現地の意見を尊重することで軌道曲線を上向きに

**西井:**鵜飼さんはどうですか?

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**鵜飼:**結構、上手くいったことといかなかったことが表裏一体という感じですね。

先ほどもお話しましたが、海外事業は最初全然利益が出ていなかったんです。なので、あまりお金を使いたくないということになって、僕は最初全然海外に行かなかったんです。上司も年に2回くらいしか行きませんでした。

実際にマーケティングをやっているのは日本のスタッフなのに、お金は広告や開発、ソリューションに使いたいから、マーケットを理解するためにお金を使わなかったんです。

それで結局1年半くらい、見えないお客さまに向けてサービスを提供していて、その時間を無駄にしたことが一番失敗だったなと思っていて。その間もいろいろやって伸びてはいたんですけど、全然軌道曲線が上がらなかったんですね。

サービスを作っても当たらない。特集を作っても微増というような状況が続いていて。

**西井:**やらないよりはやったほうがよくはなったけれど、伸び率はそれほどでもなかったと。

**鵜飼:**そうです。ひたすら長い時間働いて特集を作ることに時間を割くみたいな感じでした。ただそれをやり続ければチームも疲弊していくし、事業も今の成長曲線から変わらないままで、それが無駄な努力のように感じていて、やっぱり今のままではダメだよねという話になって、1年半くらい前から海外に行くようになりました。

そこから事業成長の軌道曲線が変わり始めて。サービスを作るにしても、海外のお客様の深層心理の深い部分の感情を理解することは、難しいなと思います。
今でもできているとは言えないんですけど。

先ほど言ったように、サービスの骨格もそうですけど、文字一つ画像一つ、サイトのUI一つとっても、国によって全然変わりますし、感覚も違います。

それをだいぶ捉えられるようになってきてはいますが、まだまだ全然足りないなと思っていて。それができるようになってきたから、ある程度伸ばせるようになってきたというところまでは来ていると感じています。

**西井:**現地には、今はどれくらいの頻度で行っているんですか?

**鵜飼:**今は年間の6、7割くらい海外にいますね。

**西井:**海外では具体的にどんなことをしているんですか?

**鵜飼:**海外で実際にやることとしては、現地のマネージメント、物流のケア、現地のパートナーとの商談などがメインなんですが、そのほかにも実際お客様の家に行ったりもしていますね。

最初の頃は、ひたすらお客様がスーパーでお買い物するところを後ろからついて回って、最後に話しかけるということをやっていました。

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**西井:**ストーカーみたいですね(笑)。それは日本と結構違っていたりするんですか?

**鵜飼:**違いますね。大事にする部分が全然違っていて。

向こうの野菜は、朝から置いてあって夜になってもピッカピカなんです。日本よりも農薬の基準がゆるいんでしょうね。

やはり、そういう新鮮そうな見た目が重要で。土がついていて採れたてみたいな野菜よりは、綺麗なほうがという。

現地のスーパーマーケットに行くと、日本人だったら絶対手を出さないようなもの、日本人の感覚ではちょっと嫌だなと思うものが、向こうでは新鮮で美味しそうというように、感覚が全然違うんですよね。

**西井:**ビジュアル一つとってもそうですよね。白石さんの話ではないけれども、日本のお客様を理解するのも大変なのに、海外ならなお更ですよね。

**鵜飼:**自分がそこで生きてきたわけじゃないので、やはり奥底の部分の感情って絶対違う。日本人が海外でやるのは結構難しいなと思っていて。

だからこそ、現地に溶け込むこと、自分の考えに固執して傲慢にならないことがとても大切だと思います。

最近は、ローカルの人の意見や考え方をすごく重要視しています。現地のスタッフや提携先の関係者の意見は、とても重要です。

**西井:**食は国によって一番違いがわかりやすいですよね。食べるものも違うし料理も違う。香港では、家で料理する頻度というのはどれくらいなんですか?

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**鵜飼:**2パターンあります。メイドさんを雇っている家庭では週5日は家で食べます。最近は徐々にメイドさんがいる家庭も減ってきていますが。

メイドさんがいない家庭では週2日、週末だけ家で料理をするという感じです。

**西井:**結構外食が多かったりしますよね。そのような文化の違う国で、Oisixというサービスがどういうお客様に使ってもらえるのかという話ですよね。

スーパーに夜でも新鮮な野菜があるというのは、逆にチャンスでもあるわけで。そういうことに気がついている人には、ちゃんと伝わっているはずです。

フォトグラファー:三浦一紀