ビジネスが政治のようになっている

**西井:**イノベーションが起きない理由として、消費者の問題もあるかもしれませんね。

先日クレジットカードの普及率のニュースが出ていたと思うんですけど、日本は普及率低いじゃないですか。あれはなんででしょうね。実際、アメリカに行くとほとんど全部カードでやりません? 絶対便利だし。

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**柴田:**アメリカで便利だなと思ったのは、たいていチェーンストアに行くと、自分でクレジットカードをスワイプさせられるじゃないですか。店員にカードを渡すより早いんですよね。

多分日本でできそうにないじゃないですか。お客さんに何かさせるというのが。当然、リテラシー低いお客さんにとっては、一時的な不都合を強いることになりますし。

**西井:**ほんの一瞬のことですよね。

**柴田:**それでレジの列が短くなったら、みんなうれしいですよね。

でも、一部の人の声を気にしてやらない。政治みたいになっているんですよね。

これは湯浅誠さんの受け売りなんですけど、ビジネスは、少なくてもいいから共感する人を集めましょうという作業なんですけど、政治は逆で、不満をゼロにするという作業なんです。ビジネスは、不満がある人はいくらいてもいいから、ファンを作るというのが本質。

嫌われるサービスでも、好きな人がいればいいっていう世界なんです。嫌なら使わなければ良いわけですから。

でも、今話題になっているような企業ってどのお客さんに対しても平等に気持ちよく、気持ち悪くない人を減らす、クレームを0にするというのが、売り上げを最大化するよりも優先されちゃっているんですよね、結果的に。

**西井:**日本のサービスは最高だと誇らしげに言っている人がいるけれど、実はそうではないというところもありますよね。国内だけしか見ていない人は、日本がすごく接客もいいと思っている。

でも、先ほどのレジの話ひとつとっても、実は接客は悪いという考え方もあります。だから、その辺の価値観から考えないといけないなと思うんです。

僕は、よくマーケティングはファン作りみたいなこと言ったりするんですけど。今の話はまさにそうですね。

いろいろな企業でマーケティングのコンサルで入っていても、これやろうという話をすると、これやるとこういう声が出てくるからと言うんですね。

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**西井:**顕著な例で言うと、メールマガジンとかでこういうタイミングでこういうメールを送って、ああだこうだと言うと、こういうことを書くと絶対こういうお客さんがいるからって言って、注意書きを入れろと。

そしたら注意書きがすごい長い(笑)。本文の倍くらい注意書きがあったりして、よくわからない。誰のためにやっているのかがまったくわからない。

注意書きを書かなくていいよとよく言うんですけどね。マーケティング部なのに今反対のことやっているよと。

別にアメリカがすべていいとか、そういう話じゃないと思うんですよ。ただ、逆に日本のサービスがいいと思っているところも、そうじゃないよってところはたくさんある。カードが使える使えないとかもそうですよね。