「旅するマーケター」西井敏恭が、マーケティング分野で注目の人物にインタビューをする連載企画。

第4回は、リスティング広告やFacebook広告などの運用型広告を手掛けるコンサルティング会社、アナグラム株式会社の代表取締役である阿部圭司氏にお話を伺いました。

前編では阿部氏が考える組織風土、文化の作り方や如何にマーケターを育てるかお話をお伺いしました。

今回の後編ではより運用型広告に関するお考えをお話頂きました。

リスティング広告の5タイプ理論とは?

西井:せっかくなので、リスティング広告の話も聞きたいんですが。

SEOの辻さんが、SEOのポートフォリオを発表していましたが、阿部さんのなかでああいうものはあるんですか?
GDNとかYDNとかを含めて、単純に検索とか、こういう決まりでこういうバランスで、これにちょっと力を入れようみたいな。

阿部:辻さんは小中大と言っていましたが、僕の場合は業種ですね。

(ここからホワイトボードを使っての解説)

阿部:コマースデザインの坂本悟史さんが提唱している、eコマースの4タイプ理論というものがあるんですが。

上に行けば行くほど指名買い、右に行けば行くほど衝動買いという分布図があって、eコマースにはこの4つしかないということなんです。

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引用:『売れるネットショップ開業・運営 eコマース担当者・店長が身につけておくべき新・100の法則。』坂本悟史、川村トモエ著、インプレスジャパン、2010年

まさにリスティング広告も同じ。モノを売ることと問い合わせを増やすことは一緒なんです。そのなかで、リスティング広告は5タイプあるというのが定説です。

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左上の指名買い中心というのは、有名ブランドタイプ。ロレックスやオメガなどですね。
そういうのは衝動買いしないじゃないですか。ロレックスが欲しくて欲しくて、何日も悩んで買いますよね。基本的に家電もそうですね。

左下がニッチタイプ。みなさんが絶対買わないものです。一生検索しないタイプの商品。
剣道防具がいい例ですね。

でも、剣道防具は売れるんです。みなさんは欲しいと思うことはあまりないと思うんですが、剣道部ってまだまだあるのに、、街の剣道防具屋さんはそれほど見ませんよね。みなさんネットで買っているんです。ニッチだけれども、固定ファンがいるものというのは結構あるものなんですよ。

右下がオリジナルタイプ。いわゆる化粧品や健康食品などの単品通販です。

右上は総合タイプです。5タイプ理論では、ここをAとBに分けます。

タイプAは、DIYのように商品点数がものすごく多いとか、家具とかです。家具は、ネットで一番売りにくい商材だと思っていて。

家具というキーワードの中に、いろいろな志向の人がいるんですよ。高級家具から安い家具から、アジアン家具。
一つのキーワードの中にさまざまな趣向の人が隠れていて非常に難しいジャンルの一つです。欲しいものすら明確じゃないということも多いんですよ。
タイプAはネットで売りにくいとされているものですね。

タイプBは、近江牛とかですね。通販はもちろん、それ意外で年間のイベントで売り切りたいもの。
母の日とか父の日とか、お中元、お歳暮などでパッケージ売りができるもの。頻繁にイベントがありますからね。

基本的にはこの5つしかない。
例えば、オリジナルタイプであれば、衝動買い中心なんです。そうなると、検索からの衝動買いはしにくくなるんです、当然ですよね。
だって衝動買いなんですから自分が欲しいものを自分でまだ認識していない状態だといえます。そんな状態では問題意識をキーワードとして検索エンジン投げることは難しい。

じゃあ、どうやって衝動買いをさせるのかということで、GDNやYDN(ここではリマーケティングを含まない)と呼ばれているコンテンツ向け広告ですね。
ここから誘導して衝動買いさせるという。これが正しいやり方です。

ただし、オリジナルタイプでも人気になれば有名ブランドに寄っていくので、有名ブランドタイプよりのオリジナルタイプになります。

お客さんの商材やフェーズによって、戦い方は全然違います。むしろ、有名ブランドタイプのような指名買い中心のものはコンテンツ向け広告は不向きです。徹底的に型番とか品番を網羅したほうが効果があります。今だったらショッピング広告とか。

商材によって全然違うんですよ。なのに、リスティング広告というくくりでやってしまうから、リスティング広告がうまくいかないとか、やりつくしたということになってしまう。でも、ほんとうはそうではなくて、商材とフェーズ、場合によっては立ち位置などによって正しいポートフォリオが違うという話なんです。

場合によってはPRのほうが正しいときもある

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西井:ECに関しては僕も同じような考え方なんですよ。
坂本さんの本を読んだということもありますし、僕なりにタイプが違うと攻め方が全然違うと思っていて。

僕は、GDNやYDNを含めたリスティング広告と、最近ではFacebook広告、あとはアフィリエイト。この3つをやればほぼ十分です。
ほんとにやりきったら次に行けると思っているんですけど。

ただ、うちリスティング広告やってるけど全然ダメなんだよねって言う言葉をよく聞きます。

その辺どう思われますか? リスティング広告はGDNやYDNも含めて、リスティング広告がダメな時点で、広告全部ダメなんじゃないかくらいに僕は思っているんですけど。

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阿部:リスティング広告って、絶対に滑らない打ち方というのがあるんですよ。

要は、指名キーワードと顕在されたキーワードとリマーケティングしかやりませんとか。予算をそんなに使わない状態でできたりするんですが、間違った目標を立ててしまったばっかりに無理に突っ込んでしまうからよくなくて。

よくあるのは、予算が100万円あるときに、ニッチタイプだと費用対効果をみながら使いきることはほとんどのケースにおいて不可能です。
でも、皆100万円と設定された時点で、100万円分アクセルを踏んでしまう。商材とフェーズ、目標値などによって、正しい予算というものがあるわけです。

なので、目標値を立てるところから一緒に入らないとそもそもの負け戦に入ってしまう。戦略を戦術で凌駕しようと思っても殆どのケースにおいて無意味ですよね。

西井:だから、Facebook広告リスティング広告とアフィリエイトだけやって、やり切るっていうのが重要かなと。
予算のマックスというわけじゃなくて、ある程度きれるところまでやるという。

阿部:効率よく売り上げを求めるのであれば、それでいいと思います。

でも、3つだけだと限界はあるので、結局はどこを目指すのかなと思っていて。

年商100億円が目標であれば、それなりにやっていかなければなりません。
もちろん、スタートアップのお客さんなどで、広告でブーストをかけたいというオーダーもあります。

でも、場合によってはPRのほうが正しいときもあるんです。

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たとえば、まだあまり浸透していない業種を認知させたい場合、広告料をいくら出してもダメ。
まぁ必ずしもダメとは言いませんが、一過性の広告ではほぼ不可能です。まずはその空気を作らないといけない。

それは広告じゃないんですよね。PRなんです。要は順番。
空気を作った上で広告を打つならいいんですけど、広告でブーストをかけて空気を作る、みたいなのは願望であり正しい戦略とは呼べません。

そういうことを理解してできるネット系の代理店はほとんどないと思うんですよ。

西井:PRとかもやられるんですか?

阿部:PRはやりませんね。でも、こういうやり方もありますよねという話はして、それに合うパートナーを紹介したりしてます。

今の広告はやらなければいけないことがたくさんある

西井:本来の広告は、たとえばテレビCMなら、すごくいいCMを作ったらものが売れた時代がありましたよね。
この商品すごく欲しいと思わせることが広告の原点であり、そこからどんどんその広告をこんな人に出せたら、こういう場面に出せたらと進んでいきました。

結果、今までのような無駄な広告はなくなってきて、効率的になりますよというところが、運用型広告になってきています。
今後も運用型自体はものすごくよくなるはずなんですけど。現状プレイヤーの問題として、そういうものを欲しくなる広告を作れる人がすごく減っている気がします。

その辺りは、運用型広告をやっている会社としてどう思いますか?

阿部:確かにやることが多すぎるという点は思います。僕が12年前にこの業界に入った当時は、検索連動型広告コンテンツマッチしかありませんでした。

今は、たくさんの機能が入ってきていて、やることがたくさんある。そうすると、確かにそこにまだ手が回っていないというのは出てきているかもしれないですね。

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西井:最終的にそのバナーなりLPなり、動画なり、それを見てほしいと思わない限り、一番いい広告ってできない気がするんですよ。

今後誰かがそれをやっていかなければいけないのかと考えたときに、広告主側がクリエイティブを徹底して考えていく必要があるのかもしれない。
運用型広告は複雑で難しいところもあるから、そこはそこで尖ってなきゃいけないとは思っていますが。

私がコンサルで入った企業でたまに見るのが、アカウントがどうとかじゃなくて、このバナー甘いよねということ。
このバナーでやってる限り、どんなに優れたアカウントを設計したところで売れないよねっていう。

今から入ってくる人たちは、そこに疑問を感じずにやってしまう。彼らが悪いわけじゃなくて、やることがいっぱいあってしょうがないという部分があります。

運用型広告は、テレビCM全盛の時代から見ると、夢みたいな話だと思うんですよ。

効果がいい、視聴率がいいところとかに、今までタイムで買っていたのをスポットで買って、さらにスポットが自動化して、明日のここの枠は効果あるからいく、ここは効果ないからやらないみたいなことがリアルタイムでできてるという、結構夢みたいなことができている。

そのなかで、逆にそっち側を担うプレイヤーってどうしたらいいのかなっていう。

阿部:それでいうと、今は、大きく流れが2つあるかなと思っています。
メーカーさんのほうから絶対的な戦略を持って代理店に流し込むっていうのがひとつ。

そして、その逆。アクセンチュアがIMJと組んだというのがすごくわかりやすい例だと思いますが。

代理店なのかもしれませんが、代理店からストラテジーが育っていくみたいな流れがあって。
僕らからすると、規模は小さいですけれど、それを昔からやっているのがうちだと思っています。だから一部の方々には重宝していただけてるのかなと思っていて。

大きい会社の経営陣には見えない経過とか、僕らには見えている場合があるんですよね。
ネットではこういうニーズが今生まれていて、こういうのを展開していったら、この会社さんの技術だったらこの横展開が絶対うまくいくというのが、僕らには結構わかることがあるんです。

それを提案するんですね。もちろん全員ができるわけじゃないですけど。

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そういう提案をすると、すごく重宝していただいて、実際に部署を作る会社とかもあって。それでとても儲かりだすみたいなことがあるんです。
そうすると、みんなハッピーになれるんです。
僕らとしてもハッピーですし、彼らはもっと売り上げが上がってさらにハッピーになる。

データがありすぎて、みんな違う方向を見てるときがあります。
そのときに、僕らにしか見えないデータや元々見えていたデータから本当に必要なデータを抽出して意味を持たせてあげた上でお客さんに提案するというのが最上級かなと思っていて。

そこまでいったら成功だよねってよく言ってます。

ただし、全クライアントでそれができるかというと難しいですよね。
それこそ、士業系のお客さんに新規事業を作るって難しいじゃないですか。

例えば、税理士の仕事はそこまでってなっちゃうんで。全員ができるわけじゃないですけど。
僕らにしかわからないデータ、経営陣にしかわからないデータがあって、そのヒントを集めて提案していく。

それはコンサルですよね。僕らは昔からそれをやっているので。そこが最上級だなと。

アナグラムは逆ピラミッド型の組織

西井:広告は本来楽しいじゃないですか。モノが売れたら楽しいし。

そのなかで、一番核となる部分を作れるというのが楽しいところですよね。その中でやはり課題になるのが人や組織では?

阿部:楽しいです。そして人を育てるのは今だに課題ですよね。

人によってペースも違うじゃないですか。急に伸びる子もいますし。

組織の話では、うちの組織形態でいうと逆ピラミッドなんですよね。ピラミッドじゃなくて。それがやっぱり肝かなと思っていて。

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引用:アウトの取り方は1つじゃない。アナグラムは次のフェーズへ

阿部:今までの従来型の組織はピラミッド型ですよね。ヒエラルキーがあってトップがいて。

別にこれが悪いわけではなくて、20世紀の組織だなと思っています。
今のうちの組織は、逆ピラミッド型なんですよ。

現場の人間が一番上です。中間にいわゆるミドルのリーダーと呼ばれる人たちがいて、一番下に僕とか取締役がいて。

何が違うかというと、現場の人間の一番近くにクライアントがいるんですよね。
クライアントは、直接現場の子たちがやりとりをするんです。そこに関しては、トップは一切文句を言いません。

彼らには「倫理と論理が間違ってなければすべてGOだ」と常に言っています。
ビジョンを共有した上で、倫理と論理が自分で正しいと思うのであればGOだから、そこで判断しろということを言っています。

なんでこういうふうにしたかというと、従来のピラミッド型では遅いんですよ。
権限がないし、常に上司に聞かなきゃいけない。軍隊はもともとピラミッド型じゃないですか。
でも今の軍隊は逆ピラミッドに近くなっていて。

僕、軍事とかすごく好きで趣味で調べてたりするんですけど、今のイラク戦争とかが好転してきた理由のひとつに、従来のピラミッド型の組織を逆ピラミッドの組織形態に変えてきたからというのがあるんですよ。

相手はゲリラなので民兵じゃないですか。民兵なので、統率がないんですよね。
統率がないとどこで現れてテロが起きるかわからない。そうなると、上からの判断を仰いでいたら死んじゃうんですよ。
なので、この現場に権限を与えて、自分が正しいと思うことをやれというジャッジをしたんです。

これは、リーダーシップ論の大家であるケン・ブランチャードという人も言っています。
いろいろ試行錯誤していくうちに、今のうちにはこの組織形態が一番フィットしていると思います。

西井:会社の経営として、トップダウンが必要なときはどうするんですか?

阿部:それでいうと、組織全体の戦略は完全なるトップダウンです。
この事業でいくよ、うちがFacebook広告をはじめとするソーシャル関連の広告をやるよっ!と決めたのは、完全にトップダウンですね。

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西井:現場から情報が落ちてきて意思決定も上を仰がなくていいというのはいいですね。
僕、オイシックスで、お前は底辺だって言われたんですよ。底辺のCMOだって言われて(笑)。

多分似てると思うんですよ。オイシックスは、トップダウンで意思決定しなければいけないところはあるけれど、現場が一番接しているのはお客さんだから。
でも現場と内部に情報の乖離があって、西井さんはそこなんですよって。

要はトップは決定しなければいけないことはすごくあるんだけど、かといって日々変わっていく現場で、トップが常に情報には追いつけない。
だから、意思決定しなければいけないところに対して、僕が下から意思決定をすると。

阿部:いい会社ですよね、ほんとに。

それでいうと、うちの取締役と同じような感じですね。彼はこのピラミッドに正確には属してないんですよ。
独立遊軍になっていて、彼が全体をパトロールするんです。

ここがうまくいってないよってなったら、そこにパトロールに行ってこうしたほうがいいんじゃないってアドバイスをしていく。
決して押し付けるわけではなく、より良くなる提案をする。

西井:マーケティングの組織を作っていく中で、たとえば広告ひとつとっても、運用型広告に変わってますとなったときに、意思決定を早くしなければいけない。

現場を見ているのは自分たちだから、下に対する意思決定っていう話ですよね。なんか似たようなこと言ってますね。

マネージメントの仕事は働きやすい環境を作ること

阿部:これを保つのは、やはり採用なんですよね。
たくさん人を取って成り上がってきた人だけを引き取りますっていう方針はうちは取っていなくて。

今、うちは誰かが一人NGって言ったらもう落ちるんです。
会社としては「本当に???」みたいな、泣きたくなることもあるんですが、これを緩めるわけには行かない。

倫理と論理で正しいジャッジができて、ビジョンも共有出来ているメンバーであれば、その判断に委ねるべきなんです。
現場に権限をもたせた以上、現場で判断しないといけないですからね

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じゃあ僕らマネージメントの仕事は何かというと、彼らが働きやすくする環境を作ることだけなんですよ。

うちは自己資金なので、資金調達をこっちで勝手にやる。彼らがやりたいって言ったときに、やれないという環境にはしない。
「これやりたいんですけど、実は1000万円くらい必要になる」といったときに、「会社として1000万円ならいいよ」と言える状態というのは、マネージメントが作らないといけない状態ですね。

僕、去年と一昨年の仕事って、ほとんど資金調達です。
中小企業のためのファイナンス術だったら、だれにも負けない自負があります。

中小企業がいかに銀行と付き合ったらいいのか、法人クレジットカードはどう使うべきか?というのも負けません(笑)

西井:お金大好きですよね(笑)。

阿部:悪意を感じます(笑)でも現実的に、中小企業にとってキャッシュフローは生命線ですから、僕しかできないみたいな。組織は役割じゃないですか。

“つなげる”のが本来の広告のミッション

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西井:今後、運用型広告がどんどん広がっていくだろうということは予測できます。
とはいっても、Facebook、Google、LINEみたいな巨大プレイヤーが出てきて、そこは多分運用型広告になっていくんだろうなと思っているんですけど。

直近で言うと、Webのなかでもディスプレイ広告もあり、リスティング広告もあり、最近ネイティブ広告もあって。
今までずっとGoogle、Yahoo!だけやられていたのが、Facebookが入ってきたじゃないですか。
Web広告においては、バナーが見られなくなってきたところがあるじゃないですか。

スマートフォンの小さい画面のなかで、どういうふうに広告を使っていけばいいのかなって思うんですよ。
運用型広告自体がメインになって、運用型広告のスキルを上げなきゃいけないというのはすごくわかっているんですが、バナー広告はいずれ邪魔になっていくのかなって思ったりするんですよ。

阿部:それこそアドブロックみたいな。

西井:そうなったときに、どういうふうに企業側は広告をやっていけばいいのかなという。
アドブロックされたら、どうやって広告出していいかわからないですよね。そういう世界が来そうな気もしていて。そのときどうするんですか?

阿部:それは、今の広告の倫理観の中のことだと思っています。うちのミッションとして、“つなげる”というのを掲げているんです。

なんで“つなげる”なのかというと、ほんとうにいいものをほんとうに欲しがっている人に届けるべき。
これをつないであげるというのが今の広告の役割だと思っています。

例えば、すごく子育てで疲れているお母さんは、子育てたいへんという頭しかないと思うんですよ。
でもその人たちに、今ベビーシッターが流行ってきていて、実は思っているほど高くなくて、安心で、すごくパーソナライズされている。
この人がやってくれますってFacebookアカウントがつながっていたりするんですね。

すごく安心で安くて、それで週に1回でも預けることができれば、自分はすごく楽になる。
生活も楽になるという、知ってもらえるきっかけになるはずなんですよね。PRが勿論大事な領域ではありますが、広告にしか出来ないマッチングだってあるはずです。

このマッチング、つなぐっていうのが僕らのミッションです。

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広告って、無理やり売るっていう概念じゃないと思ってるんですよね。

昔は、どっちかというとその傾向が強かったかもしれませんが。
絨毯爆撃じゃないですけど、大軍を投入すればなんとかなるっていうやり方をしてたのが、今はいろんな情報がある中で、選んでもらうという世の中になってきましたよね。

これも軍事の歴史をたどるとわかりやすいんですが。

西井:リスティング広告なんてそれの最たるものと言えますね。

僕が新富町で1時間くらい時間が空いたときに、マッサージに行こうと思いついたんです。
で、検索しても怪しいマッサージしか出てこない(笑)。
リスティング広告誰か出してくれよと。

そう考えると、リスティング広告は顕在化しているけど、潜在的なところで広告ってすごい大事だなと思って。

阿部:ハッピーになるはずなんですよ。つなげると。

西井:広告自体の考え方を変えていかなきゃいけない。

なのに、今の日本では、相変わらずリーチとか露出とか、認知度とかの話になる。
ブランドの話をするとすぐ認知度の話になるんですが、ブランドと認知度は別物なんですよね。

そこを変えないといけないと思っています。

阿部:あとは、組織によって目的が違うじゃないですか。その目的を達成するための手段として、もちろん絨毯爆撃みたいなのも選ばなければいけないこともあると思うんですよ。

西井:あれがいいときもありますよ。

阿部:やっぱり目的とそれをどう達成していくかっていうプロセスの中で、いいものを選ぶ。ただ、あまりに強引な手法というのは、これからどんどん嫌われていくと思います。

麻雀とリスティング広告は似ている?

西井:阿部さん、麻雀強いですよね。麻雀とリスティング広告は似ているみたいなお話をされていましたが(笑)。

阿部:冗談抜きで昔プロを目指していて(笑)基本的に負けないです。

攻めるときは攻めなきゃいけないということと、引くべき時には引ける決断ができるかどうか。
今自分がどういうポジションにいるのか、どういうフェーズにいるのかというのをやっぱり理解するという点が似ていますね。
攻めるときに攻められないと意味が無いですし。

よくあるのが、CPAが高騰したからといって入札を下げるみたいなのは一番やっちゃいけないことなんです。
そのキーワードって自分が取れると思って入札したのに、CPAが上がった途端に下げるんですよね。
そのキーワードは、もう一生上げないんですよ。

これを繰り返すアカウントはシュリンクしていくだけです。
でもそうではなくて、自分がいいと思ったキーワードは信じてアクセル踏んであげなきゃいけないんですよ。

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西井:A/Bテストの問題にも似ているなと思って。A/Bテストはそもそもいいと思って踏み込んでるし、悪かったものは下げるべきなんだけど、初動のところで悪いからやめましょうってなると、ずっと5年間、同じことをやっているだけの仕事になってしまう。

阿部:シュリンクするだけなんですよね。

西井::だから、それは麻雀でいうと、我慢するときは我慢するけど、そもそも勝負しに行くときに対して、結果的に半荘終わってトータルで勝っていればいいという考え方になれるどうかなんですよね。ハコらないように3着狙うとか。

僕は将棋が好きなんですよ。将棋って、完全ロジックのゲームで、100%運がないゲームなんです。
負ける人ははっきり負けるんですよ。

これが将棋のおもしろいところで、だけど、麻雀はちょっとわからないところがあるじゃないですか。
一緒に麻雀をすると相手の強さがわかるらしいですね。

阿部:一局打ったら、その人がどれだけ強いかは分かります。

ちなみに、うちに去年入った新卒が、最初たどたどして大丈夫かなっていう感じだったんですよ。
それで、麻雀が得意と言ったんで、ちょっとやろうよって打ったときに、こいつは仕事できるようになるってわかったんですよ。
打ち方が素晴らしかったんです。

来た運を如何に逃さないかという打ち方をするんですよね。
それでいて引くときは引く。そして意思決定が早い。

意思決定が早い人ははじめから「Aが来たらBをする」という形で行動を予め想定しているんですよね。
なので、絶対仕事できるなと思っていたら、今すごく伸びています。

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西井:この間、将棋を知らない知り合いを10人集めて、どうぶつしょうぎ(将棋を更に子供むけに簡単にしたゲーム)をやってもらったんですよ。
それを横で見ていたら、ほんとうに性格出るなと思いました。

10人とも、仕事ぶりはなんとなく知ってるんですが。
いつまでたっても全然決断できない人もいれば、なんにも考えずにポンポンやって、負けちゃったーみたいな人もいて。

入社試験とかにどうぶつしょうぎさせようかなと思ったくらい。
だってわかるんだもん(笑)。

多分麻雀も同じじゃないですか?

阿部:多分同じだと思います。麻雀のルールを知っている前提でいけば。

株とかもそうですね。どういう株の買い方をするかでだいたいわかります。

西井:株と麻雀は似てますよね。

阿部:株と麻雀でいうと、似てると言えば似てますね。人生と麻雀が一番似ていると思います(笑)。

西井:リスティング広告と麻雀は?

阿部:リスティング広告と株のほうが似てます。

僕らは、競合どこですかとか言われるんですけど、同じ業界に競合はいないと思っていて。

僕らがやっているのはファンドと一緒なので、僕らに1000万円預けるよりファンドに1000万預けるほうが儲かるって言われたら負けなんです。
誰よりも最大のリターンをさせる。ファンドなので、株やFXに近いかなと。

西井:将棋の観点からリスティング広告をやるとすると、無駄なキーワードは絶対買わないですよ。
完全ロジックなんで、ダメなものには投資できない、強いものには投資する。

だからシュリンクしちゃう考えにも見えるんですけど、何か違う。
一方で不確定要素がすごい多い中で、勝ち方を探していく麻雀は、おもしろいなと思います。

阿部:捨て牌だけで相手の手が読めますからね。見えなくても、おおよそは相手の手がすけて見えるようになるんですよ。

クセももちろん出ますし、人間性もわかりますし。

西井:そういう意味だと、麻雀はある程度直感的なところがが強いゲームということですか?

阿部:直感も重要ですが、結構ロジカルなんですよ、実は。

西井:将棋って、思考の深さなんですよね。相手の手を読んで読んで読みまくって、その中で一手を決断する。
その一手の決断を間違えた瞬間に、形勢逆転されるんですよ。

麻雀でも、捨て牌1個間違えると形勢逆転されるいうところは同じだと思います。
でも、麻雀は1回1回精算されて、半荘勝負じゃないですか。将棋は多分それできないんですよね。

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阿部:勝負どころをちゃんと見極めるということですかね。

リスティング広告に近いというのは、リスティング広告は基本的に1ヶ月の中での勝負だったりするので、その中で前半の調子が悪くて後半がいいならいいんですよ。
その逆でもいいですし、真ん中が好調でもいいですし。トータルで最大のバックができればいいんです。

もちろん1ヶ月じゃなくて1年かもしれないし。月だけで見過ぎるのもよくないんですよ、実際。
4月と5月比較されても、ゴールデンウィーク入ってたりして。

一番きついのが、5月頭からの運用お願いしますってやつですね。確かに1日は稼動日ですが(笑)
完全に両足に重しをつけて走らさせているような。初速とか下がったねーとか言われても、そりゃ下がるよねっていう。

西井:それはもうロジックとして成り立ってるといえば成り立ってる。

阿部:リスティング広告と麻雀は、トータルで見るという点では近いですね。1日だけでわかるものではないので、

西井:麻雀とか将棋とか、そういうゲームと似ているところと似てないところがそれぞれあるのかなとか。特にリスティング広告の話はおもしろいなと思って。

阿部:入社面接で、「株やったことある?」とか、そういう話はよくしてましたね。
中でも株で大負けした人間が一番いいですね。

トレンドに騙されてる経験があるんですよ。いけると思ったのに下がるんですよね。
ビビって損切りして、そのあとストップ高とか。

ああいう経験をしていると、トレンドって必ずしも絶対的なものじゃないというのがあるので、それを理解した上でトレンドを見られるというのは強いなと思いますね。

西井:今回もすごく楽しかったです!ありがとうございました。

阿部:こちらこそ、いろいろお話できて楽しかったです!ありがとうございました。

フォトグラファー:三浦一紀

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