2010年以降の社会・カルチャーからZ世代の心象風景を探る。今最注目される世代の価値観を育んだものとは?
「言語化」時代におけるコピーライティングについて考察し、実務に活かせるヒントをお届けする連載「コピー学習帳」。第19回目となる前回記事ではミレニアル世代(Y世代)の心象風景:95年-09年の広告とカルチャーについてお届けしました。
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第20回となる今回は実践編「Z世代の心象風景:2010年以降の広告とカルチャー」です。
現在のマーケティングの主要なターゲットであるX世代/Y世代/Z世代それぞれがティーンであった時代状況にフォーカスしていく全3回のシリーズ。最終回の今回はZ世代(1996年~2010年頃生まれ)の人たちの思春期、つまり2010年~2022年にフォーカスします。どのような社会情勢の中で、どんなカルチャーが生まれ、その時代の感性に対して広告コピーは何を語りかけてきたのでしょうか。
これまでに特集したX世代の思春期は日本の「登り坂の時代」で、ミレニアル世代(Y世代)のそれはバブル崩壊や震災後の失われた10年といわれる「下り坂の時代」に対応していました。
さて、それ以降の2010年~今日までは読者の皆さんも記憶に新しいと思いますので、今回は経年解説ではなく「Z世代の思春期とX/Y世代との大きな違い」という観点でまとめてみます。
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Z世代の心象風景:2010年以降の広告とカルチャー
シビアな社会情勢と豊かな情報環境
Z世代年長組(現在の23-28歳)の思春期は2008年に起こったリーマンショックで世界の金融・経済が停止してしまった余韻が残る2010年頃から始まりますが、翌2011年3月には東日本大震災が起こります。Z世代とはモノゴコロついた時期や多感なティーンの時期に日々津波の映像やAC(公共広告機構)に接触していた世代であり、この原初記憶は彼ら・彼女らの価値観に大きな影響を与えています。
東日本大震災をきっかけにTwitter(現X)やFacebookをはじめとするSNSの利用が一気に進み、同時にスマホやWiFiといった情報環境も整ってきました。Z世代はいつでもどこでもネットワークに接続しているユビキタス社会の中で、デジタルネイティブとして育った人たちであり、これも前世代との大きな違いです。
本記事を執筆するにあたり、年ごとの社会イベント/カルチャー/広告コピー13年分をまとめた年表を作成しているので、より詳しく知りたい方は資料をダウンロードして併せて読んでみてください。2010年は下記のような内容です。
「知の高速道路」を体現した世代
YouTubeやNetflix、Spotifyなどの動画・音楽のサブスクサービスなどで興味のある分野のコンテンツを無限に享受できる環境に育ったZ世代。その最も大きな特性のひとつが、2006年に梅田望夫氏が著したベストセラー「ウェブ進化論」の中で将棋の羽生善治名人が語った「知の高速道路」を体現した世代であるという点です。
従来なかなか得られなかった最良の情報に誰もが無限にアクセスできる環境となった結果、AIを練習相手に既存のプロ棋士を圧倒してしまった藤井聡太八冠のように、これまでの世代とは「別次元」の才能を若くから発露させる人たちが次々と生まれています。
また2010年台はサイエンス分野でノーベル賞受賞者が続出したり、オリンピックでの金メダルラッシュ、また大谷翔平選手のメジャーリーグでのホームラン王獲得や世界のスポーツ選手で最高額の契約などを目の当たりにして「世界レベル」でトップを目指すことが当たり前という前提意識が生む目標レベルの高さも前世代との大きな違いを生む要因でしょう。
Z世代が持つ「正義と真偽」のフィルター
2010年台のアメリカ作品の最も大きな潮流のひとつが、映画「アベンジャーズ」シリーズを基軸として展開するMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)でしょう。既存の作品世界のヒーロー達が1つの世界を共有し、同じ世界線の中で共闘する物語です。
その中でのキーワードが「JUSTICE=正義」です。過去の時代の作品と違い、「ヒーロー」という存在自体を問い直す作品が多いのが2010年代の映画作品に一貫する特徴です。アベンジャーズではヒーローが戦えば戦うほど市民の生活の場である街は破壊され、ヒーロー達も「敵」と同じく批判の的になっていきます。
一体自分たちは何のために・誰のために戦っているのか?自分たちが考える「JUSTICE=正義」は本当に正しいのか?その葛藤の中で考え方の違うヒーロー同士が殴り合う展開になっていきます。これは2000年台のイラク戦争下におけるアメリカの振舞いに対する反省、もっといえば「トラウマ」に対するある種の処方箋であるともいえます。
テレビに目を移すと、2010年台の画面に映っていたのは「STAP細胞騒動」や佐村河内氏・新垣氏が争った「ゴーストライター騒動」、またショーンK氏などの「経歴詐称疑惑」、また世界を騒がせるフェイクニュースの問題などでもちきりです。何がホンモノで、何がウソなのか。これまで自明だった世界が一気にその確からしさを失った時代でもあります。
こんなメディア環境の中で育ったZ世代は前世代と比べると「正義と真偽」のフィルターを各自が備えている世代といえます。国や大人が言っていることは本当に正義なのか?今自分が目にしている動画はホンモノなのか?そのような感性は、環境活動家のグレタ・トゥーンベリさんに代表されるように「大人vs子ども」という世代間の対立も助長しています。
「インスタ映え」ではなくてあえて盛れないSNSアプリ「BeReal」の人気など、「素」のお互いを求めあう傾向もこの「虚偽」に対するセンシティブな姿勢が影響していると考えられます。
映えないSNS「BeReal」の流行から見えてくる、これからのZ世代トレンド
映えないSNS「BeReal」はなぜZ世代の心を掴んでいるのか。背景を紐解くと、いくつかのトレンドに共通するキーワードが見えてきます。Z世代向けマーケティングを研究している川又潤子氏に、2023年のトレンドの考察と2024年のマーケティング施策に展開するヒントを伺いました。
Z世代に向けて広告は何を語りかけているのか?
ここまで見てきたように、前世代であるX/Y世代とは生育環境の「次元」が変わってしまったZ世代は何かと注目され、論じられることの多い世代でもあります。多くは大人世代からの一方的な目線によって語られる「Z世代論」に本人たちは辟易しているのかもしれません。
そんなインサイトを突いたコピーアプローチが2023年のLife CARD「僕ら以上の僕ら。」キャンペーンです。
出典:「あのちゃん」が渋谷をジャック、Life CARDがZ世代に向けて16年ぶりに広告を開始|ブレーン
「僕のことをわかったふうに言うな。私のことをわかったふうに言うな。」
「ゴメン僕らはもうそこにはいない。それが青き僕らのスピード。」
あえて行間を詰めたデザインで畳みかけるように思いを凝縮するメッセージは、こうしたZ世代のフラストレーションをまとめて代弁したものであるといえるでしょう。
また同じくタレントのあのちゃんを起用したマクドナルドTVCMも「スマイルあげない」をメインコピーとしています。
出典:世界が絶賛するクリエイティブは、どのように生まれるのか?-TBWAが掲げる7つのルール-
これまで脈々と紡がれてきた「マクドナルド=スマイル0円」という文脈を真正面から裏切ることでZ世代が働きたくなる職場としてアピールするというこの広告キャンペーン。虚偽を嫌うZ世代は「つくり笑い」にも苦手意識があるということで、自分らしい接客を肯定するメッセージになっています。
「正義と真偽」フィルター強めのZ世代に寄り添ったブランドになるために、ブランド→消費者ではなくて問題を喚起して「一緒に考えていこう」というスタンスの広告アプローチも近年増えています。
出典:全国合計1000人の中高生、卒業生、先生の“髪型校則へのホンネ”を徹底調査 パンテーン 『#この髪どうしてダメですか』|PR Times
最もわかりやすい例が2019年にP&Gのパンテーンが展開した「#この髪どうしてダメですか」キャンペーンです。キャッチコピー自体を「# ハッシュタグ」として、社会に対する大きな問題提起をZ世代になり替わってブランドが行うというアプローチです。
前世代が疑問を感じながらも「そういうものだ」と受け容れてきた社会や学校の理不尽なルール・きまりに対して、「本当にそうなんだっけ?」と考えるZ世代に寄り添うブランドになるためにはこれまでのような一方的なアプローチではうまくいきません。
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ブランドの魅力を整理する!広告訴求のためのフォーマット(Excel形式)
後書きのようなもの
企画の幹は、言葉でつくる。
さて、20回に渡ってお届けしてきた本連載も今回がラストとなる。基礎編~実践編まで一貫して「コピー制作の実務で使うフレームワーク/考え方」を小手先のテクニック論ではなくあくまで本質論としてご紹介してきたつもりだ。
生成AIの登場によって様々な職種の存在意義が揺らぐ中、私個人はコピーというより「言語化スキル」自体には大いなる希望を感じている。情報化によって宣伝部や広報部に限らず、全ての事業部のあらゆる領域で「適切な情報の出し先に/適切な情報内容を出す」ことが求められるが、その基軸は「言語化スキル」だ。
そして「言語化」という仕事の本質は「意志の翻訳」であり、これは人と人との直接的な熱量の交換・交歓によってしか生まれないからだ。これまで広告業界において縷々綿々と磨かれ、継承されてきた「コピーライティング」という技術を、もっと世の中に解き放ち、大暴れさせたい。
そんな私が今取り組んでいるのがコピーライティングの他分野への応用研究である。まず手始めに2016年~2020年あたりに着手したのが「編集・SNS」分野への応用。パフォーマンスを出すべき記事広告におけるライティングに広告コピー発想を導入することで1記事あたりの平均アクション(記事→顧客LPへの遷移率=CTR)を5倍にした。中間KPIであるCTRが5倍(通常3-5%のところが15-25%)になると、その先の実売はさらに差が生まれる。
2023年現在は「経営理念づくり」に取り組んでいる。社長にインタビューし、MVV(ミッション/ビジョン/バリュー)や企業スローガンに落とし込む作業だが、「これまでのMVVは全て間違っている」という考えのもと、あるべき経営の言葉づくりに鋭意取り組み中だ。
これまでの経営理念は「額縁の中」に閉じ込められる言葉。それを額縁から出して「社員のココロにインストールされる言葉」に変えるには抜本的に変える必要がある。「創造と挑戦」などと表現自体が全く創造性も挑戦もない言葉では全然ダメ。外向きのスローガン(キャッチコピー)として使えるレベルのパワーがないと内向き=社員のココロにも響かない。
今後はさらに「採用」と「広報・PR」分野への応用研究を進めていこうと企んでいる。Wantedlyなどを見渡してみても、現状のリクルーティングまわりの言語化レベル/語り口は根本的に改善する必要があると感じるし、「その職場固有の働きがいの言語化」という作業はもちろん本質的にMVV策定ともつながってくる。
また広報分野もプレスリリースを眺めると押しなべて言葉のエッジが弱いと感じる。「書いた文字は全て読まれる前提」で書かれているが、広告コピー発想はその真逆「99.9%無視される前提」で書くべしというのは連載3回目でお伝えした通り。ここも抜本的に再定義/再構築すべき領域である。
通常の広告制作ももちろんだが、こうした領域で行き詰まり感を抱えている人がいれば是非一緒に考えてみたい。
▶問い合わせや過去実績などはコチラにどうぞ
またマーケター同志のエールコネクト代表、宮本昌尚氏と毎週配信しているポッドキャスト番組「あした使える"聴く"ネタ帳 | マーケターの真夜中ラジオ」もマーケジャンルで1位をとったこともある熱いコンテンツなので興味ある方は是非視聴いただきたい。
コピーや言語化に興味ある方は、またいずれどこかで一緒に熱い仕事をしましょう。
連載
第1回 「言語化」時代のコピーライティングとは
第2回 生活者のお買い物ポリシーを書き換える広告コピーのアプローチ
第3回 「誰も読んでくれない」という前提から発想する。広告コピーの基本スタンス
第4回 広告コピーの「秘伝の修行法」とは
第5回 どう言うか?の前に「何を言うか?」を決める
第6回 生活者とブランドの接点=ベネフィット(便益)の約束
第7回 広告のメッセージ精度を上げる「言葉のフォーメーション」
第8回 広告の「基点」愛され続けるタグラインの書き方
第9回 1/1000の狭きココロの門に入るキャッチコピーの書き方
第10回 ブランドの「認識」を醸成するボディコピーの書き方
第11回 【特別編】ChatGPTのコピーを添削する
第12回 広告コピーのトレンド変化
第13回 ブランドが紡ぐ小さな物語
第14回 アイデアの作り方 ~インプット編~
第15回 アイデアの作り方 ~アウトプット編~
第16回 顧客理解のためのヒアリング
第17回 広告企画のプレゼンテーション
第18回 X世代の心象風景:80年-95年の広告とカルチャー
第19回 ミレニアル世代(Y世代)の心象風景:95年-09年の広告とカルチャー
第20回 Z世代の心象風景:2010年以降の広告とカルチャー
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- マーケティングとは、ビジネスの仕組みや手法を駆使し商品展開や販売戦略などを展開することによって、売上が成立する市場を作ることです。駆使する媒体や技術、仕組みや規則性などと組み合わせて「XXマーケティング」などと使います。たとえば、電話を使った「テレマーケティング」やインターネットを使った「ネットマーケティング」などがあります。また、専門的でマニアックな市場でビジネス展開をしていくことを「ニッチマーケティング」と呼びます。
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- Twitterとは140文字以内の短文でコミュニケーションを取り合うコミュニティサービスです。そもそもTwitterとは、「小鳥のさえずり」を意味する単語ですが、同時に「ぺちゃくちゃと喋る」、「口数多く早口で話す」などの意味もあります。この意味のように、Twitterは利用者が思いついたことをたくさん話すことのできるサービスです。
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- コンテンツ(content)とは、日本語に直訳すると「中身」のことです。インターネットでは、ホームページ内の文章や画像、動画や音声などを指します。ホームページがメディアとして重要視されている現在、その内容やクオリティは非常に重要だと言えるでしょう。 なお、かつてはCD-ROMなどのディスクメディアに記録する内容をコンテンツと呼んでいました。
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- アプリとは、アプリケーション・ソフトの略で、もとはパソコンの(エクセル・ワード等)作業に必要なソフトウェア全般を指す言葉でした。 スマートフォンの普及により、スマートフォン上に表示されているアイコン(メール・ゲーム・カレンダー等)のことをアプリと呼ぶことが主流になりました。
- キャンペーン
- キャンペーンとは、インターネット上のサイトにおいて、ファン数を増やし、購買行動を促すためにおこなう懸賞キャンペーンなどのマーケティング活動のことです。キャンペーンにはファン数を増やすだけでなく、ファン獲得以上のリアル店舗の来店者数を増やす、資料請求者を増やす、実際の購買を増やすなどの目的があります。
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- キャッチコピー
- キャッチコピーとは、商品などの宣伝の際に使用される文章のことです。 宣伝をする対象のイメージや特徴を簡潔にまとめつつ、見た人の印象に残る必要があります。一言で完結するものから数行になる文章など、実際の長さはバラつきがあります。 キャッチコピーの制作を職業とする人のことを、「コピーライター」と言います。
- タグ
- タグとは、原義では「モノを分類するために付ける小さな札」のことです。英語の「tag」を意味するものであり、荷札、付箋といった意味を持っています。特にインターネットに関する用語としてのタグは、本文以外の情報を付与するときに用いられます。
- フレームワーク
- フレームワークとは、アプリケーションソフトを開発する際によく必要をされる汎用的な機能をまとめて提供し、アプリケーションの土台として機能するソフトウェアのことです。 元々は枠組み、下部構想、構造、組織という意味の英単語です。アプリケーションのひな形であり、これを開発に利用することで、大幅な効率の向上が見込めます。
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- CTR
- CTRとは、インターネット上の広告がクリックされた回数を表す指標です。クリックスルーレートともよばれます。この値が高いほど、ユーザーの興味・関心誘うことができている広告であると言えます。
- KPI
- KPIとは、目標に対して施策がどの程度達成されているか、を定量的に表す指標のことをKPI(重要業績評価指標)といいます。
- キャッチコピー
- キャッチコピーとは、商品などの宣伝の際に使用される文章のことです。 宣伝をする対象のイメージや特徴を簡潔にまとめつつ、見た人の印象に残る必要があります。一言で完結するものから数行になる文章など、実際の長さはバラつきがあります。 キャッチコピーの制作を職業とする人のことを、「コピーライター」と言います。
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- コンテンツ
- コンテンツ(content)とは、日本語に直訳すると「中身」のことです。インターネットでは、ホームページ内の文章や画像、動画や音声などを指します。ホームページがメディアとして重要視されている現在、その内容やクオリティは非常に重要だと言えるでしょう。 なお、かつてはCD-ROMなどのディスクメディアに記録する内容をコンテンツと呼んでいました。
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