今回の講座では、ターゲットの設定において一般的に失敗しがちなパターン2つと、企業様の事例をもとにターゲティングのポイントを解説していきます。

Webページの改善などを繰り返していると「このボタンは見づらい気がする」「私はこっちが良いと思う」といった議論が起こることがあります。誰がどのような状況で利用するサイトなのかが忘れ去られ、担当者同士の主観のぶつかり合いに陥っています。

このようにターゲティングが曖昧なまま改善を続けても根本的な解決に至らないことがあるのです。まずは、よくあるターゲティングの失敗パターンからみてみましょう。

よくあるターゲティングの失敗例

「サイトに来る方は全員がお客様」は本当?

よくあるターゲティングの失敗例1

担当者がそれぞれ自社サービスのヘビーユーザーであればまだ良いのですが、そうでない場合、気づかないうちに「全員を満足させる」ための議論に陥ることがあります。

また、「サイトに来る方は全員がお客様だ」と上司やクライアントから言われて困ったことがある方もいるかもしれません。

そんな議論に身に覚えのある方は、残念ながら「誰も望まない仕様の車」を作っています。

対面営業なら1人で多種多様なお客さまを適切に接客し、全員に商品を売ることも可能です。しかしWebサイトはセルフサービスチャネルです。全員をターゲットにしたいのであれば、必要な数のストーリーを事前に用意し、場合によってはサイトごと分けて作る必要があります。

「属性・ペルソナ」設定による失敗パターン

次に陥りやすいのが「属性・ペルソナ」パターンです。

「うちの商品は30~40代の都心に住む資産形成層向けです」「商品企画段階で作成したペルソナがあります」という場合、一見きちんと議論がされているようで、成果から遠ざかることが多くなっています。

年齢・性別・収入などの属性でセグメントしたところで、多くの競合他社も同じセグメントを狙ってくることになります。そこから先の差別化ができないのであればセグメントを切る意味はあまりありません。

また、属性情報は購買との相関しか表しません。「うちの商品を買うのは30~40代が多い」とわかったとしても、「なぜうちの商品を買うのか」という説明にはならないのです。そのため打ち手につなげることは難しく、これまたセグメントを切る意味がなくなってしまいます。

もちろん、自社の顧客の属性情報を把握しておくことに意味はあります。
しかしWebサイトの設計に影響するかというと、必ずしもそうではありません。

コミュニケーションが変わる軸でセグメントする

ではどうすれば良いのでしょうか。

まず、コミュニケーションが変わる、ユーザーごとに異なるコミュニケーションが必要となる軸でユーザーをセグメントします。

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上記は、あるERPパッケージのWebサイトで、ユーザーをセグメントした例です。

当初は「企業規模」「部長層、担当者層」などの属性を軸にしたユーザーセグメントが用意されていました。しかし、企業規模の大小によってサイトのコンテンツ導線が変わることはなく、せいぜい導入事例を多種類用意しよう、という程度でした。

実際に現場ではどのような営業トークが使われているのか、営業担当の方々にヒアリングをしたところいくつかのパターンが見えてきました。

図にあるとおり、セミナー等でこの製品について「既に知った上で興味を持っている方」と、「会計・人事などの業務ソフトウェアを検討中」という方では営業現場で話す内容が全く異なることがわかりました。

前者の方は既に製品の概要は知っているので、具体的な導入の流れや費用の相談から話をし始めないとストレスに思われてしまいます。

一方で、後者の方はまだ製品のことを知らないため、その方の業務内容に合った製品ラインナップがあることをお伝えする必要があります。さらに調査を進めたことで、Webサイトならではの「比較サイトを起点に検討する」といった方などを加えて、計4つのセグメントに仕上がりました。

それぞれどこからサイトを訪れ、サイトの中でどのようなコンテンツ導線をたどって、どのようなゴールに導くかが異なります。これが「コミュニケーションが変わる軸」の好例です。

よく用いられる「コミュニケーションが変わる軸」としては下記が挙げられます。

  • 習熟度・リテラシーの高低
  • 検討フェーズの進捗度合い
  • 可処分時間の大小

ユーザーにとって意味がある軸かどうかが重要

とある住宅ローン申し込みを獲得サイトでは、当初「自社と取引があるかないか」「資金用途はどれか」という軸でユーザーをセグメントしていました。金利の優遇があるかないかが変わるため、案内すべき内容も異なります。

住宅ローンユーザーの分類例

しかし、調査を進める中で、優遇金利の有無を気にしてサイトを訪れるユーザーはほとんどいないことがわかりました。

多くのユーザーは住宅購入を決めるまでほとんどローンのことを考えていません。物件を決定したタイミングで、不動産業者から提携ローンを勧められ「2週間以内にお返事ください」といった案内を受けてから慌てて情報収集を始めます。

調査結果を受けて、「物件検討中」か「物件確定後」かという住宅購入フェーズを主の軸として置き直しました。それが図の右側になります。

また、「物件検討中」のセグメントに当たるユーザーはターゲット外としました。

なぜなら、物件検討中から住宅ローンについて情報収集するユーザーは金融リテラシーが高く、満足してもらうには多量の情報提供が必要です。また、超低金利を提供する他社に流れるのを止めることは難しいと判断しました。

このように、コミュニケーションが変わる軸でセグメントを切ったあとは、必ずしも全てに対応するのではなく、自社Webサイトで対応する範囲を絞ることを検討します。

まとめ:コミュニケーションの変化を前提としたターゲティングを

今回の講義の内容を踏まえて、以下の質問に答えてみましょう。

  • 自分が営業担当になったと仮定して、自社製品やサービスの紹介の仕方が変わる(コミュニケーションが変わる)と思う相手を想像してみてください
  • コミュニケーションが変わる軸を定めてみてください
  • 自社サイトが想定した軸に対応できているか、改めて考えてみてください

上記の質問をもとに、自社のターゲティングは正しくできているのかを検証し、自社のWebサイト改善につなげていきましょう。