Googleが2016年に行った調査によると、日本国内のスマートフォンユーザーインストールする平均アプリ数は36個である一方、毎日利用する平均アプリ数は6個にとどまっています。このデータからもわかる通り、アプリがダウンロードされたからと言って、必ずしも積極的に利用されるわけではありません。

そのため、継続してファンとの関係を築いていこうという企業ではダウンロード施策だけでなく、リテンションを促す施策も考えていく必要があるでしょう。
リテンションを促すために重要な存在となるのがコンテンツやコミュニケーション。

では、これからのアプリマーケティングコンテンツやコミュニケーションをキーとした運営を行っていく中で、大切にすべき考え方とは何でしょうか。

今回は、App Annie(アップアニー)主催「Decode Tokyo」にて行われた、株式会社エブリー「DELISH KITCHEN」カンパニー長/編集長 菅原千遥氏とエキサイト株式会社「LAURIER PRESS」プロデューサー 宇佐美冴岐子氏によるアプリにおけるコンテンツ制作」をテーマにしたセッションの様子をお届けします。

参考:
モバイルアプリの利用実態とアプリマーケティングを考える第 1 回 : アジア諸国と比べて見えてくる日本のアプリ利用状況の特徴 |Think with Google 日本

登壇者紹介

株式会社エブリー DELISH KITCHENカンパニー長 兼 編集長 菅原千遥氏

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 1989年4月13日生まれ。慶應義塾大学を卒業し、大手IT企業に勤務。2015年9月に株式会社エブリーを共同創業。レシピ動画メディア『DELISH KITCHEN』を立ち上げ、2016年12月に同アプリをリリース。2017年4月に全国でテレビCMの放映を始め、同月にはApp StoreならびにGoogle Play(™)の総合ランキング第1位を同時に獲得。アプリリリース後わずか1年未満で900万ダウンロード、月間動画再生回数5億2,000万回を超える、日本最大級のレシピ動画メディアにまで成長させている。 

DELISH KITCHEN(デリッシュキッチン)

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▼iOS
[DELISH KITCHEN |App Store] (https://itunes.apple.com/app/id1177907423?mt=8)
Android
[DELISH KITCHEN - レシピ動画で簡単料理|Google Play ] (https://play.google.com/store/apps/details?id=tv.every.delishkitchen&referrer=adjust_reftag%3DcaqbzQ0bXfwHC%26utm_source%3DWEB%26utm_campaign%3DTOP%26utm_content%3Dfooter)

「DELISH KITCHEN(デリッシュキッチン)」は、国内最大級のレシピ動画メディアです。YouTubeやFacebookなど複数のプラットフォームでコンテンツを公開する分散型メディアとしてスタートし、2017年11月現在Facebookページでは約150万人のファンを獲得しています。

参考:
日本発レシピ動画「デリッシュキッチン」、快進撃の理由:運用7カ月で120超の広告記事を獲得 | DIGIDAY[日本版]

エキサイト株式会社 メディアサービス本部 LAURIER PRESSプロデューサー 宇佐美冴岐子氏

宇佐美氏プロフィール.jpg

慶應義塾大学を卒業しエキサイト株式会社に入社。ライフスタイル系媒体の編集を経験後、エキサイトニュース他、複数のウェブ・アプリサービスのグロースハックに携わる。2016年7月に20代の女性向け媒体「LAURIER PRESS」を立ち上げ、同年12月に同アプリをリリース。プロモーションからプロダクト開発まで一貫して担当しており、2017年8月にはApp Store総合ランキングで1位を獲得する等サービスの急成長を担っている。

LAURIER PRESS(ローリエプレス)

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▼iOS
[ローリエプレス|App Store] (https://itunes.apple.com/jp/app/id1186620724?mt=8)
Android
ローリエプレス|Google Play

「LAURIER PRESS(ローリエプレス)」は、10代~20代の未婚女性をメインターゲットとしたメディア。「もっとかわいくなれるヒントをお届け」をコンセプトに本当に役立つ自分磨きの方法を提供しています。2017年8月にはApp Store総合ランキングで1位を獲得するなど現在急伸中のメディアです。

参考:
[20代の女性向け新メディア「ローリエプレス」設立 | エキサイト株式会社] (https://corp.excite.co.jp/press/laurier20160704/)

モデレーター:株式会社ベーシック 執行役員 ferret創刊編集長 飯髙悠太

飯高さんプロフィール.jpg

広告代理店、マーケティング会社、スタートアップを経験。複数のWebサービスやWebメディアの立ち上げに関わる。また、企業のWebマーケティングやSNSプロモーションをはじめ、50社以上のコンサルティングを経験。2014年の4月にWebマーケティングのノウハウが学べるメディア「ferret」の立ち上げにあたり参画し同年9月にリリース。月間370万PV、36万人の会員 。(2017年4月時点)

ferret(フェレット)

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https://ferret-plus.com/

▼iOS
[ferret (フェレット)|App Store ] (https://itunes.apple.com/jp/app/apple-store/id1248690595?mt=8)
Android
[ferret(フェレット) |Google Play ] (https://play.google.com/store/apps/details?id=io.joren.ferret&&referrer=utm_source%3Darticle%26utm_medium%3Dferret%26utm_campaign%3Dlaunch_article_170920)

現在ご覧になっているWebマーケティング総合メディア「ferret(フェレット)」では、ブラウザを開かなくても、より気軽にニュースをチェックできるようアプリ版をリリースしています。
■アプリ版ferretでできる事
*Webマーケティング情報を毎日購読できる
*Webマーケティングの最前線で働く著名人たちへの独占インタビューが読める
*企業のマーケティング施策の事例記事を通して、実践イメージを持てる
*気になった記事はお気に入りに保存!移動中の情報収集に便利

“ダウンロードした1日目の体験をいかにリッチに作れるか”がリテンションのカギ

飯髙:
ダウンロードされないとアプリケーションの運営自体、スタートを切れないかと思います。
どういったダウンロードの施策を行ったのか、また、行ってよかったと感じているものを教えてください。

菅原氏:
DELISH KITCHENで一番効果が高かった施策はテレビCMの出稿です。
2017年4月にテレビCMを開始した際には、CMだけでなく、同じ規模でWeb広告も展開しています。CMで認知されるようにして、Webで刈り取りしていくという形ですね。

宇佐美氏:
弊社では2017年8月に中規模なプロモーションを行っています。LAURIER PRESSの場合はターゲティングメディアなので、まずはTV出稿等ではなくターゲットが使っていると思われるSNSでYouTuberを起用したキャンペーンを実施するなど効率面を重視した出稿を行っています。

飯髙:
2社ともコストがかかるようなプロモーションを挙げていただきましたが、再現性のある運用面での施策として行ったものって何かありますでしょうか。

菅原氏:
DELISH KITCHENをはじめ、レシピ動画市場には多くの企業が参入していますので、その中でNo.1であり続けるために、今は大規模にプロモーションを行う時期だと考えています。

宇佐美氏:
費用をかけていますね(笑)ただ、LAURIER PRESSの場合はインスタグラマーやSNSで人気のある女の子達を起用したコラムを公開しているため、コラムを公開したタイミングで本人がSNS上でLAURIER PRESSをアピールしてくれます。そのため、彼女たちのSNSからオーガニックでの流入を多く得られましたね。

飯髙:
以前、Webの世界では「キャンペーンをおこなって人を集めてリテンションは二の次」って印象が強かったです。
ですが、現在のWebでは新規ユーザーの重要性と同じぐらい、リテンションや再訪問を促す施策が重要視されています。アプリでも同様かと思うのですが、過去に再訪問させるための施策として成功したものや逆に失敗してしまったものはありますか?

宇佐美氏:
最初の入口とアプリ内でのユーザー体験にギャップがないかは気にしています。
当たり前ですが、広告でもLAURIER PRESS内で紹介していないものやLAURIER PRESSにはあまり掲載されていないジャンルに関する訴求は一切行いません。
また、LAURIER PRESSは「ゆるふわなかわいさ」を支持しているユーザーが集まる媒体なので、広告のクリエイティブに例えば”ギャルらしい”ものなど、ターゲット層と異なる可愛さを持つクリエイティブは使わないようにしています。
世界観にはかなりこだわっていますね。
あとはアプリの場合、1日目で離脱してしまうユーザーも多いので、「ダウンロードした1日目の体験をいかにリッチに作れるか」を大事にしています。
そのため、ダウンロードした後の初回起動時に「こんな良いコンテンツがありますよ」と示し、使ってもらうとリテンションレートが高いことが分かっている便利機能の利用を促すことを心がけています。

「プッシュ通知疲れ」のユーザーに反応してもらえるメッセージとは?

飯髙:
アプリケーション市場では「プッシュ疲れ」という言葉をよく聞きます。
プッシュ疲れに対して意識している事やプッシュするメッセージの決め方を教えてください。

菅原氏:
プッシュ疲れはDELISH KITCHENとしてはかなり意識しています。
対人コミュニケーションでも、あまり気にかけてない人から毎日「あした遊ぼうよ」と連絡して来たらうざったいですよね。
だから「本質的な通知の良さとは何か」を意識するようにしています。
例えば、アプリを利用し始めたばかりのユーザーは、プッシュ通知を送るとすぐにアプリに帰って来てくれます。
でも、30日後や60日後などの長期的なデータを見ると、実は継続してくれていなかった、ということもあります。
「本質的な通知の良さ」という視点では、パーソナライズプッシュがすごく大事になってくると思っています。いかに個人に向けたプッシュ通知が送れるかという事です。

LINEでのコミュニケーションに例えると、好きな人から来たメッセージであれば、多くの人は無視しないでしょう。一方で、スタンプ欲しさで登録した、あまり興味のない企業から来たメッセージは見ないですよね。ですから「いかに好きな人から来たメール風にできるか」というところに対して取り組んでいきたいと考えています。

宇佐美氏:
自分自身も毎日プッシュ通知がくると無視してしまっていますし、LAURIER PRESSのプッシュ通知の開封率を見ても低い事があるので、ユーザーのプッシュ疲れはかなりあると感じています。
やはり、どうでもいい情報だと無視されてしまうことは分かっているので、最適なときに最適なタイミングでのプッシュ通知を研究しています。
例えば、弊社で開発した、ユーザーの行動から人工知能でコンテンツをレコメンドしてくれるエンジン「wisteria」を応用して、ユーザーにとって最適なコンテンツを最適なタイミングでお送りするパーソナライズプッシュ通知を開発しているところです。

また、現在開発中なのが、特定のライターをフォローして記事の更新タイミングで通知を受け取れる機能です。日頃から、どんなコンテンツや機能に接触したらリテンションレートが上がったのか分析しており、「このライターさんの記事を読んだ人は、このライターさんの一覧ページに接触するとリテンションレートがあがる」といったデータがでています。こういったデータやユーザーヒアリングを元にしてプッシュ通知もPDCAをまわしています。

コンテンツの評価は「お気に入り」されたかどうか

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飯髙:
先ほどリテンション施策の部分で初回ダウンロード時に「こんな良いコンテンツがありますよ」と示すと話していましたが、LAURIER PRESSさんにとって”良いコンテンツ”に定義はありますか。

宇佐美氏:
「かわいいか」「紹介している内容を実際にできるか」を良いコンテンツの定義としています。そのため、PVではなく、「クリップ」という記事につけられた“お気に入り”をエンゲージメントとして捉えて指標に置いています。この指標を元にコンテンツのネタを考えたり、クリップの導線等を工夫したりしています。

菅原氏:
私達は継続率を重要視しているので、”継続率に一番効いてくる指標”コンテンツの評価軸にしています。
具体的にデータを見ると継続率に一番影響しているのは「レシピをお気に入りにした確率」や「お気に入りの数」です。

例えば、牛肉を使った料理の動画を見ている人に対しては牛肉に合いそうなレシピを提案するなど、お気に入り率を上げる取り組みをしています。
LAURIER PRESSさんが「クリップ」を重要視しているように「お気に入り」はかなり大切だと思っていますね。

飯髙:
DELISH KITCHENってもともと分散型としてFacebookをめちゃうまく使っていましたよね。その時自然にみていたファンが、Facebook経由でアプリをダウンロードしたユーザーの方が自然にアプリとFacebookを使い分けるのかなと思います。つまりリテンションレートが高いと思うんですが、どうでしょうか。

菅原氏:
投稿やコメントから感じる印象としてSNSとアプリを併用している方は多いと感じています。
ただ、私達はSNSとアプリに関しては使い方を完全に分けてもらおうと思っています。
SNSというのは、普段ちょっとした時間に「友達元気かな」と考えながら見るものだと思います。その中で料理の動画をふと見かけて「なんとなくこのレシピおいしそうだな」とか「これってDELISH KITCHENだったんだ」といった料理の楽しさや認知を広めたいと考えています。
一方で、本当に料理を作りたい・レシピを知りたいという方はアプリを利用してもらいたいと思っています。

気になるコンテンツのコストは?

飯髙:
多くの方が気になる部分だと思うんですが、正直なところ、コンテンツ1本あたりの金額はいくら位かかっていますか。

宇佐美氏:
記事コンテンツの場合は、まちまちです。人気のインフルエンサーさんなら、その方のフォロワー数によって決まることもありますし、撮影の有り無しなど、コンテンツ制作にかかるコストや読者からのエンゲージメントによっても決まります。一次メディアなのでコストをかけてコンテンツを制作しています。

飯髙:
DELISH KITCHENは、結構かかっているイメージですね。

菅原氏:
レシピの開発と調理を担当しているスタッフは管理栄養士や料理研究家など、全員がプロフェッショナルなので、かなりコストはかかっています。
ただ、出来上がったコンテンツは会社の資産になりますし、今後の実績になりますので、そこにコストをかけていくという方針です。

宇佐美氏・菅原氏それぞれの気になるアプリは?-ZOZOTWON・インスタグラム

飯髙:
今までに比べて生活者がメディアに触れる方法はより手軽になっています。その中で、個人としてお二人はどのようなメディアに触れているのかをお聞きしたいです。
例えば、日頃使っているアプリケーションでもダウンロードのポイントや、何がリテンションのフックになっているかなど、感じているものはありますか?

菅原氏:
継続率という点では、よくZOZOTOWNで洋服を買いますね。
ZOZOTOWNのアプリでは、パーソナライズされたプッシュが届くんです。
例えば、お気に入りにしている商品に対する値引きの情報やお気に入りしているブランドのクーポン券発行のお知らせといった通知です。
そういったものに踊らされているなと感じながらも、パーソナライズされた情報が大事なのだと改めて考えさせられていますね。

宇佐美氏:
私が踊らされているアプリはインスタグラムですね(笑)
インスタグラムでは知り合いの情報など話のきっかけになるネタも多くつい見てしまいます。それだけではなくてファッションやコスメ情報に関して、すごくリアル感のある情報が載っている。そのため、何かを購入する際にもインスタグラムを参考にしています。

例えば、Google検索で「オルチャンメイク(韓国で流行している可愛いイメージのメイクスタイルを指す言葉)」と調べたとしても、実際にそのメイク方法を試した事がない人が書いた記事もSEO対策がうまくされてさえいれば検索上位に表示される場合もあります。

そのため、「記事を参考にしてオルチャンメイクを実践してみたけど全然オルチャンメイクにならなかった」といったユーザー体験として最悪なことが起こりえます。
その点、SNSの場合は「フォロワーを増やしたいから良い情報を伝えよう」とするユーザーが多いので、一人一人がリアル感ある情報発信をしていると感じています。

コンテンツの企画・運用で大切にしているコンセプト

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飯髙:
先ほどは1人のユーザーとしてのお話を聞きましたが、逆にコンテンツを配信する運用者としての企画・配信の方法や、どういった波及効果を狙っているか教えてください。

宇佐美氏:
LAURIER PRESS自体がWebメディアから進展したというところもあるので、Webとアプリで基本的に違いはないと思っています。
ただ、Webの場合、特に集客部分に重きをおいていて、SEOやSNSでいかにユーザーさんとLAURIER PRESSを出会わせるかという事を考えてサイト構成を行っています。

一方、アプリではLAURIER PRESSというブランドや世界観が好きだから来ている方が多いので、かわいい世界観を重視した画面構成にしています。例えばタイトルにしてみても、WEBで意識する「キーワード含有率」などSEOのテクニックを意識するというより、かわいいタイトルづけを心がけています。同じコンテンツでも、Webとアプリタイトル付を変えていることもあります。
そのほうがアプリ上ではタップされますし、エンゲージメントも高いというのが実際にデータとして出ています。

飯髙:
Webサイトは新規ユーザー獲得のコンテンツとして認識していて、アプリはWebでコンテンツに出会ったユーザーがLAURIER PRESSというブランドを気に入ってダウンロードするものというイメージですね。
だからこそアプリではリテンションが重要になりますね。

宇佐美氏:
まさに、そうです。

菅原氏:
DELISH KITCHENの企画の場合、社内には数十人の料理スタッフと同規模の編集スタッフがいて、月間1,000本を超える動画を作っています。
企画の際にはどういった動画が見られているのかだけでなく、「どういう人がなんでこれを見ているのだろう」というところまで細かく分析をしています。

具体的に言うと、毎週週末にパーティーをしている港区の女子と、地方で毎日子供三人に向けてご飯を作る主婦では、同じもやしの利用方法でも「オードブルに使うのか」「ご飯のかさ増しなのか」といった違いがあるでしょう。
このようなユーザーの行動を考えながら、どうコンテンツを最適化していくか、そのためにどんなコンテンツが必要かを考えて作っています。

一方で、このようなWebマーケティングらしい考え方だけだとユーザーにとって最適化された同じようなコンテンツばかりになってしまうとも考えています。運営側としては改善の幅が狭くなってしまう。
例えば、毎月10%は今までのデータと全く違うものをチャレンジしてみて、その中で再生数伸びたり、お気に入り率が高かったりしたものに対して、改めて最適化をはかっていくという取り組みをしています。

飯髙:
めっちゃ考えてますね。今すごく尊敬の目になってます(笑)
「なんか季節的に今アボカド流行っているし、そういう料理あげよう」みたいなイメージだったんですが、かなりきちんと運営されているんですね。

菅原氏:
もちろん季節性もあるんですが、それでも毎年どのキーワードが人気なのかというのは決まっています。
その中で90%は今まで通りのフォーマットや固定化された情報で作って、残りの10%はチャレンジしていますね。

女性向けアプリにおけるUI/UXの重要性

飯髙:
アプリの場合でも企画や開発を経て、運用の段階が訪れるかと思います。運用の事を考えるタイミングはいつで、どのように企画を立てていますか。

菅原氏:
「いつでも運用の事は考えております」という答えが正しいかなと。
DELISH KITCHENのアプリでは、開発当初から「いかにレシピと出会う体験を作れるか」を意識していました。機能や目的ごとに閲覧するというより、何となくアプリを開いたらレシピに出会える場所にしたいと考えてきました。
その上で、ユーザーとレシピを出会わせる為にはどういうUIが最適なんだろうと考えていますね。

飯髙:
言葉を恐れずに一つだけ言わせて頂くと、UIとかUXも重要だと思うんですけど、僕は「全てはコンテンツだ」と考えています。
コンテンツが見られなければ意味がないですし、配信する時間帯への工夫や綺麗なUIじゃなくて読まれるコンテンツが素晴らしいと思っています。
とはいえ、女性の世界だとUI/UXがより必要だと思うですが、その際に意識しているペルソナや設計はありますか。

菅原氏:
DELISH KITCHENの場合はターゲットが主婦の方と決まっていましたので、彼女らの「レシピが決まらない」という課題に対して、雑誌のようにパラパラとめくったらレシピと偶発的に出会うようなUI/UXを目指しています。

飯髙:
宇佐美さんは運用の事を考えるタイミングはいつでしたか?

宇佐美氏:
それこそしょっちゅう考えています。
少人数のチーム編成で運営しているため、企画を考える時には、効果に対して運用の工数がかかり過ぎないか意識しています。
大切にしているものとしては「かわいくなりたい」という思いで毎日来てくれるユーザーに対して、毎日期待に応えられるかが挙げられるでしょうね。
弊社は元々ネット黎明期からあるポータルサイトなので、材料自体は色々あります。
その材料を混ぜ合わせて、リリースのタイミングやスピード感と、押し出したい機能を調整しながら運用しています。

女の子が求めているのは”自分の理想のかわいい”に合うファッション

飯髙:
想定していた当初の予定と異なる結果が出てきて、軌道修正が入ったタイミングはありますか?また、具体的にどんな事が起きたか教えてください。

宇佐美氏:
リリース前の仕様検討段階の話になるのですが、検索機能を追加する際に、当初はよくあるようなテキスト入力による検索のみの実装でリリースをしようとしていました。
ただ、常日頃インスタグラムを使っていてインスタグラムの検索に慣れている女の子達が何を求めているのか考えた時に「自分の理想の中に“かわいい”が既にあって、それに合うようなファッションやヘアスタイルをハッシュタグ検索などで探しているな」ということに気づいたんです。

そのため、LAURIER PRESSのアプリではこんな風に検索結果に画像が並ぶ仕様になっています。

スクリーンショット_2017-11-27_19.26.48.png

アプリ版LAURIER PRESSの実際の検索画面。検索機能のトップにトレンドのワードと画像が表示され、フリーワードで検索を行った際も記事タイトルと画像が合わせて検索結果に表示される。

例えばこの画面で「この画像みたいなファッションしたい」と思った時に、画像をタップすれば記事詳細面にアクセスし、実際にこのコーディネートが何のアイテムで構成されているかがわかるわけです。

女の子にとっての「かわいい」には色々あって、“ギャルに”とっての「かわいい」とゆるふわ系の女の子にとっての「かわいい」は違うと思います。
それが画像だと自分の「かわいい」に合ったものを直感で選べる。かわいいが多様化しているからこそ、そういった検索方法を設計しました。

飯髙:
正直僕、何言っているのだろうって思って聞いていたんですけど(笑)
女性はインスタのように写真のようなビジュアルから入って、テキストを伝えるというのがわかりやすいんでしょうね。

宇佐美氏:
例えばゆるふわなものをかわいいと思ってる人が「“かわいい”ミディアムヘアにしたい」と考えても、テキスト検索では“自分がどんなテイストがかわいいと思っているのか”を指定して検索できないので、テキスト検索結果が出てきて記事を選択しても、その記事で紹介されている“かわいい”のテイストがマッチしない事が多いでしょう。検索結果を画像で並べてあった方がすぐに自分の中の“かわいい”のテイストにあった情報を見つけられます。

これからのアプリマーケティングで重要になるのは「情報の信頼性」

飯髙:
最後にアプリの運用において、今お二方が重要視しているものと、何故それを重要視しているのかをお話しください。

菅原氏:
DELISH KITCHENとしては、今後情報を取得する先がテレビからスマートフォンに移っていく中で、「いかにアプリをマスメディア化させるか」という点を考えています。
具体的には、受動的であっても楽しんで頂けるようなコンテンツを作ろうとしています。
また、マスメディアでも問われている「情報の信頼性」を担保していきたいです。

これまで、インターネットでは無断転載やキュレーションメディアなどの問題が取り上げられてきました。
DELISH KITCHENは、プロによる正しい情報を提供することで、「DELISH KITCHENのレシピで料理作ったら絶対おいしいものができるよね」と誰からも信頼されるメディアでありたいと思っています。

宇佐美氏:
菅原さんの後半のお話とも被ってしまうんですけども、いかにメディアのエンゲージメントを高めるかを一番大事にしていますね。
それこそほとんど引用のみで構成されるキュレーションメディアの場合、「Googleのアルゴリズムの特性上PVこそ集まっても、実際にメディアへのエンゲージメントとしてはどうなんだろう?」という疑問はあると思っています。

例えばユーザーが、オルチャンメイクを実際に試した事がない人が書いている情報を頼りにしてトライした結果、その通りにいかず失敗してしまった場合、そのメディアへのエンゲージメントや信頼度は低くなりますよね。
だからこそLAURIER PRESSでは、「LAURIER PRESSの情報でかわいくなれた」という成功体験を常にユーザーにお届けできるようにコンテンツを制作、配信しています。

飯髙:
ありがとうございます。
正直今回モデレーターとして呼ばれた際に「アプリの世界そんなに詳しくないし、女性向けメディアだから大丈夫かな」思っていました。また、現在はエンゲージが重要視されるようになってきてるけど、ダウンロード施策のような集客ばかりだったらどうしようと不安がありました。

最初のダウンロード施策のあたりではテレビCMなどお金に偏っている話が多いなというイメージでしたが、どんどん話を聞いてみるとリテンションや世界観の構築を大切にしていることが、みなさんもわかったのではないでしょうか。

僕は今31歳ですが、この世代のマーケターでも出来ていない事をやっているなというのが正直な感想でした。
あとは皆さん、DELISH KITCHENとLAURIER PRESSを利用してもらって、彼女達が話した事がどう運用されているのかを、ぜひ手で見て、感じて、もし自分のアプリケーションに生かす事があれば、生かしてくれれば嬉しいかなと思います。

まとめ

アプリマーケティングというと「いかにダウンロード数を稼ぎ・マネタイズさせるか」といったイメージがあるかもしれません。
ですが、ゲームアプリのような課金によって収益を得るビジネスモデルとは異なり、Webメディアやメーカー、小売店などのビジネス系のアプリでは継続してファンを育成していく事こそ重要です。

そのような継続したファンの育成には良質なコンテンツが欠かせません。
今回のセッションでは、LAURIER PRESS・DELISH KITCHENのどちらも「実際にユーザーが試せる内容なのか」といった信頼性や「ユーザーが保存してくれているか」といったエンゲージメントを重視していました。

今後は、ただ費用をかけてダウンロード数を稼ぎ、リテンション施策は二の次という考え方でなく、いかにユーザーの生活の役に立つコンテンツを発信するかがアプリ運営のカギとなってくるのかもしれません。