カスタマージャーニーでアプリが果たす役割

向井 氏:
アプリのカスタマージャーニーでは、サービスの認知を広めていくというパターンとCRMのようにコミュニケーションをとりつつ、リテンションを狙う事で購買単価の上昇を狙うパターンがあるかと思います。

そこで、皆さんのアプリはそれぞれどちらの位置付けがされているのでしょうか。

古見 氏:
Origamiはどちらかと言うと後者からスタートしています。弊社のチーム体制としては、マーケターとグロースエンジニアチームが一体になったグロースチームをひいています。

そこで、例えば、インストールしてから1day……7dayと経過していく中で、どんなコンテンツを当てていくかなどを常に考えています。

だから、こういう運用型の考え方が癖というか習慣になっています。アプリ自体のUI / UXを変えていこうというエンジニアとの連携が普通の事になっています。

中西 氏:
ヤマト運輸は言わずもがな後者ですね。我々のアプリの中には、「My問い合わせ」というサービスがあって、明日届く荷物があったらアプリのプッシュ通知が来ます。そういった通知がどんどん自分の履歴として溜まっていく……受け取る荷物も発送する荷物もアプリの中に勝手に溜まっていくんです。

それがEコマースの荷物でも、ご家族から送られてくるものでも個々の荷物情報がたまっていく。そうなると、荷物を受け取るタイミングがきたら、ユーザーはアプリを開いてくれるようになっていきます。

向井 氏:
奥谷さんはMUJI passportの生みの親ですけど、最初の時のコンセプトは認知・検討のフェーズを狙っていたんですか。

奥谷 氏:
いえ、やっぱり最終的にはCRMですね。結局人間がダウンロードするアプリってずっと一緒なんです。だからリテンションが利かないアプリは意味がないです。

今オイシックスでもLTVが最も高いお客さんはアプリユーザーです。アプリの課題の1つはダウンロードですが、1回起動したからといってマネタイズはできません。

リテンションをかけていき、ウェイトを出す必要があります。アプリがダウンロードされればされるほど、アプリがどんどんメディア化していく。

例えば、無印良品の時に非常に良いと感じたのは、チラシを止めてもアプリでのコミュニケーションでロイヤルカスタマーへのエンゲージメントが高まり、売上も上がった事です。

その分、広告戦略をMUJI passport原資に充てられるという効果がでました。刹那的・キャンペーンベースのアプリ開発をしてきて思うのは、やっぱりずっと使われて何回も見られなければ、アプリを作る意味がないだろうという事です。

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シームレスな買い物体験を 〜 これからのカスタマージャーニー 〜

向井 氏:
この先、カスタマージャーニーを考えていく上で何が大事になっていくか。どういう視点でこれからのマーケティングを見て、カスタマージャーニーを考えていくといいと思うか教えてください。

奥谷 氏:
そうですね、短期的に言うと決済が見えないような形のカスタマージャーニーがいいのかなと思っています。

例えば、百貨店に行って買い物すると会計の時に待たされると思います。でも*「ピッでええやん」*と思いませんか?

日本は安全な国なので「お金」への信頼度が高いんですが、お金というのはそもそも交換の証明として存在しているだけなんです。これから金融とかお金関係のデジタル化が進んで、Fintechやアプリが世の中を変えていくんだろう思っています。

長期的には、*「どんなデバイスでも変わらない、シームレスな買い物体験」*がいいのかなと思っています。

向井 氏:
なるほど。1社のカスタマージャーニーではなくシームレスに、認知から検討、購買までつながり、さらにロジスティクスや支払までが1本でつながるのが実現できるといいんじゃないかという事ですね。中西さんはどうですか。

中西 氏:
「Webでどうお客様とコミュニケーション取っていくか」とセットの話として、お客様と実際にお会いする場面も考えていかなくてならない重要な事と思います。我々の場合、多くのお客様とお会いしていますから。

ヤマト運輸では、アプリだけではなく、Web会員も含めて一般的なアプリ事業者が提供しているよりも高年齢な層にリーチできていると思っています。それは、対面でサービスのご説明をしたりオススメをしたりといったコミュニケーションを取れる事に我々の強みがあると思います。

つまり、カスタマージャーニーの中で、どうやって、どのタイミングで接点を持つかは今後我々が大事にしていくべきところなんだろうなと思っています。

向井 氏:
本質的で忘れてはいけない部分をずっと大事にされている感じがしますね。ありがとうございます。では、古見さんいかがでしょうか。

古見 氏:
奥谷さんが言うようなシームレスなカスタマージャーニーを目指していくために、アプリとWebでは同一ユーザーの行動だとしても、なかなかデータが交換し合えない部分がまだまだ残っていて、アプリが「離れ小島」みたいになっているのがまだ解消してないと思っています。アプリを*「離れ小島」*にしないための分析や、つながり作りが今後より必要だと思います。