Webメディアやポータルサイトを運営する媒体社であれば、広告によるマネタイズが一般的です。ディスプレイ広告やインフィード広告、動画広告、記事広告など多様化する広告から自社の媒体や読者の特性に合わせて最適な広告フォーマットを模索している方は多いのではないでしょうか。

スマートフォンやタブレットが普及したことで、ユーザーインターネット利用環境が変化しています。それに伴い、広告に対する行動も変化しました。もともとディスプレイ広告のフォーマットはデスクトップ用に作られているものなので、スマートフォンがメインのインターネット端末として利用される環境には合わなくなってきているとも考えられます。

広告の種類や掲載方法によっては、コンテンツユーザー体験の“邪魔”になることが多々あります。そこで、媒体に違和感なく溶け込むように広告を表示させられる「ネイティブ広告」は、ユーザー体験を損ねない広告として期待されています。

今回は、AdRoll株式会社が主催する「AdRoll University for Publishers 〜専門家から学ぶアドテク講座〜」で行われた高広 伯彦 氏(以下、高広 氏)による「ネイティブ広告の基礎及び導入のメリット」というテーマのセッションの様子をお届けします。

また、イベントに参加したferret 創刊編集長 飯髙悠太(@yutaiitaka)が当日Twitterで行ったレポートも合わせてご紹介します。
  

高広 伯彦 氏プロフィール

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Sharethrough 日本市場代表

現在、米国のネイティブ広告プラットフォーム企業 Sharethrough Inc.の日本代表。主に媒体社に向けたネイティブ広告事業の開発と推進に携わり、広告主に向けた正しいネイティブ広告活用の啓蒙活動にも力を入れている。

96年に新卒で株式会社博報堂に入社、営業職に従事。90年台後半よりデジタル領域のビジネスにかかわり、同社インタラクティブ局、株式会社博報堂DYメディアパートナーズ i-メディア局を経て、2004年に株式会社電通に入社。インタラクティブコミュニケーション局にてプロデューサー / コミュニケーションデザイナー。2005年12月からは、グーグル株式会社 広告営業企画チームのシニアマネジャーとして、AdWordsなど広告プロダクトのマーケティング、YouTubeの広告ビジネスの日本導入に関わる。2009年には「スケダチ」として独立。広告ビジネス開発領域のコンサルティングや、各種ブランドのマーケティングコミュニケーションの企画やコンサルティングを行っている。2012年にアジア初のHubSpotパートナーとして、インバウンドマーケティングやB2Bに特化したデジタルマーケティングを手がける株式会社マーケティングエンジンを創業。HubSpotの米国外の初のプラチナパートナーになるまで同社を育成し、2013年・2014年と2年連続 International Agency of the Yearを獲得した。2014年にマーケティングエンジンの代表退任後、スケダチに復帰。2015年6月から米国のネイティブ広告企業 Sharethrough Inc.の日本事業の代表を兼務している。また、社会人大学院生として、京都大学経営管理大学院博士課程に在籍。

著書に『次世代コミュニケーションプラニング』、『インバウンドマーケティング』(ともにソフトバンククリエイティブ)。共著に『フェイスブックインパクト』(宣伝会議)など。第2回東京インタラクティブアドアワードグランプリ受賞(『日産自動車 WebCINEMA TRUNK』)他、デジタルクリエティブ / マーケティング関連の受賞歴多数。日本インタラクティブ広告協会ネイティブ広告委員会主査。

引用元:AdRoll - Supply Seminar

  

「ネイティブ広告」とは?従来の広告との違い

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「ネイティブ」と「エイリアン」語源から知る媒体にとっての広告の立ち位置

「ネイティブ広告」とは、どのような広告を指すのでしょうか。

ネイティブ(Native)という言葉は、もともと“土着”や“生まれつき”を意味する言葉です。そして、ネイティブの対義語としてエイリアン(Alien)という言葉がありますが、これは“外来種”という意味です。もともと、広告はエイリアンなものとされ、“媒体とは別のモノ”として設定していたわけです。いわば嫌われ者のような扱いでした」(高広 氏)

高広 氏は、広告は媒体にとってエイリアン(外来種的)なものと述べています。つまり、媒体に本来ない存在として扱われてきました。そのため、広告が掲載されていることでUI / UXを損ね、違和感を抱かせる要因として考えられてきたのです。

媒体と広告の関係を良くするために、媒体のデザインや内容とほぼ同じ体験ができる広告枠があればユーザーにスキップされなくなるのではという概念からネイティブ広告が生まれたのです」(高広 氏)

媒体にとって如何に違和感なく広告を掲載できるかを突き詰めた結果生まれたのが、ネイティブ広告です。「ネイティブ広告」は広告の具体的な種類を指すのではなく大きな枠組みとして表す言葉ということがわかります。
  

ネイティブ広告で重要なのは「形式」と「機能」

ネイティブ広告は主に、下記のような形式が存在します。

・インフィード広告
・レコメンド広告
・リスティング広告
・ネットショップのスポンサード商品リンク
・企業のLINEスタンプのような特定のプラットフォーム独特なもの
・TwitterやFacebookなどのSNS広告

上記からわかるのは、広告が掲載される媒体のレイアウトやデザインに即した形式であることです。しかし、単に形式を揃えるだけではネイティブ広告とはいえません。

ネイティブ広告で重要なのは、“形式(=見た目)”と“機能(=飛び先)”です。形式が媒体に合っているからと、いきなりサービスページや資料請求が表示されるのは厳密な意味ではネイティブ広告ではありません。媒体から遷移した先が、例えばコンテンツだったり、ユーザーがそのメディアやプラットフォームで普段体験していることと同様のものが飛び先にあることが大切です」(高広 氏)
  

ネイティブ広告に注目すべき理由

スマートフォンやタブレットなど、ユーザーインターネット利用環境が多様化したことで、今後ネイティブ広告に注目することが大切だと高広 氏は述べています。

1日24時間しかないのに、スマートフォンを利用したメディアへの接触時間が急速に増えています。博報堂のメディア環境研究所の調査によれば、2009年まではその利用時間は1日18分程度だったのに対して、2016年には90分まで拡大しています。モバイルインターネット環境での収益を考えないとメディア運営が厳しくなるのは皆さんの同意を得られることでしょう」(高広 氏)

スマートフォンの利用時間の増加に伴い、モバイルインターネット環境でのメディアへの接触時間が増えています。Webメディアはもちろん、TwitterやLINEなどソーシャルメディアの利用時間も増加しており、既存の広告だけでは将来的に厳しい状況になっています。

皆さんが普段扱っているディスプレイ広告は、アメリカのIAB(Interactive Advertising Bureau)によって標準化(IABスタンダード)がもとになっています。ディスプレイ広告の標準化は、PC環境に合わせて行われました。共通の仕組みを作ることで制作を効率化し、媒体の種類問わず掲載しやすいフォーマットになります。しかし、スマートフォンが普及した現在では、ラージレクタングルフォーマットのサイズではユーザーに威圧感を与えるでしょう。そこで、IABではモバイルファースト時代に合わせ、ネイティブ広告の重要性を意識し、ネイティブ広告の標準化(Native1.)も行っています。いわば標準化されるぐらい重要かつ一般化された広告フォーマットになってきているわけです」(高広 氏)

  

ネイティブ広告を導入するメリット

広告主は質の高いユーザーを「ブランドコンテンツ」に誘導できる

先にも紹介したとおり、ネイティブ広告は媒体にとって「形式」と「機能」が自然な形で掲載される広告枠のことを指します。そこで、広告主側が第1のメリットとして提供するのが「ブランドコンテンツ」への誘導です。

コンテンツマーケティングがブームとなって以降、企業が提供するブランドコンテンツは、SEOソーシャルメディアを利用して誘導するのが一般的でした。しかし、企業からしてみれば、SEOだと”待ち”の姿勢の手法だし、ビッグワードでもなければトラフィックを稼げないし、必ずしも検索結果で上位に表示されるわけではありません。一方ソーシャルメディアの場合、”バズる”コンテンツを作ったとしても、それがターゲットとする人々のトラフィックを集められてるかというと、むしろノイズが増える可能性がある。これでは自分たちがほしいターゲットにリーチできているのかわからなくなります。また、そこで苦戦する広告主も多くいます」(高広 氏)

広告主がブランドコンテンツに誘導したいのは、自社の商材にマッチしたユーザーです。検索結果ソーシャルメディアではユーザーに効率的にリーチすることができますが、必ずしも自社商材に関心を持つとは限りません。広告主はいつか訪れる見込み客を待つ必要がありました。

また、ネイティブ広告の場合はそれぞれのメディアのコンテンツを「読み」に来ているユーザーを、その態度のままにブランドコンテンツに誘導することができるので、ブランドコンテンツとのエンゲージメント(=読まれる分量や滞在時間など)が高くなります。コンテンツマーケティングを失敗させないためにも、ネイティブ広告は注目です。

ネイティブ広告として相性の良い媒体にブランドコンテンツを出稿することで、その媒体に関心の高いユーザーをブランドコンテンツに誘導できます」(高広 氏)

  

ネイティブ広告はユーザーに態度変容を起こすことができる

また、ネイティブ広告は、既存の広告と異なる側面を持っています。それが、ユーザーの購買意欲を高め、態度変容を起こすことができる点です。

既存のネット広告は、オーディエンス・ターゲティングによってすでに購買意欲の高そうなユーザーを対象にすることで効果を伸ばしてきました。一方で、将来的にはお客さんになってくれそうなのだけれども、まだ購買意欲まできてないユーザーへの態度変容を狙う使い方は今はあまりなされていません。しかし、ネイティブ広告は媒体上からコンテンツを読むというプロセスを挟むという特徴があります。これは博物館の展覧会や博覧会のパビリオンのイメージです。そういうところにいった来訪者がエントランスから入って、中の展示物を見て、そして見終わって出てきた時、なんらかの知識や気持ちの変化があることが期待されますよね。いわば、ネイティブ広告はそのエントランスに当たる部分で、飛び先のコンテンツは展示物、そして出口で起こった気持ちの変化が態度変容。そのような、ネイティブ広告コンテンツの関係が理想的な施策だと思います。だからネイティブ広告は、ユーザーの購買意欲を高めて態度変容が起きることを期待できるというわけです」(高広 氏)

このような考え方でネイティブ広告コンテンツを使えば、高広 氏は企業のマーケティングにおいて、ブランドへ理解、関心、購入意欲の醸成など広告主側のブランドリフトに貢献することが期待できるとも述べています。

広告主にとって非常に大きなメリットがあるため、媒体社にとってビジネスチャンスです。媒体社は質の高いユーザーを送客できる広告枠として販売できるためです。

とはいえ、広告枠への入札金額が媒体社側にもコントロールしやすいプログラマティック取引と比べ、アドネットワーク経由の広告出稿を受け入れてるだけでは、広告主側の入札金額に応じた広告しか掲載されないため、広告の質と媒体社の収益的にも課題があります。

しかし、日本ではアドネットワークに依存する媒体が多いのも現実なので、ここは大きく変えていかなければいけないところでしょう。もし媒体側が自らのサイトに相性が良い広告を掲載したいのであれば、媒体の読者にマッチする商品やサービスを持っている広告主に自らアプローチして広告販売を行うことも重要でしょう。

  

「動的クリエイティブによるパーソナライズ化が可能」ネイティブ広告の未来

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ネイティブ広告は非常に多様化しています。従来のネイティブ広告テキストコンテンツが主体ですが、動的クリエイティブのネイティブ広告も登場しています。

広告が表示される環境や地域に応じて広告内容を切り替えることができます。例えば、晴れや雨など気候に応じてクリエイティブを動的に切り替えたり、南国や北国など地域に応じて切り替えることもできるようになります。共通の仕組みとして確率されることで、SSP/DSPに搭載されることで誰でも利用できるようになるでしょう。これを、DCO(Dynamic Creative Optimization)動的クリエイティブ最適化と言い、次のRTB3.0の仕様に盛り込まれています。つまり、プログラマティック取引において、読者にパーソナライズした広告が表示される時代が来ます。これは従来のリターゲティングとは一線を画すものです」(高広 氏)

環境や地域に広告を最適化できるため、既存の広告と比べてパーソナライズ度合いが向上します。また、単純なクリエイティブの切り替えだけではなく、画像や見出し単位での切り替えが行えるようになるため、ユーザーにとっての広告への好感度の向上が期待できるでしょう。

広告取引をスムーズに行うためにIABによって広告枠の標準化が行われましたが、媒体ごとに異なるネイティブ広告の標準化も行われています。リアルタイム広告取引の仕組みであるRTB2.xが整備され、Native 1.1という仕様が盛り込まれています。このNative1.1ではネイティブ広告の表示に必要なサムネイル画像や見出し、掲載するリンク、ブランド名などが標準仕様として決められとなり、従来のディスプレイ広告同様にネイティブ広告のプログラマティック取引が行えるようになったのです。そして次のRTB3.0ではこのDCOの仕組が盛り込まれて、ネット広告が購買プロセスの最終段階以外も担える面白い時代になってきていますね」(高広 氏)
  

まとめ

ネイティブ広告は媒体に自然な形式と機能で表示される広告です。既存の広告にとっての障壁だったユーザー体験の阻害を解決する手段として、大いに活用できるでしょう。広告主にとって質の高いユーザーを誘導できることから、媒体社、広告主ともにメリットがあります。

コンテンツとしての価値を持った広告として、ネイティブ広告に触れたユーザーは態度変容を期待できることから、ディスプレイ広告では収益化が難しい状況において活用できます。

また、テキスト主体のネイティブ広告だけではなく、動的クリエイティブのネイティブ広告が一般化することで広告のパーソナライズ度を向上させることができます。さらに、従来のディスプレイ広告のように自動入札によるネイティブ広告の販売が行えるプログラマティック取引が普及することで、ユーザーを阻害しない広告体験が期待できるでしょう。