Webマーケティングの担当者が必ず基本を理解しておきたいのが、アクセス解析です。

アクセス解析が「取り組んで当たり前」となっていることは、株式会社DataSignが2017年に実施した調査で、上場企業の83%がGoogle アナリティクスを導入しているという結果からも伺えます。

参考:
第1位は『Googleアナリティクスの83%超え』上場企業が利用しているWebサービスランキングTOP100(2017年8月度)

これからのWebマーケティングにおいて、アクセス解析への取り組みは必須と言えるでしょう。
たとえば広告を出稿しても、その着地点となるホームページのパフォーマンスを正しく把握できていなければ改善施策に取り組めないからです。

この記事では、「そもそもアクセス解析とは何なのか」「正しくアクセス解析を行うためにどんなステップが必要なのか」を解説します。

アクセス解析とは

アクセス解析とは、ホームページ上にアクセスして来たユーザーの属性や行動を分析することです。

ユーザーがどこから来たのか(流入チャネル)、どのページを見たのか、ホームページ上で行ってほしい行動(コンバージョン)をどのくらいしてくれたか、などを解析ツールを使って調べていきます。

ただし、単純に「調べるだけ」で終わっては、アクセス解析を行う意味がありません。

アクセス解析の目的は、ユーザーの情報を分析し、顧客行動をもとに事業の成果を上げるための施策につなげることです。
もっと簡単に言えば、コンバージョンにつながるホームページを作っていくための手段のひとつがアクセス解析です。

アクセス解析でできること

アクセス解析ツールは、ホームページの成果や状態を数値で分かりやすく見せてくれます。

では、どのような使い方をすれば、アクセス解析をコンバージョンにつなげられるでしょうか。

具体的な施策を考えるためには、まず自社のホームページの状況を知ることから始めましょう。
ここからは、アクセス解析の主な役割をご紹介します。これらの切り口で普段からレポートを見る習慣をつけておけば、施策を考えるときに具体的な数値が出しやすくなるので役に立つはずです。

サイトの健康状態の確認

ホームページからのお問い合わせや資料ダウンロードが減っていないか、流入数は減っていないかなどを常にモニタリングしておく必要があります。

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Google アナリティクスのレポート画面

例えば上記のように、数値が異常に減っている場合は要注意です。
ホームページの表示やシステムに異常があったり、広告掲載に異常がないか、Googleなどの検索順位が変動していないか、といった箇所をチェックして原因を探します。

実施した施策の効果検証

広告運用、キャンペーンコンテンツの公開など、日々ホームページの改善のためにいろいろな施策を行っている企業も多いでしょう。

しかし、施策は「やりっぱなし」では次につながりません。アクセス解析ツールなどを使って、「効果がどれくらいだったのか」「効果が出た(または出なかった)原因は何だったか」を明確にしましょう。

この使い方をするときに大切なのは、「なぜ効果が出たか」は数値だけでは分からないということを理解しておくことです。

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Google アナリティクスのレポート画面

たとえば上記の図では「バナーAよりバナーBからホームページに来たユーザーの方が商品を買ってくれる」ということがアクセス解析でわかりますが、バナーAとバナーBの違いは数値だけでは分かりません。

数値だけでなく、「出稿先が違うのか」「クリエイティブが違うのか」「ターゲットが違ったのか」など、2つのバナーの違いを比較して見ながら、「なぜバナーBの方が購入につながったか」を考えるようにしましょう。

売上につながる情報の発見

すでに自社でコンバージョンしてくれたユーザーを分析することで、「これからコンバージョンしてくれるユーザー」を見つけるのもアクセス解析の目的の一つです。

たとえば コンバージョン率を時間帯別に見た結果から、コンバージョンが生まれやすい時間帯にメールマガジンを配信する といった施策につなげられます。

アクセス解析の発展

アクセス解析ツールは基本的にホームページのアクセス情報のみを分析の対象としています。ホームページに入ってきた時点から出て行ったところまでのアクセス情報を見て、ホームページが思った通りに運営できているか把握するのが、アクセス解析ツールの主な目的です。

しかし、マーケティングのデータ活用が進む昨今では、さまざまなデータを統合して分析した結果から成果を上げている企業も少なくありません。

ホームページのアクセス情報だけではなく、会員データ・営業データ・オフラインのマーケティングデータなどの様々なデータを分析の対象とし、Webマーケティングの施策に活用していく必要があります。

マーケティングのデータ活用が進む昨今では、さまざまなデータを統合してホームページ上で成果を上げている企業も少なくありません。

ボストンコンサルティンググループの行った調査では、ビックデータを活用できている企業はそうでない企業より平均12%高い売上を上げているという結果も出ています。

ビックデータ活用で売上アップ.JPG
引用:ビッグデータへの取り組みを成功に導く要因|The Boston Consulting Group

マーケティング活動におけるデータ活用の必要性が取り沙汰される理由もお分かりいただけるのではないでしょうか。

アクセス解析に必要なもの

では実際にアクセス解析を活用するには、どのような手順で進めればいいのでしょうか。

アクセス解析を始めようとしたとき、いきなりツールに目を向けてはいけません。

つい「アクセス解析をやるからGoogle アナリティクスを入れよう」といったようにツールに気をとられがちですが、まずは「自社がどんな分析をしたいのか」「そのために必要なツールは何か」を順を追って整理していくべきでしょう。

以下からは、ECサイトを例にとって、アクセス解析を始めるために必要なステップを見ていきます。

1.ビジネスの目的とホームページの目的を明確にする

まずは、自社のビジネスゴール(KGI)と、その達成のためにホームページで達成すべきゴールを明確にします。

スライド1.JPG

これは、ホームページを運用する際にブレてはいけない指標になります。いくらユーザーがたくさん来ても、売上が上がらなければそのホームページは成功しているとは言えません。ホームページKGIには必ずビジネスに直結する数値を設定してください。

参考:
目的を定めてKGIとKPIの設定をしよう;

2.必要なデータを設計する

ホームページの目的が決まった後は、その目的を達成するために必要な項目を細分化して、中間指標として置いていきます。
アクセス解析ではCSFを設定し、その評価をする中間指標としてKPIを設定します。

CSF(重要成功要因) … KGIの達成のための具体的な施策のこと 
KPI(重要業績評価指標)…CSFにした施策の達成度合いを評価するための数値指標 

例えば、先程のKGIから、CSFとKPIを設定すると以下のようになります。
スライド2.JPG

細分化の軸はさまざまです。KPIを設定するときは、以下の点に注意しましょう。

  • その数値が上昇すると、KGIが上がるか
  • 数値を改善したときのインパクトは大きいか
  • 数値を改善するために施策が打てるか

すでにアクセス解析ツールが導入されているホームページでは、具体的に現状の数値から目標値を設定しましょう。「自然検索経由での利益率」「広告経由での利益率」などを算出し、ホームページ全体の目標からバランスと改善できる余地を見て設定します。

まだ具体的な数値がわからない場合は、SimilarWebなどのツールを活用して競合のサイトのデータを参考に目標値を立ててみましょう。その後、実際にアクセス解析ツールを入れてからはホームページの実数値をもとに細かくKPIの見直しと修正を行っていきます。

SimilarWeb(シミラーウェブ)の使い方~競合ホームページのデータが丸はだか!

3.ホームページの構造を理解する

ここまでのステップで、ホームページの目標となる数値が整理されました。
この後は、実際に「その数値をどうやって計測するか」を考えていきます。

たとえば1回あたりの購入金額をKPIに設定した場合、購入完了画面で購入金額を計測する必要があります。
このようにツールを導入する前に「どうやってその数値を計測するか」を決めておくことで、その計測ができるツールを選べるようになり、「ツールを入れてみたが使えなかった」という状態を避けられます。

4.ツールを導入する

ツールを選定する条件が決まったところで、ようやくツールを選定し導入するプロセスに入ります。
導入方法はツールによって異なりますが、一般的なのはページのソースコードにタグを埋める方法です。

5.データの分析が出来る体制をつくる

いざツールを入れてみたものの、実際に数値を日々モニタリングし、施策につなげるのが難しいという声も多くあります。
まずは「毎日データを見る」という習慣をつけていきましょう。毎日見ているうちに、「平日と土日はどれくらい数値に変動が出る」「自然検索経由のサイト訪問は◯割程度」といった感覚が掴めてくると思います。

先程のKGIKPIが目標通りに達成されているかどうかは、「モニタリングレポート」を作成して見るのがおすすめです。
モニタリングレポートとは文字通り、決まった数値を毎日モニタリングするためのレポートです。

たとえばGoogle アナリティクスでは、通常のレポート画面から数値をExcelなどでダウンロードしたり、Google スプレッドシートで数値を自動更新するなど、普段から数値を追いかけるために使える機能が備わっています。
さらにグラフィカルに数値を確認したい方は、Google データスタジオなどのBIツールの活用もおすすめですが、これらは事前に設定する必要があるのでご注意ください。

まとめ

ここまで、「アクセス解析とは」「アクセス解析がなぜ必要か」「アクセス解析の始め方」をご説明してきました。

アクセス解析を正しくスタートすることで、ホームページの改善しやすさは大きく上がります。「この数値があとどれくらい足りない」という改善ポイントが明確になるので、闇雲に改善施策を考えるのではなく、目的を持ってアクションできるようになるためです。

「自社のホームページをどこから改善していいのか分からない」という方は、まずアクセス解析から始めてみてはいかがでしょうか。