企業によるマーケティングへの活用が一般的になったInstagramですが、企業アカウントを運用する目的は何でしょうか。「時代の流れ的にInstagramをやったほうがいいと耳にしたから」「他社で成果が上がっていると聞いたから」あるいは「競合他社がアカウントを持っているから」といった理由で運用を始めようとしていませんか。

アカウント運用は手段です。Instagramという手段が自社の目的を達成するために本当に有効なのか、ただ漠然と運用をスタートさせてしまう前に以下の注意点を読みながら確認していきましょう。

Instagramのアカウント運用を始める前に確認すべき注意点

アカウント運用を失敗させないために、まずは以下の点を確認しましょう。

1.何を目的に運用するのか

あくまでもアカウント運用は手段です。漠然と運用を始める前に、どのような目的でInstagramを使うのかをはっきりさせておく必要があります。

Instagramのアカウント運用における目的は、「認知度の向上」「ブランド好意度の向上」「購入意向の向上」などが挙げられます。自社やブランドがあまり知られていない場合は「認知度の向上」、すでに多くの人に自社やブランドが知られている場合は「ブランド好意度の向上」など、自社やブランドの状況や課題に合わせた目的設定をしましょう。

目的をはっきりさせると、アカウント運用の中で何に注力するべきかも見えてきます。もしも目的が「認知度の向上」であるならば、Instagram広告を活用する、Instagramを利用したキャンペーンを企画するといった方法で成果を上げることができるようになります。

2.ターゲット層がInstagramユーザーに存在しているか

せっかくInstagramのアカウント運用を始めても、ユーザーの中に自社やブランドのターゲット層があまり存在していなければマーケティングとしての意味はありません。

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出典:令和3年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書|総務省情報通信政策研究所

令和3年度の総務省の調査では、2021年時点で女性が57%、男性が43%と、女性が多い結果となりました。

年代別で見ると、29歳以下が78.6%と最も多く、60代が13.4%と最も少ないことが分かります。

またコロナ禍により、2020年以降はライブ配信の利用が非常に伸びました。実際にMeta社は2020年4月にInstagramライブの利用者が全世界で50%増加したことを発表しており、ライブ配信の需要の高さがうかがえます。

以上のデータと自社やブランドのターゲット層を照らし合わせ、Instagramのアカウント運用が自社やブランドにとって本当に価値があることなのかどうかを今一度見直しましょう。

参考:Meta社|Instagramライブがデスクトップでも視聴可能に

3. Instagramの文脈に合うコンテンツが用意できるか

Instagramの特徴は、写真や動画がメインのコンテンツであるという点です。ほかにもショート動画を投稿する「リール」や、24時間のみ視聴可能な「ストーリー」など、投稿形式が豊富なことも魅力でしょう。

こうした特徴から、Instagramを運用する際は写真や動画といった素材を継続的に用意できることが前提になります。加えてInstagramでフォロワーを増やすためには、写真や動画にある程度のクオリティと、企業独自のカラーや美しい、かわいいといった世界観の確立が求められます。

Instagramでのコンテンツ運用はアパレルや自動車などの有形商材に向いています。以下の調査結果によると、開設アカウント数や平均フォロワー数が多いのは、ファッション、メディア、食品・飲料、小売り、美容・化粧品などであることが分かります。こういった業界に属する企業であれば、コンテンツの運用がしやすく、フォロワーも増加させやすい傾向にあると言えるでしょう。

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出典:自社ツール「POST365」調べ

参考までに、2023年4月時点でフォロワー数が最も多い企業・組織のInstagram公式アカウントは「Nike(フォロワー2.8億人)」、次いで「National Geographic(フォロワー2.7億人)」「Real Madrid C.F.(フォロワー1.3億人)」の順となっていました。

一方、金融や保険などの無形商材を扱っている企業の場合は、あまりInstagramに向いているとは言えません。ただ、無形商材であってもコンテンツを工夫して制作することで、ブランディングに役立てている企業もあります。例えば東京電力のInstagram公式アカウントでは、工場や配管などを被写体にした「インダストリアルフォト」の人気を受け、発電所や電柱、電線の写真をコンテンツとして掲載しています。

4. コンテンツの拡散性が高いとは言えない

Instagramは、TwitterやFacebookに比べてコンテンツの拡散性が劣ります。TwitterやFacebookには個々のユーザーが気に入ったコンテンツをユーザー自身のフォロワーに向けてシェアする仕組みがありますが、Instagramには同様の仕組みがないためです。

Instagramで自社アカウントのフォロワー以外にコンテンツを見てもらうためには、画像や動画の内容に関連したハッシュタグを付け、そのハッシュタグを検索したユーザーに、目に留めてもらうといったことが基本的な方法です。

数あるコンテンツの中から目に留めてもらうためにも、先述したコンテンツのクオリティの向上や世界観の確立、そしてハッシュタグの付け方の工夫などが求められます。

2023年4月時点でInstagramの国内フォロワー数1位の企業アカウントである「Tasty Japan(フォロワー数721.8万人)を例に見ていきましょう。Tasty Japanでは、投稿動画に「#tastyjapan」と自身のブランド名のほか、「#植木鉢ケーキ」「 #イミテーションケーキ」と投稿に関する内容のハッシュタグをつけています。

5. 外部サイトのリンクを貼れるのは一部のみ

Instagramでは、外部サイトへのリンクを貼ることができるのはストーリーズやプロフィール欄となっています。投稿のキャプションにURLを書き込むことはできますが、リンクとしては機能しません。つまり、コンテンツから自社サイトへの誘導や、コンテンツに関連するキャンペーンサイトへの誘導にはあまり期待ができないと言えます。

ただし、2018年6月からは「ショッピング機能」が国内で導入され、コンテンツとして投稿された画像上の商品に、商品名や価格を記載したタグを付けることができるようになりました。気になる商品のタグをタップして詳細を閲覧し、詳細ページ内のリンクから外部ECサイトに遷移して商品を購入することができます。この機能により、ECサイトを持つ企業のビジネスチャンスが大きく広がると期待されています。

まとめ:Instagramでアカウント運用しやすい企業

これまで述べた注意点から、Instagramでのアカウント運用が比較的軌道に乗りやすい企業の特徴は以下の通りです。

  • 29歳以下の若年層の女性をターゲットにしている
  • 写真に映えやすい有形商材があるユーザーの目に留まりやすい世界観を持った画像の制作環境がある

ただ、ユーザー数も急激に伸び、多くの世代に浸透してきているため、上記に当てはまらない企業でも、運用を工夫することで一定の成果は期待できます。

まずはInstagramを活用する目的を明確化し、ターゲットを定めコンテンツの制作環境を整えて、Instagram運用を始めてみましょう。