スマートフォンの普及により、マーケットの主流は新聞や雑誌といった紙媒体からデジタルへと移行しています。

これまでのように広く認知するだけのマーケティングでは企業の成長が厳しくなっている中で、効果的なWebマーケティングの手段がわからず苦戦している方も増えているのではないでしょうか。

今回は「富士通マーケティングフォーラム2018」で行われた、ferret創刊編集長の飯髙悠太による「中小企業はどうマーケティングを行うべきか」をテーマとしたイベントをレポートします。

登壇者紹介

株式会社ベーシック執行役員/ferret Founding Editor 飯髙悠太

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広告代理店、制作会社、スタートアップで複数のWebサービスやメディアの立ち上げる。企業のWebマーケティングやSNSプロモーションをはじめ、50社以上のコンサルティングを経験。
2014年4月「ferret」の立ち上げにあたり参画し同年9月にリリース。3年半で月間430万PV、37万人の会員(2018年1月現在)。東証1部上場企業を含めコンサルティングを実施。

ferretについて

すべての人がWebマーケティングで平均点をとれるメディアに

まずはferretを立ち上げた経緯をお話しします。

Webマーケティングには、Webサイトを作る前の戦略から始まり、Webサイトの作成、集客、解析、改善など数多くの手段があります。
しかし、これらを一気通貫で体系立てて教えているメディアというのは世の中にほとんどありませんでした。

そこを解決するために作ったのが「ferret」です。

ferretには、「専門家が見てためになるサイト」というよりは「すべての人がWebマーケティングで60点をとれるサイト」にしたいというテーマがあります。

誰もがWebマーケティングで平均点がとれるような情報を提供するメディアとして、ferretがあると認識していただければと思っています。

プラットフォームの現状と今後

マーケットの主流はデジタルである

当たり前のことですが、現在のマーケットの主流はデジタルです。それにもかかわらず、まだまだ多くの中小企業がデジタルではないところで戦おうとしています。「うちのユーザーはインターネットなんて見ないよ」という時代は終わっていて、主流はデジタルであるというのを理解していただきたいです。

ただし、デジタルだけではなく「デジタル×雑誌」というようなクロスチャネルには有効性があります。自分たちのマーケットの主流がどこにあるのかを考えた上で、ほかのマーケットも取り入れていただければと思います。

次にインターネットの利用機器についてです。利用機器は圧倒的にスマートフォンが成長しています。つまり、スマートフォンに対応していないWebサイトはユーザーにとってストレスになっているということです。
もしスマートフォンに対応していない企業があれば、時代とミスマッチが起きているので早急に対応する必要があります。

しかし、自社製品との関係性もあります。BtoBの企業さんであれば「うちのWebサイトはスマートフォンでは見ないんだよ」ということもあると思います。それでもプラットフォーマーはスマートフォンに対応させることを推奨しているんですね。

そのため、いかなる場合でも、「最低限スマートフォンに対応させる」ことが必要になってきます。

スマートフォン最適化を無視できない時代に

Googleが現在認識しているWebページの数は60兆ページあります。ざっくり言うと、全人口に対して1人あたり1万ページ保有していることになります。

そして、Googleの年間検索回数は2兆回です。1秒あたり6万3千件も検索されていることになります。なぜこんなに多いのでしょうか。それはやはりスマートフォンの影響です。Googleの年間検索回数はスマートフォンの普及の伸び率と比例しています。

そのため、Googleはモバイルユーザーに最適化させることを重要に捉えているのです。

「狭い領域で深さを持つ」がWebの勝ち方になる

2020年にはもっとすごい勢いで情報が膨れて、99%の情報はユーザーに届かないとも言われています。そうなってくると「コンテンツを上げる意味がない」と考えるかもしれませんが、その逆なんです。

プラットフォーマーは、良いコンテンツがユーザーと出会える機会を創出しています。自分たちの商品の強みを理解し、それを欲しい人がどんな風に検索をするのか、どのようなニーズがあるのかというのを見ていくと“出会い”を創出できるのです。

ferretがなぜここまで成長できたのかというと、他のメディアが色々なコンテンツを出していく中で、僕らは対象としているお客さん(マーケティング用語を知っているけれども使い方がわからないような方)に対してのコンテンツを発信メインにしてるからなんです。もちろんそれ以外のコンテンツもありますが、軸はそこです。

そんな「狭い領域で深さを持つ」というのが今後のWeb上の勝ち方になっていくのかと思います。
もちろんターゲットを広く持つメディアがなくなるという訳ではなく、中小企業にそういったメディアと戦うことができるかっていうとNOって意味だからです。

プラットフォーマーは時間軸を奪いにくる

プラットフォーマーはみなさんの時間軸を奪いにきています。AppleやAmazon、Googleが音楽や映画などのエンタメ領域に入ってきたり、Facebookがインスタグラムを買収したりしてますよね。

今まではGoogleだったら検索メインでしたが、エンタメに参入することで「この検索をする人はこの音楽が好きなんだ」という情報を取ることが可能になりますよね。

Googleだけを見ても、検索、閲覧、位置情報、写真など、様々な情報を取得しています。おそらくプラットフォーマーは私たちが想像している以上に我々のことを知っているのです。

FacebookのインスタントアーティクルやGoogleのAMPはご存知ですか?
簡単にいうと、リンクや検索画面をクリックした時に企業のWebサイトへ飛ぶのではなく、その場で開くシステムのことです。

例えばGoogleで何かを検索した時に、通常はWebサイトを開きますよね。これをGoogleが推奨している形にすると表示が早くなります。これはユーザーにとってもメリットになります。

ユーザーとの接点はプラットフォームに依存

企業とユーザーの接点はプラットフォームを通すしかなくなっています。企業が直接コミュニケーションを取るのはほぼ不可能です。プラットフォーマーは「いかに自社ユーザーを外に行かせないか」という流れになり、そこの奪い合いになっていくでしょう。

主要プラットフォームGoogleに関して

Googleの検索順位はどのように決まる?

まずは検索結果ができあがる仕組みを簡単に説明します。クローラーが自社サイトをクロールし、Googleデータベースに知識を溜めます。データベースが溜まったものをGoogleが評価して検索順位を決めています。

検索順位を上げるために必要なこと

検索順位を上げていくために必要なのは

  • 内部対策
  • コンテンツ対策
  • 外部対策

の3つです。

内部対策Googleに正しく認識されるための対策です。これはマイナスをゼロにするような行為と考えてください。

次にコンテンツ対策です。コンテンツの質をGoogleが見ているので、これを上げることでゼロからプラスになります。

そして外部対策です。これは自分たちでコントロールすることがほぼ不可能です。例えば、コンテンツがよければ色々なところで引用されます。そうするとGoogleの評価が高くなります。

「量」と「質」はどちらかはナンセンス

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企業にアドバイスをしていると、「コンテンツの量と質どちらを重視すべきか」というのをよく問われます。
結論から言うと「どちらか」と言うのはナンセンスで「両方を最大限にやることが重要」なのです。
手段が目的となっている企業が多いので、なんの為にやるのかってことを、もっと考える必要があると思います。

なぜ、コンテンツマーケティングがブームなのか

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こちらはコンテンツマーケティングの必然性に関する図です。
右に行くほど関心度の高い顕在層となっています。

コンテンツマーケティングって言葉がここ数年で流行っていますが、実は紀元前から行われていることなんです。

なぜ今注目されているかというと、マーケティングが顕在層向けだけでなく潜在層向けにシフトとし始めているからです。

Webマーケティングや集客というと、顕在層にどうアプローチするかというところに目がいきがちです。しかしそこだけではなく、全体で見る必要があります。

そもそも、近年少子高齢化が進むにつれマーケットが縮小し、顕在層向けの施策だけでは限界になっています。そこで、企業が取り組み始めているのが、ユーザーの育成です。潜在層を育成することで、新規顧客の獲得が可能になります。
ニーズが顕在化したユーザーだけではなく、潜在ニーズを持ったユーザーへのアプローチをして、いかにユーザーを育成するかという点が注目されています。

ただ、はき違えていけないのは、これからもリスティング広告やFacebook広告、アフィリエイト広告といった顕在層向けの集客手段が有効であることに変わりはありません。

もっと言ってしまえば、そういったことをやりきってからやると、割り切るってことでもいいかもしれません。

コンテンツマーケティングのメリット

コンテンツマーケティングはすぐに効果が出るものではありません。時間はかかりますが、数が増えるほど資産になり、広告費をかけずに集客数を伸ばせるようになります。
ferretも3年で毎月3,000人が会員登録し、ferret Oneへのリードが2,000件を超えるメディアになっています。この数への広告費は0円です。

コンテンツマーケティングに失敗するのは部分最適で評価するから

なぜ多くの企業がコンテンツマーケティングに失敗するのでしょうか。それは多くの企業が、それぞれの施策に対しての効果を部分最適で評価するからです。例えば、記事を読んですぐに物を買うことはほとんどありません。その後、様々な手段で検討してから購入します。この場合、その記事の価値を間接効果として評価すべきなのです。

つまり、最終コンバージョンだけで評価をしてしまうとことが問題なのです。

これは記事だけではなく他の施策についても言えることです。これからは部分だけではなく、全体としてそれぞれの施策を評価するべきでしょう。

ユーザーに役立つ情報を発信することが大事

BtoBにおいてもBtoCにおいても課題なのは、求めた情報が出てこないということです。コンテンツは溢れていますが、ユーザーは良いコンテンツに出会えていません。ここに対して企業は、自分たちの商品を発信していく必要があります。

これからは、しっかりユーザーと向き合い、プラットフォーマーの考えを知ることが重要です。マーケティングにウルトラCは存在しません。当たり前のことを素直に愚直にやり続けることが大切であり、1つひとつのコンテンツ評価や全体の評価ができるように整備にするのかがポイントになっていくでしょう。

失敗する企業の6つの共通項

最後に、失敗する企業の共通項を紹介します。

1.手段が目的になっている

リスティング広告やFacebook広告をやれば何件取れる」ではなく「何件取るためにこの広告を配信し、それが何件の契約になる」という視点を持つことが重要です。あくまで目的のために手段があるということです。

2.Webといった瞬間に別物と考える

Webは画面上で見ているからリアルとは違うと考える方がいますが、そんなことはありません。消費者行動自体はリアルでもWebでも同じように行われていることを理解しましょう。

3.マーケティング=集客と考える

マーケティングというと、人をWebサイトに呼ぶことだと考えている方がたくさんいます。しかし、大事なのはWebサイトに呼んでからどう商品を買ってもらうかという点です。そこまで考えることがマーケティングだと思っていただきたいです。

4.部分最適で評価している

1つひとつの手段や施策について評価していて、全体の評価をしていないことがあります。これは人を見た目だけで判断しているのと一緒です。なのでそこは、全体で評価できる方法を考える必要があります。

5.リスクをとることばかり考える

「SNSを企業がやると炎上するのでは」と言ったようなリスクばかり考える方もいますが、はっきり言って問題ありません。炎上は簡単に起こせるものではないからです。ここはリスクをとるよりも、実施することに意味があります。

6.新しいプラットフォームを魔法の杖と考える

「Facebookには人がいるから広告を出せば売れる」ではありません。あくまでFacebookやGoogleもユーザーが会してきて、そこに企業がお邪魔をするスタンスです。そのため、自分たちの商品をどのように届けるかというメッセージ性が重要になってきます。

まとめ

スマートフォンの普及により、コンテンツの数は爆発的に増え続けています。また、ユーザーが検索する回数も同じように増加しています。しかしながら、多くのユーザーはまだまだ求めているコンテンツに出会えていないのが現状です。

中小企業におけるWebマーケティングは、自社ユーザーのニーズを理解した上で価値のあるコンテンツを発信し続けることとが重要です。