企業のマーケティング担当者として、ファンマーケティングという言葉を一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。

「ファンマーケティング」とは、ブランド価値を理解・支持してくれる熱量の高い顧客とつながり、長期的に売上やブランド価値を高めていくことです。昨今、このファンマーケティングを重要視する企業が増加しています。

この記事ではファンマーケティングに取り組むべき理由や、具体的な実践方法、成功事例などを紹介します。

目次

  1. ファンマーケティングとは
  2. ファンマーケティングが注目される理由
  3. ファンマーケティングに取り組むメリット
  4. ファンマーケティングの実践方法
  5. ファンマーケティングの成功事例
  6. キーワードは「共感」「愛着」「信頼」

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ファンマーケティングとは

まずは、ファンマーケティングの定義など、基本的なことについて確認しておきましょう。

ファンマーケティングの定義

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ファンマーケティングとは、商品やブランド・企業に対して強い愛着を持つファンを増やしていくことで、中長期的な売上の拡大を狙うマーケティング手法です。

従来のマーケティング手法との大きな違いは、企業主体のマーケティングではなく、ファン主体のマーケティングである点です。

「ファン」とはどのような顧客を指すのか

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ファンとは、商品やブランドを深く理解し、支持している人のことです。「ファン」と似ている言葉に「ロイヤルカスタマー」があります。

ロイヤルカスタマーとはその名の通りロイヤルティが高い顧客を指しますが、「ファン」はロイヤルカスタマーのさらに上をいく、熱狂的にその企業や商品を愛用しているユーザーを指します。

インフルエンサーとの違い

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SNS等で商品・サービスをPRしてくれる人というと、「インフルエンサー」の存在もあります。「インフルエンサー」と「ファン」の違いは何でしょうか。

インフルエンサーは、SNSのフォロワー数などが多く、高い影響力を持っていますが、PR投稿を企業側から有償で依頼されることも多いため、その発言の真正性や、商品・サービスへの理解・愛着度に疑問を持たれる場合もあります。

一方「ファン」は、企業から有償のPR依頼を受けているわけではなく「自分が愛着を持っている商品を周りの人にも知ってほしい」という気持ちから、クチコミ・シェアといった行動を自発的に起こす顧客のことを指しています。

ファンマーケティングが注目される理由

今、ファンマーケティングに注目する企業が増えているのは、なぜなのでしょうか。具体的な理由を解説します。

新規顧客獲得が難しくなった

①人口減・少子高齢化

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出典:総務省統計局

現在の日本は、人口が急減しています。その上、少子高齢化が進んで単身世帯も増えています。

商品・サービスを新たに開発して消費者に届けたい企業側には「新しい顧客を獲得しようとしても、ターゲットの母数がそもそも少ない」といった課題があり、その解決策としてファンマーケティングが注目されています。

②情報過多の超成熟市場

さらに現代社会は、情報、商品・サービス、エンターテイメントなどがいずれも溢れかえっている、情報過多の超成熟市場だと言えます。

いち企業が商品を売り出すために「キャンペーン」「値下げ」「マス広告」などに取り組んでも、消費者にその情報が届きづらく、たとえ届いたとしても心を掴みにくくなってきています。

それゆえ、従来のような企業主体のマーケティング施策ではなく、視点を消費者側に切り替えた新たなマーケティング施策が必要になっているのです。

リピーターを増やすLTV思考にシフトする企業が増加

新規顧客獲得が難しい状況の中、「既存顧客が継続して商品・サービスを使い続けること」を重要視する企業が増加しています。

マーケティングに携わっている人ならば、「パレートの法則」という言葉を一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。

パレートの法則とは、「2割の重要顧客が、8割の売上高を支えている」という経験則のことです。

この法則を踏まえ、「少数の重要顧客のリピーター化を促し、LTVを高めたほうが中長期的に効率よく収益を獲得できる」といった考え方を取る企業が増えているのです。

パレートの法則についてもっと詳しく知りたい方はこちら

SNS普及で、ユーザーの情報発信力・影響力が高まった

初めて商品を購入する際や、ツール導入を検討する際に、口コミサイトやSNSでの評判をチェックする人は多いはずです。

SNSの普及により、ユーザーの一人ひとりが情報を発信する機会が増え、ユーザー同士のコミュニケーションが活発になった結果、企業側が発信する情報よりも、ユーザー個人の情報を重要視する人が増えています。

こうした中、企業は「 ユーザーのメディアパワーをいかに自社にプラスに活かすか」「ユーザーの反応を織り込んだブランディング戦略をどう立てるか」といった点を考えることが非常に重要になっています。

その結果、既存顧客へのアプローチを強化して自社のファンを増やし、クチコミやレビューを増やすことを重要視する企業が増えているのです。 

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ファンマーケティングに取り組むメリット

企業がファンマーケティングに取り組むと、具体的にどのようなメリットを得られるのでしょうか。大きく、以下の3点が挙げられます。

LTVを高め、安定収益を獲得できる

ファンは商品・ブランドに強い愛着を持っているため、滅多に他の商品へ乗り換えをしません。一度ファンになった顧客は、長期的に売上に貢献してくれます。

その結果、LTVの上昇が期待でき、企業としては安定した収益獲得につながります。

新規顧客を呼び込める

人は「良い商品を身近な人におすすめしたい」という心理が働くため、ファンはクチコミやSNS投稿で商品・サービスを他者に広めてくれる可能性が高くなります。

友人・家族など、身近な人の感想は信頼されやすいため、ファンによるクチコミは訴求力が非常に高くなります。このような循環が生まれれば、広告費をかけずに新規ユーザーの獲得が可能になります。

顧客からの有益な声を集められる

ファンは商品への愛着が強いため、建設的な意見を通して、企業側が想像もしないようなフィードバックを与えてくれます。ファンからのフィードバックはサービス向上や商品開発に欠かせないものです。

商品・サービスをファン視点で改良していくことができれば、リピート購入・継続利用の意欲を高められるため、結果的に売上向上につながるでしょう。

ファンマーケティングの実践方法

ファンマーケティングの取り組みを成功させるには、より多くの既存顧客に自社のファンになってもらい、長期的な関係を構築・維持することが重要です。

ファンマーケティングの具体的な実践方法としては「SNS運用」「オウンドメディア構築」「ファンコミュニティ構築」という3つの策があります。

SNS

まず考えられる身近な方法として、SNSの企業公式アカウントを開設し、長期的に運用を続けていくことが挙げられます。

既存顧客をフォロワーにできれば、顧客が望む「最新情報」「セール・割引情報」「商品・サービスのアップデート情報」などを日頃から手軽に届けることができます。

加えて、未購入者もフォロワーとして獲得できる可能性もあり、「商品・ブランドに関心を持っている、比較検討層」に向けた情報発信もしていくことができます。

ポイントは、自社の顧客比較検討層どこのSNSプラットフォームに多く居るかを見極めることです。ひと口にSNSと言っても、Twitter、Instagram、Facebook、YouTube、LINE、TikTokと、さまざまなプラットフォームが存在し、それぞれの媒体で利用ユーザー像や、求められる情報も違います。

メリットは、アカウントを立ち上げる事自体には初期費用がかからず、思い立ったらすぐにでも始められる点です。留意点は、企業による情報発信には炎上リスクが伴うことも理解しておく必要があります。

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4大SNSのヘビーユーザーを徹底比較

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オウンドメディア

自社でオウンドメディアを立ち上げ、「新着情報」「キャンペーン情報」「商品活用術」「レシピ」などを定期的に記事として発信していく方法です。特に商品・サービス購入後に、ハウツーを深く理解する必要がある商材に適しているでしょう。

例えば、BtoC領域では食品、家電、アウトドア・キャンプ用品、スポーツ用品などが考えられます。また、BtoB領域ではSaaSやソフトウェアなど、無形商材の活用を軌道に乗せ、解約を防止するために役立ちます。

メリットは、その商品・サービスの活用法や、詳しい情報をWeb上で指名検索しているユーザーを誘導できる点です。

留意点は、メディア構築・運用には時間・労力・費用がかかることでしょう。検索ユーザーの疑問に答えるコンテンツを定期的に発信し続けるには、ライティングやSEOの専門知識を持つ人材も必要です。

コミュニティを構築する

ファンが集まるコミュニティを構築する方法です。

コミュニティを構築することで、日頃からファン同士の情報交換が活発に行われ、商品への理解度や愛着が強まったり、ファン同士の繋がりがより強化されるため、他社への乗り換えが起こりにくくなります。

また、ファンが発信する情報はコミュニティ内で展開するだけではなく、ライトユーザーや新規ユーザーを呼び込むコンテンツにもなり、新規ユーザーをファン化させるきっかけにもなります。

留意点は、コミュニティのプランニング、構築、コンテンツ企画・運用に非常に労力・費用・時間が必要な点です。専門ノウハウを持つ企業と提携するのがおすすめです。

ファンマーケティングの成功事例

ここでは、ファンマーケティングの成功事例を紹介します。

ヤッホーブルーイング

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出典:ヤッホーブルーイング

クラフトビール醸造・販売で知られる「ヤッホーブルーイング」は、ライトユーザーをファンに導くことで、顧客ロイヤルティを高めています。

課題

クラフトビール業界全体は、コロナの影響により大打撃を受けている状況。「ヤッホーブルーイング」で も、観光客需要を見込んだ販売チャネルでの売上に苦戦している。また、都内にある公式ビアレストランでも、緊急事態宣言下ではアルコールの提供そのものができない時期が続いた。

施策

オンライン上にも販路を持っており、通販のファン顧客が集うリアルイベントを定期的に開催している。コ ロナ禍においては、オンラインでファンイベントを実施

結果

・イベントには、ファン顧客がライトユーザーの友達を連れてきてくれて、わずか1日の参加でブランドへの好意度を強め、ロイヤルティの高いファンになってくれる
 
・マス広告の取り組みはしていないが、新規顧客獲得に大変有効な施策だと位置づけている
 
参考:大手では真似できないライトユーザーを“伝道師”に導くヤッホーブルーイング流“ファンづくり”

ワークマン

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出典:ワークマン

作業服やカジュアルウェア、キャンプ・アウトドア用品販売で知られるワークマン。ファンの輪を広げていくことで、コロナ禍でも大きく成長しました。

課題

新規顧客を獲得したい。

施策

SNS投稿を見ていると、企業側が想定しているのとは異なる売れ方をするアイテムがあることを発見した。(寒冷地で売れる防寒着が、突如として都心のバイカーに売れるなど)

そこで、SNS上で各商品の機能性に着目し、新たな利用シーンまで自ら発信してくれる熱心なファン顧客をアンバサダーとして任命。無償で新商品に関する情報発信を依頼したり、共同で商品開発に協力してもらうようになった。

結果

・ファンとの共同開発商品点数が、半年で100点以上にも上るようになった
・マスCMを止めても、ファンを巻き込むことで新規顧客を獲得できている

参考:【「ワークマン」にアンバサダーとUGC活用術を聞く】ファンの輪広げ、コロナ禍にCM止めても成長継続

BASE FOOD

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出典:PR TIMES

「BASE BREAD®︎」や「BASE PASTA®︎」の製造・販売で知られる「BASE FOOD」。ユーザーコミュニティ構築・運用により、継続率の向上と、ファン顧客からの紹介数増加につなげています。

課題

ユーザーの声をよりカジュアルな形で、リアルタイムに集める仕組みが欲しい。ただ、SNS上のフォロワーではECのユーザーIDとの紐付けがしにくい。

施策

オンラインのユーザーコミュニティを構築。社員全員が情報発信や、顧客とのコミュニケーションを日常的に取るようにした。限定試食会(リアルイベント)の招待をコミュニティで呼びかけることも。

結果

・ユーザーのリアルな声が集まる場をつくれた
・コミュニティ内でのレシピや利用アイデアの共有が活発化
・顧客の食べ方バリエーションが多様化し、継続率向上や購入個数の増加につながった

参考:ベースフード株式会社 vol.1 「ユーザーコミュニティで継続率の向上とお客様からの紹介数増加を実現」 | commmune(コミューン)

キーワードは「共感」「愛着」「信頼」

世の中に無数に存在する商品・サービスの中から、自社を迷わず選んでもらうには、顧客が「共感」「愛着」「信頼」を持てるように促す施策が必要です。

つまり、ブランドが提供する価値を理解している状態に持っていくことが重要になります。顧客をその状態にまで引き上げていくのが、ファンマーケティングの役割です。

長期戦の取り組みにはなりますが、自社の価値を理解してくれるファンを地道に増やすことは、今後ますます重要になっていくことを、マーケターとして理解しておくことが大切です。

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