“ダウンロードした1日目の体験をいかにリッチに作れるか”がリテンションのカギ

飯髙:
ダウンロードされないとアプリケーションの運営自体、スタートを切れないかと思います。
どういったダウンロードの施策を行ったのか、また、行ってよかったと感じているものを教えてください。

菅原氏:
DELISH KITCHENで一番効果が高かった施策はテレビCMの出稿です。
2017年4月にテレビCMを開始した際には、CMだけでなく、同じ規模でWeb広告も展開しています。CMで認知されるようにして、Webで刈り取りしていくという形ですね。

宇佐美氏:
弊社では2017年8月に中規模なプロモーションを行っています。LAURIER PRESSの場合はターゲティングメディアなので、まずはTV出稿等ではなくターゲットが使っていると思われるSNSでYouTuberを起用したキャンペーンを実施するなど効率面を重視した出稿を行っています。

飯髙:
2社ともコストがかかるようなプロモーションを挙げていただきましたが、再現性のある運用面での施策として行ったものって何かありますでしょうか。

菅原氏:
DELISH KITCHENをはじめ、レシピ動画市場には多くの企業が参入していますので、その中でNo.1であり続けるために、今は大規模にプロモーションを行う時期だと考えています。

宇佐美氏:
費用をかけていますね(笑)ただ、LAURIER PRESSの場合はインスタグラマーやSNSで人気のある女の子達を起用したコラムを公開しているため、コラムを公開したタイミングで本人がSNS上でLAURIER PRESSをアピールしてくれます。そのため、彼女たちのSNSからオーガニックでの流入を多く得られましたね。

飯髙:
以前、Webの世界では「キャンペーンをおこなって人を集めてリテンションは二の次」って印象が強かったです。
ですが、現在のWebでは新規ユーザーの重要性と同じぐらい、リテンションや再訪問を促す施策が重要視されています。アプリでも同様かと思うのですが、過去に再訪問させるための施策として成功したものや逆に失敗してしまったものはありますか?

宇佐美氏:
最初の入口とアプリ内でのユーザー体験にギャップがないかは気にしています。
当たり前ですが、広告でもLAURIER PRESS内で紹介していないものやLAURIER PRESSにはあまり掲載されていないジャンルに関する訴求は一切行いません。
また、LAURIER PRESSは「ゆるふわなかわいさ」を支持しているユーザーが集まる媒体なので、広告のクリエイティブに例えば”ギャルらしい”ものなど、ターゲット層と異なる可愛さを持つクリエイティブは使わないようにしています。
世界観にはかなりこだわっていますね。
あとはアプリの場合、1日目で離脱してしまうユーザーも多いので、*「ダウンロードした1日目の体験をいかにリッチに作れるか」*を大事にしています。
そのため、ダウンロードした後の初回起動時に「こんな良いコンテンツがありますよ」と示し、使ってもらうとリテンションレートが高いことが分かっている便利機能の利用を促すことを心がけています。

「プッシュ通知疲れ」のユーザーに反応してもらえるメッセージとは?

飯髙:
アプリケーション市場では「プッシュ疲れ」という言葉をよく聞きます。
プッシュ疲れに対して意識している事やプッシュするメッセージの決め方を教えてください。

菅原氏:
プッシュ疲れはDELISH KITCHENとしてはかなり意識しています。
対人コミュニケーションでも、あまり気にかけてない人から毎日「あした遊ぼうよ」と連絡して来たらうざったいですよね。
だから「本質的な通知の良さとは何か」を意識するようにしています。
例えば、アプリを利用し始めたばかりのユーザーは、プッシュ通知を送るとすぐにアプリに帰って来てくれます。
でも、30日後や60日後などの長期的なデータを見ると、実は継続してくれていなかった、ということもあります。
「本質的な通知の良さ」という視点では、パーソナライズプッシュがすごく大事になってくると思っています。いかに個人に向けたプッシュ通知が送れるかという事です。

LINEでのコミュニケーションに例えると、好きな人から来たメッセージであれば、多くの人は無視しないでしょう。一方で、スタンプ欲しさで登録した、あまり興味のない企業から来たメッセージは見ないですよね。ですから*「いかに好きな人から来たメール風にできるか」*というところに対して取り組んでいきたいと考えています。

宇佐美氏:
自分自身も毎日プッシュ通知がくると無視してしまっていますし、LAURIER PRESSのプッシュ通知の開封率を見ても低い事があるので、ユーザーのプッシュ疲れはかなりあると感じています。
やはり、どうでもいい情報だと無視されてしまうことは分かっているので、最適なときに最適なタイミングでのプッシュ通知を研究しています。
例えば、弊社で開発した、ユーザーの行動から人工知能でコンテンツをレコメンドしてくれるエンジン「wisteria」を応用して、ユーザーにとって最適なコンテンツを最適なタイミングでお送りするパーソナライズプッシュ通知を開発しているところです。

また、現在開発中なのが、特定のライターをフォローして記事の更新タイミングで通知を受け取れる機能です。日頃から、どんなコンテンツや機能に接触したらリテンションレートが上がったのか分析しており、「このライターさんの記事を読んだ人は、このライターさんの一覧ページに接触するとリテンションレートがあがる」といったデータがでています。こういったデータやユーザーヒアリングを元にしてプッシュ通知もPDCAをまわしています。