残業続きでも「今回っているからいいや」と考えるのが日本の経営者

**西井:**アメリカに行って、次の事業のアイデアは浮かんだんですか?

**柴田:**真剣に悩んでいて、決めきれていないんですよ。

世界中の人に使ってもらえるサービスをやりたいなとは思っています。日本のITサービスにはないので。

**西井:**ないですね、今のところ。

**柴田:**ニッチなマーケットにすらないんですよね。

**西井:**柴田さんは、時代の読み方が秀逸だなと思うのですが、そもそもアメリカに行った目的は?

**柴田:**アイデア的な、トレンド的な見ている視野の閉塞感みたいなものがあったので、視野を広げたいなと思って。

**西井:**こんな人が視野を広げたら、みんなどうしたらいいのでしょうね(笑)。

**柴田:**今だにわかってないんで。少なくても、長めに仕込むということが大事だと言うのは気づきました。

日米の違いはほかにもたくさん気づきましたけどね。例えば、市場がでかいんですよ。でかいというのは量的な意味でもでかいんですけど、多様性という軸でもまたでかいんですね。
いろんな人が住んでいて、いろんな階層の人がいるので。

町内会のお祭りに屋台を出すときと、幕張メッセのイベントに出展するときは、当然メニューを変えるじゃないですか。町内会のお祭りにすごく尖ったメニューを出しても、別に誰も喜ばない。

**西井:**町内会のお祭りでタイ料理を出しても人気が出ないけど、逆に幕張メッセで出したときはってことですよね。

アジア料理にするにしても、アフリカのなんか知らない料理だと微妙だしみたいな。だけど、市場が違うとそのアフリカ料理が人気になる場合もある。

**柴田:**それはありますよね。

**西井:**Facebookの起業の話を聞いていてもそうですもんね。

**柴田:**もともと内輪受けですよね。

**西井:**内輪受けがみんなに受けちゃったみたいな。

**柴田:**アメリカの話では、日本の消費者は保守的だという話につながるかもしれないんですけど。アメリカにMindbody, Inc.という会社があって、ヨガ教室向けに決済サービスのSpuareと予約管理ツールのオープンテーブルを足したようなサービスを提供しているんです。レジ管理と会員管理と、クラスの予約とか。

その会社の時価総額が、700億円(2016年10月時点)くらいあるんですよ。事業としてはそれだけなんです。日本で考えると、そういうスタートアップがあったとしても、時価総額1億円にもならないと思うんです。

日本とアメリカでは、ヨガ教室の数はそんなに違うと思えないんですよね。このサービスは月額1万円から始まって標準的なARPUが2万円くらいなんです。

やはり、お金を払って外部のサービスを使って、それで受付のレセプショニストが何人か削れるんだったら、そっちのほうが効率いいじゃないか、だから導入しようという感じなんでしょうね、アメリカの経営者は。

一方日本の経営者は、今回ってるからいいじゃないか、なんで変える必要があるんだと考えるんです。いや、みんな残業してヒイコラ言ってますけど。

そういうことの積み重ねが結構生産性を左右するのではと感じました。

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**西井:**すごく心が痛い(笑)。例えば、経営会議で、生産性を上げるために不要なことを辞めましょうということになって、今やっている作業でいらないと思うものを出してください、それをやめるからという話をしたら、あまり出てこないんですよ。

なんでかというと、自分の仕事がなくなるとやばいじゃないですか。これは経営者も同じで、この仕事がなくなると、担当している社員の仕事がなくなる。受付の子をクビにするとか難しいじゃないですか。

**柴田:**公共事業のような作業、ありますよね。

**西井:**アメリカだとすぐクビにしちゃうじゃないですか。

日本の外資系企業とかも、コールセンターは非効率だから辞めます。全員明日から来なくていいですみたいな話ありますけど、日本企業だと絶対あり得ないし。

コールセンターの部長とか、絶対自分のポジション死守しますよね。そうしたらお客さんどうなるんですかみたいな。

**柴田:**結局経営者次第ですよね。