Web接客とはなにか?

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飯髙:
おもてなしを実現する方法のひとつとして、Web接客ツールを手がけられているとのことですが、ツールベンダーさんごとに機能など様々ですよね。深田さんは「Web接客」をどのように定義しますか?

深田 氏:
広義としては、Webサイトの中にいるユーザーに対して、ページ以外の手段でコミュニケーションすることを「Web接客」と定義しています。UIなどの文脈で言えば、ポップアップやチャットなどをWeb接客と説明することもありますね。

ポイントになるのは、Web接客ツールには様々な使い方が存在するということ。お店を例えとして考えてみると結構わかりやすいです。

ショップの販売員の接客だけでなく、百貨店の入口付近のサポートデスクや、お店の入り口に置いてあるセールの看板などをイメージしてみてください。実店舗もお客様の状態に合わせた様々な接客がありますよね。

実店舗では物理的にそれぞれ異なるため役割が明確になるのですが、Webとかデジタルも使い方は多様であるにもかかわらず、ポップアップかチャットのような機能にフォーカスされやすいため、Web接客とはなにかというイメージをしづらいのかなとも思います。

僕らのご提案のゴールとしては、コンバージョン上げましょうということが多いんです。他にも、例えば、コンシェルジュのようにお客さまのサポートのUI支援として使っていただくこともあります。

そして、UIの支援がコンバージョンの改善につながっているケースもあるので、何の用途なのかなっていうことと実際のシナリオの内容のずれが起きないようにっていうのは、気を付けて作っていますね。

Web接客のシナリオづくりとは?

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飯髙:
Webの場合、実店舗のように接客のシナリオをイメージするのが難しいじゃないですか。どうやってシナリオを作っていくのか、事例を交えて教えていただけますでしょうか?

深田 氏:
生活雑貨の企画から製造、小売りを手がける中川政七商店さんの EC事例なのですが、ここは特徴的な商品を沢山扱っているサイトなんですね。

基本的には色々な商品へ目を触れられる機会を作ったほうがユーザーにとっても嬉しいと思いますし、その結果、売上に繋がるのではないかと考えました。
その豊富な商品をどのように案内すべきかという事を何パターンか試したのです。

Sprocketの鉄板のシナリオとして、ランキング形式で人気商品を紹介するものがあります。中川政七商店さんの場合、そのシナリオで誘導され、クリック率も高かったんですけれども、その後のコンバージョンにはそこまで影響しなかったんです。

そこで次の仮説として、人気があるから買うっていうタイプの商材ではなくて、その季節に合った旬の商材のご案内をしたほうがいいのではないかと考えて、「今の季節のおすすめ商品」のようにポップアップの案内を換えたところ、コンバージョンが改善しました。

その後は季節ごとに商材を換えて運用を続けて効果を維持している、というようなことがありましたね。

やはり「商材の特徴」だったり、そこに来てるお客さんが抱く、ブランドや商品への期待感に答えようとすることで接客効果が上がるなと思った事例です。

改善系の施策では「Aサイトでの成功をBサイトでやってもうまくいかない」とよく言われていますがその典型例だと思います。

参考:
接客を通してファンを作る。Web接客で再訪率がアップ 株式会社中川政七商店様 導入事例 | Sprocket

飯髙:
確かに、同じアパレル商材を取り扱っているからといって、ファストファッションとハイブランドではお客さんが持つ期待感は明確に異なりますもんね。まさに、リアルな接客に近い視点でシナリオを作っているんですね。シナリオを設計する上で、絶対に外せない考え方ってありますか?

深田 氏:
本当にシンプルに、どれだけ「ユーザーさんの視点で考えられるか」ですね。特に僕らはイメージするのは、「この人は目の前にいる」ということ。

あとは、実店舗をイメージすることが多いんですけれども、お客さんがどういう気持ちで来店して、それに対する接客を行うことでどういう反応が得られるのか。仮説や想像力ですね。

Web接客ツールの使われ方として、サイト訪問した瞬間に何かポップアップなどが出てきてキャンペーン告知とか、割引のお知らせが出てくるみたいなケースが多いのではと思います。しかし、実店舗ではそういった接客はしませんよね。

やはりそういう使い方では本質的な成果に繋がらないと感じています。

飯髙:
急に入って「30%OFF」って言われても、まだ買うかも決めてないですからね。だったら目当ての商品を先に見つけさせてほしいですよね。

深田 氏:
そうですね。実店舗でお客さんと接するときをイメージして仮説を立てる。その上で、なんの案内を最初に見せるのがいいかのシナリオを決めることが大切です。

飯髙:
極論かもしれませんが、もしECサイトを運営するのであれば、実店舗の人が運営するのが良いのではないかと思いました。

深田 氏:
おっしゃる通り、それがベストなケースもあると思いますし、実際に我々もエース級の販売員の方にヒアリングすることがありますよ。やっぱりお店の人の話を聞くと、話掛けるタイミングには相当気を使ってるなっていうのが、よくわかるんですよね。

Web上でユーザーに話掛けるタイミングに気を使うことって、いままでできていなかったのではないかと思います。ポップアップを出すタイミングのコントロールができるのはWeb上の施策でも面白い部分だなと思っていて、それで効果の数字もかなり変わるんですよね。