「先を読み、未来を描くちから。」を身につけるには?

勇気を持ったファーストペンギンでも、適当に海に飛び込んでいてはすぐに天敵に食べられてしまいます。
新しいフィールドに挑戦する人は何かしらの確信を持っています。しかし一般人には勝算があるようには見えません。
しかも、日本には「出る杭は打たれる」という悪しき習慣があります。
そのようなしがらみのなかで、パネラー3名は何を経験し、どのような未来を描いたのでしょうか。

前半パートでは、「先を読み、未来を描くちから」をテーマに3名が、自身の経験と考えを語っています。

コルク代表:佐渡島氏の場合

佐々木氏「佐渡島さんこそメディア界のファーストペンギン」

佐渡島氏
株式会社コルク 代表取締役社長 佐渡島 康平氏

佐渡島氏
僕は講談社に10年勤めて、その後起業しました。
出版社としては大手かもしれないけど、大手だと思ったことはなかったですね。
マスコミは、影響力は大きいものの、ビジネスという側面からみると、中小企業だと思います。

どういうふうに会社を変えられるのかなというところ、どういうふうに氷を厚くすればいいかを考えていた時期もありました。でも、サラリーマンとしてやれることには限界がある。それで、思いっ切りチャレンジしたくて、辞めることにしました。
あの…急になんですけど、普通に自己紹介するの飽きたんで、他己紹介にしませんか?(笑)

佐々木氏
いいですよ(笑)。
NewsPicksの佐々木と申します。わたしから佐渡島さんの紹介をさせていただきます。
一言で言うと、佐渡島さんこそメディア界のファーストペンギンですね。

東洋経済オンラインの編集長時代、新世代リーダー50人という特別企画を組んだことがありました。その時に佐度島さんを知り、近所のサンマルクカフェで2時間くらい話を聞いたのが知り合うきっかけでしたね。メディア業界で外に出た(独立した)人はほとんどいなかった。そういう意味でファーストペンギンだったと思います。

佐渡島さんがやられているのは作家エージェント業です。海外に似たものはあるけど日本にはありません。

例えば、週刊モーニングの編集者は作家を引っ張ってきて週刊モーニングに掲載するのが仕事。作家のコンテンツの出し口が限定されています。
一方、作家エージェントは作家と契約して、テレビでもマンガでも映画でも、自由に出し口を選択できます。佐渡島さんの立場であれば作家にとっての最適解を提供できます。

そして今、佐度島さんが目指しているのはもっと大きいことです。
ちょうど昨日、三省堂などのリアル書店が、楽天や多数の出版社と組んで、電子書籍ダウンロード用のカードを書店で売るというニュースがありました。これ自体は悪い取り組みではありませんが、イノベーティブではありません。あくまで現在の延長です。

佐度島さんは出版業界の商流そのものを根本から再定義しないといけないと考えています。
クックパッドと組んでマンガを売るための新しいプラットフォームをスタートしました※。そこでは印税70%で運営されています。通常のマンガは印税は10~15%程度。70%もの印税が作家に渡るのは画期的です。

※マンガ配信プラットフォーム[Magnet](https://magnet.vc/)

講談社での有望な将来をあっさり捨てた理由

大西氏
佐渡島さんは、講談社のなかでもかなりイケてる編集者だったわけですよね。
それだと不満は無いはず。最年少役員も見えるような良い立ち位置だったのになぜ出ようと思ったんですか?

佐渡島氏:
そこに全く興味がなかったんですね。講談社が取っている戦略は現時点では、正しいと思う。でも僕ってすごく飽きやすいんですよ。自分の自己紹介も飽きちゃってるから他己紹介提案しましたしね(笑)
だからただただ飽きてしまった。講談社として正しい戦略をとるより、業界全体がいい方に変わるような戦略を考えてみる方が面白いって思ってしまったんです。

それに、今、出版物として多数出ているコンテンツで、僕自身が読んでみたいものが少ないんです。
マンガも小説も、昔一度受けたコンテンツを再生産しているだけだと感じている。
自分が編集者として関わる作品は、自分が読みたいと思うものを出しますけど、自分の労働力には限界があって、自分で作れる作品の数は知れている。
じゃあ仕組みを変えようかなと思い立ちました。

コルクは出版社ではなくIT企業。ITを駆使して作家の顧客リストを作成する

以前佐々木さんとお会いしてから色々考えも変わってきていて、今うちの会社IT健保に申請を出す準備をしているんですよ。コルクって世間から編集プロダクションとか、出版社みたいなところだと思われているかもしれませんが、仕事の内容は、IT健保に入るほうが自然な感じになってきている。今の時代って、IT化を、それぞれの業界で定義しなおせる会社が生き残るんだと思うんです。

具体的なところで言うと。
今までの出版社は、本を売ろうとしていました。本を売って、顧客リストは保持していなかったんです。
でも顧客リストがあれば、属性が知れているからとても商売がやりやすい。

宇宙兄弟は50万部以上売れてます。アニメ化もしてるから認知度でいうと500万人ぐらいにはリーチできているかなと。
Twitterは4万弱のフォロワー。Facebookページは1万弱のいいね、ホームページは月間のユニークユーザーは1万弱。どれも作品の影響力と比べるとすごく小さいけど、顧客リストはある程度できていました。
なので物販やってみました。すごく反応がよかった。
作品が深く刺さった人に、より楽しんでもらうための準備を今までできていなかった。

同じコンテンツを好きだという人とはパートナーになり得る。

コンテンツによってつながったコミュニティは普段属しているコミュニティよりも居心地が良い。
だから僕は、作家のファン同士がコミュニケーションを取れる居心地の良い場所を作りたいんです。

東京という街を好きになる人もいるし、週刊モーニングを好きになる人もいる。でも人は、人を好きになる確率が高いんです。
今あるような雑誌単位ではなく、人が全面的に出たプラットフォームを作ろうとしています。

大西氏:
講談社のモデルをそのまま持ちだしたわけではないと。

佐渡島氏:
そうですね。例えば新人のうちからコミュニティを形成したあとで、いざ出版物を出そうとなる時、うちのファンクラブ用に1万部刷ってくださいとオーダーできる。そうなると出版社にとっては確実に売れる場があるんだから相当楽になりますよね。買取保証があるから絶対に損しないビジネスができる。

大西氏:
作家さんにごひいき筋がついているわけですね。作家が新作を出せば、ごひいきさんたちが買ってくれると。

佐渡島氏:
音楽にもそういうのはあるけど、本の方が語れる量が多い。二次創作も非常にやりやすいので、そういうものをやりとりできる場をコルクで提供したいですね。

大西氏:
講談社でもやろうとしてた?

佐渡島氏:
そもそも講談社時代はエンジニアとディスカッションしたことなかった。そこまで気づいたのは最近になってからです。
メディアっていうのは上質な顧客リストを集めるための場であるほうがうまく行く気がします。

メタップス代表:佐藤氏の場合

佐渡島氏「佐藤さんは経営者であり哲学者」

佐渡島氏
佐藤さんは社長であり、哲学者ですね。
自分の頭のなかで描いた世界をビジネスに落としこもうとしている。
メタップスという会社は各アプリの収益を最適化させるための人工知能アプリを開発しています。そちらが軌道にのって世界中でうまくいってますよね。

そのうえで、決済手数料無料のSPIKEも始めている。
世界中に拠点があって、かなり多くの人種の方を雇っていて、更に今、宇宙のビジネスを始めようとしている。そして、それを支えるような資金調達も実現しています。

僕は佐藤さんの思想的な実験がとてもかっこいいなと思っています。資本主義社会に挑戦しようとしています
人がお金を使わずに色々なものを交換できるようになれば、人は貨幣を使わずに生活できる。
そうすると国は税金をとれなくなる。国とは?資本主義とは?お金とは?と問いかけるんです。
お金を介さない世界を見てみたいと思っているんですよ。
そこを思考実験だけではなくてビジネスとして実行していることがカッコいいなあと。

今の他己紹介でいかがでしょうか。

佐藤氏
合ってるような合ってないような(笑)だいぶ盛られてますね(笑)

佐藤氏
株式会社メタップス 代表取締役 佐藤 航陽氏

大学在学中から授業料を資本にして起業

大西氏
会社は学生の頃からですよね?

佐藤氏
20歳で起業しました。大学には3ヶ月しか行ってないですね。

大西氏
就職はしてない? 

佐藤氏
してないですね、なので会社の仕組みとかは知らないので、社員に人事ってこうなってるらしいというのを学びながらやってます。
 
大西氏
そうなったきっかけは?

佐藤氏
もともと裕福な家庭ではなくて、ちょっとおかしいんじゃないかなと。
もっと良い社会システム作れないかなあと思ったのがきっかけです。

大西氏
ここをやれば儲かるとか、というのではない?

佐藤氏
そこではないですね。マネタイズできていれば色々な実験ができる。収益化ってどのような業界でも同じで、収益化できる仕組みを握れてればいいかなと。

大西氏
ピケティじゃないけど、今格差が広がっているなかで、世の中うまくいってない。
革命だ!と思うと松下政経塾に行くとか役人になりそうだけどそうではなく、なぜビジネスをやろうと思ったんでしょうか。

佐藤氏:
政治も良いかなと思いましたが、機動性が一番あってスケーラビリティもあって国家にも縛られないのはビジネスしかないと思いました。

大西氏
でも学生だとなにもわからないですよね。

佐藤氏
わからなかったし協力者もいなかったですね。資本金は授業料です。
最初はSNSのタイムライン的なライフログを作成しました。ただ軌道にのらず売却しましたね。
その後、日銭稼ぎのためにWebマーケティングを3年ぐらいやってました。それが軌道に乗ったのが今のビジネスに繋がってます。
最初の3年はまさにドブ板という感じです。テレアポして、できない仕事をとってきてました。何とか納品しながら成長して、Webのことはそこで覚えましたね。

大西氏
よくお金もちましたね。

佐藤氏
いや、もたなかったですね。ギリギリだったし、借金もしました。でもなんとかなりましたね。

大西氏
何年間かはIT企業に就職して、人脈作ってから起業、とかは考えなかった?

佐藤氏
そういう選択肢を知らなかったですね。色々知ってたら他の方法取ってたかもですね。

大西氏
どういう家庭で育ったんですか?

佐藤氏
高校から自分で稼いて自分で食うというスタイルはありましたね。露天商とか、自分自身でデザインもやりました。
それで自分で資金を貯めて東京の大学に出てきたけど、何か違うなあと思ってビジネスを始めました。

NewsPicks編集長:佐々木氏の場合

佐渡島氏「佐々木さんはとてもクレバーな選択をした」

佐度島氏
佐々木さんが転職したとき「すごく良い転職ですね」とお話ししました。
ユーザベースのように、新しいことにお金を出してくれるところに入ったほうが、自分だけでやるよりもうまくいく。とてもクレバーな選択だったと思います。

東洋経済オンラインは佐々木さんが改革したおかげですぐ、PVが爆発的に増えた。
今もアクセスは増え続けています。
ただ僕はNewsPicksの試みの方が将来的には勝つと思っています。

東洋経済オンラインもプレジデントも、日経BPも新聞や雑誌の延長線上にあります。
情報を発信することがメイン。
自分たちが持っている情報を、あなた達に教えるんです、という一方通行のメディアです。
一方、NewsPicksはニュースを中心としたコミュニティです。
佐々木さんはニュースを配信しているというよりも、各コミュニティに議題を堤出している感覚ですね。

東洋経済からユーザベースに移ったのは「メディアとプラットフォームの融合」というヴィジョンが同じだったから

佐々木氏
株式会社ユーザベース執行役員 NewsPicks編集長 佐々木 紀彦氏

大西氏
NewsPicksは笑点みたいですよね。お題がでて、誰かが手を挙げて。うまいこと言えば座布団一枚!という感じが。あの仕組みは誰が考えたんでしょう?

佐々木氏
創業者の梅田を中心とするメンバーですね。梅田は、僕が東洋経済にいた時にSPEEDAを紹介に来たことがきっかけで知り合いました。

SPEEDAは企業情報のプラットフォームです。企業情報分野のGoogleにしようとしています。
月額料金を払えば、世界中の企業情報を財務から業界情報から何から何までワンストップで調べることができます。
われわれの目標は、「世界で1番愛される経済メディア」を創ることです。そのためには、BtoBのプラットフォームだけでは足りないということでBtoCの領域にも入りました。それがNewsPicksです。

わたしがNewsPicksに移籍したのは、梅田と私の目指す方向性が同じだったから。双方が目指しているのは「メディアとプラットフォームの融合」です。

大西氏
佐々木さんの場合、東洋経済が生き残りを賭けてWebに乗り出した。そこで成功させた。やりたいことができていたのになぜ辞めたんでしょう?

佐々木氏
東洋経済に不満はとくにありませんでした。ただ、その次の発展形の戦略に違いがありした。
佐渡島さんは出版の新しい流通の形を目指していますが、私は新しいニュース流通のコンテンツ作りを根本から作りなおさなければいけないと感じていました。
東洋経済オンラインなどウェブメディアの収益モデルは、PVをとにかく上げて、広告収入で稼ぐモデルです。ただ、今の単価の安い広告収入では、いくらPVを上げても、いつまでも紙のような収益を上げることができない。いくら頑張っても希望が見えません。
未来が見えないゲ―ムは私は嫌いです。楽しくないじゃないですか。そこで新しいゲーム自体を創る必要があった。

大西氏:
東洋経済オンラインはやろうとしてない?

佐々木氏
そんなことはないと思います。メディアとプラットフォームで最適な戦略は異なりますので。

ベンチャーを成長させるチームビルディングとは?

全体像

大西氏
御三方に質問です。日本は出る杭は打つ社会じゃないですか。
ポッと出の学生や、社内でうまくいっている人間は潰される傾向にあります。
その中で3人はうまくいっている。ファーストペンギンの話で言うと、シャチに食われてないよね?
堀江さんなんかはバクバク食われてたと思うけど、皆さんどうやって生き延びたんですか?

佐藤氏
まだそのフェーズに来てないですね。
ライブドア事件の時、自分はここ(日本)でやっちゃいけないなと思いました。
最悪日本で営業できなくなっても海外でなんとかできるように、全リソースを海外に向けました。

大西氏
ライブドア事件の時っていくつ?

佐藤氏
18ですね。

大西氏
なるほど…賢い高校生だなあ。

佐々木氏
佐藤さんってアメリカからのベンチャーキャピタル(以下:VC)からの出資多いけどやはり海外からの評価高いんですか?

佐藤氏
アメリカのVCは厳しかったですね。日本は内向きでスケールしにくいから。

大西氏
日本の学生がいきなりアメリカに行ってお金もらえるものなの?

佐藤氏
数字出てないと無理でしたね。
最初23歳の時にアメリカのVCを尋ねたら、自分にとっては誇らしいと思っていた事業に対して「死ね」と言われました(笑)。
逆にどうすれば投資してくれるのか、チームの作り方とかやるべきことやらなくていいことを聞いてみました。

大西氏
ていうかアメリカのVCにいきなりアポ取れるとも思わないよね。

佐藤氏
飛び込みしました。

いかに自分より優秀な人間を採用できるか

佐渡島氏
その時に聞いたチームビルディング方法で参考になったのは?

佐藤氏
自分よりも優秀な人が採用できるかどうかですね。
「CEOが一番優秀なようではだめ。それに自分より年齢が上な人を採用できないようではダメだよ」と。
あとベンチャーなのに大手より給料が少ないのもダメです。
「人が全てなのであれば1000万か2000万は当たり前。そのくらいの給料が払えないようであればベンチャービジネスはやるべきではない」というのが彼らの考え方でしたね。
日本とは逆の考え方でしたね。
シリコンバレーは年俸1億円とかもあり得るので、人に対する価値観が違います。

大西氏
そう言われて、帰ってきてなにやりました?

佐藤氏
まず事業を全部売却しました。儲かっていてキャッシュもあったけど、このままじゃだめだと思って売却して資金を作った。
あとVCから、サンフランシスコにいってカリフォルニアに住めと言われました。それは鉄則だと。
そこで僕は敢えてシリコンバレーではなくてシンガポールに行った。彼らのルールの中で戦っても彼らに勝てないから、ルールが無いところで勝負しようと思いました。多分シンガポールに資金が集まると思ったんです。そこからバブルが来て、色んな企業がシンガポールに流れてきましたね。

ベンチャーの成長の鍵をにぎるのはCFO

佐渡島氏
何人目ぐらいで自分より良い人材が採用できたと感じました?

佐藤氏
最初はCFO(最高財務責任者)ですね。会社で一番重要なのはCFOです。
なぜならCFOの格で、調達できる金額が決まるからです。CFOが30億をでかいと思ったら3億しか調達できない。
なので極力大きな金額を扱ったことのあるCFOを探すために一番時間をかけましたね。

佐渡島氏
どこから探したんですか?

佐藤氏
起業した社長ですね。起業経験のあるバンカーです。経営もできて、投資銀行の業務経験もある。年齢も28ぐらいでポテンシャルがある。

大西氏
その人自身が頭として活躍できそうなのに、どうやって引っ張ったんですか?

佐藤氏
土下座ですね。ほぼ求婚と同じ。見せられるものは誠意と自分よりも高い給与。
今は自分より高い給与の人が10名以上いる。
会社のトップよりも大事なんですよというメッセージですね。

大西氏
10年前、ロンドンにいた時に投資家が「社長の給料が一番高いのはおかしいよ」と話していたのを思い出しました。
例えば、アレックス・ファーガソンよりもベッカムの方が給料高いのは当たり前。
ベッカムがいるからマンU(マンチェスターユナイテッドFC)が勝てる。よそ行くと勝てない。ただその人事権はコーチのアレックス・ファーガソンにある。
でも動かすやつの年俸が高かったらベッカムは納得しないよね。いかに凄腕を集めてマネジメントするか。
彼らはタレント。才能があれば他に引き抜かれるからしっかり彼らを納得させてチームにロイヤリティを感じてもらえるかが重要です。

佐藤氏
近いですね。僕もプレイヤーを辞めて、チームビルディングに徹しました。
どう考えてもうちの会社に来ないよねってくらい優秀な人をいかに引き抜けるか。

大西氏
でも自分もプレイヤー世代なのにベンチに引くのは辛いのでは?

佐藤氏
そこは我慢してますね。
シンガポールに行った時に、今から色々自分でやってたら時間がたりないと思ったんです。人に任さなきゃいけないと。そこで自分でやるという選択肢を捨てました。
人間て、人生でできることは限られていますからね。

大西氏
なるほどね。すごく勉強になります。
すごく納得しちゃってもう終わりそうになったけども(笑)

では後半にいきましょうか。