UX設計をする前にまず最初に着手するのはビジネスゴールの定義です。

UX向上の取り組みは、最終的にはビジネス成果に繋げる必要があります。

例えば、次のような議論を社内でしていませんか?

UX設計

こんな風に施策ありきで議論が進んでしまう会議、身に覚えのある方も多いのではないでしょうか

売上向上かコスト削減か、ビジネス貢献は必ず問われる

先にも述べたとおり、施策の検討よりも前に、ビジネスにおけるゴール(活動の目的)を明確にすることが重要です。

そのためのステップが以下の2つです。

  1. サイトや取り組みの役割を定義
  2. 成果指標(KPI)の策定

悪い例

  1. 今年の活動の目玉はリニューアルです。競合に比べて見劣りしていたデザインを刷新します
  2. UU数、PV数、直帰率、離脱率など多角的に分析、効果検証を行う予定です

良い例

  1. Webサイトの役割は営業担当に繋ぐリードの獲得です。ただし営業担当の数には限りがあるため、より成約確度が高いリードの獲得を目指します
  2. リード獲得数は引き続きチェックしつつ、Web経由の成約数を成果指標とします

見比べてもらうと分かりやすいですね。
悪い例は典型的な「施策ありきの例」です。

「どんなデザインにしようかな?」
「こんな機能を足したいな」

と施策のアイデアを考えるのは楽しいので、誰しもが陥りがちな過ちです。

どういった定義を設定したとしても、最終的には必ずビジネス貢献を問われます。

「売上向上」「コスト削減」のどちらか、あるいは両方への貢献を示す必要があると意識しましょう。

その上で、まずはサイトや取り組みの役割を定義します。

ユーザーの購買行動プロセスを把握し、その中でWebサイトがどこまでの役割を担うのか、今回の取り組みがどこを担うのかを明らかにしましょう。

ゴール(活動の目的)を明確にするためのステップ

BtoBサイトでのWebの役割定義の例

ユーザーの購買プロセスを真に把握するのは難しいのですが、まずは想定で構いません。ビジネス視点で何を達成したいのかを明確にします。

「役割」という言い方をしているのは、ユーザの購買プロセスがWebだけで完結しないからです。

ユーザーはマス広告や店舗など様々なチャネルに触れるため、Webが何をどこまで担うのかは、他のチャネルとの役割分担の中で決める必要があります。

前述の「良い例」では、Webと営業の役割分担が議論されています。成約確度が高いリードの獲得を目指すということは、今までは営業担当者が担っていた「見込み客の選別」という役割もWebが担うということを意味します。

通販・ECサイト_事例.png

より具体的な例として、ある通販・ECサイト運営企業様のお話をします。

この企業は、もともとは冊子のカタログと電話・はがきでの注文が中心で、ECサイトを立ち上げたあとも、カタログをそのまま電子化したような構成のサイトになっていました。

しかし調査をしてみると、いきなりWebサイトを訪れるユーザーだけでなく、カタログを見て注文する商品を決めて、Webには注文をするためだけに訪れるユーザーもいることがわかりました。

注文する商品が決まっているユーザーにとっては、商品コードもわかっているのに、もう一度サイト内で目的の商品を探してカートに入れる必要があり、購入手続きが煩雑になってしまっていました。

そこで、このECサイトでは商品を探すユーザー向けと、すぐに注文をしたいというユーザー向けの動線をわけた構成にサイトを変更し、Web経由の売上が伸びたということです。

役割定義が変わるとゴール・コンテンツの作り方も変わる

もう1つ、ある地方銀行様の住宅ローンサイトの事例をお話します。
かつてはWebで住宅ローンを検討するユーザは非常にリテラシが高い層が中心だったため、この銀行様のサイトも情報提供に終始していました。しかし誰でもWebサイトを訪れるようになる流れを受け、自力で理解してもらうのではなく、店頭に来てもらうことを目指すことになりました。Webの役割が「来店促進」に変わったわけです。

住宅ローン_事例-1.png

そうするとWebのゴールも「詳細はこちら」「資料請求」ではなく「詳しくはローン相談会で」への誘導に変わります。

住宅ローン_事例_2.png

金利など商品スペックの説明が主だったコンテンツも、来店メリットの紹介、来店にあたっての不安解消のためのコンテンツに変わりました。

住宅ローン_事例_3.png

このようにWebが担う範囲が変わると、Webサイトの作り方が具体的に変わってきます。しかも成果に直結するため非常にインパクトが大きいプロセスです。

KPI策定を難しく考えない

KPIの策定のコツはただ1つ、「ビジネス成果直結の指標に絞る」ことです。

KPI策定というと、CV数、CVRPV、UU、訪問数、直帰率、離脱率などいわゆるダッシュボードに並んでいる数字を思い浮かべる方も多いと思います。またそれらがツリー状に連なった「KPIツリー」なるものを作らねばならぬと思い込んでいる方も多いのではないでしょうか。

もちろんKPIツリーを作成しても良いのですが、デメリットが2つあります。
1つ目は経営や他部門から理解されないこと。下手をすると「CVって何?」と言われます。
2つ目は評価がブレることです。指標を細分化することで、訪問数は伸びたが離脱率は悪化した、など解釈が難しい状態になりやすく結果的に指標が形骸化します。

売上向上、またはコスト削減に直結することが明確な指標を定めましょう。
定義したWebの役割に従って、指標を絞りましょう。

「成約確度の高いリードの獲得」が役割であれば、Web経由の成約数を追います。
分かりやすく、活動の評価もブレることがありません。成約1件あたりいくらと計算が立つため売上貢献も明確です。

コスト削減狙いの場合でも同様に、出来る限りシンプルに計算できる指標を定めます。
例えばヘルプサイトを充実させる取り組みの場合、「電話お問い合わせ件数」を指標にしておけば、電話問い合わせが何件減ればいくらのコスト削減になるかが計算できます。

別角度からKPI策定のコツを述べるとすれば、最終的なビジネス成果から逆引きして検討することです。

KPIの策定のコツ

一般にKPIを検討する場合、今ある指標を手前側に分解しがちです。「資料請求数 = 訪問者数 × CVR」「訪問者数 = 自然検索経由 + 広告経由」といった具合です。

サイトや取り組みの役割を検討するプロセスを飛ばして、現在のゴールを踏襲してしまっています。また、無意識のうちに最終的なビジネスゴールからより遠い指標に向かって行ってしまっています。

上の図のように、最終ビジネス成果(この場合は契約者数)から逆引きして数字を組み立てましょう。資料請求数よりもセミナー申込数を追ったほうがビジネス貢献度が高くなることが明らかになります。

まとめ:Webの数字がどの程度貢献しているのかを紐解いてみよう

最終的な売上やコストに対して、Webの数字がどの程度貢献しているのか明らかでない場合、まずはそこを紐解いてみましょう。

今回の講義の内容を踏まえて、以下の質問に答えてみましょう。
・あなたの担当するWebサイトアプリ)の役割は何ですか?
・最重要指標は何ですか?
・今一度見直した方が良いと感じる点はありませんか?