく正しく市場を分析できます。その3Cとは、顧客分析(Customer)、競合分析(Competitor)、自社分析(Company)の3つのCを意味しています。

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マーケティングの4P

マーケティングの4Pとは、製品(Product)、価格(Price)、流通(Place)、プロモーション(Promotion)の4つのPから成る、製品開発から販売プロモーションまでのマーケティング戦略をMECEに考えるフレームワークです。このフレームワークで考えることで漏れやダブリはなくなるものの、個々が独立した概念というより、相互に思考を行き来しながら考えていくことでより効果的なアウトプットを生み出せます。

マーケティングミックス」とも呼ばれ、1960年代前半にアメリカのジェローム・マッカーシーという経済学者が提唱したフレームワークになります。

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SWOT分析

SWOT分析とは、マーケットにおける自社のビジネスチャンスを発見するために、自社を取り巻く環境と、それに対する自社の状況をMECEに考えるためのフレームワークです。このビジネスチャンスとは、自社の成功要因(KSF)にあたる事業戦略の核となる部分に相当します。

SWOTは、強み (Strengths)、弱み (Weaknesses)、機会 (Opportunities)、脅威 (Threats) の4つの頭文字を取って付けられた名前で、1960年代から70年代にスタンフォード大学に在籍したアルバート・ハンフリーによって生み出された概念です。

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今回は、数あるフレームワークの中でもSWOT分析(スウォット分析)の各要因の解説に加えて、分析結果をどのように戦略策定に活かしていけばよいか、について紹介。事業創造などの大きな事柄を検討する際はもちろん、自分の業務を見直すなど、様々な場面で使用できます。フレームワークを使った考え方を取り入れてみましょう。

時系列にステップを分ける

バリューチェーン

マイケル・E・ポーターが1985年に発表した『競争優位の戦略』という著書の中で提唱した、価値連鎖という意味のフレームワークです。これは事業プロセスを主活動と支援活動に分けて、どの工程でどういったバリュー(付加価値)を出しているかを漏れなくダブリなくMECEに分析するためのフレームワークです。

このバリューチェーンを行うメリットは、外的要因(マーケットの変化やユーザーのニーズ)を踏まえて競合の打ち手を予測すると共に、自社の強みを整理整頓して、精度の高い事業戦略を行っていく手掛かりが見えてくることです。

製品ライフサイクル

製品ライフサイクルとは、製品が市場に登場してから退場するまでの間を指し、導入期、成長期、成熟期、衰退期の4つの段階にMECEに分けて考えることで、それぞれの段階で適切なマーケティングを行うためのフレームワークです。前提として、各段階によってマーケティング課題が異なるという前提があり、課題が異なるからこそ、取るべきマーケティング戦略も異なるという話になります。4つの切り口は、売上高(および利益)と時間の関係から大まかに区分されますが、当然ながら明確な数的ラインがあるわけではありません。

AIDMA

ユーザーの購買決定プロセスをMECEに説明するためのフレームワークです。 ユーザーはまず、製品を認知して(Attention)、興味を持ち(Interest)、欲しいと感じて(Desire)、記憶して(Memory)、最終的に購買行動に至る(Action)という切り口です。

1920年代にアメリカのサミュエル・ローランド・ホールが「広告宣伝に対する消費者の心理的なプロセス」として発表したフレームワークですが、AISASなど類似の概念が多数あるために、フレームワークに振り回されないように適切に使い分けるようにしましょう。

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マーケティング施策を行うとき、顧客がどのような流れでサービスを認知し、魅力を感じ、購入するのかを知るのはとても重要です。顧客の購買行動を体系化したフレームワークは複数存在しており、顧客の行動の変化によって変遷しています。今回は、購買行動を体系化したフレームワークを時系列で振り返りながら、購買行動モデルの移り変わりについて解説します。

対称概念で考える

効果/効率

「効果」とは、自社の目的が、どれだけ達成されたかを表す度合いです。目的(ゴール)にどれだけ近づけたかと言い換えることができます。

一方、「効率」とは、その目的の達成に当たり、どれだけ少ない費用・時間・手間で済んだかを表す度合いです。この効果と効率の切り口でMECEに分けて考えることは重要で、まず「効果」があって「効率」があるという理解を持って下さい。目的が達成を意識して、効率を見ていくことで、漏れもダブリもなく考えることができます。

質/量

「質」と「量」と書くと分かりづらいかもしれません。例えば「定性データ」と「定量データ」と言えば少し分かりやすくなるでしょうか。「定性データ」はインタビューなどを通して得られる感想や意見などを指します。数字にできないデータです。逆に「定量データ」は統計データなどの数量化が可能なデータのことを指します。データを上記のようにMECEに分けることで、データを正しく分類でき、意思決定を間違える可能性を下げてくれます

事実/判断

「事実」は誰が見ても同じに認識できる事柄です。例えば、2016年のアメリカ大統領選でドナルド・トランプ氏が大統領に就任しました。これは誰もが同じ認識を持っている事実です。

その上で、彼がアメリカという国をより良く発展させられることができる資質を持っているか否かの意見を述べることは判断です。人によって解釈が異なってくるからです。何が事実で何が判断かをMECEに分けて考えることで、正しい意思決定ができます。

因数分解してみる

因数分解して考える発想は、上述の

●売上=顧客数×利用頻度×利用金額
●従業員=正社員+契約社員+派遣社員+アルバイト

で紹介した通りです。因数分解してフレームワークを考える際は、四則演算をイメージして考えると良いでしょう。上記は足し算と掛け算ですが、他に引き算と割り算でもMECEにフレームワークを作ることができます。

国内旅行について考えるときに、全体(地球)をイメージして引き算をして、海外旅行についても検討材料に入れるなど。また、割り算であればCTR(Click Through Rate)をクリック数/露出回数に分解して、それぞれの要素について考えることができます。

階層に気をつける

階層に気を付けるとは、抽象レベルを間違えないと言い換えることもできます。

例えば、男性と女性は抽象のレベルが同じですが、男性と主婦では抽象のレベルが異なります。異なる階層のものを並べて論じることで、漏れやダブリが発生し、MECEではなくなってしまいます。

世の中で流行っているフレームワーク(3Cや製品ライフサイクルなど)を使う場合であれば、抽象のレベルが揃った段階で思考をスタートさせられますが、四則演算などを用いて自分でMECEなフレームワークを作る場合は、特に気を付けて考えていく必要があります。

違う切り口を混在させない

違う切り口を混在させてしまうのも、MECEを考える上でよくやってしまうミスです。

例えば、自動車マーケットにおける今後の競争優位は何になるかを考えているとします。トヨタとホンダは同じ自動車メーカーという切り口ですが、トヨタとサイバーエージェントでは業種の切り口が異なってきます。抽象のレベルは「企業」という単位で揃っているものの、切り口が違うことで正しい分析や意思決定ができなくなってしまいます。このように抽象のレベルだけではなく、切り口も揃えることで正しくMECEなフレームワークを作ることができます。

MECE(ミーシー)で売上アップの案を考えてみる

MECEに漏れがある例

売上を伸ばそうと考えた時に、「売上を構成する各要素」について考えた方が具体的なアイデアが出しやすくなります。売上の要因を「顧客数」「利用頻度」に分類したとします。

顧客数×利用頻度

「顧客数」と「利用頻度」を伸ばす取り組みを行うことになりますが、この分類だと「漏れ」があります。「1回あたりの利用金額」です。

顧客数×利用頻度×利用金額

「顧客数」と「利用頻度」より「1回あたりの利用金額」を伸ばす方が、簡単かつ効果的な可能性があります。しかし、分類の仕方に漏れがあったがために「1回あたりの利用金額」をあげる施策について考えないままになってしまう可能性があります。検討した後で見送ることは問題ではありませんが、そもそも検討の対象に入らないというのは大きな問題です。

MECE(ミーシー)にダブりがある場合

今度は「顧客数」「新規顧客数」「顧客単価」「利用頻度」「1回あたりの利用金額」で考えてみます。漏れはありませんが、「顧客数」と「新規顧客数」でダブりが生じています。「顧客単価」と「利用頻度」「1回あたりの利用金額」の関係も「ダブり」です。

ダブりを認めてしまうと、分け方が無限に出てきてしまいそれぞれについて議論を深めることができません。ダブっているもの同士を比べることで気付けるので、「漏れ」ほど気づきにくいものではありません。議論を始める前にダブりの存在は意識しておきたいところです。

MECE(ミーシー)で従業員を分類してみる

とある会社の従業員を分類する際の考え方にMECEを当てはめてみます。

1.jpg
従業員を正社員、契約社員、派遣社員、アルバイトで分類すると、漏れもダブりもなくMECEになります

2.jpg
従業員を新卒社員、若手社員、中堅社員、古株社員で分類すると、漏れは無いですがダブリが発生しMECEにはなりません

3.jpg
従業員を20代社員、30代社員、40代社員で分類すると、ダブリはないですが漏れがありMECEにはなりません

4.jpg
従業員を正社員、在宅勤務社員、工場勤務社員で分類すると、漏れもありダブリもありMECEにはなりません

MECE(ミーシー)になっていない場合に発生する問題とは

MECEに漏れやダブりがあると、考えるべき全体像を正しく捉えられません。全体像を正しく捉えることができないということは、簡単に言えば判断を間違えてしまう可能性が高くなります。

上記の例にあるように、漏れがあれば、ゴールが定義できなかったり、大事な要因を見落としてしまったりする可能性も出てきます。またダブリがあれば、二律背反に陥ったり、効率性を落としてしまったりもする出そう。

判断を間違えてしまうことで、経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)を非効率に使うことになり、最終的にはそれが売上や利益という企業として追うべき目標の未達につながります。問題解決を行ったり、何かの意思決定をする際には、漏れもダブリもなくMECEに考える必要があるといえるでしょう。

MECE(ミーシー)ができるようになるためには(訓練方法)

まずは世の中に流通しているフレームワークを勉強してみて下さい。単純に言葉を暗記するのではなく、そのフレームワークを使って実際に分析してみることが重要です。使いこなせなければ、理解できていないのと同じだからです。ただ、思考の訓練は一人ではできません。実際に作ったアウトプットを自分の上席や自分より優秀な同僚に見せるなどして、フレームワークを使いこなせているかどうかを確認する作業が必要です。それも一度きりではなく、何度も反復練習をしてフレームワークを作り直すことで自分のものにすることができます。

既製品のフレームワークで練習すると同時に、小さなフレームワークで構わないので日常生活の思考がMECEになるように考えてみて下さい。それらを同僚や後輩に見せてフィードバックをもらい、何度もMECEになるように思考の訓練を続けることで、自然と上達していきます。

MECE(ミーシー)は万能ではないことに注意する

MECEは「抜け漏れをなくす」という考えを持つためのものであり、MECEを知ったからといって抜け漏れを完全にゼロにできるわけではありません

先に挙げた例を使うと、売上増加のために改善できる要素は、厳密には上記のものだけではありません。1ページ1ページの文章の内容・質まで、改善するための要素としては考えられます。しかし、売上に貢献できる割合を考えると、おそらく直接的な効果は少ないでしょう。

「売上増加」を目的とする場合、そのような細かな要素を全て網羅するのではなく、売上をあげるための肝となる要素はなにかを考えましょう。どこを抑えれば売上に大きく貢献できるのかを洗い出すことができれば成功です。

MECE(ミーシー)の注意点

一見簡単に思えるMECEですが、思い込みで分類してしまうと思わぬ失敗が起こります。

例えば、性別を分類するとします。性別といえば一般的には男・女の2種類ですが、厳密に言うとそれだけでは不十分です。

身体と心の性別は必ずしも一致するとは限らず、身体的な性別と心的な性別どちらを優先するのかという問題があります。この例に限らず、思わぬところに思考の「漏れ」は存在します。「漏れはないか」と何度も疑い、対象を深堀りしていく必要があります。

そして注意したいのは、「どの項目までを含めるか」について考えなければいけないという点です。例えば、アンケートに性別を答えていただく質問項目を設置する場合、単純に「男・女」という表記でいいのか、より深く聞いた方がいいのかはアンケート内容によります。抜け漏れを防ぐことは目的ではなく、あくまで目的を遂行するためのステップです。MECEにこだわるあまり目標から逸れることのないようにしましょう。

MECE(ミーシー)を使って課題を俯瞰しよう

MECEは、「抜け漏れをなくす」ことを念頭におき、全体像を把握するための概念です。特にビジネスにおいては、まず全体を俯瞰しようとする思考が重視されます。

つい目の前にある「木」を1本1本数えるところから始めがちですが、まずは「森」全体を俯瞰する必要があります。数えなければいけないのはどのような木なのか、何本あるのかというように全体から詳細に落としていく思考を癖付けていきましょう。

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