これまでゴール定義、ターゲットユーザ定義、シナリオ策定についてお話ししてきましたが、すべてにおいてユーザ視点で検証を重ねましょう。今回はその具体的な方法についてお伝えします。

顧客視点での検証

意見ではなく行動を重視

行動事実

最大のポイントは「行動事実」に着目するということです。逆に言えば、意見は切って捨てるということです。

「また来ると思います」「もう少しスパイスを効かせた方が美味しくなるんじゃないでしょうか」といった意見はありがたいですが、未確定の情報です。果たして本当にまた来てくれるのでしょうか。スパイスを効かせたらお店の売上は伸びるのでしょうか。

グループインタビュー事例

意見があてにならないことを示す、お皿の新商品開発におけるグループインタビューの有名な事例をご紹介します。

ある食器メーカーが新商品開発を行うにあたり、いくつかの試作品を作ってユーザにグループインタビューを行いました。するとインタビュー会場では満場一致で黒い四角いお皿が選ばれました。

その後、インタビューのお礼に好きなお皿を持って帰ってください、と伝えたところ全員が丸くて白いお皿を持って帰りました。慌てて担当者が理由を聞くと、「家には白いお皿が多い」「1枚だけ黒くて四角いお皿があっても使いにくい」といった回答が得られました。

最初のインタビュー結果、すなわち「意見」に従っていたら新商品開発が失敗したであろうことは明らかです。しかし一方で「ユーザが実際に取った行動とその理由」には非常に多くの示唆が含まれていることも分かっていただけたのではないでしょうか。

ユーザ行動観察調査

このように行動事実とその理由を明らかにすることで、ユーザの状況や文脈を明らかにしていく調査手法を「ユーザ行動観察調査」と言います。

一般に「ユーザビリティテスト」と呼ばれるものに近い手法ですが、ユーザビリティテストはこちらから「買ってみてください」といったタスクを与えてそのタスクが完遂されるかどうかをチェックする内容がほとんどです。「ユーザ行動観察調査」は特定のタスクを与えることはせず、状況だけを再現してユーザにできる限りリアルに行動してもらいます。

実際に買ってくださったユーザに行動を再現してもらう

まだ行ったことがない行動に関するユーザの声はすべて「意見」であり、あてになりません。最も信頼できるのは、実際に自社の製品やサービスを購入したユーザが、どのような状況でサイトを訪問し、どのような行動・体験を経て購買に至ったのかを再現してもらうことです。

本講座を執筆しているビービット社でも初期調査では「最近、実際に買った人」を主な調査対象とします。

記憶が新しいうちにその時の状況を振り返ってもらいつつ、実際に自社のWebサイトをどう利用したのかを再現してもらいます。

その行動の様子を観察した上で、なぜそのように行動したのかをヒアリングしていきます。

既に買った人は製品やサービスへの理解が既に深まっているというバイアスがかかるため、理想的には「今まさに買うかどうか検討中」という人も調査対象に加えたいところです。
購買決定のより手前でユーザがつまずきやすいポイントが把握できます。

行動に着目するにはプロトタイピングが必須

行動観察の弱点とも言えるのが、いま存在しないものに対しては行動を観察することができないことです。しかし新商品、新サイトについては調査ができないかというとそうではありません。プロトタイピング手法を用いることで、行動観察が可能です。

画面案の試作

新しい画面のメインメッセージと大まかなレイアウトくらいが可視化されていれば、きちんとしたものを作り込む必要はありません。手書きやお絵かき程度のものでも十分に意味があります。

「商品Aと商品B、どっちが良いかな~と迷っているとしてこれを見たらどうしますか?」と、想定している状況や文脈を伝えてプロトタイプを見せれば、相手は自然に行動してくれます。

ユーザ視点の威力を体験して欲しい

ユーザ視点で検証するとは、ユーザの行動を観察して行動理由をヒアリング(または推察)することを通じて、ユーザが置かれている状況や自社サイトに触れる文脈が想定・仮説どおりかどうかを確かめ、軌道修正することです。

これは、ゴールを定義する際にも、ターゲットユーザを定義する際にも、シナリオを策定してコンテンツページを作り込む際にも、すべてにおいて何度でも繰り返し取り入れたいプロセスです。

検証

大掛かりな調査設計、立派な調査施設、熟練の調査担当者がいないとできないと思った方もいらっしゃるかもしれません。もちろんそれができるに越したことはありません。

しかし、自社・自分の視点だけで考えて作り上げたサイトやページと、例え拙くてもユーザ視点の検証を経たサイトやページとでは、天と地ほどの差が出ます。

例えば隣の部署にいる同僚に新画面案を触ってもらう、自宅に帰って家族にちょっと見せてみる、といった非常に簡易的なユーザ行動観察調査でも目からウロコの発見が多く得られることがあります。

もちろんあまりにターゲットからかけ離れた人を対象にすると間違える可能性もありますが、それでも自分・自社の視点だけで最後まで作るよりは良いでしょう。

まとめ:実践して仕事に役立てよう

ここまで全6回に渡って連載してきましたが、いかがだったでしょうか?
UXを向上させビジネス成果を高めるフレームワークを紹介し、その具体内容を一つひとつ紹介してきました。

しかしフレームワークはあくまでフレームでしかありません。
連載を読んでくださった皆様が1つでも実践し、日々のお仕事に少しでも役立てていただけていれば幸いです。

<宿題>
今回の講義の内容を踏まえて、以下にチャレンジしてみましょう。

  • 自社サイトについて課題が挙がっている場合、誰かに自社サイトを使ってもらいその様子を観察してみましょう。想定通りにつまずくのか、意外にスムーズに進むのかを観察した上で、理由や感想を聞いてみましょう
  • ページの改善案や新機能の企画があれば、手書きで良いのでプロトタイプを作ってみましょう。そして隣の席にいる人に、簡易ユーザ行動観察調査を実施してみましょう