ここ数年、インサイドセールスを導入する企業が増えて来ました。主ににメールや電話を通じて見込み客の育成を行い、確度の高い商談へつなげる役割を果たします。

また、リードタイムの長いBtoB事業においては、マーケティングとセールスを繋ぐインサイドセールスは欠かせない役割となっています。

この記事では、インサイドセールスの基礎知識と役割について解説します。

目次

  1. インサイドセールスとは?
  2. インサイドセールスが注目される理由
  3. インサイドセールスの役割
  4. インサイドセールスで期待できる効果
  5. インサイドセールスの導入パターン
  6. インサイドセールスを導入する際の注意点
  7. インサイドセールスの導入手順
  8. インサイドセールスで効果を上げるポイント
  9. インサイドセールス導入における成功事例
  10. 知っておきたいインサイドセールスの用語
  11. インサイドセールスで営業効率と効果を高めよう

インサイドセールスとは?

インサイドセールス.jpg

インサイドセールスとは、顧客企業への訪問を行わない「内勤型」の営業スタイルで、国境を跨ぐビジネスの多い欧米圏で効率的に、ムダなく営業を行うために考えられたセールス手法です。主に、メールや電話、メッセンジャーサービスなどを活用して営業を行います。

内勤のセールスということから「テレアポ」と混同されやすいですが、業務内容は大きく異なります。テレアポは、新規開拓のためのアポイント取得までが目的ですが、インサイドセールスは見込み客を育成し商談につなげることが目的です。

短期的な案件獲得は目指さず、長期的にコミュニケーションを取り、顧客の情報収集やニーズを具体的に汲み取り、戦略を立てることを重視するのが特徴です。

そのため、コミュニケーションスキルだけではなく、マーケティング戦略を立てるスキルも必要になります。

フィールドセールスとの違い

フィールドセールスは、顧客と直接商談してニーズを確認し、自社の商品やサービスを提案するセールス手法です。一方、インサイドセールスは顧客とのコミュニケーションや電話やメールなどを使用するため、営業スタイルが対面かどうかに違いがあります。

また、ターゲット選定から電話によるアポ獲得までの工程はインサイドセールスに該当します。つまり、インサイドセールスはフィールドセールスへと繋げるための工程とも言えるのです。

テレアポとの違い

テレアポは、見込み顧客に電話でアポイントを取り、最初の関係を構築することを目的とした手法です。また、顧客として獲得しているものの、繋がりがない顧客に対して電話で最初の接点を作ることもテレアポと呼ばれます。後者はインサイドセールスの1つに該当します。

インサイドセールスが注目される理由

コストカットや業務効率化

インサイドセールスは、顧客の元へ行くための交通費や時間を削減できるため、コストカットや業務効率化に繋がります。1日にアプローチできる見込み顧客の数が多くなるため、それだけ受注数の増加が期待できます。

属人化の防止

また、SFAやCRMなどのツールで顧客の状況や営業活動の段階などをチームで共有するため、業務の属人化を防げる点もインサイドセールスが注目されている理由の1つです。少子高齢化が社会問題となる中、少数精鋭のチーム編成が求められています。しかし、優秀な人材を育てるには時間と労力がかかり、十分に育つまでの売上が低迷する恐れがあります。

インサイドセールスは1日に営業をかけることができる見込み顧客の数が多いため、優秀な人材が育つまでの収益獲得に寄与します。

インサイドセールスの役割

インサイドセールスは商談の設定までを担当し、フィールドセールスはそれ以降の対面での商談を行うという使い分けがされていました。しかし、現在ではオンライン商談が一般化しているため、商談もインサイドセールスが担当するケースもあります。また、オンライン商談であっても、商談から受注まで担当するのがフィールドセールスと定義している企業も少なくありません。

このように、インサイドセールスとフィールドセールスは単に内勤か外勤かを表す言葉ではなく、営業活動における分業範囲を表す言葉です。

インサイドセールスで期待できる効果

図_インサイドセールスの効果.png

インサイドセールスで期待できる効果は、リードタイムの短縮・商談数の増加・営業担当者の負担軽減の3つです。それぞれ詳しく見ていきましょう。

リードタイムの短縮

インサイドセールスでは、時間や場所を問わず商談ができるというメリットを活用した営業が可能です。訪問をすることなく商談にまで発展するかを見極めることができるため、見込みがあると判断できた場合のみ積極的な訪問をすることで、リードタイムを短縮しつつ営業効率を高めることが可能です。

商談数の増加が可能

インサイドセールスでは、企業への訪問回数を必要最低限に抑えられることから、移動にかかる時間を商談に使うことができ商談数の増加が可能になります。

会社概要の説明や商品の概要説明は、訪問前に電話などで終わらせておくことで、商談以外にかかる時間を大幅な短縮ができ商談数を増やせる体制構築が可能です。

営業担当者の負担軽減

インサイドセールスでは企業への訪問を行わないことから、電話やメールなどを活用して、商品やサービスに対する顧客の興味や関心を高めることができます。

担当者1人でアポイントから企業の訪問・商談・フォローを行う場合は、見込み客に対して対応を行っている間に、他に受注を検討している顧客がいると、対応がおろそかになってしまいがちです。

その点インサイドセールスは、営業担当者の負担を最小限に抑えながら発注率をあげることが可能になります。

コストの削減

インサイドセールスはコスト削減効果があります。訪問営業では交通費がかかりますが、インサイドセールスではオンライン商談を行うため、交通費は一切かかりません。また、訪問営業は必ずしも受注に繋がるとは限らないため、収益に対してコストがかかりすぎるケースもあります。

さらに、インサイドセールスは1日に多くの商談が可能なため、人件費も削減できます。

インサイドセールスの導入パターン

インサイドセールスの導入パターンには、SDRとBDR、OSがあります。それぞれの違い、ポイントを解説します。

SDR(エスディーアール):反響型

SDRは「Sales Development Representative」の略称で、反響型のことを指します。

● SDRにおけるポイント

  • 問い合わせや資料請求への迅速な対応が求められる
  • 関心度が高い顧客に適切な対応をすることで受注に繋げる
  • 企業規模やエリアなどに応じて適切な方法でアピールする必要がある

BDR(ビーディーアール):新規開拓型

BDRは「Business Development Representative」の略称で、新規開拓型のことを指します。

● BDRにおけるポイント

  • ターゲット企業に対して戦略的にアプローチする必要がある
  • ニーズの見極めが必要
  • 自社の商品やサービスに対して満足してくれるかどうかを見極める必要がある
  • 問い合わせや資料請求などへの迅速な対応が必要

OS(オンラインセールス)

OSは「Online Sales」に略称で、オンライン上で商談を行うことを指します。SDRチームやBDRチームが獲得した顧客との初回面談を担当し、受注へと繋げます。

● OSにおけるポイント

  • ニーズを満たすことがわかるようにサービス紹介する
  • 質問に対する回答で疑問を解消する
  • ヒアリングでニーズを掘り下げて購入意欲を高める
  • 顧客のケースに似た事例を紹介して成功のイメージを高めてもらう

インサイドセールスを導入する際の注意点

インサイドセールスは、従来の日本の営業手法と大きく異なるため、導入当初は理解を得られない可能性があります。そのため、インサイドセールスの事例やメリットなどを提示し、期間限定での導入や顧客を絞った対応を提案することから始めましょう。

社内で十分な理解を得たうえで実行しなければ、担当者のモチベーションも上がりません。

また、インサイドセールスを効率的に行うには、CRMやSFAなどのツールの導入が不可欠です。次に解説するインサイドセールスの導入手順を参考に、1つずつ着実に準備を進めましょう。

インサイドセールスの導入手順

インサイドセールスを導入する際の手順は以下の通りです。

  1. プロセスを整理し役割を明確にする
  2. 設置部署の決定
  3. 人材の確保
  4. 顧客情報のリスト化
  5. KPIの設定

それぞれのステップを詳しく見ていきましょう。

1. プロセスを整理し役割を明確にする

目的を定め、営業プロセス内のどこにインサイドセールスの仕組みを導入するかを検討します。

インサイドセールスの導入方法はリード発掘型・リード育成型・営業クローズ特化型・フィールドセールス協業型の4つに分類されます。

リード数の増加を目的に定めるのであればリード発掘型など、目的によって導入する仕組みが変わります。自社の目的に合う方法で導入の検討を進めましょう。

2.設置部署の決定

まずは、外注もしくは内製で行うのかを含めて検討しましょう。内製する場合は、マーケティング部門・営業部門にするのか、もしくはインサイドセールスで新しく部門を立ち上げるのかも検討する必要があります。

例えば自社内にナレッジの蓄積がなかったり、人材のリソースに余裕がなかったりする場合は、外注の方が成果につながる可能性があります。

3.人材の確保

インサイドセールスは複数の案件を同時進行する必要があるため、マルチタスクで管理能力が高い人が向いているでしょう。

また、インサイドセールスでは内勤でITツールを使う機会が多いと言えます。例えば、見込み客のデータ管理では、CRMやMAなどのツールを使うことも多いでしょう。そのため、ITリテラシーの高さも必要です。

さらにコミュニケーション能力も必要になります。非対面であるからこそ、より高度な会話力が求められるでしょう。対顧客だけでなく社内での連携も必要になるため、コミュニケーション能力の高い素質を持った人が適任と言えるでしょう。

4.顧客情報のリスト化

見込み客へのアプローチ状況は、一元管理することをおすすめします。顧客情報のリストに基づくアプローチから得た課題や顧客のニーズを共有することで、新規顧客の獲得が可能になります。

また、顧客情報のリストを作成したのち更新し続けることで、営業に活用できる有益な情報へのブラッシュアップが実現できます。

5.KPIの設定

営業全体の目標を踏まえて、インサイドセールスチームとしてのKPIを設定します。ここで大切なのは、目的に沿ったKPIを設定することです。

例えば、アポイント獲得数などを評価していると、本来の目的である顧客育成が十分に進まない可能性があります。目的に沿ったインサイドセールスの型に合わせて、KPIを設定しましょう。

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インサイドセールスで効果を上げるポイント

インサイドセールスを導入する際は、以下の74つのポイントを押さえておくことが大切です。それぞれ見ていきましょう。

1. 顧客情報とニーズの収集

インサイドセールスを導入する上で最も重要なのが、顧客情報とニーズの収集です。具体的には企業名や所在地、担当者の連絡先、企業が抱える課題など営業活動に必要な情報の収集を行います。

また、「過去に取引を行っていた」「社員に知り合いがいる」などのように、対象の企業との接点の有無も確認しましょう。

顧客情報は、「帝国データバンク」や「東洋経済データベースサービス」など、法人リスト販売のサービスを利用することで効率的に収集できます。

なお収集した顧客情報は、CRMというツールを用いて管理することで情報の一元管理が行えるので活用してみましょう。

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今回は、CRMの基本情報からオススメツールまで、CRM導入に必要な情報をまとめてご紹介します。 顧客管理ができるCRMツールの導入を検討しているご担当者の方は、ぜひ目をとおしてみてください。

  

2. リードジェネレーション(潜在的な見込み客の設定)

リードジェネレーションとは、見込み客を獲得することを指します。例えば、自社ホームページでのホワイトペーパー配布や展示会で名刺交換などを行い、自社に興味を持った人のデータを獲得するのが主な目的です。

将来的に、自社サービスの顧客となる可能性がある「潜在的な見込み客」として設定し、セールスのアプローチを行いましょう。

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今回は、リードジェネレーションの意味と、リードジェネレーションのために利用される7つの手法を紹介します。リードジェネレーションと合わせて語られることの多いリードナーチャリングについても説明するので、マーケティングの担当者の方はぜひ参考にしてみてください。

  

3.リードナーチャリング(見込み客の育成)

リードジェネレーションを行った潜在的な見込み客に対して、課題をヒアリングし、具体的なノウハウの提供を行ったり、自社商材のメリットを伝えることで成約の確度を徐々に高めていくことが可能です。これを、リードナーチャリングと言います。

自社商品のメリットを伝えるものの、短期的な商談につなげるのではなく、コミュニケーションを深めることを重視しましょう。

見込み客とのやり取りを通して購買傾向を分析することで、成約につながりそうな商談を外回りをして顧客と直接商談を行うフィールドセールスに引き継ぐことができます。

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今回はリードナーチャリングの基本知識を解説します。リードナーチャリングでは直接訪問やテレアポ以外にも、広告やSNSなどWebを利用した情報発信も重要になってきます。実際に顧客と対面で交渉を行う営業マンだけでなく、マーケティング担当者にとっても押さえておきたいところでしょう。

  

4.マーケター、フィールドセールスとの連携

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上図からわかるように、インサイドセールスはマーケティング業務とセールス業務の中間に位置する業務を担います。そのため、社内のマーケターとフィールドセールスとの連携が非常に重要です。

例えばマーケターが単純に「リード数」だけを追っていると、リード数だけは増えたものの、最終的に商談や受注に繋がらないという事態になってしまいます。

そこで、リードに対するアポ率・商談率・受注率などをインサイドセールスからマーケターにフィードバックし、マーケティング施策に反映するという連携が必要になるのです。

図_マーケ×インサイド.png

5.BANT条件の設定

BANT条件とは、受注見込みの度合いを判断するために注目すべき次の4つの情報を表すフレームワークです。

  • Budget(予算)
  • Authority(決裁権)
  • Needs(必要性)
  • Timeframe(導入時期)

自社サービスの導入費用、ニーズなどに応じて上記4つの基準を設定し、受注見込みの度合いを判断します。受注見込みが高い場合、より充実したサポートを行うことで、受注の可能性が高まります。

6.トークスクリプト&トレーニング

トークスクリプトは、初回商談から受注までのトークの流れを示すものです。相手の返答に応じて次に話す内容をあらかじめ決めておくことで、メンバー間のスキルの差を小さくできます。ただし、トークスクリプトを見ながら商談はできないため、事前のトレーニングで完全に習得しなければなりません。また、営業におけるトークテクニックのトレーニングも必要です。

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【よくあるパターン別】インサイドセールスのトークスクリプト集です

BANT確認のトーク例・新規お問い合わせへのトーク例など

7.SFA・CRMなどのツール活用

営業支援ツールのSFAや顧客管理システムのCRMは、インサイドセールスの導入による営業の効率化を促します。データを基に適切なアピール方法を模索することで、1回の商談の密度や受注角度に与える良い影響などを最大化できます。

また、チームワーク力の向上にも繋がることも、SFA・CRMを導入するメリットです。商談状況をチーム間で共有すれば、顧客からの問い合わせに担当者が席を外していても、他のメンバーがフォローできます。

インサイドセールス導入における成功事例

インサイドセールの導入により、受注見込みが最高ランクの案件を月200件以上獲得した事例を紹介します。

経理システムを提供している企業の事例です。マーケティングチームがフィールドセールスを行うチームとうまく連携できておらず、獲得した見込み顧客数に対して営業数が少ないという問題を抱えていました。

そこで、インサイドセールスチームを新たに結成し、アプローチをかけたことで、受注見込みが最高ランクの案件を月200件以上獲得することに成功しました。アプローチをかけるだけでは受注見込みを高めることはできませんが、SFA・CRMの導入やトークスクリプトの作成、トレーニングの実施などにより、受注角度を順調に高めることができました。

知っておきたいインサイドセールスの用語

インサイドセールスの導入を検討する際は、用語についても確認が必要です。

MQL(Marketing Qualified Lead)

MQL(Marketing Qualified Lead)は、マーケティングチームが獲得したホットリードのことです。リードの質は均一ではなく、受注見込みの度合いが異なります。イベントで集めた名刺やWeb資料のダウンロードなどの情報をもとに、自社製品に一定以上の興味を持ったと判断できたリードをMQLとします。

SQL(Sales Qualified Lead)

SQL(Sales Qualified Lead)は、営業が認定した見込み顧客のことです。インサイドセールスを行った結果、自社製品にニーズがあることがわかった顧客が該当します。MQLに対してヒアリングや提案を行い、SQLへと引き上げ、その中から受注見込みが高い案件を模索するのが一般的なスタイルです。

MQLとは?マーケティングにおける重要性やSQLとの違いを解説

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MQL(Marketing Qualified Lead)とはマーケティング活動によって創出された、興味度の高い見込み客のことです。この記事ではMQLを創出する方法やSQLとの違い、MQLを成約に繋げるためのポイントについて解説します。

インサイドセールスで営業効率と効果を高めよう

インサイドセールスは、効率的に顧客へアプローチできるセールス手法です。「ターゲットの設定」や「ニーズの収集」などマーケティングの要素も含むため、社内のマーケターとの連携も欠かせないでしょう。

実際にインサイドセールスを社内で実施するにあたり、便利なのがITツールです。営業支援システムのSFAや顧客情報管理システムのCRMなどがあります。自社に合うITツールを導入し、セールスの効率化を目指す手段として活用しましょう。

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