動画広告の企画・制作は、広告主のコミュニケーションをデザイン(=設計)する行為です。その最初のステップである市場分析は、「3C分析(競合・自社・顧客)」で考え始めるのが基本となります。これは、競合状況の把握、自社の強みや弱み、顧客は誰でどんなニーズを持っているのかを分析していくものです。今回は市場分析において大切にすべき観点について説明します。

市場分析における3つの観点

現代社会においては、超成熟市場となっているカテゴリも多く、このような状況下の製品・サービスは、競合他社が追随して同質化してしまったり、ユーザーの要求水準を超えて過剰品質となったりと、付加価値を生めず、明確な差別化が困難になることが少なくありません。

そのため、従来、明確な差別化が可能な場合には、USP(ユニーク・セリング・ポイント:差別化要因)を訴求すれば良いという考え方が主流でしたが、現在では「商品スペックでの差別化が困難な場合にどうするか?」という観点が重要になってきています。

ここでは、以下の3つの観点に着目して、競合・自社・顧客の市場分析を行う手法を説明します。

・競合分析:コトラーのマーケティング3.0
・自社分析:マーケティングとは価値観を伝えること
・顧客分析:横から目線の「共感・共創」の時代へ

競合分析:コトラーのマーケティング3.0

マーケティングの神様と言われるフィリップ・コトラーが唱えた「Marketing3.0」は、21世紀のマーケティングに変革を及ぼしました。

マーケティング1.0:競合が存在しない状態
自社の製品・サービスがオンリーワンの状態の訴求ポイントは、製品の特徴となります。

マーケティング2.0:競合が複数存在する状態
訴求ポイントは差別化。つまり競合に比べて自社製品・サービスが優れている点を伝えることで選ばれるという考え方です。

マーケティング3.0:競合がひしめく状況
市場において考えうるポジションが埋め尽くされ、小さな改善や進化ではわかりづらい場合は、ブランド理念・価値観を伝えることで差別化します。

マーケティング

もしも自社が、完全に競合がいない市場を切り拓く状況ならば、シンプルに製品を訴求するのが良いでしょう。また、競合が数社しかおらず明確なポジショニングで差別化が可能ならば、競合と比べて優っている点を訴求することが効果的です。

ただし、すべてのポジションが埋め尽くされてしまい、機能的・情緒的訴求では差別化が不可能な場合には、ブランドの理念や自己実現欲求のサポート、自己表現欲求を満たす世界観の提示などで差別化を図る必要があります。特に企業と生活者の間に「共感の絆」を作るコミュニケーションは、情報が飽和状態で、ユーザーの興味関心に応じてコンテンツが表示されるデジタル広告において効果を発揮します。

自社分析:マーケティングとは価値観を伝えること

マーケティング3.0的に価値観を訴求することで差別化を図った有名な事例として、90年代におけるアップルが挙げられます。
1997年、ジョブズがアップルに復帰した際、最初の広告キャンペーンを社員に向けて発表しました。この時、ジョブズは「マーケティングとは価値観を伝えることだ」と発言しています。

つまり、アップルの価値観である「我々は世界を変えられると本気で思うクレイジーな人々が、本当に世界を変えると信じている」ことを発信すべきだとし、あの歴史的傑作「Think Different」のCMを発表したのです。
「Think Different」
              「Think Different」/Apple (1997)

その後、現在に至るまでの間にアップルが、製品スペックでは競合に劣るような場合でも指名買いしてもらえるような、求心力のある世界トップのブランドになったということは、皆さんもご存知だと思います。これこそが企業と生活者の間に「共感の絆」を生み出した好例だと言えるでしょう。

これは、”企業の理念・価値観を訴求ポイントとしてブランドを構築する”という考え方が機能することを証明した事例と捉えられるのです。もし自社にこのような理念が明確になっていない場合には、改めて創業からの歴史を紐解いてみたり、深掘りしていくことをお勧めします。

顧客分析:横から目線の「共感・共創」の時代へ

アップルの「Think Different」のメッセージは、多くの人に深いレベルでの共感を持って受け入れられ、熱狂的なアップルファンを生み出してきました。しかし、企業が単に「俺たちはこうだ!」というだけでは共感が得られないケースもあるでしょう。コミュニケーションを成立させるには、相手の話に耳を傾け共感することが大切なのです。

つまり、企業と生活者のニーズが全く異なる中で、双方のニーズが噛み合うポイントを戦略として見つけることが重要になります。企業が上から目線で「ほら、これいいでしょ?」と伝えたとしても、もはや通用しない時代なのです。

だからこそ、企業が横から目線でユーザーの話を聞いたり、観察をして気持ちに共感することからスタートし、ユーザーが本当に欲しているものを共に創っていく姿勢が動画広告において何よりも大切なのです。

まとめ:What to Sayを決めるために必要なこと

・競合分析
市場に競合はいるか、明確な差別化が可能なのかを見定めること(マーケティング1.0、2.0、3.0のどれを選択すべきかを決めること)

・自社分析
自社のブランド・製品・サービスの社会的存在意義(価値観)を見直すこと

・顧客分析
顧客はどのように製品・サービスを選んでいるか?どんな気持ちで日々を過ごしているか? どうしたら生活者のハートを掴むコミュニケーションを設計できるか?を考える上で必要な情報を集めること

特に顧客分析は、動画広告において一層重要度を増しています。メディアプランニングとも密接に関係してきますが、例えばインスタグラムとツイッターでは、ユーザーの特性が異なりますし、時間指定配信もできるようになり1Dayのカスタマージャーニーを把握して、もっとも伝える時間帯を特定するなど、これまで以上に細かい顧客分析やタッチポイントごとのインサイトを理解・共感することが必要です。

これを図解すると、以下のコミュニケーション・デザイン・モデルになります。
コミュニケーション・デザイン・モデル

つまり、自社の価値観と顧客のニーズとの接点を見出し「What to Say」を決めるという手法です。そのための前提として、競合分析が必要となるのです。

次回は、生活者へ「どのように届けるか」について考えるメディア戦略/メディアプランニングについてお話します。