昨今では、大小さまざまなアクセス解析ツールが提供されています。
圧倒的に知名度が高いのは、Googleが提供する無料のアクセス解析ツールGoogle アナリティクス」でしょう。

しかし、単純に「無料だから」「知名度が高いから」という理由で安直に使いはじめるのはオススメしません。
Google アナリティクスにも得意な分析と苦手な分析があります。自社の求める分析がツールの機能とマッチしていないと、本来の目的を果たせずホームページの基本的な数値を見るだけになりかねません。

この回では、「アクセス解析ツールを選ぶときのポイント」から、「具体的にどんなツールがあるのか」までをご紹介します。

アクセス解析ツールの3つの分類

アクセス解析ツールはデータの取得方法によって大きく3種類に分類されます。

下記のように、それぞれメリット・デメリットがあるので、ツール選定の参考にしてみてください。

1. サーバーログ型

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ユーザーがホームページにアクセスした時に、サーバーが「ユーザーにどのファイルを見せたか」を記録するタイプ。

・メリット…ホームページに手を加えずに設置できる
・デメリット…ユーザーを判別する精度が低いのでリピーターの集計などは苦手

2. パケットキャプチャ型

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ユーザーとサーバーの間でやりとりされるデータ(パケット)を専用のサーバーに収集してログを記録するタイプ。

・メリット…Webサーバーに負担が少ないので、毎日多くの人が訪れる大規模ホームページなどに向いている
・デメリット…解析用のサーバーを設置する必要があり、導入コストが高い

3. Webビーコン型

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ホームページに専用のタグを埋め込み、ユーザーがページを読み込んでタグを実行するとデータが収集・記録されるタイプ。

・メリット…他の2種類に比べて計測の精度や自由度が高いので欲しいデータを計測しやすい
・デメリット…全てのページのソースコードにタグを埋め込む必要があるので導入に少し手間がかかる場合や、正しく計測できない場合もある

アクセス解析ツールの比較ポイント

3つの種類のメリット・デメリットを簡単に紹介しましたが、実際にツールを選ぶ際にはどのような点を気にすればいいのでしょうか。

ここからは、最低限考慮すべき比較ポイントを3つに絞ってご紹介します。

もちろんホームページによってこれ以外にもさまざまな点を考慮する必要がありますが、大切なのは「このホームページでどんなことを知りたいか」を明確に意識しておくことです。

ポイント1:目的を明確にする

*ホームページKGIKPIを明確にした上で、「その数値が確実に計測できること」*を最も重要な選定基準とします。

たとえば、Webメディアなど「定期的にホームページに来てくれるリピーターを作ること」が重要な指標となっている場合は、ユーザーの識別が苦手なサーバーログ型のツールは選ぶべきではありません。
官公庁など「絶対にホームページが安定稼働している必要がある」という場合には、Webサーバーに負担をかけないパケットキャプチャ型のツールを中心に検討してみてもいいでしょう。

ホームページで「これは絶対に計測したい数値」「この分析ができるツール」など、さまざまな要望を洗い出し、そのニーズをなるべく多く満たすツールを選定する必要があります。

ポイント2:費用感を明確にする

大まかに必要な機能が決まれば、該当するツールを探す基準が定まります。
次に注意したいのが、導入と毎月の運用にかかるコストです。

コスト面だけを考えるのであれば“無料”に越したことはないかもしれませんが、無料ツールは有料ツールに比べて、計測できるデータ量や使える機能が限られている場合があります。

実際に自社が出せる金額が毎月どの位かを見積もった上で、その範囲で使いたい機能がなるべく多く揃っているツールに絞り込んでいきましょう。
使いたい機能を優先度順にリストアップして、ツールごとにその機能が使えるか・使いやすいかを調査した比較リストを作ってみるのもオススメです。

ポイント3:使いこなせるか考える

最後に1番大事なのは、そのツールを導入した場合に実際に使う関係者が使える範囲の機能かどうかです。
機能がリッチでさまざまな分析ができるツールは多くありますが、その分管理画面やレポート画面を細かく設定する必要が出てきます。そのため、「よく分からないから使えない」という状態に陥りがちです。

かといって使いやすい操作画面になっていても、「細かい分析をするためには集計作業が必要で、手が回らない」「見たいレポートを出すのに時間がかかる」といった状況が後から見つかることが多くあります。

導入を決める前に、ツールを販売している会社や代理店に話を聞いてみたり、デモ画面を触ってみたりして、実際に使えるかどうかイメージを持ってから最終判断することをオススメします。

また、いざという時のサポート体制として、公式のヘルプページや取扱代理店・ツールの提供会社のコンサルティングなど、「誰かに相談したり調べたりできる」環境が整っているかも重要です。

アクセス解析ツールの比較

ツールを選ぶまでのイメージを持っていただけたでしょうか。
最後に、アクセス解析ツールで有名なものをいくつかご紹介します。

無料ツール・有料ツール、シンプルなものからリッチな機能のものまで。幅広いツールがあるので、ぜひ情報収集をしてみてください。

Google アナリティクス

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Google アナリティクス
Google アナリティクスは、Googleが無料で提供するアクセス解析ツールです。日本ではおそらくもっとも知名度の高いツールでしょう。

Google アナリティクスはWebビーコン型のツールなので、ホームページの全ページのソースコードに計測タグを埋め込む必要があります。
また、PDFのダウンロードや動画の再生などは計測タグを埋められないので、特殊な実装が必要になり、エンジニアにも協力を仰ぐ必要が出てきます。

Google アナリティクスの強みは、Googleがもつ各種ツールやデータとの連携です。
「ユーザー属性」レポートでは、Googleが持つ広告データをもとに、自社のホームページに来た人の年齢・性別・ユーザーの関心分野などの情報が見られるようになります。
他にも、Google AdWordsと連携すれば、広告クリエイティブごとのCVRの違いなど、詳細な広告評価ができるようになります。

一方で、決まった形のレポート画面でデータを見るため、データを細かく深掘りしていくような分析や、動線分析(ホームページの中でユーザーがどのように動いたかの分析)をするときには手間がかかります。
集客の分析や最適化をメインに行いたい場合には活用できますが、コンテンツの評価などを重視したいときは、自社で行いたい分析が簡単にできるかどうか一度検討しておいた方が良いでしょう。

RTmetrics

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RTmetrics

RTmetricsはユーザー1人ひとりの分析が得意なアクセス解析ツールです。パケットキャプチャ型のツールなので導入コストがかかりますが、大規模なホームページでの利用に向いています。

また、サーバーログ型・Webビーコン型の計測もできる「ハイブリッド型オンプレミス製品」として企業ごとの環境に柔軟に対応できるサービスを揃えています。

パケットキャプチャ型の特徴を活かしたリアルタイムの分析や、ユーザーのすべてのクリック情報を使った細かい分析が可能です。

ptengine

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ptengine

ptengineは、ヒートマップツールとアクセス解析が一緒になった解析ツールです。
ヒートマップの機能がメインですが、流入元などのアクセス解析データでデータを絞り込んだり、ユーザーがコンバージョンに至るまでのどのタイミングで離脱してしまったかが分析できる機能がそろっています。

「ユーザーがホームページの中でどのように動いたか」をさまざまな角度から分析できます。

UserInsight

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UserInsight

UserInsightは、ヒートマップツールとアクセス解析ツールの両方が使えるのが特徴です。
ヒートマップ機能だけではなく、ユーザーがそのページ上でどんな動きをしたかを動画で見られる「マウスリプレイ」機能があるため、ホームページ上のどの部分でユーザーが困っているかを把握して 改善するのに役立ちます。

これらのデータと、ユーザーの属性(性別・年齢など)のアクセス解析データを組み合わせて使うことで、ホームページの改善ポイントを素早く発見できます。

UI/UXの改善に中心に使いたいと決まっている場合には、こうしたヒートマップ機能が付いているツールを検討するのもおすすめです。

Adobe Analytics(旧称:Site Catalyst)

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AdobeAnalytics

Adobe Analyticsは、Photoshopなどを提供するAdobeのアクセス解析ツールです。
導入費用が高額なため、大企業やグローバル企業を中心に導入されています。

計測の自由度が高いため欲しいデータが柔軟に取得できる一方で、「自由すぎて使いこなせない」「仕組みが複雑すぎて分からない」という企業も少なくありません。ただし、導入時に明確な目的を持って設定しておけば、さまざまな角度からデータを分析できる高機能なツールです。

最近は「Adobe sensei」というAIを使った分析や、他のAdobe製品との連携を強化しており、ホームページの制作から分析・マーケティングまでをすべて一つの場で行えるマーケティングプラットフォームとして成長しています。

まとめ

アクセス解析ツールの選定・導入を安直に進めてしまうと、「欲しかったデータが取れない」「集計に時間や手間がかかる」といった思わぬ落とし穴が潜んでいる場合もあります。

また、ツールの導入時には新しい単語が飛び交ったり開発からの質問が上がったりと、誰かにサポートしてもらわないと導入が進められないシーンもよくあります。

自社だけで導入をするのが難しいと感じたら、サポート体制の充実した代理店やコンサルティング会社に依頼をするのも選択肢の一つです。

しかし、一番大切なのはあらかじめ決めた「取りたい数値」がきちんと計測できるかです。明確な根拠を持ってツールを選定するようにしましょう。