ECサイトを成功させるには、適切なKPIを設定したうえでの運営が不可欠です。しかし、ECサイト運営ではどのようなKPIを設定すべきか、どのように設定すれば良いのか、分からない方も多いのではないでしょうか。

そこで本記事では、ECサイトで設定すべき6つのKPIを紹介するとともに、設定する方法ポイントも解説します。また、KPIを達成できない場合の対処法についても紹介しますので、ECサイトの売上を伸ばしたい方は、ぜひご覧ください。

目次

  1. KPIとは?
  2. ECサイトで設定すべき6つのKPI
  3. KPIを設定する際のポイント
  4. ECサイトのKPIを設定する方法
  5. 設定したKPIを達成できない場合の対処法
  6. KPIを正しく設定してECサイトの売上を最大化しよう

KPIとは?

KPIは「Key Performance Indicator」の略称であり、日本語にすると「重要業績評価指標」という意味です。

ビジネスやマーケティングにおける最終的な目標を達成するために最も重視すべき指標であり、目標の達成状況を把握するするために用いらる指標です。

KGIとの違い

KGIは「Key Goal Indicator」の略称であり、日本語では「重要目標達成指標」といいます。企業やビジネスにおける最終目標ゴール)を示す指標です。
KGIKPIの違いは以下の通りです。

● KGI:ECサイト運営をするうえでの最終的なゴール

例)月の売上を500万円にする、新規顧客を〇人獲得する、購入者を〇人増加させる など

● KPI:最終目標の達成状況を測るために設定する指標

例)アクセス数、訪問者数、購入割合 など

例えば、ECサイトの「売上を向上させる」ことをKGIとする場合、その目標を達成するためのKPIとして「訪問者数を増やす」「購入割合を上げる」などを設定します。

KPIKGIの詳細については、以下の記事で解説しています。
関連記事:KPIとは?KGIとの違いや設定の手順、具体例を解説

ECサイトでKPIを設定すべき理由

ECサイト運営を成功に導くには、適切なKPIを設定することが重要です。その理由は以下の2つです。

  • 成果を定量的に評価できる
  • 問題となっている箇所を把握し、改善できる

KPIを設定することで、売上や顧客獲得数、コンバージョン率などの成果を数値で定量的に評価できます。

また、目標達成までの課題を把握することも可能です。KGIを達成できていない場合、以下のように設定したKPIの数値をチェックすることで、どこに問題があるかを突き止められるため、改善策も立てやすくなるでしょう。

【KGI】購入者数を増やしたい
【KPI】購入割合、訪問者数

【状況】訪問者数は足りているものの、購入割合の数値が足りていない
→アクセスを集める施策ではなく、ECサイト内で購入を促すための施策に問題があると考えられる

ECサイトで設定すべき6つのKPI

ECサイト運営では、主に以下の6つをKPIとして設定します。

  1. 訪問者数
  2. リピート率
  3. 購入割合CVR
  4. 顧客単価
  5. 顧客生涯価値LTV
  6. 顧客獲得費用(CAC)

1. 訪問者数

訪問者数は、自社サイトに訪れてくれる人の数を示すKPIです。Googleアナリティクスなどのアクセス解析ツールでは、ページビューPV)、セッションユニークユーザー(UU)などと表記されています。

訪問者数が多いほど潜在的な顧客の数が多くなり、購入機会が増えるため、売上アップにつながります。

訪問者数の目安は月間で10,000以上と言われており、訪問者数が少ない場合の施策としては以下のようなものがあります。

訪問者数を改善するための施策例】
- Web広告の最適化
- SEO対策
- SNSを活用した流入の増加

2. リピート率

リピート率は、商品を購入した顧客のうち再び購入してくれた人の割合を表すKPIであり、次の計算式で求められます。

リピート率 = リピート客数 ÷ 累計新規顧客数 × 100

リピート率が高い場合は目安顧客満足度が高い目安ことを意味し、継続的な売上げにつながります。

ECサイトにおけるリピート率の目安は30〜40%ほどとされており、改善策としては以下のような手段が考えられるでしょう。

【リピート率を改善するための施策例】
- 商品の品質や価格の見直し
- サポート体制の向上
- 会員制の導入

3. 購入割合(CVR)

購入割合(CVR)は、訪問者のうち実際に購入へ至った人の割合を表すKPIです。購入割合は以下の方法で算出できます。

購入割合(CVR) = コンバージョン数(購入数) ÷ 訪問者数 × 100

CVRが高いほど、多くの訪問者が商品を購入していることを示し、効果的な販売施策が行われていることを示します。

購入割合の目安は1~3%ほどとされており、数値を改善するには以下のような施策を行うのが良いでしょう。

【購入割合CVRを改善するための施策例】
- サイトUI/UXの改善
- 入力フォームの最適化
- キャンペーンの実施
- 決済方法の選択肢の充実

4. 顧客単価

顧客単価とは、1人の顧客が1回あたりに購入する金額の平均を表すKPIであり、以下の方法で算出できます。

顧客単価 = 総売上 ÷ 顧客数

GMOリサーチ株式会社の調査では、ECサイトにおける1回あたりの平均購入金額は男女共に「2,000円~4,000円未満」が最も多いという結果となっています。顧客単価の数値を改善するための主な施策は、以下の通りです。

【顧客単価を改善するための施策例】
・購入した商品の上位モデルをレコメンドする
・ほかの顧客が同時に購入した商品をレコメンドする

参考:約9割がECを利用!平均購入金額は「2,000円~3,000円未満」【GMOリサーチ調べ】

5. 顧客生涯価値(LTV)

顧客生涯価値(LTV)とは、1人の顧客が生涯にわたって自社ECサイトに支払う費用を測る指標です。

LTVは、短期的な売上だけでなく中長期的な売上を試算する際に用いられることが多いため、ECサイトの売上が軌道に乗り、中長期的な戦略・施策を策定する際に設定するのが良いでしょう。LTVの算出方法は以下の通りです。

LTV = 1顧客の平均購入金額 × 粗利率 × 平均継続期間

例えば、顧客の平均購入金額が15,000円、粗利率が10%、平均継続期間が2年間の場合、LTVは3,000円となります。LTVを高めるためには、商品の単価アップやリピート率を向上させる施策、顧客満足度を高める施策などが有効です。

6. 顧客獲得費用(CAC)

顧客獲得単価(CAC)とは、顧客を獲得するためにかかった費用のことです。

CACは、広告費やプロモーション費用、マーケティング費用など新規顧客を獲得するためにかかったすべての費用を合計し、その顧客の数で割ることで算出できます。

顧客獲得単価(CAC) = 集客にかかったコスト ÷ 顧客数

CACが低ければ低いほど、新規顧客を獲得するためのコストが少なくなり、ECサイトの利益を増やせます。ECサイトの集客に広告などを使っている場合は、費用が高くなりすぎていないかをチェックしましょう。

CACが高い場合、顧客単価やリピート率などを向上させることで数値を改善できる可能性があります。

KPIを設定する際のポイント

ECサイトのKPIを設定する際には、SMARTを意識することが重要です。SMARTとは、目標設定のためのフレームワークで、以下5つの要素から構成されています。

  • Specific:具体的な
  • Measurable:測定可能な
  • Achievable:達成可能な
  • Relevant:関連性がある
  • Time-bound:期限がある

例えば「ECサイトの売上を増やす」という目標を立てる場合、SMARTにあてはめると以下のようになります。

項目 内容
Specific:具体的な ECサイトの売上を50%増加させる
Measurable:測定可能な 訪問者数を〇人増やし、購入割合やリピート率を〇%にする
Achievable:達成可能な 社内のリソースや売上の伸び率を考慮してKPIの数値を決める
Relevant:関連性がある ECサイトの戦略やビジネス目標と関連することを確認する
Time-bound:期限がある 1年間という期限を設ける

このように、具体的かつ実現可能な目標を設定することで進捗を把握しやすくなり、目標までの具体的なアクションの方向性を決められるようになります。

ECサイトのKPIを設定する方法

ここでは、ECサイトのKPIを設定する方法を3つのステップに分けて解説します。

KPIツリーを活用する

ECサイトのKPIを設定する際は、KPIツリーを活用するのが効果的です。KPIツリーとは、最終目標であるKGIを頂点とし、それを達成するためのKPIを構造的に整理したものです。

KPIツリーテンプレート.png

KGIKPIをツリーに落とし込むことで、目標や指標、成果などを可視化できるとともに、チーム内での情報共有がしやすくなります。また、行うべき施策も明確になるため、KPIを達成できていない場合に改善すべきポイントもスムーズに発見できます。
KPIツリーのテンプレートは下記よりダウンロードできますので、ぜひご活用ください。

KPIツリーのテンプレートはこちら

KPIツリーのテンプレート

KPIツリーのテンプレート

KGIを達成するための仮説を立てる

KGIを達成するための仮説を立てましょう。なぜなら、KGIを達成するための方法は一つではないからです。

例えば、ECサイトのKGIが「売上の増加」である場合、これを達成するには以下のような仮説が考えられます。

  • 訪問者数を増やす
  • 購入割合を上げる
  • 顧客単価を上げる

上記の仮説を立てた場合は、以下の図のようにKPIを設定できます。

KPIツリー記入例.png

KPIとして設定する項目や施策を決める

KGIを達成するための仮説を立てたら、それを実現するためのKPIや施策を決めていきましょう。

上で紹介した例のように、「訪問者数」「購入割合」「顧客単価」の3つをベースに売上の向上を図る場合は、さらに細かく以下のようなKPIを設定できます。

KPIツリー具体例.png

KPIを設定する際は「訪問者数を〇人にする」「購入割合を〇%にする」などのように、具体的な数値も決めておきましょう。例えば「月100万円の売上」というKGIを立てている場合は、以下のような数値を設定できます。

【売上の算出方法】
売上 = 訪問者数 × 購入割合 × 平均顧客単価

【月100万円の売上を達成するための数値例】
訪問者数:5万人
購入割合:1%
顧客単価:2,000円

KPIを設定したら、上記の図の一番右側にある「SEO対策」「SNSでの宣伝」などのように、KPIを達成するための施策を書き出します。

なお、「直帰率」「かご落ち率」といったKPIについては以下の記事で解説していますので、あわせてご覧ください。

関連記事:EC担当者必見!サイトの売上を伸ばす5つの施策と7つの重要指標

設定したKPIを達成できない場合の対処法

KPIを設定してみたものの、なかなか目標値まで達成できない場合の対処法を解説します。

設定したKPIの数値を見直す

設定したKPIの数値がなかなか達成できない場合は、数値の見直しを検討しましょう。

希望的な観点でKPIの数値を決めてしまうと、達成できない状況が続く恐れがあるため、以下のような観点で見直すのがおすすめです。

  • 数値が現実的であるか
  • 市場や競合状況を踏まえ、相場とかけ離れていないか
  • KGIから逆算した数値になっているか

ECサイトを改善する

KPIを達成できない場合は、ECサイトを改善するのも有効です。

改善する際は、達成できていないKPIを洗い出し、問題となっている箇所を明確にしてから行いましょう。改善策を実行した後は、再度KPIを確認し目標に近づけるよう調整を繰り返すことが重要です。

ECサイトを改善する際の分析ポイントや具体的な施策については、以下の記事で解説しています。

関連記事:ECサイト改善における4つの分析ポイント!効果的な施策6選と役立つ資料も紹介

KPIを正しく設定してECサイトの売上を最大化しよう

ECサイトの成果を最大化するには、KPIを正しく設定することが重要です。

KPIを正しく設定するには、SMARTを意識しながらKPIツリーに落とし込んでいくのが効果的です。また、KPIは設定して終わりにするのではなく、定期的に見直し・改善を行いましょう。