「旅するマーケター」西井敏恭が、マーケティング分野で注目の人物にインタビューをする連載企画。

第5回は、野菜宅配サービスを運営するOisixでEC事業本部PR室およびユーザー・エクスペリエンス(UX)室の室長を務める白石夏輝氏(写真左)と、Oisix Hong Kong Co., Ltd.取締役を務める鵜飼晃弘氏(写真中央)にお話を伺いました。

実質4年目の二人が広告と海外事業のトップに

西井:二人は同期ですよね。

白石:僕と鵜飼は同期で、新卒3年目になります。学生時代に二人ともインターンをしていて、そのまま入社しました。

西井:実質4年目ということですね。白石さんの業務を教えてください。

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白石:僕は、インターンの時から新規獲得のチームにずっといます。なので、これまでのキャリアは、プロモーションを中心にやってきました。

リスティングやFacebook広告をまわしてみたり、あるプロモーションの立ち上げをやってきました。Oisixを定期的に使ってくださるお客様を増やす活動をWeb広告と、リアル広告の両軸で行ってきました。

西井:今のポジション的にはOisixの広告のトップということですよね。鵜飼さんは?

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鵜飼:白石より約1ヶ月遅れてインターンとして入社しました。その時から海外事業部です。

正直、Oisixに入った時には、まだ海外に一度も行ったことがなくて、パスポートも持っていませんでした(笑)。

西井:そうなんですか?(笑)

鵜飼:岐阜出身なんですが、大学入学のために東京へ出てきただけでも大きなことなのに、なぜ僕が海外事業部なのかという(笑)。

そんな感じで焦っていたら、いきなりマーケティングをやれという話になって。

もともとは違う会社でインターンをしていたのですが、そこに就職するのはやりたいことと少し違うなと思い、その会社の部長さんに相談したら、Oisixがいいんじゃないかと薦められたんです。

西井:その部長さんは、Oisixのことを知っていたんですね。なぜOisixを薦めたのでしょうか。

鵜飼:ベンチャー企業で社会貢献性が高くて、面白いことをやっている会社はどういうところがありますか?と尋ねたら、教えてくれました。Oisixが今流行っているらしいよって。僕は当時、Oisixを知りませんでした。

西井:それでOisixに入社したと。岐阜から東京に来て、次が海外へ。

鵜飼:はじめて海外事業部で働き出した時は、左遷かと思いましたね(笑)。入った当時は、売り上げも利益も出ていない部署でしたから。

4年前で売上数百万円程度しかないくらいでした。会社としても、海外事業部を継続するかどうかという議論がずっとあった中でジョインしました。

最初は、とりあえず売り上げを出せということでやっていたのですが、全然上手くいきませんでした。

白石と同様、広告の運用をやったり、売り場を作ったりというのをずっとやっていたら、ある程度売り上げがついてきて。

次に利益を生み出そうということで、構造改革を行いました。

物流面や商品展開を改善する中で、黒字ができるようになった段階で、「オイシックスクラブ」という定期サービスを海外で展開しようということになり、定期宅配サービスを香港で立ち上げました。

これがある程度ベースができてきたということで、今度は海外法人を現地に作ろうという話になって、僕が現地法人の会社の運営を担当しながら、中国などの新しい市場を開拓しています。

西井:鵜飼さんは、広告の経験はあったのですか?

鵜飼:Oisixの前にいた会社でもやってはいました。ただ、広告運用というより、既存ユーザーリテンションですが。

西井:それで、海外向けの事業をいきなり任されて。

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鵜飼:誰もやる人がいなかったということもありました。まずはリスティングとはなんぞやというところからやっていましたね(笑)。

それこそ、ferretさんで勉強させてもらっていた感じでした。

西井:リスティングなども全部自分でやられていたと。日本で海外向けの施策をやっていた感じですか?

鵜飼:管理画面はもともとあったんですが、一度設定したまま放置されていたものを、整備して作り直して。

西井:その時、中国語はどうしていたんですか?

鵜飼:一応、翻訳してくれる人がいました。

西井:それ二重で大変そう(笑)。

入札の仕方が悪いのかコピーが悪いのか、判断が難しいですね。

鵜飼:クオリティチェックが難しかったですね。

西井:黒字化したのはいつのことですか?

鵜飼:2年前です。

西井:黒字化とともに現地法人化して、今はそこの役員になったと。白石さんは広告部長、鵜飼さんは現地法人の経営者。

入社3年目でそのポジションにさせているOisixは、すごい会社だなと思ってるんですが(笑)。

でも、Oisixが若手だから常に優遇するとか、そういう会社なのかというと全然そうでもないんですよね。ただ、実力があれば年齢は関係なくチャンスを与える、という会社ですね。

特殊な二人が同世代にいたというのが、すごい偶然だなと。今回対談したかったのは、Oisix以外の会社でもこういう人が増えていくと面白いなと思っているんです。

ぜひ面白い話を聞かせてください。

営業をしっかりやることが強いマーケターになるための近道

西井:ちょっと二人のことを掘り下げていきたいのですが、まず白石さんから、これまでやってきたことで上手くいったこととか、上手くいかなかったことというのはありますか?

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白石:上手くいったことは、リアルプロモーションですね。それを経験しているから、どこのチャネルを持っても結果が出せていると思います。

今では店舗もやっていますが、もともとWebサービスの会社じゃないですか。そうなると、お客様に会う機会というのがリアルのサービスに比べるとそんなに多くありません。

私がインターンで入った当時、チームメンバーで定期的にお客様に会っていた人はあまり多くありませんでした。

僕は、Web広告への投資がほとんどだった時に唯一、TSUTAYAさんの店舗前にブースを作って野菜を並べて、通りすがりの人に声をかけて、「Oisixを知っていますか?Oisixどうですか?」というリアルプロモーションの立ち上げをやっていて。そこで毎日100人くらいの人に声をかけていました。

そこで、こういう悩みを持っている人はOisixのことを気になってくれるんだとか、Oisixのこういう部分は他社さんよりも支持してもらえているんだとか、こういう言い方をしたら小さなお子さんがいらっしゃる方は好意的な反応を示してくれるんだとか、そういうことがわかったんです。

リアルプロモーションの前にWeb広告を運用していたとき、こういうお客さんがOisixを始めるんだよという風になんとなく教わったお客さまイメージを基にコピーを書いたりしていたのですが、それでは全然結果が出なかった。

そのような中、実際にお客さんに会ってリアルな声やニーズを知ることができたことで、今どんな広告をやってもある程度結果が出せるようになっているベースになっています。

マーケターに憧れる学生は多いと思います。
逆に言えば、営業はやりたくないと思っている人が多い気がしています。

外資系企業で、マーケター採用と営業採用があれば、みんなマーケターに行きたいんです。しかし、狭き門なので営業を受けておくかというのが割と多いんですよ。

僕も学生時代はマーケ部門に行きたいと思っていたんですけど、日本の企業だと営業をちゃんとやってから人事やマーケティングに行くことが多いと思います。

その過程がしゃらくさいなって思ってたんですけど、実はそれには意味があって、営業をしっかりやることで一段も二段も強いマーケターになれるんじゃないかなと思ったんです。

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西井:リスティング広告の代理店に出稿をすると、そのものを知らないことって結構ありますよね。

例えば、野菜ジュースを売るという場合に、関連するキーワードをもらって、キーワード系ツールを調べて、ペルソナをとりあえず作ってという。「ペルソナは40代男性で」って、40代男性ってなんだよみたいな(笑)。

実際、白石さんが入社した時と今では、月間の新規獲得率は2倍くらいになっていますよね。

そこのベースが上がったというのは、新規獲得の手段が増えたことよりも、それぞれの効果がアップしているという側面が強いと思います。

それは、白石さんが実際にお客様と向き合って営業をしてきた経験があるからだと思うんです。今後、Oisixに入ってくる人は、それを絶対通過したほうがいいですよね。

白石:そうです。特にうちのチームは年齢や経歴は関係なく、今でもそうしています。

まずはリアルからやっていく。こういう悩みを抱えている人たちにはこういうOisixのよさを伝えると、気になってもらえるということを単純にWeb化するだけというか。

もちろん、細かいラフの書き方とかUIとかはありますけど、コミュニケーションの部分は変わらないので。

西井:季節によっても反応する野菜も違いますしね。

単純に、この野菜が美味しいみたいな言い方をすればいいのかというと、そういうわけでもなかったりしますし。

その辺は、たしかに店頭で1回やるだけでぜんぜん違うかもしれませんね。お客さんのイメージがしっかりつかめる。

今も、お客様に直接インタビューをするようにしているんですか?

白石:うちのチームでは毎週インタビューを実施しています。チームの誰かが行くようにして、議事録をチームで共有していますね。

西井:どういう話を聞くんですか?

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白石:会いに行くのは、既存のお客様、もしくはお試しセットを購入してくれたけれど、定期コースに入っていただけなかったお客様のどちらかです。

まずはOisixをなんで知ってくださったんですか?とか、何が本入会やトライアルのきっかけだったんですか?ということを聞きます。

それにより、どこに広告を出すと効果があるのかがわかるんです。

あとは、最初にどういう商品を購入してもらえるとより定期的に使いたくなってもらえるかという観点で、トライアルでどの商品が美味しかったのか、毎週買っている商品はあるかということを聞いたりします。

我々は、食材の定期宅配サービスなので、いかに定期コースに本入会してもらえるかということを考えなければなりません。

もう一度食べたいと思ってもらえる商品はどんなものなのかということをすごく考えますね。

西井:僕も自分の会社で、化粧品や健康食品を扱う会社のコンサルをやりますが、トライアルだけで買ってもらっても意味がないということになかなか気づかない企業が多いんです。

実際、トライアルも大事ですが、そのあとのコミュニケーションの方法も大事。

トライアルをしてもらった後のコミュニケーションの方法も、お客様のことを理解していないと、形だけでフォローメールしましょうとか、他社がやっているのを真似してやりましょうとか。そのままやっても上手くはいきませんよね。

白石:Oisixでも単に美味しい野菜を買ってみたい、食べてみたいというニーズの人は本入会にならなかったりします。なので、毎週のお客様ヒアリングをもとに、最初のトライアルから本入会までのコミュニケーションは日々試行錯誤しながら改善を続けています。

そういった経験もあって、日本の多くの企業がマーケティングをやる前に、営業をやる意味をすごく痛感しました。お客様を知ることが何よりもまず重要で、それを最も経験できる営業は本当に必要なプロセスだと感じています。

現地の意見を尊重することで軌道曲線を上向きに

西井:鵜飼さんはどうですか?

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鵜飼:結構、上手くいったことといかなかったことが表裏一体という感じですね。

先ほどもお話しましたが、海外事業は最初全然利益が出ていなかったんです。なので、あまりお金を使いたくないということになって、僕は最初全然海外に行かなかったんです。上司も年に2回くらいしか行きませんでした。

実際にマーケティングをやっているのは日本のスタッフなのに、お金は広告や開発、ソリューションに使いたいから、マーケットを理解するためにお金を使わなかったんです。

それで結局1年半くらい、見えないお客さまに向けてサービスを提供していて、その時間を無駄にしたことが一番失敗だったなと思っていて。その間もいろいろやって伸びてはいたんですけど、全然軌道曲線が上がらなかったんですね。

サービスを作っても当たらない。特集を作っても微増というような状況が続いていて。

西井:やらないよりはやったほうがよくはなったけれど、伸び率はそれほどでもなかったと。

鵜飼:そうです。ひたすら長い時間働いて特集を作ることに時間を割くみたいな感じでした。ただそれをやり続ければチームも疲弊していくし、事業も今の成長曲線から変わらないままで、それが無駄な努力のように感じていて、やっぱり今のままではダメだよねという話になって、1年半くらい前から海外に行くようになりました。

そこから事業成長の軌道曲線が変わり始めて。サービスを作るにしても、海外のお客様の深層心理の深い部分の感情を理解することは、難しいなと思います。
今でもできているとは言えないんですけど。

先ほど言ったように、サービスの骨格もそうですけど、文字一つ画像一つ、サイトのUI一つとっても、国によって全然変わりますし、感覚も違います。

それをだいぶ捉えられるようになってきてはいますが、まだまだ全然足りないなと思っていて。それができるようになってきたから、ある程度伸ばせるようになってきたというところまでは来ていると感じています。

西井:現地には、今はどれくらいの頻度で行っているんですか?

鵜飼:今は年間の6、7割くらい海外にいますね。

西井:海外では具体的にどんなことをしているんですか?

鵜飼:海外で実際にやることとしては、現地のマネージメント、物流のケア、現地のパートナーとの商談などがメインなんですが、そのほかにも実際お客様の家に行ったりもしていますね。

最初の頃は、ひたすらお客様がスーパーでお買い物するところを後ろからついて回って、最後に話しかけるということをやっていました。

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西井:ストーカーみたいですね(笑)。それは日本と結構違っていたりするんですか?

鵜飼:違いますね。大事にする部分が全然違っていて。

向こうの野菜は、朝から置いてあって夜になってもピッカピカなんです。日本よりも農薬の基準がゆるいんでしょうね。

やはり、そういう新鮮そうな見た目が重要で。土がついていて採れたてみたいな野菜よりは、綺麗なほうがという。

現地のスーパーマーケットに行くと、日本人だったら絶対手を出さないようなもの、日本人の感覚ではちょっと嫌だなと思うものが、向こうでは新鮮で美味しそうというように、感覚が全然違うんですよね。

西井:ビジュアル一つとってもそうですよね。白石さんの話ではないけれども、日本のお客様を理解するのも大変なのに、海外ならなお更ですよね。

鵜飼:自分がそこで生きてきたわけじゃないので、やはり奥底の部分の感情って絶対違う。日本人が海外でやるのは結構難しいなと思っていて。

だからこそ、現地に溶け込むこと、自分の考えに固執して傲慢にならないことがとても大切だと思います。

最近は、ローカルの人の意見や考え方をすごく重要視しています。現地のスタッフや提携先の関係者の意見は、とても重要です。

西井:食は国によって一番違いがわかりやすいですよね。食べるものも違うし料理も違う。香港では、家で料理する頻度というのはどれくらいなんですか?

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鵜飼:2パターンあります。メイドさんを雇っている家庭では週5日は家で食べます。最近は徐々にメイドさんがいる家庭も減ってきていますが。

メイドさんがいない家庭では週2日、週末だけ家で料理をするという感じです。

西井:結構外食が多かったりしますよね。そのような文化の違う国で、Oisixというサービスがどういうお客様に使ってもらえるのかという話ですよね。

スーパーに夜でも新鮮な野菜があるというのは、逆にチャンスでもあるわけで。そういうことに気がついている人には、ちゃんと伝わっているはずです。

フォトグラファー:三浦一紀

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