自社だけではなく「アプリ×アプリ」のカスタマージャーニーが重要になる理由

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向井 氏:
マーケティングにおいて、カスタマージャーニーの設計は何のためにやるものなのでしょうか。それぞれの考えを教えてください。

奥谷 氏:
ちょっとカスタマージャーニーの話をする前に、なぜ僕がヤマト運輸さんとOrigamiさんと話したかったかを説明させてください。

実は飲食や小売においてアプリが普及していく中、もっと広がって欲しいと考えているのがこの2社のアプリなんです。

というのも、ビジネス側から考えると、例えば、ヤマト運輸さんがアプリtoアプリでつなぐ事によって、もっと荷物の受け取りを効率的にできるかもしれないと思っています。これは1つのカスタマージャーニーですよね 。

つまり、Eコマースや何か運ぶという事を通じて買い物する事の全部を知ってらっしゃる会社であり、そこにポテンシャルを感じています。

また、Origamiさんでいえば、モバイルペイメントは単なる決済であり、クレジットカードと一緒だと思われている方もいるかもしれません。

ただ、カスタマージャーニーを考えてみてください。

例えば朝、コンビニでジュースを買うのにOrigamiを使う。その後にお昼過ぎたら営業に行く。そのために使うタクシーでも使える……このように行動データとペイメントが結び付けば色々なコミュニケーションへと広がると思っています。

自社アプリでは結局自社の事しかわかりません。ですが、ヤマト運輸さんやOrigamiさんのようにアプリが広がる事で他社への好影響が出るアプリもあるんです。

だから、これからは自社のアプリのカスタマージャーニーだけではなく、「アプリ×アプリ」といったカスタマージャーニーが必要だと今は考えています。

向井 氏:
ヤマト運輸さんでは、カスタマージャーニーに対する考えはどのようなものがありますか。

中西 氏:
「カスタマージャーニー」という、カッコいい言葉はあまり我々の社内では使わないです。ただ、どこでお客様が我々のサービスに触れるのかはいつも考えています。

元々、宅急便はユーザーと対面する商売です。皆さんが生活動線上で宅急便を使う際に、深く考えたりいろんな比較をしたりしないと思うんです。「最寄りのヤマト運輸の拠点やコンビニなどで発送できる」といった感覚で取引が始まるのが一般的だと思います。

ただ、ここ最近では、Eコマースが成長してきた事によって、「受け取り」に今までにない切り口が必要だと感じています。

タイムリーなお話で言うと、今日11月20日の15時に新たなAPIをEコマース事業者向けに公開しました(注)

1社目はエアークローゼットさんにご導入いただいており、エアークローゼットさんを利用するユーザーなら、直接ヤマトと接点を持たなくても宅急便の配送時間や配送先の変更ができるなど自由自在にできます。

こうした取り組みは、Eコマースの成長に健全に貢献できる事だと思いますし、我々が旧来考えていた事とは少し違うEコマースならではの体験になると思います。こういう事を考える際に、我々はカスタマージャーニーに向き合っているのだと思います。

注釈:ヤマト運輸API
2017年11月20日ヤマト運輸は会員サービスであるクロネコメンバーズサービスのAPIをEコマース事業者向けに公開。これにより、Eコマースでもクロネコメンバーズサービスと連携したサービスを開発できるようになった。

参考:
ヤマト運輸がEC事業者向けAPIを公開 エアークローゼットが導入第1号に|ビジネス+IT

奥谷 氏:
Eコマースと言っても、結局は物流センターにいる人が商品をピックアップして、荷物に詰めて発送しなければ商品は届きません。

ヤマト運輸さんは、そういうアナログな部分に対してデータの連携を図る事で*「カスタマージャーニー理解のシームレス化」*につなげています。Origamiさんのような決済システムも同様です。

互いのカスタマージャーニーに乗っかっていく事で、ブランドとお客さんとの関係をよりスムースにしていく事が可能になっているんです。その入口として「アプリ」が重要です。

例えば、ユーザーにしてみれば、ヤマト運輸さんのアプリからオイシックスの荷物が届くか確認しても構わないし、うちから見てもらっても構わない。要するにカスタマージャーニーをスムースにしてくれるプレイヤーがここにいる2社なんです。

古見 氏:
奥谷さん、中西さんの補足として話をさせていただきます。

例えば、鉄道系ICカードは、登場してから長い期間経っていますが、1つの鉄道会社からほかの鉄道会社とも連携し利用できたり、コンビニや自動販売機の支払いに使えようになった事で、今のように普及してきたと感じます。

このように、「支払う」という事業は、インフラとしてあちこちで利用できないとサービス・アプリを持っている意味が無いと思っています。いくらダウンロード型の広告を出稿しても、使える場所がないとユーザーは利用を止めてしまいます。

そういう意味では、決済アプリアプリを利用できる加盟店とユーザーを考えながら、バランスよく運用していかなくてはならない。なので、加盟店でアプリを知って興味を持ち、サービス利用を始めるというプロセスにフォーカスしています。

現金よりもOrigamiの方がお得になるキャンペーンを加盟店と一緒に実施し、加盟店自体も売上を上げていこうという取り組みです。支払うインフラというイメージの決済サービスが売上に貢献できるとなると、店員さんもアプリをオススメしてくれる、という良い回転が生まれています。

奥谷 氏:
アプリでなくても、決済を提供するサービスはすでにあります。クレジットカードであっても購買履歴は蓄積されていくでしょう。

でも、何を買ったかではなく、ユーザーとどうコミュニケーションをとるかが大切なんです。後発の電子マネーでも、アプリで提供する事によってお客さんとコミュニケーションを取れているように思いますね。